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迷わない

 レテは空に流れていく光の風の糸を見つめる。氷の柱は全部溶けて水になった。ファレドはレテを見つめている。

「私も考えすぎかな、早く彼を捕まえてギンドラの街でゆっくりしよっと。女の子が遊べる場所もあったハズ。騎士の身分は隠さなきゃダメなんでしょ?」

 レテはファレドを見る。

「悩みは尽きることがありません。今日はレテ様にお話できて良かった。私だけでは暴走していたと思います。これをどうぞ」

 ファレドは胸の隙間からカードを取り出し、レテに見せる。

「ファーナ、お姉さんの名前かな。冒険者カード、王都で作ってくれるのよね。彼はまだ持っていないわ」

 レテはカードを受け取る。

「偽名で作ったカードです。冒険者は通常三枚作ります。いつも使う分、ギンドラの飲み屋で遊ぶ分、危ない依頼を受ける時です。聖騎士団団長への贈り物です。本名で遊ぶバカは冒険者にはいません」

 ファレドはレテに伝える。

「そういう事ね、騎士は知らない事が多すぎるし、貴族も冒険者も隠し事ばっかり!」

 レテは不満を口に出す。

「ギンドラの水浴び場はのぞかれているのでダメです。そのカードを使えば賭け事は出来ると思います。ご判断はレテ様にお任せします。星臨の塔は曇りなのでオススメしません」

 ファレドは気にせず、レテに伝える。

「噂はホントだったのね。ドロドロサークルはどうなの、ヌメヌメがクセになるって聞いたわ。ブカブカポーンも楽しいって聞いたわ」

 レテはファレドに尋ねる。

「そうでしたね、その二つはギンドラの若者が作ったので安心して遊べます。女と賭けの街ギンドラの名前を返上するために頑張っているステキな人たちです」

 ファレドは笑みを浮かべる。

「罠はないのね、信用するわ。ファレド、ホントよ」

 レテは微笑む。

「私も噂で聞いただけなので保証は出来ませんが、ドロドロになるので問題はないと思います。着替えの場所には魔法があり、呪いもあります。一日に数人が神殿に運ばれる事もあるので心配はいりません」

 ファレドは答える。

「ありがと、ファレド。パンゴンはせっかくだからもらうわ。副騎士団長に私はギンドラに向かったって伝えてくれるかな、シルちゃん、お願い!」

 レテはパンゴンの大きな袋を抱えて、精神を集中させる。穏やかな風が広場を包み込む。

「任せてください、レテ様。私はもうしばらく考えます」

 ファレドはパンゴンを包んだ布を抱きしめる。

「ミヤに会ったら、また会いたいって伝えてね。明日には戻るわ」

 レテは精神をさらに集中させる。彼女の頭上に小さな竜巻が起こる。

「新しき風を!」

 ファレドはテーブルから離れる。

「追いかける、捕まえる、抱きしめる!」

 レテは軽くジャンプする。レテは頭の上の小さな竜巻にぶつかり地面に戻る。シルフィーの力で小さな竜巻が地面に生じる。彼女は竜巻を踏んで勢いをつけて空に舞い上がる。レテは何度も繰り返し上空に到着する。

「曇りの日は慎重さが大事、大事。ラトゥール、案内してくれる?」

 レテは落下しながら空に舞う光の風の糸に呼びかける。

「ギンドラはあっちかな、こっちかな」

 レテが精神を集中させる。突如、ウィルくんがレテの目の前に現れる。ウィルくんは近くの森に向かって落ちていく。光が曇り空に軌道を作る。

「森の騎士はあそこにはいないわ。彼は旅にでたわ、ウィルくん!ギンドラに行こ、ネアスもステキな男。森の騎士には負けないかな」

 レテの足元に小さな竜巻が起きる。彼女は竜巻を踏みつけて、ウィルくんを追いかける。ウィルくんはレテの呼びかけに応じずに森の中に消えていく。レテは小さな竜巻を何個か踏みつけて木の天辺に降り立つ。

「今日はみんな強引ね、私のやさしさが増しているのかな。恋人がいるキモチ、頭痛もないから今日が初めてかも。これからはきれいで十倍やさしくてかわいい私、シンジラレナイ」

 レテはひとり言をつぶやく。

「彼に三倍、アーシャには二倍、シルちゃんにも三倍かな。残りの昨日までのやさしさが一つ分残っているのね。とりあえずはウィルくんかな」

 レテは微笑む。

「レテ様か!」

 聞き慣れた声がレテの耳に入る。

「誰かな、森の騎士の知り合い。いるわけないか?三百年前のお話、英雄さんが迎えに来たのかな。感動の再開に立ち会えるかも!」

 レテは片手で大きな袋を抱えながらスルスルと木を降りていく。木々の間から森の騎士のお墓が見えてくる。一人の青年がウィルくんを近くで観察している。レテは静かに木から降りる。

