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地図なの?

 レテはデフォーの背中を見つめる。おじいさんの背中だ。店主が大きなメリゴーザケーキをテーブルの上に置く。

「デフォーはいつもこんな感じなの、店主さん?」

 レテは店主に尋ねる。

「気にしないでください。時間のムダです。メリゴーザケーキを味わってください。お代はデフォーから頂きます」

 店主はナイフでケーキを切り分けて、レテに差し出す。

「ありがと、でも、デートはしないわ」

 レテが店主に告げる。

「私はデフォーとは違います。氷の魔法使いに恋をした老人。ギンドラで笑われているでしょう。彼らは悪趣味だ」

 店主は答える。

「彼女は美しく気高い。やさしさは必要ない。俺には寒さが必要だ」

 デフォーは地図を観察している。

「報告は聞いたわ。彼女もラトゥールの末裔を追っているらしいわね。手がかりは女性神官。私も彼に聞いたわ」

 レテはメリゴーザケーキを頬張る。笑みがこぼれる。

「オイシイ!夢より現実かな」

 レテはドンドン口に入れる。

「お褒めいただきありがとうございます。お客様の笑顔が私の喜びです」

 店主は微笑む。

「若い女限定だ。アイツの歩いた道。違うか、レテ様」

 デフォーが思いつく。

「王都にもウニョウニョがあるわ。彼は行ったことがないって教えてくれたわ。ホントかは知らない。そうだとしたら彼は王国中を旅した事にあるわ。無理でしょ」

 レテは答える。

「ネアス様は若い男性とお聞きしています」

 店主は答える。

「そうだ、チッ、ハズレだ、ハズレだ」

 デフォーは悪態をつく。

「八つの点に心当たりはあるかな。アーライト河は点じゃないわ」

 レテは気になっていた事を尋ねる。

「デフォーに聞きました。八つのアーライト河。点は街、人、村。多すぎるし、少なすぎる。遺跡、森、数が分からない」

 店主はメリゴーザケーキを取り分けて、レテに差し出す。

「太るぞ、王国には王都、ギンドラ、ストーンマキガン、グラーフがある。近隣には小さい街があるが数が合わない。特に王都の周りは街だらけだ」

 デフォーが確認する。

「グラーフだけ遠いのが不思議。ストーンマキガンもしょぼいし、ギンドラはウルサイから王都だけで十分かな」

 レテはヒドイ事を言う。

「昔はこの街も活気がありました。私の若い頃の話です。翠岩祭りには王国中の人々が訪れていました。いつ頃でしょうか、寂れ始めたのは……」

 店主は思い出に浸る。

「年寄りと小娘がほざくな。グラーフと王都の間には巨大な都市がある。今でも地下に埋まっている。子供でも知っている話だ」

 デフォーが答える。

「空中都市よりも信憑性のないおとぎ話を言われても困るわ。上に都市を作り直せば良いわ。不便でしょ」

 レテはメリゴーザケーキを頬張る。笑みがこぼれる。

「デフォーは信じています、レテ様」

 店主がレテに伝える。

「ラトゥールの末裔、涙の奇跡、男の失踪。レテ様は予想していたのか?言ってみろ、分からなかっただろ!」

 デフォーが怒鳴る。

「ウルサイな、デフォー。手紙は受け取ったから、あなたに利用価値はない。分かるでしょ、メリゴーザケーキはなくなったらどうなるのかな」

 レテは笑みを浮かべる。

「私も同じ不安を抱えていました。お前に勝算はあるのか?切り札はないハズだ」

 店主は静かにメリゴーザケーキを切り分ける。

「ネアスに言いつけるだけだ。お前の彼女は先輩を蔑ろにするヒドイ女だ。俺の経験が告げている。お前は不幸になる。他の女性と付き合うべきだ。ユーフに頼んで紹介してやるって言えばホイホイ付いてくるさ。お前も同じ目に合うのさ。これは効くぜ」

