足掻き
レテは再び精神を集中させる。ウニョウニョが光を放つ。デフォーたちは眩しさで目を閉じる。レテは光を見つめる。
「光は隠れるだけ、失くならない。未来は見えないだけ、これからも続いていく。彼はここにいないけど、どこかで元気にしているわ」
レテは光に伝える。
「何だ?!ヤツはギンドラで遊んでいるさ、元気いっぱいだ。心配するな、男はギンドラの街では明るく健やかだ」
デフォーが答える。
「アーライト河の終点に向かった。お前を出し抜くためにな、デフォー。どうだ、お前に相応しい最後だ!」
店主はデフォーを焚きつける。
「ラトゥールは知っているハズ。あなたの末裔、彼もキミの力を借りる事が出来るわ。教えなさい、ラトゥール!」
レテはラトゥールに命じる。
「小娘、ソイツは反則だぜ。男に自由は必要だ。息が詰まっちまうぜ!」
デフォーは急いでペンを動かす。
「同感です」
店主は同意する。
「かな?」
レテも考える。ウニョウニョの光は弱くなる。
「だ!」
デフォーはペンを止めない。
「だん!」
店主は同意する。
「どこまでなら問題ないかな?」
レテは二人に尋ねる。
「カッコつけさせてやれ!」
デフォーはペンを動かしながら答える。
「一日、いいえ、せめて半日は自由になりたい。男は新たなる光景を求めます」
店主は答える。
「二人は若い頃はモテたの?」
レテは問いかける。
「コイツはダメだ。イケそうな女にしか声をかけねえ意気地なしだ。それでもすぐに振られる男だ」
デフォーは答える。
「デフォーは大物狙いです。他の冒険者が怯む相手を選びます。恐れ知らずのデフォー、彼の異名です」
店主は答える。
「答えになっていないわ。質問に答えなさい、モテたの?」
レテは再度問いかける。
「恐れいたら、何にも手に入らねえ。いつでも同じさ」
デフォーはペンを動かし続ける。
「私は結婚しました。複雑な事情で今は別々に暮らしています」
店主は地図を抑えている。
「モテないって判断するわ。良いの?」
レテは最後に確認する。
「あれだ。あの話はどうだ。女から逃げた男を追いかけた依頼だ。あれは笑える話だろ、参考にしろ、小娘!」
デフォーは店主を見る。
「ええ、そうです。彼は結婚式の前日に宿から逃げました。深夜に花嫁は気付き、飲み屋で酒を飲んでいた私たちに依頼を申し込みました。ララリはいくらでも出す」
店主がレテを見つめる。
「私の境遇とは違うけど興味はあるかな。幸せな話、それとも不幸な結末なの?」
レテは二人に尋ねる。
「どうでもよい結末さ。人の恋には興味はないな」
デフォーはペンを動かす。
「幸せな二人の話です。私たちは花嫁の女性に金ララリ二枚を要求しました。彼女の顔は青ざめて、目から涙がこぼれ落ちました。私たちは若かったので女性の涙にだまされました。深夜ですので銀ララリ二枚。彼女の涙は一瞬で止まりました」
店主が微笑む。
「どっちもどっちかな」
レテは椅子に座りドリンクを飲む。
「ララリは大事だ」
デフォーがつぶやく。
「彼女は私たちに手紙を渡しました。ごめん、どれだけが紙の隅に小さく書かれていました。私たちはうなずき、依頼を引き受けました。彼女は一緒に行きたいと言いましたが私たちは断り、飲み屋で待つように伝えました。来るなとね」
店主は語る。
「ギンドラでは良くある事なのね」
レテは興味を持つ。
「結婚前の男は繊細なのさ。女は何も分かっていない」
デフォーがつぶやく。
「私たちは始まりの飲み屋に向かいました。受付のとてもきれいでかわいくて色っぽい女性に銀ララリ一枚渡して入場しました。私たちは店の中から受付のとてもきれいでかわいくて色っぽい女性に手紙を見せました」
店主は語る。
「遠くからでもすっごいきれいなのに肌も丸見えだから男が惹きつけられるのは理解出来るわ」
レテは答える。
「近くだとどうにもならねえぜ。見るな、聞くな、迷え」
デフォーが答える。
「彼女は手紙を見ると微笑み、テーブルの下で指を差しました。三つの方向、三人の男。私がお礼を言って、その場を立ち去ろうとすると足を踏まれました。彼女はさらに二つの方向、二人の男性を指さしました」
店主はレテを見る。
「女の勘かな。色っぽいお姉さんには秘密があるのね」
レテは答える。
「永遠の謎さ、俺たちは依頼をこなすだけだ」
デフォーはペンを止めて、地図を確認する。
「私たちは酔っ払っていたのでフラフラでした。彼女は水を差し出し、私たちに告げました。恥をかかせてはダメですよ。明日は結婚式です。迷って当たり前です。きれいな女の子はたくさんいます」
店主は語る。
「好きになっちゃうかも、彼は始まりの宿に行くの?」
レテは焦る。ウニョウニョが激しく振動する。
「心配するな、受付は男を惑わせない。ギンドラの掟だ」
デフォーが答える。
「私たちは何も頭に思い浮かばず、しばらくぼーっと突っ立っていました。彼女は一人の男性を指差しました。彼は宝石当ての前で悩んでいました」
店主はレテを見る。
「二人は何も仕事をしていないわ。ダメでしょ!」
レテは注意する。
「世の中はそんなもんだ。余計な事はしないで黙っている。その時の俺は受付の女の足を見ていたぜ。今でも思い出せる、あれはわざとだ」
デフォーはニヤける。
「良い夜だった。俺は彼女の美しい指に見惚れていた。彼女は俺に言った。賭けに負けたら声をかける事、勝ったら様子を見なさい。奥に行くようなら捕まえなさい」
店主もニヤける。
「二人は何をするの?」
レテは驚く。
「酔っ払いに何が出来る、小娘!」
デフォーは地図を写し終えたので強気になる。
「私たちは男を見守りました。彼は幸運にも勝負に勝ち、真っ赤な宝石を手に取りました。彼は駆け足で受付を通り過ぎていきました。その先には依頼主の女性が立っていました。彼女は彼の頬を引っ叩きました。心配したでしょと大声で叫んだ後に真っ赤な宝石に手を添えました」
店主は語る。
「笑えるの、ダイジョブ?」
レテは心配になる。
「小娘はせわしいな、俺たちは!」
デフォーが店主を見る。
「冒険者だ!」
店主は笑う。
「ウソでしょ!これで終わり?」
レテは立ち上がる。光の風の糸は消えていく。
「何かあったか!」
デフォーが店主に尋ねる。
「私たちが依頼主に近づこうとすると受付のとてもきれいで色っぽい女性がデフォーの足を蹴っ飛ばしました。彼は転び、私は笑い声を上げました。彼女は私たちに告げました。あなたたちのような仕事の出来ない冒険者は初めて!」
店主は語る。
「初めての男さ」
デフォーはキリッとする。
「帰る、ありがと。メリゴーザケーキはオイシかったわ。最後の味、ここにはもう来ないかな。忘れ物はない、ダイジョブ、ダイジョブ」
レテは精神を研ぎ澄ます。伸びた手紙が小さくなっていく。しかし、手紙は途中で震えて粉々に散っていく。紙が天井に舞い上がる。
「最低、くだらない店!」




