ニャンはニャン
レテはドリンクを飲んで一息つく。ファレドは岩焼きそばを食べ終える。二人にはニャン族の動きは分からない。
「ニャンに直接聞いた方が早いかな。もしかしたらネアスに打ち明けているかもね、男の子同士の秘密のお話し。彼女が出来て戸惑う彼、故郷の友人に相談を持ちかけた。解答は女遊び、真相に迫ってきたかな」
レテは予測する。
「ニャンは真面目です。ネアス様には別のアドバイスをしたハズです。族長の使命とラトゥールの末裔の関連性、二人はその謎を追う旅に出たのだと思います」
ニャン族の神官の乙女が反論する。
「レテ様に黙って出発した理由が分からなくなります。ネアス様はレテ様が好きです。彼の目を見れば一目瞭然です」
ファレドは答える。
「ファレド!照れちゃうかな!」
レテの顔が赤くなる。
「ニャンはネアス様に危害はくわえないにゃん。それだけは信じて欲しいにゃん、ニャン族はネアス様の味方にゃん。そろそろ、ネアス様を追いかけるにゃん。ニャンは弱いから心配にゃんにゃ~ん」
春族長がレテにお願いする。
「ニャン族も災厄に立ち向かう準備をしているのですか?いつごろとかは把握していますか?我々は知りません」
ファレドはニャン族に尋ねる。
「災厄は近い。ニャンはニャンに戻る。ニャンはニャンを導き、ニャンはニャンを助ける。ニャンはニャンを成し遂げる。ニャンはニャンになる」
ニャン族の神官の乙女は祈りを唱える。
「帰らなきゃ、ファレド。次はデフォーを見つけて彼の手紙をもらう。ギンドラで彼を捕まえる。時間があったら冒険者ギルドで長老に会ってみたいかな。どっちでも良いけどね」
レテは危険を感じる。
「名案です。大変お世話になりました。出口はあちらでしょうか、忙しい、忙しい」
ファレドもレテに同意する。
「ニャンはニャンになるにゃん。ニャン族の謎にゃん。ニャンはニャンだにゃん。ニャン、案内するにゃんにゃ~ん」
春族長はニャン族の神官の乙女に命じる。
「こちらです」
ニャン族の神官の乙女は二人の手を取る。
「さよならにゃん、今度はネアス様と一緒に来るにゃん。扉の事は秘密にゃん」
ニャン族の声が聞こえる。
「ありがと、ニャン。風の加護を!空高く風を運びますように!」
レテは祈りを込める。光の風の糸が部屋全体に広がる。糸が扉を開けていく。バタン、バタン。扉が風に吹かれて動く。ニャン族は身をかがめて様子を伺っている。
「ラトゥール、どうしたの?オモシロイモノがあるの?気になる、気になる」
レテは精神を集中させる。光の風の糸がレテの周りからさらに流れていく。
「ラトゥール様のお力。ニャンの役目をお教えください」
ニャン族の神官の乙女は精神を集中させる。
「お気をつけてください」
ファレドは警戒する。光の風の糸はニャン族の神官の乙女のカバンに忍び寄る。糸は一つの鈴を取り出し、鳴らす。チリンチリン、チリンチリン
「にゃ~ん、にゃ~ん、にゃ~ん、にゃ~ん」
部屋中にいるニャン族が大合唱を始める。チリンチリン、チリンチリン。
「良い音色ね、少しウルサイかな」
レテは鈴の音に集中する。
「ニャン族は神官以外は鈴に惑わされます。お許しください、この鈴はニャンのために私が祈りを込めて作った鈴です」
ニャン族の神官の乙女は答える。光の風の糸は鈴の中に入り込んでいく。
「ニャン族の鈴には魔力がこもっていたのですね。自らを惑わす力を込める。人には分かりません。奪われたら大変です」
ファレドはコートをギュッとする。
「にゃ~ん、にゃ~ん。にゃ~ん、にゃ~ん」
ニャン族の大合唱は続く。
「人も恋をする。弱点となって、多くの戦士たちが窮地に陥ったわ。シャルロー様はエレスタン様のために命を縮めたわ。ニャン族の鈴は恋の証なの?」
レテはニャン族の神官の乙女に問いかける。
「伝承ですので事実かどうかは分かりません。昔はニャン族はけんかが好きでした。何かあるごとに殴り合いをして、白黒をつけていました。ある時、一人のニャン族の青年が恋をして、恋敵と命がけの決闘をしました」
ニャン族の神官の乙女が語り始める。
