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なんとも難しい

 町長の応接室は緊張感に包まれている。レテとガーおじも空腹を忘れて話に集中している。ネアスもレテの機嫌が戻ったことで安心をしている。

「バカな貴族に石版を売ってララリをたくさん手に入れた。借ララリも亡くなって町長の趣味の調度品も戻ってきてめでたし、めでたしではなかったのね」

 レテは調子を取り戻して、話を促す。

「事はそう上手く運びませんでした。さっそく私は収集家の貴族に接触を試みました。私も調度品を集めている関係でつてはあったのです」

 町長は何もない部屋を見渡す。

「多彩な調度品がありました。兄はこの部屋が特に気に入っていました」

 ルアも一緒に部屋を眺める。

「想像がつかないのじゃ。しかし、兄上は町長の事を尊敬していたのじゃろうな」

 ガーおじは寂しそうにストーンシールドを見る。ネアスもうなずく。

「貴族と交渉するまではトントン拍子で話が進みました。その貴族は古い物には目がないようで他の面会を断ってまで私たちを招いてくれました。ララリの用意も出来ている、そう聞きました」

 町長の顔色が悪くなってくるが彼は話を続ける。

「私たちは意気揚々と王都の貴族の邸宅を訪れました。そこであの石版が偽物だと言われたのです。しかも、だますために作られた石版だと伝えられました。怪しい者たちがたまに彼のもとに同じような精巧に作られた偽物を持ち込むそうです」

 町長はガックリとうなだれる。ルアがドリンクを差し出し、飲ませてあげる。

「ニセモノ!石版のニセモノを作る事が出来るなんて僕は知らなかった。普通はだまされるハズ?」

 ネアスはレテと見つけた石版もニセモノじゃないかと心配になる。

「アクセサリーとかでは聞いたことがあるけど骨董品というか、石版ってララリにならないわよね、あの貴族だけよ。ララリを出すのは」

 レテも混乱しているようだ。

「悪いことを考えるのじゃ、町長とお兄さんは騙されたのじゃ」

 ガーおじは二人に同情する。ルアの表情が陰る。

「私もガーおじ様を同じ意見を述べました。しかし、貴族はルアの兄が見つけたと聞いた事を蒸し返してきました。彼はガクガクと震えだして、私は見ていることが出来ませんでした。言いにくくて自分が見つけたのではないかと私は貴族に説明しました」

 町長の顔が苦痛に歪む。

「貴族はいやらしいわ。どうせニセモノってバレたんだから余計な事は言わないでウンウンとうなずいていれば良いのよ」

 レテはドサクサに紛れてヒドイことを言う。

「混乱してきた。誰がウソをついているのか分からない」

 ネアスは素直に感想を述べる。ガーおじにも難しいようだ。

「単純な話です。町長、続けてください」

 ルアはあきらめたようで平静に町長に提案する。

「あの貴族様は話が分かるお方で私たちは騙された。ここにいる三人は不幸にもニセモノを掴まされたバカの集まりと言われました。しかし、その発言が彼の逆鱗に触れていたのです」

 町長は息をつくまもなく続ける。

「彼は突然、バカはお前ら二人だ。お人好しの町長にララリをまともな事に使えない貴族。お前らは俺に騙されていれば幸せだった。俺の背後には盗賊ギルドがついている、二人とも痛い目を見ると言い。そう言って彼は飛び出していきました」

 町長は疲れ切って目を閉じて休息を取る。レテとガーおじは様子を見守っている。

「お兄さんはストレスが溜まっていたのかもしれません。どうしてそんな言葉を言ったのだろうか、不思議だ」

 ネアスは冷静に考えてみる。

「街の仕事は地味です。書類をまとめたり、お掃除に食事の準備。街の人々の要望を聞いたり、町長の話に付き合ったりでストレスはたまります。ですが理由には全くなりません」

 ルアは兄を庇わない。

「他にイヤな事があったのかな。友達とケンカをしたり、恋人と上手くいかなかったり、親にガミガミ言われたりかな。ごめんね、ルアさん。一般論よ」

 レテは口が滑ってしまう。ルアは気にしていないようだ。

「恋人がいれば勝ちなのじゃ。上手くいかなくても良いのじゃ、モテたいのじゃ」

 ガーおじはモテに敏感だ。ルアは場が落ち着いたのを見て取って話を引き継ぐ。

「話の続きは私がします。兄は町長が盗賊ギルドと結託をして石版を貴族に売りつけようとした。自分は騙されて協力をしてしまった。この事を街に人たちに早く伝えてほしいと命令されました」

 ルアは淡々と語りだす。

「うーん、ネアスじゃないけど混乱するわね。お兄さんはどうするつもりだったのかな、上手くいくわけがないわ」

 レテは流れを掴んだようだ。

「ガーおじは分からないのじゃ、後でレテ殿に教えてもらうのじゃ」

 ガーおじとネアスは話を聞き流すことにする。

「私は騎士団に連絡することを勧めましたが、わけのわからないことを言い出して、聞く耳を持ってくれませんでした。直に町長が家を訪れて兄の言う通りにするようにと私に言われました」

 ルアは町長にドリンクを飲ませようとする。

「納得できなかった私は町長に問い詰めると事情を説明してくれました。貴族の方は石版は本物である。ララリは払わない。騎士団が来たらそう主張する。町長も適当に誤魔化せば何も問題はおこらないだろう。そのように提案されたようです」

