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乙女

 レテが心を落ち着けると光の風の糸は消える。彼女はニャン族の神官の乙女に手を伸ばす。乙女はレテの手とファレドの手を握る。

「行きましょう、ニャンちゃん!ラトゥールの時間はオシマイ、オシマイ。次は夢見るオイボレの時間かな」

 レテはため息をつく。

「デフォーさんは良い人ですよ、レテ様。ネアス様とは違う良さがあります。じっくりとお話しをすれば分かるハズです」

 ファレドは答える。

「私もデフォーさんを知っております。親切なおじいさんでニャン族にも丁寧な対応をしてくれます。ネアス様の手紙を大切にしていると思います。外の扉に案内します」

 ニャン族の神官の乙女は静かに二人の手を引いていく。

「頼むにゃんにゃ~ん。ニャンに会うにゃん。始まりの時にゃん」

 春族長が別れと告げると二人に扉が開く音が聞こえる。レテたちは扉の先に進むとすぐに扉の閉まる音が聞こえる。

「目隠しをお取りください、レテ様、ファレド様」

 ニャン族の神官の乙女が手を離す。

「目が見えないまま外に放り出されたら、どうしよっかって思っていたわ。悪い男に待ち伏せされていたら大変、大変」

 レテが目隠しを取ると入った部屋と同じように見える。

「上に昇ったと思いましたが、いつの間にか入りぐりに戻っていましたか。前回は別の部屋だったので油断していました」

 ファレドは驚く。

「ニャン族にも秘密はあります。人も同様のハズです。ネアス様の存在を今まで隠し、ガーラント様の力も目立たないようにしていました。人は恐ろしく、見くびってはイケナイ。ニャンのみが掟に従っていました」

 ニャン族の神官の乙女が二人に告げる。彼女はうつくしい白と黒の毛を持ち、簡素な神官の服が似合っている。

「二人の事を知っていた人なんているのかな。私は見当がつかないわ」

 レテは目をパチパチして明るさに慣れようとする。

「たくさんの人々が二人の力を知っていたと言うでしょう。ウソですがね、見極めは出来ない。真相は風の中へ」

 ファレドは目を抑えている。

「王族は知っていたハズです。神官たちも知っていなければ、おかしな話しです。ニャン族はお二人の噂を聞いた事がありません。人の神官は秘密を守れるのですね」

 ニャン族の神官の乙女がカバンからニャン族特製小ドリンクを取り出し、二人に手渡す。

「ありがと、ニャンちゃん。お姉さん神官はネアスの事を知っていた。彼女は精霊の剣を彼に運ぶと約束したわ。お姉さん神官は偉くて、きれいで、狡賢い女かもね。裏で私たちを操ってほくそ笑んでいる。小娘がジタバタあがいている。オモシロイ光景、彼は私のモノなのにバカな子ってね」

 レテはドリンクを一気に飲む。

「神官と決めつけてはイケナイかもしれません。その女は盗賊あるいは詐欺師。しかし、彼女はネアス様の味方。やはり神官でしょうか?」

 ファレドもドリンクを飲む。

「ニャンに聞きました。彼女はネアス様の初恋の女性……」

 ニャン族の神官の乙女が話を続けようとするとレテが口を挟む。

「ニャンの意見、彼は一言もそんな言葉を言っていないわ。お姉さん神官、年頃の男の子は年上の女性に憧れるわ。誰の責任でもないかな」

 レテはファレドを見つめる。

「それが恋か欲望かは誰にも分かりません。私の初恋の男性は、いいえ、皆興味はないでしょう。恋は終わります」

 ファレドが答える。

「聞かせてください。ニャン族も恋は好きです」

 ニャン族の神官の乙女はファレドに伝える。

「気になる、気になる。私の初恋の人は今度教えるわ、絶対、確実、ホントよ」

 レテはファレドを見つめる。

「私が冒険者に成り立ての頃の話です。一人の冒険者が一緒に旅をしないかと誘ってくれました。彼らはすでに三人で多くの冒険をこなし、新人にも世界の広さを知ってもらいたいと願っていると私に言いました」

 ファレドが話を始める。

「ニャン族も始めの春夏秋冬の間は先輩の指導を受けながら行商をします」

 ニャンちゃんはうなずく。

「騎士は三人一組、先輩も入れて四人が基本かな。任務によってマチマチだけどね」

 レテは二人に伝える。

「私は実力を試したいので一人で冒険をすると彼に伝えました。彼は笑顔で分かったと言い、良かったら夕食を四人で取らないかと提案しました。私は考えておくと言って、その場を去りました」

 ファレドは話を続ける。

「私は彼の笑顔に惹かれて、ギンドラの街の飲み屋を訪れました。そこで彼は二人の男女と楽しそうにお酒を飲んでいました。私は気が引けて、立ち去ろうとすると彼が来いよと声をかけてくれました」

