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のびーる

 レテは二個目のモチを口に運び、伸ばして食べる。ゼゼーは焼き加減を見定めている。ラーナの迷いは消えない。

「モチの噂は聞いた事がないかな。貴族のパーティーの警備でモって言葉は聞き取れなかったわ。こそこそ内緒話はしているのは見かけた事があるけどコワイ顔をしていたからモチの話じゃないハズ」

 レテはラーナに伝える。

「ギンドラの街にも貴族は訪れていますがモチを食べ歩きしている姿は見かけた事はありませんね。王都でパンをかじっている姿も見た事がないような気がします」

 ゼゼーはモチをひっくり返す。

「貴族のたしなみかしら。食事はゆっくりと優雅に食べる。買い食いをしても構わないけどモテなくなるわ。私もそうなるのかしら、気になってきたわ」

 ラーナはモチを見つめている。

「おちぶれたラーナはどうなるのかな、すごうで魔法使いとして名を残すの。あるいは森の中でアヤシイ魔術の研究をする。それとも貴族と結婚して元通りの生活を始めるのかな。どれでもダイジョブそうね」

 レテは三個目のモチを口に運び、伸ばす。

「シャルロー様とエレスタン様と共に災厄に立ち向かった栄誉は永遠です。モチの食べ方で家が滅びるとは思えません」

 ゼゼーは棚を眺める。

「決めたわ。王都で貴族に話を聞いてからでも遅くはないわ。夕食は焼き鳥を食べるんでしょ、レテ?」

 ラーナはレテに問いかける。レテはうなずく。

「ラーナの決定に文句は言わない。でも、私はごまもちを食べて、焼き鳥を食べた後にネアスを探しに行くわ。今、彼はどこにいるの、ゼゼー?」

 レテはゼゼーに問いかける。

「夜になったので同志たちは街に戻りました。最後の報告では森で休憩中だそうです。先程と変わっていません」

 ゼゼーはぷっくりと膨れたモチをお皿に置く。

「ええー!ラトゥールの末裔なのよ、彼は!サボっちゃダメでしょ!」

 レテは驚く。

「セオの同好会だったかしら、ラトゥールの末裔に夢中って聞いたわ」

 ラーナはゼゼーに尋ねる。

「ああ、そちらの方でしたか。私はギンドラの飲み屋研究会です。ラトゥールの末裔研究会とは名ばかりのレテ様研究会なので私は参加していません」

 ゼゼーはモチに白黒の粉をかける。

「ゼゼーは私よりも誰が好きなの。ギンドラの女帝はそんなにスゴいの!大人の色気がプンプンで男は立っていられないって聞いているわ」

 レテは四個目のモチを口に運び、伸ばす。

「遠くからしか見る事の出来ない女性。選ばれし女、争いを引き起こしてきたモノ。書物に書いてあったわ」

 ラーナはゼゼーを見る。

「噂は誇張して伝わりますが女帝は蝶のように可憐で、モチのように伸びやかな肌を持つ女性が選ばれます。実際に近くで姿を見た人に話を聞けた事はありません。今日も声だけでしょうね。クッソーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 ゼゼーは静かにクヤシサを噛みしめる。

「そそるよね、分かる、分かる」

 レテは五個目のモチを口に運び、伸ばす。レテが残りのモチを数えていると入口の扉が開く。アーシャが部屋に飛び込んでくる。背後からはイケメンの青年がついてきて、扉を閉める。

「遅れました。モチパーティーは始まってしまいましたか!」

 アーシャは息を切らしている。

「質素なパーティーです。どう言えば良いのでしょうか?」

 ゼゼーは棚からモチを取り出し、焼き始める。

「パーティーに必要なモノは何かしら?」

 ラーナはイケメンに問いかける。

「うつくしい女性、きれいな女性、元気な女性。十分です」

 イケメンは答える。

「悪くない答えかな。ドロスならキツイ女性、傲慢な女性、恥じらいのない女性って答えるかな。あなたは良いイケメンね」

 レテはイケメンに伝える。

「レテ様、神官の服装はしていませんがドロスさんです。私も最初は気付きませんでしたが、詳しく話を聞いたらドロスさんと判明しました」

 アーシャはレテに伝えるとモチを手に取り、伸ばして食べる。

「イケメンは区別がつきにくいのが不便な所かしら、私も良くパーティーで男性の名前を間違えるから困っているわ」

 ラーナは疑惑の目でイケメンを見つめる。

「モチの焼き加減よりもイケメンの区別は難しい」

 ゼゼーはつぶやく。

「それは僻みです。イケメンの顔は千差万別です。私はドロスです。涙の奇跡は私特製のポーションのおかげです。飲み屋で死ぬまで自慢し続けます。私はネアス様に従い、お助けします。私はもっとモテる」