 ルアは要点を説明する。

「厄介な貴族ね。騎士団としては三人とも違うことを言われたら困っちゃうかな。盗賊ギルドの事も本当かどうか怪しくなるし、要警戒」

 レテは今までの話を頭で整理し始める。騙されていないか用心する。

「ガーおじ、まずいよ。本当にどうしよう、ついていけないかも」

 ネアスはガーおじに救いを求めるが彼は別の事を考え始めているようだ。

「町長は今でも評判が悪いから噂を流しても気にしない。盗賊ギルドも作戦が失敗したら自分たちに関与することはないと言われました。混乱した話になったほうが好都合と貴族の方も言っていたそうです」

 ルアも話に疲れて来ているようだ。

「貴族が関わるとややこしくなるのよね。本当に悪知恵が働くのよ、あの人たちはタイヘン、タイヘン」

 レテも貴族には苦労している。

「盗賊ギルトについてはしっかり兄に確認するように教えて頂いたようです。警戒をするまでの事はないとの事でした。ララリにならない仕事を彼らはしないそうです」

 レテが一人ウンウンとうなずく。

「私が兄にその話を伝えると、兄は家を飛び出していきました。お前たちを盗賊ギルドに依頼してひどい目に合わせてやると捨て台詞と残していきました」

 ルアの顔が無表情になる。

「意味が分からないわね。言っちゃいけないけどバカな貴族の提案どおりにすれば罪に問われる事はなかったかな。まあ、バカな事件が起きたって王都でも噂になるかな」

 レテはまた失言をしてしまうが、ルアは彼女に大きくうなずく。

「兄はそれが我慢できなかったのでしょう。実際の所は私には分かりません」

 ルアが一度話をやめる。

「何も事件は起きなかった。そういうことか、僕でも理解できた。お兄さんは仕事熱心すぎたのさ。何事もやる気だけではどうしようもないのさ」

 ネアスは話を理解できたことにホッとする。

「ネアス殿が良い通りじゃ。難しいことは何もなかったのじゃ、良かったのじゃ」

 ガーおじも話が終わってリラックスする。

「誰かに聞かれたくない話だけど、必死に隠すような話でもないかな。お兄さんは旅にでも出たのかな」

 レテは疑問をルアにぶつける。

「今回は隠すつもりはありません。言い難い話なので少し間を置かせていただきました。兄は盗賊ギルドから法外なララリを請求されたようで母に家を売ってララリを手に入れるように提案しました」

 ルアが話を続ける。三人は口を挟まない。

「母は兄に泣きつかれると断れないので家を勝手に売りました。場所だけは良い所にあったのです。兄はそのララリで盗賊ギルドにどんな提案をしたかは知りません。町長や貴族様に被害はありませんでした」

 レテたち三人の顔色が陰る。町長は顔をあげる事が出来ない。

「その後、兄は盗賊ギルドにララリを騙し取られた。でも、盗賊ギルドにも良い人がいる。さらにララリを出せば、取られたララリが戻ってくると母に提案しました。しかし、我が家にはララリになるものは残っていませんでした」

 ルアが最後の説明をすると町長が話を引き継ぐ。

「心配になった私が彼女の家を訪れると、暴れている彼を目撃しました。ちょうど家の引き払い日だったのです。私は昔から世話になっていた棟梁に相談をして彼女たちのララリを代わりに払って貰うことが出来ました」

 町長が顛末を伝える。

「めでたし、めでたしとはいかなのかな。お兄様が今度はどんな暴言をはくのかな、もう嫌になるわ」

 レテはうんざりしているようだ。ガーおじも同じ意見だ。

「これでめでたし、めでたしさ。棟梁さんは素晴らしい」

 ネアスは現実逃避をする。

「ここからは私も詳しくは知らないのですが兄は盗賊ギルドに棟梁に邸宅に盗みに入ることを提案したようです。最終的に一人で盗みに入って捕まったのですが、棟梁の温情で騎士団に突きつける事はしませんでした」

 ルアもこの話はもう続けたくないようだ。

「棟梁も勝手な事をするわね。これは大問題よ、盗賊は捕まえないといけないわ。王都や他の村で被害が起きたらどうするの?!」

 レテは怒鳴り声を出してしまう。

「兄は捕まるのですか、母が悲しみます。何か手立てはないでしょうか」

 ルアは最後の抵抗を試みる。

「棟梁さん、前にも話に出てきたな。どこだったか思い出せない。ついに記憶力が衰えてきたか」

 ネアスは思い出そうと必死になる。

「ネアス殿の年齢のワシは何でも記憶できたはずじゃ。たくさん話しを聞いて疲れただけなのじゃ、心配することはないのじゃ」

 ガーおじは慰めつつ、事実かどうか分からない自慢をする。

「ルアさんはどうしてお兄さんをかばうの?!捕まえるか捕まえないかに関わらず、これからも厄介ごとが起こるわよ。しかも実害が起きるわ」

 レテは心底疑問に思う。

「私は兄の事は見捨てましたが母は信じているのです。まだ、若いからやり直せると思っているようです」

 ルアも兄には困っていたようだ。

「悪い子ではありません。出世欲が強いのが玉に傷でしたかな。自分の方が町長の仕事を上手くやれると率直に言ってくれる子でした。私もいろいろ頼み事をしました。調度品の相談は良くしました」

 町長が楽しそうに思い出話をする。

「人に好かれる才能がある方みたいだ。僕とは大違いだ。実際はすごい人だったのかな。会ってみたいな」

 ネアスの発言にレテは警戒する。

「ネアス殿とは気が合わないと思うのじゃ。やめた方が良い、ガーおじの真面目な助言じゃ。レテ殿と仲良くするのが一番じゃ」

 ガーおじはレテをアシストする。レテは心の中でガーおじに感謝する。

「後はバカなお兄さんが今どうしているかを聞いておしまいね、そろそろお昼にしましょうか、今日のお昼は何が良いかな」


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