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イジワルされた!

 レテは大声を出してしまう。ラーナが目を覚まし、辺りを見渡す。ニャンはひたすら毛を撫でている。

「ごめんね、ラーナ。起こしちゃったね」

 レテは謝る。

「構わないわ、レテ。こんな所で居眠りしているのがバレたら魔術協会の会長になれなくなくわ。それより、シャラキ様って言った方が良いかしら。イケイケドンドンのモテる男で気に入らないけど、呼び捨てはマズイわ。普段から気をつけた方が良いわ」

ラーナは目をこすりながらレテに伝える。

「そうにゃん、誰でも様って言っておけば問題ないにゃん」

 ニャンは怯える。

「そうね、タダの貴族だったら蹴っ飛ばしていたかな。人の彼氏の悪口ばっかり!」

 レテは代わりに壁を蹴飛ばす。石が剥がれて土がむき出しになる。

「古い通路みたいね。ゴブリンの住処に人が入り込む。シャラキ様に出会う前だったら興奮したかしら。どう考えてもゴブリン神官とシャラキ様は知り合いね」

 ラーナは服の汚れを手で払う。

「気になっていたにゃん。ラーナ様は騎士だったにゃんか?ニャンはてっきり魔術師さんだと思っていたにゃん。どっちにゃんか?」

 ニャンはラーナに尋ねる。彼女はあくびをする。

「ネアスの事はもう良いの、ニャン?」

 レテはニャンに問いかける。

「明日になったら考えるにゃん。今日のニャンは知らないニャンにゃん。レテ様は気づかなかったにゃん。まだまだにゃんよ」

 ニャンはニヤつく。

「違いはどこかしら?」

 ラーナはニャンを凝視する。

「ホント!」

 レテもニャンをジロジロ見る。

「恥ずかしいニャン。あんまり見てほしくない所にゃん。ヒントを出しすぎたにゃん」

 ニャンは体をくねらせる。

 ドドド!ドドド!階段の上から大きな音が聞こえる。

「失敗しました。先に進んでください!」

 ゴブリン神官の叫び声が聞こえる。

 ドドド!ドドド!ニャンは素早く通路の先に進んでいく。

「行くにゃん!」

 ニャンは動かない二人に声を掛ける。

「走るのはだるいわ。もう夜中、歩くのはガマンできるけど走るのはムリ!」

 ラーナはトボトボとニャンの後をついていく。

「ダイジョブ、ゴブちゃん神官!」

 レテは最後に声を掛ける。

「すぐに追いつきますのでご安心を!ゴブリンは失敗しない方がめずらしいモノです。私も例外では!ゴーブラスト!」

 ゴブリン神官が祈りを込める。

ドボドボ!ドボドボ!階段の上から土が流れてくる。勢いは弱い。

「急ぐにゃん!」

 ニャンは二人を急かすがランタンを落としてしまう。ラーナはあくびをしながら拾う。

「ゴーブラスト、ネアスが気に入りそうね。再開したら教えてあげよっと。セイバーが折れた事はどう伝えようかな」

 レテは不安を感じつつも、二人の後に続く。

「ラーナラスト、ラーナスト。ピンとこないかしら、ガーランドさんとの死闘の末に折れたって言えばよいわ。ウソではないかしら」

 ラーナはニャンにランタンを渡す。

「何でレテ様がゴブジンセイバーを持っているにゃん?すごく気になっていたにゃん。ネアス様が大事にしていたにゃん」

 ニャンは落ち着きを取り戻す。

「ネアスが大事にしていたから、どんなに良いものなのかと思っていたけど。すぐに折れるなまくらだったかな。ストーンシールドに負けるなんて役に立たないって感じじゃないわ。さっさと元に戻して、彼に返すわ」

