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里ゴブへ

 レテは怯えながら地上に到着する。ラーナは自分の感情に浸っている。シャラキはレテたちにお辞儀をして出迎える。ニャンとゴブリン神官は目を閉じている。

「ハローロ、こんばんは!」

 レテはシャラキのそばに控えているハローロに声をかける。

「ユーフたちには内緒にしてください。私がシャラキ様に従っていることはまだ明かせません。時は近い、ですが、まだです」

 ハローロは静かに答える。

「人は見かけによらないのね、私の経験は埋まるつつあるわ」

 ラーナはハローロを見つめる。

「ゴブリン神官、レテたちをよろしく頼む。俺はガーランドからゴブジンセイバーの片割れを奪い返す」

 シャラキは皆に告げる。

「急ぐことはありません、シャラキ様。ゴブジンセイバーは一振りの剣です。全ては元に戻ります」

 ゴブリン神官はシャラキに伝える。

「エレミ様もお待ちです、シャラキ様。一度ギンドラの街に戻りましょう」

 ハローロはシャラキに伝える。

「私もお腹が減ったかな。魔力もたくさん使ったし、いっぱい走ったからオイシイモノが食べたいわ。一旦休憩したいかな」

 レテは疲れたので地べたに座る。

「お前は甘すぎだ、レテ。男は一人でやらなければいけない事もある。覚えておけ、俺はあきらめない。だから俺はここにいる。忘れるな、レテ」

 シャラキは黒いローブを体に纏い、暗闇に消えていく。

「イケイケドンドン、貴族の鏡のような人ね」

 ラーナは空を見上げる。すでに雲と黒い霧が空を覆っている。

「私はシャラキ様の後を追います。これをどうぞ、冷めていますがオイシイです」

 ハローロはカバンから紙に包まれた焼き鳥を取り出す。

「気が利くわね」

 レテが受け取る前にラーナが焼き鳥を奪い取る。

「早い者勝ち。敗者は食で心を満たす」

 ラーナは焼き鳥を頬張る。笑みがこぼれる。

「ニャンは別の場所で食べたいにゃん。朽ち果てない小屋の跡地で食事なんてイヤにゃん、災いが降りかかるにゃん」

 ニャンはつぶやく。

「シャラキ様はホンキなの、ハローロ?私をからかっているだけよね」

 レテはハローロに問いかける。

「シャラキ様は全てを手にする人です。王族の役割はあの方には小さい。あの方は限界を知りました。シャラキ様はさらに進むでしょう。となりにはレテ様が相応しい。ラトゥールの末裔は役目を終えます」

 ハローロが答える。

「そこまでです。後は大神官がお伝えします」

 ゴブリン神官が制止する。

「ハローロ!」

 シャラキの声が聞こえる。

「すぐに行きます!」

 ハローロが答える。

「ガ・ガ・ガ、分かったのじゃ、分かったのじゃ。ワシは分かったのじゃ」

 レテたちの周囲にガーおじの声が鳴り響く。

 白い影がレイレイ森林から出現する。ガ・ガ・ガ・ガ。不愉快な音がレテたちの耳に入り込む。

「ゴブリン神官、レテ様たちをお任せします」

 ハローロは黒いローブを纏い、シャラキの後を追う。

「ガーラントさんはしつこい、モテない男じゃなくて、ええと……」

 レテは耳を抑える。

「コワイ人ばっかりにゃん。ネアス様以外にまともな人はいないにゃん」

 ニャンはつぶやく。

「ネーくんはダメな方だと思うけど、人とニャンは違うから仕方がないわね。安定と平穏と刺激を取るならシャラキ様かしら」

 ラーナは焼き鳥を頬張っている。

「レテ様、こちらです」

 ゴブリン神官が杖で地面を叩く。土が吹き飛び、階段が姿を現す。

「ガーランドを狙え。やつを倒せば、我らの勝利だ!」

 シャラキの号令が聞こえる。

 彼女たちから少し離れた場所で黒い影が動くのをレテは目で捕らえる。黒き影は白き影に向かっていく。

「私が想像していたよりもずっとシャラキ様を慕っている人たちはいるみたいね」

 レテは白き影を見つめる。

「双子の王子は王国中の人気者。貴族の間でも誰がお二人と結婚するかで賭けをしたり、競争をしていたらしいわ。イリーザ様が本命、でも、レテが最有力に躍り出たわ。ああ、パーティーは苦手だけど誰かに話したい、伝えたい、噂を広めて欲しい」

