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答え

 レテの問いかけに答えるように二人の周りの木々がざわめく。シルフィーの風も不規則になり不思議な雰囲気が辺りを包む。ネアスは緊張しつつもしっかりとした顔つきである。

「時間かな、楽しかったわ。ヒント三つの勝負は今度私が出そうかな、考えておくから楽しみにしていてね、ネアス」

 レテは今後の事を考え始める。ネアスは今に精一杯だが、頑張って答えを口にする。

「ゴブジンセイバー!」

 ネアスは突然大きな声で叫ぶ。レテは予想が大声でびっくりする。

「どうしたの、ネアス。気合をいれる言葉?!緊張するのは分かるけど良いところなんだから、頑張ろ、頑張ろ」

 レテは心配になってネアスを励ましてあげる。ネアスは声を落として口に出す。

「答えはゴブジンセイバーだ。びっくりさせてごめん、レテの二択に入っていなかったみたいだ。完全勝利だ」

 ネアスは腕を振り上げる。モラもネアスの勝利を喜び彼の口にクルミを入れようとする。

「ネアスは本当に面白いわ。私の予想できないことを言うんだから。最後まで油断できないわ」

 レテは気を取り直して仕切り直す。

「時には正攻法も大事よ、ネアス。本題に入る時間よ、これからも楽しくいけるわ、安心してダイジョブ、ダイジョブ」

 レテはネアスの心配事を取ってあげようとする。

「ゴブジンセイバーはレテの方が似合っているんじゃないかって、ずっと思っていたんだ。僕は剣の扱いが苦手だし、勇者って柄ではない」

 ネアスは心に引っかかっていたことを言ってスッキリしたようだ。

「前にもそんな事を言っていたわね。でも、今はその話じゃないわ。大事な話の時間よ、照れることはないわ、準備は万端」

 レテはネアスを安心させるようにやさしく語りかける。

「レテはゴブジンセイバーが大事ではないのか。僕の気分は楽になるけど残念な気もするな。仕方がない、好みは人それぞれみたいだ」

 ネアスは自分を納得させる。レテはまだ大事な話をあきらめない。

「本当にゴブジンセイバーがキミの一番大事な事で良いの、後悔はしないかな。今はチャンスの時。こんな機会は早々訪れないわよ」

 レテはなんとなく話を飲み込み始める。ネアスはマイペースに答える。

「僕の一番大事な事はゴブジンセイバーではないかもしれない。でも、今大事な事はゴブジンセイバーの謎を解くことさ。ヒントが間違っていたのかな、二勝目はお預けだ」

 ネアスはもっと大事な事があるような気がして、悩みはじめる。

「ウウン、私の勘違いよ。ゴブジンセイバーの謎を解いて、呪いを解くのが最優先よ。他の事は後回しでもダイジョブ、ダイジョブ」

 レテは自分を納得させようとする。シルフィーのやさしい風がレテを包み込む。

「シルちゃん、ありがとう。楽しかったから何も問題はないわ、私はみんなと一緒にいることが出来て幸せよ。モラもありがとう!」

 レテはみんなと一緒に楽しくお昼を過ごせたので満足した。

「そうだね、シルフィーさんも風も感じたし、モラも仲良くしてくれるし、レテと一緒にお昼を食べる事が出来るなんて僕も幸せだ」

 ネアスは幸福を実感する。ネアスも暖かい風に包まれる。

「ネアスもシルちゃんの風が分かるようになったの、すごいじゃない」

 レテは感動に目を輝かせる。

「なんとなくだけど、いつもの風とは違う気がする。レテの周りには不思議な風が起こる気がする。気のせいだと思う。自信はない」

 ネアスは断言する。シルフィーは強い風をネアスに吹き付ける。彼はテーブルに体を倒して踏ん張る。

「シルちゃんがネアスにも分かるようにしてくれたわね。これならキミも分かるでしょ」

 レテはネアスが飛ばされないようにしているのを面白がっている。

「レテがお願いしたのか。それなら誰でも分かるさ、アーシャさんだってシルフィーさんの風を感じることは出来るさ」

 ネアスは強まってくる風に耐えている。

「不正解、シルちゃんが勝手にしていることよ。だから風が止まらないのよ、ネアス。正解を出すまでシルちゃんは許してくれないかもしれないわ」

 レテがネアスを脅かすとシルフィーの風が彼女にも吹き付ける。

「レテも不正解みたいだ。どこが間違っているのか、難しい問題だ」

 ネアスが答えを考え始めると風が弱まってくる。

「シルちゃんの考えていることを完全に当てるのは無理よ。挑戦しがいのある問題だけど、どこがどうやらって感じ?」

 レテも正解を導き出そうとする。風は徐々に弱まってくる。

「気のせいじゃないのか。シルフィーさんは僕でも分かるように風を起こしてくれているのか、ありがとうございます。シルフィーさん」

 ネアスが答えるとまた風が強くなり、彼は椅子から地面に落ちてしまう。

「草の上で良かったわね。シルちゃんはやさしいから堅い所には落とさないわ」

 レテはネアスに近づき、草の上に一緒に座る。穏やかな風が吹く。

「レテは正解みたいだ、流石だ。僕が答えを出せるのはいつのことになるのかな。いつまでたっても答えは出ない気がする」

 二人を穏やかな風が包み込む。

「ネアスも正解ね。キミだけでは答えは出せない。では、どうすればよいでしょうか?」

 レテがやさしくネアスに質問をする。彼はすぐに答えを出す。

「レテにアドバイスを求めれば良いのさ。その問題は簡単すぎる、僕がレテに会う前の事を全部聞かせる事が出来たら、誰でも答えを出せる!」

 ネアスはモラからもう一つクルミをもらう。