「現在のニャン族は荒っぽい事がキライなように見えます」
ファレドがつぶやく。
「二人は共に命を落とし、それを見ていたニャン族の青年が女性に結婚を申込み、彼女はそれを受け入れました。ニャン族の乙女は争いを見る事を望みませんでした。二人は式を挙げましたが先程のニャン族の青年の親友が新郎の命を奪いました」
ニャン族の神官の乙女は続ける。
「にゃんだか大変、大変。ニャンも怒ったらコワイのかな」
レテは想像する。チリンチリン。
「にゃ~ん、にゃ~ん。にゃ~ん、にゃ~ん」
ニャン族の合唱は悲しみを帯びる。
「ニャン族の青年の親友は乙女を裏切り者と罵った後に崖から飛び降りました。彼の亡骸は見つかりませんでした。彼には恋人がいて、彼女は嘆き悲しみました。命を奪われたニャン族の女性の弟が哀れに思い、彼女のそばに寄り添いました」
ニャン族の神官の乙女は話を止める。
「イヤな予感しかしません。ニャン族、いいえ、人も同じようなものか」
ファレドはつぶやく。
「ニャン族の乙女は弟と彼女を連れて風の神殿に逃げました。そこでは神官が三人を待ち受けていました。裏切り者は風の神殿には入れない。二人で決闘を行えとナイフを渡されました。争いの根を断つのが神官の役割です」
ニャン族の神官の乙女は話を再開する。
「え~と、乙女は新郎の命を奪われた。彼女は恋人の命が奪われたのかな、男の勝手でしょ。弟はどうするのよ、これはマズイわね」
レテは答える。
「その通りです。どちらが勝ったとしても弟は恨む。彼はどちらかの命を奪います。大切な者の命。争いの根は断たれます。奪うべきモノは失くなります」
ニャン族の神官の乙女は語る。チリンチリン。
「にゃ~ん、にゃ~ん、にゃ~ん、にゃ~ん」
ニャン族の合唱が小さくなる。
「終わりませんよ、次の標的は神官でしょう。所詮は物語です」
ファレドはつぶやく。
「ニャン族の乙女は彼女からナイフを奪い、二つのナイフを持って森の中に逃げていきました。取り残された弟は神官に告げました。私は右へ、彼女は左へと向います。姉は前に進みました。私たちが出会う事はないでしょう」
ニャン族の神官の乙女が語る。
「河とか山にぶつかったらどうするつもりだったのかな。何にも解決していないわ。命は残るけど、それならみんなで仲良くすれば良いかな」
レテはつぶやく。
「まだまだ続きますがどうされますか?」
ニャン族の神官の乙女が二人に尋ねる。
「疲れたにゃん、無理にゃん、今度にするにゃん」
ニャン族がお願いする。鈴の音が止まり、光の風の糸は消えていく。
「ニャン族の鈴には血なまぐさい伝承があるんですね。無闇に触らない方が良い」
ファレドは答える。
「ニャン族の鈴にイタズラしたモノには呪いが降りかかると言われています。この話の続き
に関係がありますが、今日はここまでにしましょう」
ニャン族の神官の乙女は鈴を見つめている。
「どんな呪い、味覚はダメ!」
レテと消えゆく光の風の糸はビクッとする。
「ニャン族は鈴を大切に扱いますにゃん。レテ様は心配する必要はないにゃんにゃ~ん」
春族長が答える。
「イタズラに引っかかりやすくなります。イタズラにはイタズラを、ニャンにはニャンを、ララリにはララリを」
ニャン族の神官の乙女が答える。
「にゃんだ」
レテはホッとする。光の風の糸は鈴を乙女のカバンに戻して消えていく。
「そろそろ戻りましょう、レテ様。デフォーさんも出かけていてもおかしくない時間です。ラトゥール様は何をされたのか?」
ファレドは気になる。
「どうしますか、春族長?」
ニャン族の神官の乙女は問いかける。
「ラトゥールのやった事が分かったからって意味はないわ。ニャン族の秘密にしておけば良いかな。ゴブちゃんを運んで行って王国は静かになったのかな、ラトゥールの狙いは全然分からない」
レテは答える。
「レテ様、ありがとうにゃん。この部屋では人は見ちゃいけないにゃん、聞いた事だけを知る事が出来るにゃん」
春族長が答える。
「難しい」
ファレドはつぶやく。
「簡単、簡単。気にしないのが一番、一番」