 デフォーは八つの点を数えている。

「う~ん、ホントかな。私は彼には甘いみたい。ネアスが言っていたわ。良く分からないけど、デフォー、あなたにはキビシイかもね」

 レテは答える。

「まだあるだろ、デフォー。必殺技を見せろ」

 店主は悪乗りする。

「ああ、良いだろう。見せてやるぜ!俺の女になれ、お前を幸せにする。他の男じゃ経験させてくれない事を俺は出来る。なぜなら!」

 デフォーは店主を見る。

「俺たちは冒険者だ!」

 二人は笑い出す。

「イミフメイ、ファレドは何で来ないの?」

 レテはメリゴーザケーキを食べる。

「申し訳ありません、レテ様。不覚にも若い頃を思い出してしまいました。彼女もステキな女性でした。レテ様には敵いません、もちろんですとも」

 店主はメリゴーザケーキを切り分ける。

「年寄りの昔話は聞き飽きた。俺は彼女を忘れた。いつまでも振られた女を覚えていないさ、調子に乗るなよ、小娘」

 デフォーは地図の観察に戻る。

「デフォー、これが最後よ。私は騎士、あなたたちとは違うわ。女遊びが激しい男はキライ、バカにされるのもイヤ。彼があなたのホントの姿を知ったら驚くわ。自分の彼女を口説く、変なオイボレ。私は彼と一緒にいるって決めた。彼に選択肢はない、私は追いかけて、捕まえて、抱きしめてもらうわ」

 レテは二人に伝える。

「メリゴーザケーキをどうぞ。騎士の誓い、それは破れない。冒険者も知っています」

 店主は深々と頭を下げる。

「アイツは知らないだろ。女騎士に手を出すな、冒険者が王都で教えてもらう事だ。レテ様は上手くやったな」

 デフォーは怯まない。

「ヒドイ話よね。昔の冒険者はイヤな人ばっかりね。若者はそんな話に従わないわ。恋愛は自由、好きになったら関係ないかな」

 レテはメリゴーザケーキを口に運ぶ。ケーキは少なくなる。

「別れる人々は多いと聞きます。考え方の違いが徐々に溝を作る。騎士と冒険者に限った話しではありません」

 店主は答える。

「ラトゥールの末裔、ヤツは不幸になるよ」

 デフォーはつぶやく。

「彼には幸運の女神様がいる。シルちゃん、ウィルくん、ラトゥール、魔王の魂さんもいるわ。意見の相違ね。デフォー、点の位置を王都に合わせなさい」

 レテはデフォーに伝える。デフォーはレテの指示通りに地図を動かす。二つの点が王都、ギンドラ、ストーンマキガンに重なる。残りの一つずつの点は街には重ならない。

「正解ですね。お見事です」

 店主は拍手する。

「まぐれだ。引っ掛けの可能性もある。線は意味をなさずにウニョウニョもアーライト河に噛み合わない」

 デフォーは地図を観察する。

「太るからケーキはこれでオシマイ、オシマイ。残りはファレドの分。デフォーは食べちゃダメ、さ、帰ろっと」

 レテは立ち上がる。

「待て、レテ様。地図の謎は解けていない。ラトゥール様の導きだぞ」

 デフォーは焦る。

「時間切れ、あっという間におばあさんになっちゃうかな。若さを味わい尽くさないと損をするわ。ありがと、デフォー」

 レテは部屋を見渡す。異常はない。

「残念ですが仕方ありません。若い女性を引き止めるすべはありません」

 店主はレテを扉に案内しようとする。

「待て、地図に写すから少し時間をくれ。お前も手伝え!」

 デフォーは店主に告げるとペンを取り出す。地図がズレる。

「どこまでイケる!」

 店主はデフォーの元に向かい、地図を抑える。

「若さに釣り合うモノが欲しいかな、デフォー?」

 レテはデフォーに問いかける。

「ない!」

 デフォーは即答する。

「考えなさい。ラトゥール、帰りましょう」

 レテはラトゥールに呼びかける。ウニョウニョは消え始める。

「デフォー、足掻け。お前の唯一の長所だ!」

 店主がデフォーを励ます。

「大いなる知識、類まれなる経験、豊かな思い出。どれも若いヤツには分からんな、お前らの未来は暗い。俺の生まれた時代は最高だった。若さでは味わえない、すまんな」

 デフォーが答える。

「ウソはダメ、未来は分からない。それに暗闇は彼が切り裂くわ」


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