正しい選択
レテは焼き鳥屋さんを探しに行こうか悩む。アーシャはごまモチを伸ばして食べている。ゼゼーは焼いている。ドロスもごまモチを手に取り、伸ばして食べる。ラーナは立ち上がる。
「ラーナ、一人じゃ危ないかな。私も一緒に行くわ、外はどんな感じなの、ドロス?」
レテはドロスに尋ねる。
「ヒマなので街をぶらぶらしています。出歩かないで、私の話を聞いた方が賢明です。オイシイ焼き鳥屋さんも紹介します」
ドロスはラーナに伝える。
「ネーくんの様子も気になるわ。森に行ってみない、レテ。レイレイ森林には昔から興味があったの。亡霊が集まる森、何が待っているのかしら」
ラーナは腰に手を当てる。
「夜のレイレイ森林は危険です。亡霊に後ろから驚かされたり、髪の毛をグシャグシャにされたりで大変です。夕方の間に森の中に入って体を慣れさせないとダメです」
アーシャは六個目のモチを伸ばして食べる。
「亡霊は異物に敏感です。森の中で闇に包まれる事で亡霊は判別が効きにくくなるようです。そうですよね、ドロスさん?」
ゼゼーはモチを焼くのに飽きてくる。
「ですね」
ドロスは素っ気ない。
「この場を動かないのが最適に思える。でも、それが罠かも」
レテは立ち上がる。
「ワルいやつを見つけたんですか、レテ様!」
アーシャは興奮する。
「誰かいたかしら、私は思いつかないわ。変な男は牢屋の中、ゴブリンはいない。クロウは裏切っていないわ」
ラーナが答える。
「大臣の話だとゴブリンは増える前と同じ数に戻っただけらしいわ。森の中に隠れているかもね。ま、いないと同じかな」
レテは扉に向かう。
「どちらに向かわれるのですか、レテ様。レイレイ森林に夜になってから入る事は冒険者でもしません。禁止されています。ネアス様は安全です。昼に森で見かけました」
ゼゼーはレテに伝える。
「焼き鳥屋さんかしら」
ラーナはレテの後に続く。
「私の行きつけの焼き鳥屋に案内しましょうか。その代わりに先程の話の続きを聞いてください。開けてくれるかは分かりません」
ドロスはレテに提案する。
「私は女帝を待ちます。新装開店の飲み屋の挨拶を聞き逃したくありません」
アーシャは棚からモチを取り出し、光の魔法紙をクシャクシャする。
「先にレイレイ森林でネアスの様子を確認するわ。ドロスはもちろん亡霊よけの祈りを使えるんでしょ。その後で焼き鳥屋さんで話を聞くわ」
レテは決断する。
「私はどちらが先でも構わないかしら」
ラーナは答える。
「仰せのままに」
ドロスは立ち上がる。
「レテ様、罠はどうされるのですか?」
ゼゼーがレテに問いかける。
「ガの罠、クロウの罠、セオの罠。どれもありそうかな。デフォーは罠を仕掛けている場合じゃない。答えは一つかな」
レテは扉を開ける。
「ネーくんの罠。想像がつかないわ」
ラーナが答える。
「おみやげにごまモチを持っていかないんですか、レテ様。きっと喜んでくれます。ネアスさんは罠を仕掛けません。レテ様に恋をしています」
アーシャはモチの焼き加減を見ている。
「ラトゥールの末裔は謎に包まれています。ネアス様の祖先は何者なのでしょうか?ラトゥール様の血を引いているのでしょうか?」
ドロスが疑問を口に出すとレテがキッとニラミつける。
「ラトゥールを目覚めさせた。それで十分かしら、モテる神官さん」
ラーナは微笑む。
「ごまモチは帰ってきてから彼と一緒に食べるわ。そこに転がっている袋の中身はパンゴン!朝まで帰ってこなかったら、みんなで食べてね」
レテはアーシャに伝える。
「あさ!帰らない!ですか!」
アーシャは驚愕する。
「レテ様、イケマセン。我々に教える事ではありません。ギンドラの女性でもそんな事は?」
ゼゼーは焦る。
「朝ですか。恋人たちの夜、私は付いていっても良いのですか?」
ドロスはレテに確認する。
「どこまでなの、レテ?」
ラーナはレテに尋ねる。
「違!」
レテは顔を赤くして外に飛び出していく。
「ごめんなさい、レテ様。違うんですね、風の加護がありますように。違いますよ」
アーシャはレテに伝える。レテは騎士団ギンドラ支部の建物から外に出ると深呼吸する。彼女が辺りを見渡すと人の姿は見当たらない。リンリンの音も収まったようだ。ラーナが後に続いてくる。
「静かね。あの掛け声がウソのように感じるわ。ギンドラの街は噂とは大違いかしら、いつもにぎやかでタイクツしない街って聞いていたわ」
ラーナも周囲を見渡す。
「嵐の前の静けさです。男たちの欲望を止める術はありませんが、体力には限界があります。近くの小屋で休憩中です。祈りを捧げます」
ドロスは精神を集中させる。
「お願い、ドロス。私は彼を捕まえるだけ」
レテは答える。
「出会って何日経つの?」
ラーナはレテに問いかける。
「ボゥ、ボゥ、ボゥ」
ドロスは低音で祈りを唱える。三人をジメッとした風が包み込む。
「七日目かな」
レテはジャンプする。
「早いかしら」
ラーナは腕を広げて体を大きく回す。
「ボゥ、ボゥ、ボゥ」
ドロスは高音で祈りを唱える。
「いつでも構わないけど、みんなに宣言してからはアリエナイかな。今日はないって言ったらあるって思うよね」
レテはジャンプし続ける。
「まあ、そうね。約束したって思うわ。マリーとガーおじとニャンは謎として残るかしら、これが策略って思うかもね」
ラーナは反対方向に体を回す。
「ボゥ。体の具合はどうですか、呪いよけの祈りはカチカチになる事があります。痛い!」
ドロスは肩を回す。
「準備万端、レイレイ森林に向かいましょう」
レテは一飛して森の方に歩き始める。
「そうなの!」
ラーナはびっくりする。
「違う、違うからね。次からはわざとだって思うわ。ドロスもよ」
レテは二人に注意する。
「モテる男は余計な事は言いません」
ドロスは肩をさすりながら、レテの後に続く。
「モテる女は気になることを追求しないと気が収まらないわ。明日の朝が楽しみになってきたわ。ネーくんはどんな顔をして、みんなの前に出てくるのかしら。朝になっても出てこない、それもありえるわね」
ラーナはレテに置いていかれないように早足で歩く。
「好きってキモチは変わらないと思うけど、もっと好きになるのかな。ドロスは知っている?神官になる前は遊んでいたんでしょ」
レテは振り向かずにドロスに問いかける。
「森の中で話しましょう、レテ様。誰もいないとは思いますが……」
ドロスは躊躇する。
「転ばない杖の出番ね」
ラーナは腰から杖を引き抜き、伸ばす。
「ラーナの好奇心は尊敬するわ。役に立たない杖、古いモノはなくなるかな。それでも魔術師は可能性にかけるのね。本当に転ばなかったら、どうなるのかな」
レテはつぶやく。
「モテる男は減るでしょうね。モテない男は女性の足元に目を配りません。目を見る勇気もなく、手を取る気配もない」
ドロスは答える。
「転ばない杖、力を見せて頂戴」
ラーナは精神を集中させると杖は真っ二つに折れる。
「不良品を掴まされたみたいね。ホントに転ぶ杖かな」