 ラーナは焼き鳥を頬張る。

「ニャンに任せるにゃん。ララリはいらないにゃん。ネアス様にもライバルは必要にゃん」

 ニャンはウキウキする。

「ダメ!」

 レテが二人に伝えると空から大きな雨粒が落ちてくる。

「大神官がお待ちです」

 ゴブリン神官は催促する。

「行きましょう、レテ。私たちが出来る事は終わったわ。魔力もスッカスカ、眠気も出てきたかしら」

 ラーナは焼き鳥を頬張りながら階段を降りていこうとする。

「ニャンは先に行くにゃん」

 ニャンは光の魔法紙をクシャクシャして携帯ランプにいれる。ニャンは階段を降りていく。ラーナはニャンの後ろに付いていく。

「ガーランドさん」

 レテはつぶやく。

「ガーランドはシャラキ様に負ける事はありません。彼は戦士です。シャラキ様に勝つ事もないでしょう。彼は狂っている」

 ゴブリン神官はレテに伝える。彼女の体は雨で濡れる。

「説明になってないかな。私は彼を追いかけるべきだったのかな」

 レテは動かない。

「運命は変わりません。結末は同じです。レテ様が望む選択をする、それだけです」

 ゴブリン神官は答える。

「神官はどこでも一緒ね。それっぽいことを言う、答えは私の中にあるんでしょ」

 レテはうなずく。

「ガーランドを抑える事が出来るのは大賢者だけです。レテ様に出来る事はありません。あなた方は相性が良くない」

 ゴブリン神官がレテに伝える。

「モテる女とモテない男。ネアスはモテないの、モテるの?」

 レテはゴブリン神官に問いかける。

「ネアス様がモテない男などと言ったら、大神官でさえお怒りになるでしょう」

 ゴブリン神官は答える。

「私がホントはネアスの事がキライだったら、今までの事は全部演技。全てはシャルスタン王国を救うための作戦、作戦」

 レテはゴブリン神官に尋ねる。雨足が強くなってくる。

「それならネアス様はモテない男です。きれいでやさしくてかわいい女の子にまんまとだまされたラトゥールの末裔。人はどう記録するのでしょう」

 ゴブリン神官は階段を見つめる。

「あわれなラトゥールの末裔は女の子にだまされて、使命を果たして災厄を追い払いました。彼は悲しそうな顔で王国を去っていきました。人々は彼を教訓にして、気軽に女の子をデートに誘う事を止めました。めでたしめでたし」

 レテは答える。

「ネアス様にはニャン様がいらっしゃいます。お二人で旅をするでしょう。気楽な旅になると思います。人もゴブリンも二人には気を止めないでしょう」

 ゴブリン神官はレテに伝える。

「二人だけで旅をしたら、田舎の村でだまされてララリがなくなって旅どころじゃないかな。やっぱり私が必要かな」

 レテはゴブリン神官を見つめる。

「レテ様とネアス様はお似合いです。ゴブリンの私でも分かります。ネアス様はシルフィー様の風に乗れて、喜んでいる事でしょう。ゴブリンは空が苦手なので私は遠慮します」

 ゴブリン神官は答える。

「ガーランドを追え、逃がすな!」

 シャラキの声が響く。

「ガーランドさんも逃げられたようね。上手くやるでしょ」

 レテは階段に進む。

「ガーランドの事は忘れるべきです。彼はあなた方とは違う。彼は危険です。縛るべきモノがない。彼は戦士です」

 ゴブリン神官はレテに告げる。

「答えは大神官」

 レテは階段を降りる。

「その先は里ゴブに通じています。今夜は里ゴブで休み、明日は大神殿に向かいます。よろしいでしょうか、レテ様」

 ゴブリン神官はレテの後に続く。

「大神殿の守り人」

 レテは階段を降りていく。

「その通りです。私は出入り口を塞ぎます。よろしいでしょうか?心配であれば後で私が戻ってきます」

 ゴブリン神官はレテに尋ねる。

「ガーラントさんは?」

 レテが立ち止まる。

「王子に恐れをなして、しばらくは近づかないと思います。警戒心の強い男です」

 ゴブリン神官は答える。

「後ろから襲われてもコワイから閉じて、悪口じゃないからね」


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