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報告は大事

 ゴブリン店主が扉を開けるとアーシャが部屋に入ってくる。彼女の体からは湯気が出ている。ゴブリン店主は部屋の外に出ていく。レテは銅ララリをカバンにしまう。

「ゴブちゃん特製のパンよ、アーシャ。パリパリサクサクでオイシイわ」

 レテはアーシャに伝える。

「おはようございます。レテ様、ラーナさん」

 アーシャは笑顔で挨拶をする。

「おはよう、アーシャ。朝食はまだでしょ、私たちは少し休憩中、アーシャは気にせずにゴブリン特製パンを食べると良いわ」

 ラーナはアーシャを促す。

「お腹が減っていますが大事な報告があります」

 アーシャが話を始めようとする。

「とりあえず座りなさい。朝食は大事、大事」

 レテは椅子を引いてあげる。

「ありがとうございます、レテ様」

 アーシャは椅子に座る。

「お食事中に申し訳ありませんが報告です」

 アーシャはゴブリン特製巨大パンに手を出さない。

「ゴブリンのパンはオイシイわ、アーシャ」

 ラーナはレテを見る。

「気にならないの、アーシャ!ゴブちゃんの作ったパンよ、どうして食べないの?あなたはアーシャなの?」

 レテの心に疑惑が生じる。

「レテ様とラーナさんがレイレイ森林に出発した後にたくさんの出来事が起こりました。先に報告してもよろしいでしょうか?」

 アーシャはレテを見つめる。

「どうする、レテ」

 ラーナもレテを見つめる。

「分かったわ。いつも通りに手短に頼むわ」

 レテはあきらめる。

「昨日の夜にギンドラの街で異変が起こりました。複数の男の人たちが突然叫びだしました。その後に白い影が街中に現れました。シャラキ様とはお会いしたんですよね、レテ様」

 アーシャはレテに問いかける。

「その後かな、きっと」 

 レテは素っ気なく答える。

「白い影は街にも現れたのね。レイレイ森林の中だけだと思っていたわ」

 ラーナが答える。

「混乱する街の中でシャラキ様の声が響きました。恐れるな。所詮は影だ。シャラキ様は黒い剣で白い影を追い払いました。お仲間の人たちも同じような黒い剣を使っていました」

 アーシャはラーナを見つめる。

「魔力を秘めた剣かしら、書物で読んだことはないわ」

 ラーナは記憶を探る。

「男の人たちは倒れました。彼らはギンドラの飲み屋の休憩所に運ばれていきました。私はシャラキ様とお仲間の剣筋を見学していましたが、かなりの腕前の集団です」

 アーシャはレテを見つめる。

「精鋭部隊かな、頼りになりそうね」

 レテは答える。アーシャの顔が曇る。

「シャラキ様は私の事を知っていたようで声をかけられました。レテ様は俺に相応しい、ジャマをするな。ラトゥールの末裔は汚れている。忘れるな、判断を誤るな。そう言ってレイレイ森林に走り去っていきました」

 アーシャは二人を見る。

「ラトゥールの末裔はトゥールを捕まえて、売り払った。彼らはやり過ぎたために呪いをかけられた。彼らは不幸な一族」

 レテはアーシャに伝える。

「幸運の女神様!ネアスさんはだからレテ様を求めているんですね」

 アーシャは納得する。レテの顔が赤くなる。

「レテは求められている女、彼はレテのためなら何だってするわ」

 ラーナは微笑む。

「アーシャ、報告、報告」

 レテはアーシャを促す。

「シャラキ様がレイレイ森林から帰ってくると女帝とシャラキ様、エレミ様がギンドラの街にいる人たちを集めました。女帝と飲み屋の女性、冒険者の一部は双子の王子に従う。王都の命令には従わない。自分たちの方法で災厄に立ち向かう。それぞれの者に判断は任せる。そんな感じです」

 アーシャは二人に伝える。

「シャラキ様に出会った時に予想はしていたけど、双子の王子が表舞台に戻ってくるとは思っても見なかったかしら。王都は混乱しているわ。お父様はどうするのかしら、私はどこに向かうべきか」

