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 レテは地面から木の葉の欠片を手に取り集める。ラーナは静かに流星の欠片を見つめている。夜空は雲で覆われている。

「彼に告白するの、ラーナ?彼の心から災厄は吹っ飛んでいくかな。私にバレないようにする事とどっちを選ぶかで頭はいっぱいになるわ」

 レテは木の葉の欠片を上空に舞い上げ、手のひらを開く。

「十一枚」

 レテはつぶやく。

「十一枚」

 ラーナは手のひらを開く。木の葉の欠片は二人の手のひらに降り落ちる。九、十、十一。

「精霊の力は偉大だ」

 二人の背後から声が聞こえる。レテとラーナは精神を集中させる。

「シャルスタン王国王子、シャラキさ。久しぶりだな、レテ。お初にお目にかかります、うつくしくあふれる知性を持つラーナ様」

 白き鎧をまとったシャラキが笑みを浮かべる。

「双子の王子の語るモノはヒドイ目にあった。ある人は崖から落ちて大怪我をした。別の人はパンを食べて一人だけお腹を壊した」

 レテは白き鎧を見つめる。

「双子の王子は旅に出た。長き旅の果てに目的を達する事は出来ない事を知った。災厄が訪れる事を止めることは出来ない。オレたちは防ぐのみだ」

 シャラキは答える。

「もう一人はどうしたのかしら、双子の王子は仲良しで遊びも剣の訓練も神官の秘技の取得も一緒に行っていたと聞いたわ。初めまして、シャラキ様。グラーフの街は安全で食べ物も美味しくて人も勤勉です。領主の力の賜物です」

 ラーナはお辞儀をする。

「アイツは別の所にいる。オレたちはシャルスタン王国建国以来、最も才能豊かな王族だ。二人が共にいれば不可能な事はない。アイツの口癖だった。今は謙虚になったぜ、俺もやんちゃは止めた」