「モラも賛成、シルちゃんも賛成ね。そのうち全部聞かせてもらおうかな、どんなひどい目にあってきたのかな」

 レテはネアスをからかってみる。

「ひどい目にはあっていないさ。ちょっとだけひどい目にあっただけで話すほどの事でも無いことが多いから期待はしないほうが良いよ、レテ」

 ネアスはレテに面白い話をする自信がない。

「私には何でも話すこと、今思いついたことを話しなさい。シルちゃんとモラも興味があるわ、きっと」

 二人の周囲は静かな風が吹いている。モラも二人の真ん中で寝そべっている。

「故郷にいた時の話だ。この街と同じように僕の村にも一年に一回の大事な祭りがあったんだ。その年に十五歳を迎える男の子と女の子が主役になれる祭りだ」

 ネアスは話を始める。

「ネアスは脇役だったのかな。少しだけヒドイことになってるんでしょ。村の池に落ちたとか、それとも寝坊して祭りに参加出来なかったとか?!」

 レテは予想してみる。ネアスは首を振り、話を続ける。

「村は人が少ないから子供も少ないのさ。その年に十五歳を迎えるのは僕と近所の女の子だけだから、僕は主役に選ばれた」

 ネアスの顔が暗くなる。

「元気出して、ネアス。昔のことよ。この先に悲しい事が起きるみたいだけど、ここで終わりはダメ、最後まで聞かせて」

 レテは話が気になってくる。

「二人は祭りの最後の夜に二人だけで森の祠にあるものを奉納する。森と言ってもリンリン森林ほど広くはないから安心で二人でも充分役目を果たせる」

 ネアスは話を続ける。

「幼馴染の女の子と二人っきりで森の中なんてロマンチックね。二人は恋に落ちるかもしれないわね」

 レテは女の子が気になる。

「幼馴染ではなくて近所の女の子。記憶力の良いレテらしくない!近くに住んでいたらお笹馴染みなんて幻想だ」

 ネアスは強く否定する。

「ネアスはたまにガーおじみたいな事を言うわね。モテなかったのは本当みたいね、近所の女の子と二人で夜に祠に行った。でも、まだ恋は始まりそう」

 レテは安心してネアスの話に耳を傾ける。

「予定では二人で行くはずだったけど、実際は僕一人で祠に奉納に行った。夜は静かで好きだから構わなかった。たまに夜の森に遊びに行くこともあったし、一人のほうが楽だったと思う」

 ネアスが悲しい告白をする。レテはカバンから甘いクッキーを手渡す。

「私の秘密のおやつよ。甘くて美味しいし、元気になるわ。王都の高級店で買ったクッキーだから他の人には秘密にしてね。特にガーおじにはダメ」

 レテは自分もクッキーをかじり、休憩する。ネアスもクッキーを口に運ぶ。

「味はしないけど食べると元気になった気がする。話をつづけられそうだ。僕にはぜいたく品だけど、ありがとう、レテ」

 ネアスはレテにお礼を言って話をまた始める。

「味なんて些細なことよ。私がクッキーをプレゼントしたことが重要なのよ。きれいでやさしくてかわいい女の子のクッキーをもらったのよ」

 レテは念押しをする。ネアスは大きくうなずく。

「近所の女の子がかわいそうに熱を出してしまったんだ。その前の夜に彼女は僕に明日は頑張ろうねって言ってくれたんだ。元気で活発でかわいい女の子であんまり話す機会はなかったから僕も張り切っていたのさ」

 ネアスはその時の事を思い出したようだ。

「良い子ね、そこまでヒドイ目にあったわけじゃないみたいね。その子も運が悪かったわね。クッキーを返してもらおうかな」

 レテはネアスをもう一度からかってみる。ネアスは急いで話を進める。

「話には続きがある。その子は次の年に幼馴染の一つ下の男の子と祭りに参加した。二人は大人たちからもお似合いの二人で一緒の年に生まれていれば祭りの儀式を一緒に出来たのにってよく言われていたくらい仲の良かった二人だ」

 ネアスは一気に話を終える。

「ネアスが損をしたお陰で二人は仲良く儀式に参加出来たのね、良い話ね。誰も不幸にはなっていないわ」

 レテはネアスの話を聞きおわりホッとする。

「レテはすごいね。これから僕の話す事を知っているなんて信じられない?!」

 ネアスはびっくりしてレテを見つめる。レテはネアスの反応に驚く。

「何?!特別な事は言っていないわよ。私と一緒にいることが出来ているんだから近所の女の子と祠に行けなかった事くらいは帳消しって事よ」

 レテはいつものように付け加える準備をしていた。ネアスは大きく首を縦にふる。

「さすがだ、全てお見通しだ。レテは何でも知っている」

 ネアスはさらに驚く。レテは冗談を言われていると気づく。

「ネアス、私をからかうなんて!油断していたかな、今日はもう負けないわよ」

 レテはそろそろ午後の用事に取り掛かる準備を始めようと立ち上がる。

「からかってないよ、レテ。儀式の最後に二人は願いを込めるのがしきたりなんだ」

 ネアスは焦りだして説明をする。

「何に願いを込めるの、ネアス。森の精霊さん、それとも他に願いを叶えてくれそうなステキな存在がキミの村にはいるのかな」

 レテはからかわれていないと納得して話を聞き始める。

「レテは勘が鋭い、僕の村には守護者がいるのさ。昔々に村が危険にさらされた時に命がけで守ったすごい戦士がいるのさ」

 ネアスは熱心にレテに語る。

「村の守護者ってあんまりすごそうには聞こえないけど、その人の勇気は尊敬するわ。どういう活躍をしたの、その守護者さんは?」


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