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リンリン森林

 ゴブリンたちは肩や腕、足を抑えながらも動き出そうとしている。モラがいち早く気づいたようだ。

「シルちゃん、お願い」

 レテは空高くジャンプする。シルフィーの風の力を下方から打ちつける。何度も打ちつけ、高みに到着する。

「気持ち良い、ストレス溜まったらこれよね」

 レテは青空の下で森林の様子を確かめると勢いよく地面に着地する。激しい衝撃が鳴り響き、立ち上がりつつあるゴブリンたちが驚いて転がり落ちていく。

「ひゃー、二度目だけどすごいなあ。僕も飛んでみたい」

 ネアスは空を見上げている。

「あれを当てるつもりだったのか、おそろしい、おそろしい」

 ガーランドは頭を抑える。

「君たちに任せていたら、日が暮れちゃう。ここからはわたしがリードするわ。ゴブリンたちも集まってきているし、急ぎましょう」

 レテは二人に命じる。 

「南の方にはアイツらいないようだし、そっちに行こっか。もともとその予定だったしね」

 レテは南の森に向かって走り出していく。男たち二人も急いで後についていく。

「ガーランドさん、大丈夫ですか。苦しくないですか」

 ネアスも大変だ。

「ネアス殿、ワシは元気まんまんじゃ、どこまでも走っていける。道さえあれば、どこまでも……」

 ガーランドは続けようとするがレテが遮る。

「ふたりとも本当に置いてくよ。ゴブちゃんも来るし、シルちゃんも限界なのよ」

 レテとシルフィーの限界は遠い。

「私は元気いっぱいだけどね。この先に魔力の泉があるからそこまで、みんな頑張っていこう!」

 王都の西に広がるリンリン森林。リンリンと羽ばたくちょうちょうが生息することが名前の由来だ。リンリンは王国中にいるが、王都の人々は森のリンリンは特別だと言っている。

 春になると多くの冒険者たちがご希望の品を求め、この地に集まって来る。しかし、今日は早朝から騎士団によって封鎖されているために静けさをたもっている。

「レテは足が速いな。よくこんな足場のわるい場所をピョンピョンと飛ぶように進んでいけるな」

 ネアスの視界からレテの姿が消えようとしている。すべったり、ぶつかりそうで彼はスピードを出せない。ガーランドはゼエゼエと限界のようだ。

「置いていかれたか、置いていかれたか。おじさんはまた、置いていかれるのか。そんなの嫌じゃ」

 イヤ思い出でもあるのか、ガーランドが焦りだす。

「この先に開けた場所があるの。ここまで来れば、しばらく大丈夫だと思うわ。ふたりとも頑張ったわね。風が気持ち良い場所があるの、のんびり休憩しましょう」

 レテの弾むような声が聞こえてきた。それを聞き、二人は元気を取り戻して走り出していく。

「思ったより遠かったの。もっと近いと思ったのじゃ」

「ガって不満多いよね。そういう人って幸せになれないよ。ネアスみたいに文句言わずにいる方がずっとたのしいよ」

 ネアスはガーランドに水筒の水を差し出す。ガはガブガブを一気に飲み干す。ネアスは話す気力がないほど疲れているだけだ。緊張の連続でしばしの休息。

「ガはひどくないですか。レテ殿。ガーランドという名がわしにはあります。それにガ、では響きが良くない」

「私はレテ・ウィンドチェルト。ガはガーランド・なんちゃらでしょ。ふたりとも省略しているから構わないわ」

「レテ・ウィンドチェルト殿。これでよろしいか」

 ガのその言動でレテはあからさまに不機嫌になる。イライラが抑えられなくなる。こういう時はシルフィーを呼ぶことにしている。

 イライラの原因を排除しなければならない。


「お元気になってよろしいですわね。私もとてもうれしく思いますわ。ガーランドおじさま。ゆっくりとお休みください」

 レテは集中力を高める。

 ネアスは短期間ではあるが、チラチラと機会があればレテを見ていたので何かを感じ取る。変な場所は見ていない。

「ウィンドチェルトは良い響きだね。どこかで聞いたことがあるような、ないような」

「思い出せないな。ガ・ガ・ガ・ガさんとかどうですかね。確かにガさんでは寂しいですよね」

「ウィンドなんてどこでも聞く名前よ。ここは風の大鳥ラトゥールを祭っている王国よ。風に関係する名前はたくさんあるわ」

 レテがネアスに説明してあげる。

「風の王国ですな。ワシの記憶に関係すると良いんですが。焦っても仕方がない。ガ・ガ・ガ・ガも良いですね。しかし、ネアス殿、もっと良い名を頼みます。寝るのじゃ」

 水を飲み、一息ついたガ・ガ・ガ・ガはその場で横になり、スヤスヤと眠り始める。

「どこでも寝むれるって才能の一つよね。ガ・ガ・ガ・ガの事、尊敬しちゃうな」

「睡眠は大事。昨日は夜遅かったし、朝は早くここまで来て、私はネムネム」

 レテの緊張が溶ける。

「王都の近くに来るのはあまりなかったから、いろいろと知らないことが多いから恥ずかしいな」

「ずっと田舎町に住んでいたせいだよな。もっと早く外に出ればよかったよ」

 ネアスが心底無念そうに語る。

「そんなことないよ。ゆっくり知っていけば良いのよ。まだまだ、挽回できるわよ。私も時間がある時は手伝ってあげるわ」

 レテは男の子を励ましてあげる。

「王都の子はレテみたいにみんなやさしいのかな。話しかける勇気がなかったから、分からなかったけど」

「今度、街で声かけてみようかな。神官になる前に一度で良いからデートしてみたいし、絶対」

 ネアス決心する。

「ナンパってヤツだね。君で大丈夫かな。数打てば大丈夫とか聞くけど、私もしたことないしね」

「私と一緒にナンパしたら、絶対失敗するね。女の子連れてのナンパ」

 いたずらっぽい笑みを浮かべる。レテはタイクツがキライ。

「やるしかない。ガ・ガ・ガ・ガさんにあとで聞こう。僕も一休みしようかな」

 ネアスも横になろうとする。

「ダメ。ここにも女の子がいるのに休むなんてマイナス百点。ガはどう見てもモテそうにない。さらにマイナス千点」

「きびしいな、レテは」

 ネアスは苦笑いを浮かべる。

「私はきびしくないよ。せっかくだから、プラス・マイナスゼロにしてあげる方法をおしえてあげるわ。」


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