 レテは答える。通路は徐々に傾斜を増していく。

「ゴブリン神官の話しぶりだと神聖な剣だと思うわ。あくまでもゴブリンに取っての話だけどね。期待は出来ないわね」

 ラーナのあくびが止まらない。

「ニャンも眠くなってきたにゃん」

 ニャンはあくびをする。

「ローリングステアの出番ね。この角度ならムダな力を使わずに降りていけるわ。コツは武器とカバンから目を離さない事。前は事前に確認して置くことよ」

 レテは二人の前に立つ。

「ローリングステア!」

 レテは転がり落ちていく。

「ローリングステアにゃん!」

 ニャンはランタンとカバンを体で抱えるとレテに続く。

「危ない気もするけど眠いわ。シルフィーが何とかするでしょ。ローリングステア」

 ラーナは小声でつぶやくと体を回して、転がっていく。

「ラーナ、付いてこれる!」

 レテは大声で叫ぶ。

「ローリングステア!」

 ラーナは叫ぶ。

「回っていると眠くなるにゃん」

 ニャンは目を閉じる。

 三人はコロコロと傾斜を転がっていく。段々と傾斜がキツくなり、ローリングステアのスピードが増していく。通路は続く。

「ここまで長くローリングステアをしたのは初めてかな」

 レテはうれしそうに二人に伝える。

「ちょっとだけ気持ち悪くなってきたかしら、焼き鳥を食べすぎたみたいね」

 ラーナは回りながら後悔する。

「このまま寝たら、どうなるにゃん?気になってきたにゃん。マズイにゃん、目が冴えてきたにゃん。何も考えないにゃん」

 ニャンは無心になろうとするが失敗する。

「壁にぶつかるか自然と平らな所で止まるかな。落とし穴はないハズね。あったら里ゴブを破壊するわ。裏切りはユルサナイ」

 レテは答える。

「一度止まりましょう、レテ。どうするの?」

 ラーナは落とし穴にハマりたくない。

「そうにゃんね。一度前方を確認するにゃん。事前の備えは大事にゃん」

 ニャンはラーナに賛成する。

「坂道も階段もいつかは終わる。王都にもリンリン森林にもこんなに長い斜面はなかったわ。まっすぐ続く坂、ゴブリンの技術も侮れないかな」

 レテは答える。回転は止まらない。

「質問に対する解答になってないかしら、レテ。確かにグラーフの街にも長い階段はなかったわ。地上からはずいぶんと離れたかしら」

 ラーナは答える。

「体の向きを変えるだけにゃん」

 ニャンは手と足の位置を変える。方向が変わる。

「ダメ、ニャン!」

 レテが注意するが遅かった。

 ニャンは壁に向かいコロコロと転がり、ぶつかる。ローリングステアの方向が変わり、ラーナにもぶつかる。

「痛いにゃん」

「イタ?」

 ラーナは精神を集中させる。小さい火花がレテに飛ぶ。

「アツ!」

 レテは腕をさする。ローリングステアの方向が変わる。

「ごめんにゃん、わざとじゃないにゃん。ホントにゃん、にゃにゃにゃ!」

 ニャンはレテにぶつかる。

「もう!」

 レテはニャンをニラメない。

「私もよ。いつものクセね。ごめんなさい、レテ」

 ラーナはレテたちの方に転がっていく。

「ニャンはさっき私が眠るのをジャマした事を根に持っているのね。謝ってもユルサナイなんてシンジラレナイ。ラーナ、気にしないでね。初めてのローリングステアだから仕方がないかな。ていうかニャンのせいだし!」

 レテは再び転がっていく。

「ニャールサーザ!」

 ニャンは祈りを込める。

「ありがとう、レテ。魔術は危険、理解しているつもりでも難しいわ。ニャールサーザはどこかで聞いたことあるわ。思い出せないわ」

 ラーナも転がっていく。

「ニャン、失敗は誰にでもあるわ。私はニャンが失敗したことを眠るまでは覚えているけど気にする必要はないかな。明日の朝には忘れているハズ、今は今日なのか明日なのかは眠った後に分かる事かな」

 レテは答える。

「ニャールサーザ!!」

 ニャンはさらに祈りを込める。

「思い出したわ。ニャールザーは二代目魔術師協会の会長だったわ。眠気は記憶力を衰えさせる。恐ろしいわ。夜は得意だけど、こんなに動いたのは初めてかしら」

 ラーナは休息を求めている。

「みんな、見て!光が見えるわ!」


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