昔話
レテは自信満々で答える。ユーフは深呼吸する。ウィルくんは動かない。森は静かさに包まれる。
「用がないならウィルくんを返しなさい。私もギンドラに向かうわ、寄り道はオシマイ、オシマイ」
レテは森の騎士に伝える。
「感情が高ぶってしまった。私の悪い所だ。済まない、レテ、ユーフ。モテるモノの言葉を聞く。眠りながら考えていたことだ。ウィル・オー・ウィスプ、もう少しだけ時間を貸してもらうぞ」
ウィルくんは点滅する。
「俺こそ済まなかった。災厄に立ち向かった森の騎士に使う言葉ではなかった。非礼をお許しください」
ユーフは深々と頭を下げる。
「私は何も悪くないかな、二人は仲直りしなきゃダメ。後で思い出しても、すぐに忘れなさい。私からのアドバイスかな」
レテは二人を見下す。
「今日は調子に乗っているが良い。私は心が広いから気にしない。男女が付き合い始めればすれ違い、反発し合う。災厄が終わればネアスはもっともっとやさしい女性に目移りするだろう。今のうちに閉じ込めておくと良い」
森の騎士の姿がウィルくんから浮かび上がる。
「モテない人の言葉は響かない。この瞬間にネアスが私の事を大キライって思っていて、それが永遠に続いているかもしれないわ。アリエナイかな」
レテは微笑む。
「ローレンだ。コレが最後だ。森の騎士さん、ネアス・ローレンはラトゥールの末裔。英雄と同じ力を持つ者。風の夢を見る者」
ユーフが森の騎士に教える。
「デフォーもローレンが風の夢を見る者だと言っていた。三百年前も同じ言葉を聞いた。流星が降る夜、一人の青年が夢を見る。彼は風に憧れ静かに眠る。彼の願いに従え、冒険者の願いはそこにある。。私は旅人だったので関係のない話でしたが冒険者は記憶力が良いようですね」
森の騎士が答える。
「災厄と風の夢を見る者は無関係!デフォーの間違い、オイボレの勘違い!」
レテは興奮する。
「デフォーさんは関係ない。俺たちが言い出した事に付き合ってくれただけさ。ラトゥールの末裔と風の夢を見る者は関連があると思っていたのは否定しない」
ユーフは毅然として答える。
「ローレンが解き明かしてくれるでしょう。彼はラトゥールの末裔です。災厄の先に彼は
偉大な栄光を手に入れる事でしょう。彼は力を示しました。モテるんだろうな?」
森の騎士は夢想する。
「ラトゥールの末裔って何?私の好きな食べ物、お気に入りの場所。初恋の相手、初めてのデートの話。どれでも教えて上げるわ、ホントに特別だからね」
レテは森の騎士に伝える。ユーフは黙る。
「あなたはどうして風の精霊の力を使えるのですか?思い当たる事を教えてください。ウィル・オー・ウィスプは森で迷っている私に同情して力を貸してくれました。あなたはどのように風の精霊と出会ったのですか?」
森の騎士はレテに問いかける。
「贅沢な質問、ラトゥールの末裔については知らないって言ったらユルサナイ」
レテは迷う。
「ラトゥールは光り輝く大鳥に名付けられたモノ。英雄はどこから名前を得たのか?私は知っています。彼、いいえ、彼女にしつこく何度も質問しました。気になることは諦めきれない性格です。モテないです」
森の騎士は答える。
「確かシルフィーは絵本の主人公だったな。森を探索して地下から天空に行って遊んで、家に帰る。単純な話さ」
ユーフが答える。
「ふ~ん、私が子供の頃の最新鋭の絵本よ。ユーフは私より年上なのに知っているなんて意外かな。あんまり本屋さんにも出回らなかったって聞いているわ」
レテはユーフを見つめる。
「妹が読んでいたんだ」
ユーフは素っ気なく答える。
「ユーフ、そなたは端正な顔立ちだ。無理にとは言わないが妹様を紹介して頂きたい。私は亡霊だから安心するが良い。彼女には私もうっかりと余計な事をしゃべるだろうな。大事な事を話すだろうな」
森の騎士はユーフに提案する。
「英雄さんはどうするの!」
レテは怒鳴る。
「俺は構わない。あいつはギンドラの街でアルバイトをしている。すぐに行くか!」
ユーフは答える。
「行くとも!レテ、英雄には黙っておくのだぞ。私もローレンに今日の事は言わない、絶対だ。ウィル・オー・ウィスプが証人だ」
ウィルくんは点滅する。