「こんにちは、ユーフ。あなたが英雄さんだったのね。裏の裏でホントは男の人、今の時代はどう?昔の方が良かったかな?」

 レテはユーフに問いかける。

「俺が英雄ねえ、ガラじゃないさ。俺は森の騎士について調べていただけさ、俺は冒険者だ。ネア、ローレンの事があるから疑われるのも当然か」

 ユーフは答える。

「さっきまでファレドと一緒にいたわ。彼女ってややこしくてメンドウな女よね。ユーフは昔からの知り合いなんでしょ?相談に乗ってあげたら彼女に出来るかもよ」

 レテはユーフに伝える。

「マジで勘弁してくれ、アイツは酒を飲むと泣き出して大変なんだ。悩みは朝まで続く、スタイルの良さにだまされる男が悪いがアイツもヒドイ女さ」

 ユーフはお墓に近づく。

「ユーフも彼女を狙った事はあるの?」

 レテはユーフに問いかける。

「デフォーさんに聞いたぜ。ウィル・オー・ウィスプが森の騎士を呼び覚ました。答えは応相談だ。意味は分かるだろ」

 ユーフはウィルくんを見つめる。

「さん付けなんだ。デフォーにも会ったわ。裏切る男は切り捨てた。それでもデフォーを尊敬しているの?」

 レテは精神を集中させる。ウィルくんはお墓に近づく。

「オモシロイ人だ。氷の魔法使いを落とすにはお前らの力を借りる事が出来ない。女は群れる男に興味はない。特に彼女はとびっきりだそうだ。若い人だ」

 ユーフが笑みを浮かべる。

「勝率ゼロかな」

 レテは精神を研ぎ澄ます。ウィルくんは姿を消す。

「ララリはいるのか?」

 ユーフはウィルくんの消えた場所を見つめながらカバンを探る。

「森の騎士は旅にでたわ。英雄がいる場所、アーライト河の終点。彼はそう思っているみたいね」

 レテはお墓を見つめる。

「そうか、災厄を知る者。俺も話を聞いてみたかったがいないんじゃどうしようもないな。デフォーさんにもキラワれたし、次はどこに向かうか」

 ユーフはお墓を見つめている。

「ギンドラで遊んだら?災厄が来たらそれどころじゃなくなるわ。ユーフはモテるから、ララリもちょっとだけしか減らないでしょ?」

 レテもウィルくんの消えた場所を見つめる。

「まあ、そうだが。デフォーさんには黙っておいてくれ、ローレンにもだ。二人と気まずくなるのはマズイからな。デフォーさんも恋が終わったら元に戻るだろ」

 ユーフは答える。

「ネアスはどうなの、ギンドラではモテそう?ラトゥールの末裔よ」

 レテは気になっていた事を問いかける。

「アイツは無理さ。安心しろ、だからレテ様はローレンを追いかけないで暇つぶしをしてるんだろ。ギンドラの飲み屋では肩書は意味をなさない。それはオキテだ。ラトゥールの末裔だからチヤホヤしたら、全てが水の泡だ」

 ユーフが答える。

「知っていたんだ。ヒマじゃないけどね。彼は一人で旅に出た。ギンドラの街は男の夢が詰まっている場所。ララリと駆け引き、美貌と華麗さ、逞しさの場所。それでも男は夢を見る。ギンドラの飲み屋を訪れない男は損をする。たとえモテない男でも夢を見られる。ヒマではないわ」

 レテはつぶやく。

「何だと、レテ!私でも夢を見られるのか!」

 ウィルくんが姿を現す。

「誰だ!」

 ユーフは剣に手を当てる。

「森の騎士さん、どうしてここにいるのかな!」

 レテはウィルくんをニラミつける。

「こっちのセリフだ。どうしてギンドラの街の事を黙っていた?時間はあった。三百年で王国は変わる。私も予測はしていた。だが、モテない男も夢を見られる。本当なのか?」

 ウィルくんは問いかける。

「森の騎士さん、俺は冒険者だ。タダで教える事は出来ない。災厄について話してくれないか?何が来るんだ」

 ユーフはウィルくんに交渉を持ちかける。

「私も気になるかな?」

 レテはユーフを応援する。

「ネアスならば何も求めずに答えてくれただろう。器の小さい連中だ。嘆かわしい、モテるモノは変わらない」

 森の騎士は絶望する。

「ローレンだ」

 ユーフが助言する。

「彼は特別、私の恋人だからね」


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