 ラーナは考えを巡らす。

「シャラキ様はみんなに何か言っていた?」

 レテはアーシャに尋ねる。

「俺について来い。手始めに明日は飲み屋のララリは全部俺が払うって宣言しました。すごい歓声が上がりました」

 アーシャが答える。

「シグード様は絶対にしない事ね。キビシイ人なんでしょ、レテ」

 ラーナはレテに尋ねる。

「私も二、三回会ったのとこの前手紙を受け取っただけだから、何とも言えないけど真面目な人だと思うわ」

 レテは答える。

「シグード様はネアスさんの事を知っているんですかね。ラトゥールの末裔の事です」

 アーシャは声を潜める。

「英雄がラトゥールと名付けた。ラトゥールの末裔は別に存在した。末裔がラトゥールの力を目覚めさせた。本来であれば無関係のハズ」

 ラーナは整理する。

「手紙ではラトゥールの末裔は新たなる英雄と記されていた。私も彼の力を近くで見てきたから自然と納得したわ」

 レテは補足する。

「難しいです。報告を続けます。早朝のことですが、おじさんが街道で暴れていると通報がありました。私とゼゼーさんで現場に行きました。そこにストーンシールドを持ったガーおじさんがいました」

 アーシャはレテを見つめる。

「ガーランドさんは何をしていたの?」

 レテは恐る恐る尋ねる。

「分かったのじゃと言って、立ち去っていきました。私たちもガーランドさんの後を追う事はしませんでした。ちょっと変でした」

 アーシャは答える。

「ガーランドさんも気持ちの整理が必要なんだと思うわ」

 ラーナは特製ドリンクを飲む。

「駐屯地に戻るとガーランドさんと思われる男性が暴れているという通報が他にも何件かあったようでした。ストーンマキガンから伝令も来ていて、街の防具屋にあったストーンシールドが全て盗まれた、いいえ、ララリは店に置いてあったそうです」

 アーシャはレテを見つめる。

「キミワル!じゃなくて、ガーランドさんの記憶が戻ったのかな、キショ!ううん、ガーランドさんは一人だけ、他はニセモノかな、キモ!違う、違う。ガガブタさんも見た目はそっくりだったわ。いっぱい涙の奇跡を起こせるから良いんじゃない、泣かせろ、泣かせろ」

 レテは混乱する。

「たくさんの大賢者様!私はどうしたら良いの!選べない!」

 ラーナも動揺する。

「落ち着いてください。ガーランドさんの相手はシャラキ様がするそうです。お前らは手を出すなとこれを渡されました」

 アーシャはカバンから鍵を取り出す。鍵は大鳥をかたどっている。先端には菱形の宝石が付いている。青く輝きを放っている。アーシャはレテに鍵を差し出す。

「王家の鍵です。地下への秘密の通路を開くのに使うそうです。シャラキ様は地上で生きるので必要ないそうです。ラトゥールの末裔は地下で静かに暮らす。俺に任せろだそうです。苦情は本人に言ってください」

 アーシャはレテの手に王家の鍵を置く。

「シャラキ、サマ」

 レテは王家の鍵を見つめる。

「当然だけどシャラキ様もこの場所に来たようね。地上には簡単に戻れるのかしら、アーシャ。ここは深い所にあるわ」

 ラーナはアーシャに尋ねる。

「始まりの飲み屋の近くに隠し階段があります。そこからローリングステアで転がってきました。考え事をしながらだったのですぐでしたが、登りは大変そうです」

 アーシャはゴブリン特製巨大パンの真ん中の穴のそばに穴を開ける。

「ふ~ん、そこなんだ、アーシャは。ふ~ん」

 レテは不満だ。

「真ん中にいきたくなりませんか!大きいパンです」 

 アーシャはパンを口に運ぶ。笑みがこぼれる。

「穴を開けたくなるわ。自分の気持ちに素直になれば、答えは自然と出てくるわ。ヘボの魔術師はそう思う。私はアーシャにだまされないかしら、彼女はゴブリンの掟を知っていた。これは正解でしょ」

 ラーナがアーシャを問い詰める。

「正解です。オイシイです」

 アーシャはドンドン穴を大きくしていく。

「シャラキ、サマ?」

 レテは問いかける。

「不正解、レテは呪いがかかっている」

 ラーナはレテを見つめる。アーシャはうなずく。

「ウソでしょ、シンジラレナイ」


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