「私はネアスに告げ口されても困るような事は何も言ってないわ。脅しには屈しない。英雄さんに出会えたら森の騎士はギンドラで遊びまくって、楽しい夜を過ごした。男の夢を叶えた人って言いつけてやるわ」
レテはウィルくんをニラミつける。光が激しく点滅する。
「亡霊は話しか出来ないさ。英雄さんも許してくれる。三百年振りの世界さ、楽しい夜になるだろうな。風の夢を見る者はあなたを歓迎する。俺と仲間が良い飲み屋に案内するから期待してくれ」
ユーフはレテを気にせずに答える。
「私も風の夢を見る者に従う事にしよう。新人として頑張ります!よろしくお願いします」
森の騎士は答える。
「気にするな、今までのしゃべり方で良い。俺たちは冒険者だ」
ユーフは答える。
「ウィルくんはどうするの、森の騎士さんに付いていくの?寂しくなるけど昔からの知り合いだもんね。キミも好きな人を一緒にいるのが一番、一番」
レテはウィルくんに手を振る。ウィルくんはフラフラする。
「ウィル・オー・ウィスプ、気持ちはありがたいが私には魔力が残されていない。ユーフ、災厄の話だったな。何を知りたい、記憶に残っている範囲で話そう。私は脇役だったから大事な場面にはいなかったぞ」
森の騎士はユーフに伝える。
「世界は暗闇に包まれたのか?」
ユーフは問いかける。
「我々はゴブリンと戦っていた。ヤツラは凶暴で暴れまわっていた。シャルローが指揮を取り、ゴブリンを蹴散らしていった。私も彼らに協力したかったがウィル・オー・ウィスプの力では役に立たなかった」
森の騎士が語る。
「コワイゴブちゃん!想像できないかな、それで大賢者を誘ったのね」
レテが答える。彼女はパンゴンの袋を地面に置く。
「シャルローがゴブリンの本拠地に討伐に向かう、私と賢者は辺鄙な村で聞いた。私は彼らに付いていって活躍したいと賢者に告げたが反対された。敵はゴブリンではない」
森の騎士は続ける。
「大賢者は災厄を予測していたのか?」
ユーフが答える。
「賢者は私に質問しました。なぜ、ゴブの討伐に参加したいのか。シャルローと戦士たちで問題はない。なぜ、お主は向かうのか?」
森の騎士は話を止める。
「大賢者っぽいかな、エラそう」
レテは答える。
「後ろに隠れて戦いに参加します。栄誉のおこぼれに預かれます。あわよくば賢者が活躍して私の功績にしたい。旅をするには銀貨が必要ですし、女性ともお付き合いをしたい。どちらも手に入れる可能性が高い。私は賢者に説明しました」
森の騎士は語る。
「災厄は起こるのか?」
ユーフは疑念を持つ。
「私たちは二人で辺鄙な村の広場で会話をしていました。周りに人がいない事はしっかりと確認していました。しかし、彼、いいえ、彼女はどこかに隠れていた。かすかな笑い声が私の耳に入りました。賢者も聞き取ったようで彼の杖から雷鳴が轟くました。私が目を向けると赤いフードを目深に被った男、女、英雄ですかね。その時はイヤな男だと思いました。ヤツは軽く雷を避けた。いけ好かない男に見えました」
森の騎士は語る。
「英雄さんの登場ね。ややこしくなるから英雄でしてね。あなたが英雄さんを男として扱っている事も理解しているわ」
レテは答える。
「私とて男です。女性を不作法に扱いません。私は彼をイヤな男だと最初は思っていました。聞いていたのが、盗賊!ゴブ退治が終わったらお前らの番だ。私は賢者がそばにいたので強気で行きました。英雄は立ち止まり頭を下げて謝りました。低い声でしたが今考えると……」
森の騎士は思いにふける。
「三英雄の出会いか!」
ユーフは興奮する。
「英雄は彼女一人です。私は何もしていませんし、賢者には大賢者の称号があります。私と新人騎士は災厄の騒動に紛れて騎士になっただけです。話の続きです。賢者は英雄に伝えました。謝罪のキモチがあるのなら女性を紹介しろ。それが礼儀だ」
森の騎士は話を再開する。
「昔に生まれなくて良かったかな、そんなの礼儀じゃないわ」
レテが答える。
「英雄もそんな礼儀は聞いた事がないと反論しました」
森の騎士は笑みを浮かべる。
「たちの悪い大賢者様だな?」
ユーフの疑念が大きくなる。
「イジワルな大賢者かな。英雄さんも大変、大変」