 ファレドは二人を見る。

「良い方のようですね。初恋の相手にピッタリです」

 ニャンちゃんは微笑む。

「お姉さん神官と違ってまともな冒険者のようね」

 レテは答える。

「私が三人のテーブルに近づくと彼は女性に目配せをしました。彼女は私に言いました。また、あなたの勝ちね。新人はどうして簡単にあなたにだまされるの?今回は私の勝ちだと思ったのに。彼女は銀ララリをテーブルに置きました」

 ファレドは話を続ける。

「もう一人の男は黙って銀ララリとテーブルに置きました。彼は私にありがとよ、冒険者なんてこんなモノさ。俺とコイツも今だけの仲さ、昨日は別の男と遊んでいたんだ。俺っていうカッコいい男を彼氏にしながらな。彼は笑顔を見せました」

 ファレドは二人を見る。

「男の好みに文句は言わないけど、ファレドは幸せになれないかな。遊び慣れている男も悪くはないと思うけど……」

 レテは口ごもる。

「ニャン族は掟があります。夜遊びの掟は守られています」

 ニャンちゃんは顔が赤くなる。

「男との遊び方を教えてくれませんか?私は彼らに小声で伝えました。私は男と仲良くする技を磨きたい。彼は言いました。帰れ、遊びは楽しむもんだ。お前の考えは気に入らない。彼の目は炎のように燃えていました。私は怯み、後退りしました」

 ファレドは話を続ける。

「黙っていた男が口を開きました。良いじゃないか、教えてやれよ。賭けは俺たちの勝ちだ。お前はナンパに失敗した。女性もケラケラ笑いながら銀ララリを手に取りました。怒らない、怒らない。人の目的はそれぞれ違うわ。彼女は彼に言いました」

 ファレドは二人を見つめる。

「冒険者らしくて良いんじゃない、私の好みじゃないかな。テーブルを蹴っ飛ばして、お酒を顔にぶっかけたくなるわ」

 レテは答える。

「引っ掻いてやりたいです」

 ニャンちゃんは爪を立てる。

「彼はお二人の事を気に入ったと思います。私は彼の燃える瞳に心を奪われましたが、彼は私に興味を持ちませんでした。気が向いたら遊びを教えてやるが今日は賭けに負けたから女と遊んでくる。まともな女、お前たちとは違う愛想の良い女だ。彼は去っていきましたが私は初めて心が燃え上がりました」

 ファレドは二人を見つめる。

「ファレドは激しい恋をしたんだ。私と彼はどんな恋をするのかな、とりあえずすれ違っているわ。ネアスの激しさ!、想像できないかな」

 レテは微笑む。

「ニャンには私の話はしないでください、レテ様、ファレド様。私は彼が話しかけるのを待っています。ニャンは役目を果たします」

 ニャンちゃんは二人に伝える。レテとファレドはうなずく。

「続きはレテ様の初恋とにゃんちゃんとニャンの馴れ初めを聞いた後に話しましょう。興味があればの話です」

 ファレドは扉を見る。

「デフォーを見つけないとね。オイボレの朝は早いけど動きは遅いから街にいるハズ。何をしようか迷っている間に年を取った冒険者。どこにでもいる人、何の変哲もない男かな」

 レテも扉を見つめる。

「デフォーさんはレテ様に嫌がらせでもしたのですか?私が手紙を受け取ってきます。性格の不一致は仕方がありません」

 ファレドは不安になる。

「デフォー!私は神官なので噂話は苦手です。お気をつけてください、ラトゥール様はニャン族の心に波紋を呼び起こしました。人も同様でしょう」

 ニャンちゃんは扉を開ける。風が部屋に吹き込む。レテたちは気持ち良い風を感じるが、同時に不快な声も聞こえてくる。ニャンちゃんは耳を手で塞ぐ。

「分かってんだよ。レテ様を出しやがれ、中に入れろって何度も言ってんだろ、兄ちゃん。レテ様に怒られるのはこっちなんだよ!」

 聞き慣れた声が叫んでいる。

「ダメにゃん、キマリにゃん」

 ニャンくんの声だ。

「レテ様、私が対処します。部屋の中でお待ち下さい」

 ファレドはすぐさま扉の外に出ていく。バタンと扉が閉まる。

「ファレド様、二階です。お気をつけてください」

 ニャンちゃんはホッとする。

「私に用事があるのにファレドが出ていったらややこしくなるわ。私も行こっと」

 レテは扉に近づく。

「知り合いですか?レテ様も大変ですね。私はついていけません」

 ニャンちゃんは申し訳無さそうにレテに伝える。

「どこかで聞いた声、でも、知っている人に荒々しいヤツがいたかな」


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