 シャラキは答える。

「十一」

 レテは木の葉を手放す。シルフィーの風が十一枚の木の葉の欠片を浮かべる。

「精霊は何を望む、レテ?」

 シャラキはレテに問いかける。

「知らない。興味もないかな。シルちゃんの好きにすれば良いかな、私も人にとやかく言われるのはキライかな」

 レテは木の葉の欠片を見つめる。

「精霊使いの資質かしら?私も精霊の求めるモノが気になるわ。私は流星の欠片を受け取っても良いのかしら、シルフィー?」

 ラーナは木の葉の欠片に呼びかける。木の葉は回転を始める。クルクル、クルクル。ラーナは手の中の木の葉を放り投げる。木の葉は縦に並ぶ。

「分からない」

 シャラキはうつむく。

「シルちゃんもイジワルだよね」

 レテは笑みを浮かべる。木の葉の回転が速くなる。

「全部で二十二。意味があるのかしら、明日まで答えを考えておくわ。ありがとう、シルフィー。あなたの贈り物は大事にするわ。お世辞じゃないから安心してね」

 ラーナは流星の欠片をカバンに入れる。木の葉の欠片は縦に長くなる。

「ラトゥールの力を見せてくれないか、レテ。ガーラントは森の奥に逃げていった。しばらくの間は安全だ。しぶとい男だったが俺の敵ではない」

 シャラキはレテを見つめる。

「モテない男は執念深いわ。これからは背後に気をつけた方が良いかな」

 レテはさらに精神を集中させる。光の風の糸がレテの指先から木の葉の欠片に伸びていく。木の葉の欠片は金色に染まる。回転はドンドン速くなる。

「英雄の力、それとも精霊使いの力。あるいはラトゥールの末裔の力なのかしら?」

 ラーナはシャラキに問いかける。

「英雄の子孫は存在しない。俺たちの結論だ。英雄と同じ力を持つモノはいるだろう。しかし、それは災厄を退けた後に判明する。災厄で役に立たない力に意味はない」

 シャラキは光の風の糸の流れを見つめている。

「王子は変わったわ。私が知っている王子は意味なんて求めていなかった。ワクワクを隠しきれない感じだったわ。他の大人とは違っていた」

 レテは精神を研ぎ澄ます。光の風の糸が木の葉の欠片を集める。その周りを風が包み込む。シャラキは目を離さない。

「落胆したか、レテ。双子の王子はツマラナイ大人になった。彼らは夢を追い続け、王国の民をあっと驚かせるような事を成し遂げるハズだった」

 シャラキは答える。

「グラーフの街でも似たような話を聞いたかしら。双子の王子には使命があった。王族の役割よりも重要な運命を背負い生まれた。彼らに王国は狭い」

 ラーナが答える。

「いつか私も夢を失い、彼と平穏な生活を望むようになるのかな」

 レテはつぶやく。

「ラトゥールの末裔は平穏を望まない。彼らはトゥールを売り払う一族だ。災厄を防いだら、別れろ。危険な一族だ」

 シャラキはレテに伝える。

「ネーくんはトゥールを売らないわ。ご先祖様の話でしょ」

 ラーナは答える。

「みんなが言うそうな事かな」

 レテはがっかりする。

「知っていたのか?封印された歴史だ。英雄の気まぐれでラトゥールの名が広まり、本来の意味は失われた。ラトゥールは偉大だが、その末裔は意味がないハズだった。しかし、ラトゥールは末裔の手によって目覚めた。アイツも迷っている」

 シャラキは光の風の糸に視線を戻す。

「エレミ様で良いのかしら?」

 ラーナがシャラキに問いかける。

「迷うのはアイツの仕事のハズだったが、今回は俺にも迷いが生じた。だから俺はお前に会いに来た、レテ!」

 シャラキが意を決する。

「そゆことね。彼の悪口を言って、私に告白をする。大人の男性の考えそうな事かな、私たちは付き合い始めて間もないからタイミングが悪いかな。きれいでやさしくてかわいい私が成長するのを待っていたんだ。私の魅力はあの時には目覚めていたのね」

 レテは自覚していなかった。

「貴族ではたまにあるって聞くけど……」

 ラーナは戸惑う。

「違う、女はいつでも何でもそこに結びつける!」

 シャラキは否定する。

「彼は特別、それとも私の想いがそうさせるのかな。元王子も恋をして、精霊の力を借りたら分かるかもね」

 レテは光の風の糸をぎゅっとする。

「ネーくんは双子の元王子に迷いを感じさせるほどの力を持っている。呪われた一族、英雄の意志、精霊の気まぐれ」

 ラーナも光の風の糸を見つめる。

「俺について来い、レテ。俺は王子に戻る。王都のヤツラに災厄を阻止する力はない。大神官の話は俺たちも聞いた。ラトゥールの末裔は使命を果たす。彼は力を示した。風の夢を見るものは夢を叶える。お前は彼の隣にいる事は出来ない。彼の隣にはガーラントがいる。俺たちも手出しできない」

 シャラキは意を決してレテに伝える。

「ガ!」

 レテの頭ははち切れそうになる。

「二人の力でラトゥールは目覚めた。事実は変わらない。でも、レテの力も必要だと思うわ。二人だけじゃ不安しかないわ」

 ラーナが答える。

「ガーラントはラトゥールの末裔に近づくモノを排除する。ヤツは手段を選ばない。ヤツは目的を達する。そうだろう、レテ。お前は彼の隣りにいない。彼がどこにいるか知っているか?」

 シャラキは畳み掛ける。

「ギンドラの街。の飲み屋!」

 レテはかろうじて答える。

「違う、彼の目指している場所はダールガーナ山脈だ。トゥールを捉え、さらなる力を示す。災厄は近い。しかし、間に合う。彼は災厄を防ぐ」

 シャラキはレテを見つめる。

「ずいぶんと詳しいのね、シャラキ様。あなたは何をしようとしているのかしら、あなたの話だと私たちがすることはないもないように聞こえるわ」

 ラーナは疑念を抱く。

「何をするのですか、ラーナ様?」

 シャラキはラーナに問いかける。

「魔術の行き着く先へ」

 ラーナは答える。

「私の思うままに」

 レテは答える。光の風の糸は木の葉の破片を激しく抱きしめる。破片は二枚の木の葉に形を戻す。金色の木の葉を風がシャラキの手に運んでいく。

「ラトゥールの末裔に未来はない。エレミの至った結論だ」

 シャラキはレテに告げる。彼は金色の木の葉を見つめる。

「二枚の金色の木の葉。意味は何かしら?」

 ラーナがシャラキに問いかける。

「俺に精霊の望みは分からない」

 シャラキは答える。

「教えてくれる、シルフィー。私は何も出来ないの?」


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