 ドロスは突然決意表明する。

「どうしたの、ドロス!いつもの余裕はどこに行ったの?でも、ドロスなのは確かかな」

 レテはラーナを見つめる。

「レテ様のせいです。私が始まりの飲み屋の前で見つけてここまで連れてくるまではまともでした。私のせいではありません」

 アーシャが二個目のモチを伸ばして食べる。

「人は変わる。すぐに変わる。元には戻らない」

 ラーナはつぶやく。

「モチは伸びる、どこまでも伸びない。空までどうして伸びないのか」

 ゼゼーは棚から追加のモチを取り出す。

「誰の責任でもありませんし、私は変わっていません。私の話を聞いて頂けますか、皆様?話します!」

 ドロスは宣言する。

「イケメンのモテる話とオイボレの昔の話、それに美女の不幸な話はツマラナイ。ドロスはモテる話をするんでしょ?」

 レテは五個目のモチを手に取りながら牽制する。

「モテる男のモテない話はモテる話ですよ、ドロスさん。お忘れなく」

 アーシャは補足しつつ三個目のモチを伸ばして食べる。

「私は最近飲み屋でモテます。デートの約束をしてもらいました。次に流星が降った時にレイレイ森林を探索しましょうと言われました」

 ゼゼーは不敵な笑みを浮かべながらモチを焼き始める。

「遠回しに断られている気がするわ。私は経験が少ないから断言は出来ないかしら」

 ラーナはモチの焼ける様子を眺めている。

「昨日の夜の出来事です。私は忙しい一日を終えて、風の神殿の裏で休憩していました。礼拝の時間はとっくに過ぎているのに街の人々や旅人たちが神殿にひっきりなしに訪れた恐ろしい一日でした。しかし、それも終わった。私は油断して風のメダリオンを神殿の壁にぶつけて遊んでいました」

 ドロスは胸から風のメダリオンを見せる。傷だらけだ。

「どこの風の神殿の壁もボコボコなのはそういう理由があったのね。てっきり、礼拝に来た人たちが願いが叶わないから八つ当たりで体当たりしていたと思っていたわ」

 レテは六個目のモチを口に運び、伸ばす。

「私は街の人が体当たりをしているのを見かけたことがあります。すぐに隠れてバレないようにこっそりと神殿の中に戻りました。良識のある者の行動です。しかし、私の遊びを盗み見していた女性はこちらに近寄ってきました」

 ドロスは話を続ける。

「モテそうな感じですね。他の話をしましょう」

 アーシャは四個目のモチを伸ばして食べる。

「そうね、私のあふれる知性も告げているわ。自慢話!」

 ラーナはモチを眺めている。

「モチはどこから来たのか、最新の研究が発表されました。王都とストーンマキガンには伝わっていないと思いますが……」

 ゼゼーはモチを焼きつつ、レテを見る。

「しょうもない話だけどイケメンのモテる話は聞きたくないかな」

 レテは七個目のモチを口に運び、伸ばす。

「レテ、食べすぎないでね。焼き鳥が本命でモチは脇役かしら、そうでしょ?」

 ラーナはアーシャを見る。

「主役がモチ、面白そうな話になりそうです。モチはいつまでも主役にはなれません。モチはごまを引き立て、蜜を輝かせます」

 アーシャは答える。

「興味のない方々に話す必要はありません。後悔しますよ」

 ドロスは全員に伝える。

「イケメンはすぐに怒る。ドロスさん、お気をつけてください。女性は狡猾です。我々は負ける運命です」

 ゼゼーは棚からモチを取り出す。

「私はこれでオシマイ、オシマイ。アーシャはこれからが本番かな、私たちは焼き鳥を食べに行くけど一緒に来る?」

 レテはアーシャに尋ねる。

「今日は飲み屋が開いてないので焼き鳥屋さんも屋台も出ていません。せっかくギンドラに来たのに残念です。そろそろ女帝の準備は出来たんでしょうかね」

 アーシャは五個目のモチを伸ばして食べる。

「これが最後です。話の続きは良いのですか!」

 ドロスが改めて尋ねる。

「どこか開いている店があるかもしれないわ。一度外に出てみない?」

 ラーナはレテに提案する。

「飲み屋の開いていないギンドラの街は何もないに等しい。待つ事が正しい選択です」

 ゼゼーはモチを焼き始める。

「間違った選択肢が正しい道に導くこともあるわ。難しいかな」


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