手紙の手がかり
レテはニャン族の青年の指示通りにまっすぐ歩いていく。レテには彼の足音しか聞こえない。再び扉が開く音が聞こえる。
「あんまりもったいぶると期待が高まっちゃうかな。ドキドキが止まらなくなる、ニャン族の秘密の集まり、私はさらわれちゃうのかな」
レテはニャン族の青年に声をかける。
「違うにゃん。不謹慎な発言はダメにゃん。ネアス様には言っちゃダメにゃん。ニャン族はネアス様の味方にゃん」
ニャン族の青年は答える。
「目隠しをした時点でニャンくんの負けかな。彼氏のいる女の子にする事じゃないわ、ネアスはどう思うのかな。私も分からないわ」
レテは答える。
「ハメたにゃんか?ニャン族のニャンがだまされたにゃんか?ニャンはオワリにゃん」
ニャン族の青年の声が小さくなる。
「ふざけただけよ、ニャンくん。私にはシルちゃんとウィルくん、魔王の魂さん、ラトゥールがいるからダイジョブ、ダイジョブ」
レテは答える。
「レテ様だとしたらにゃん。レテ様にそっくりな女の子の騎士をさらったとレテ様からネアス様に伝わったら大変にゃん。憧れのニャンのマネはしたくなるにゃん」
ニャン族の青年が扉を開ける音が聞こえる。
「三枚、入口も数えたら四枚かな」
レテはつぶやき、まっすぐ進む。
「十三枚にゃん、気付かない間に騎士様は十枚の扉を通ったにゃん。ホントにゃん。このためにニャンはお出迎えをしているにゃん。帰りは十四枚数えられると良いにゃんね、これが最後にゃん」
ニャン族の青年が答える、扉の奥から話し声が聞こえる。
「シンジラレナイ。簡単にだまされちゃったわ。やっぱりニャン族はあなどれないかな、ニャンも隠し事をしているみたいだし……」
レテは声の方角に歩いていく。
「お止まりください。お手を取らせて頂きます。私は女性ですので心配しないでください。申し訳ありませんが目隠しはそのままでお願いします。ニャン族の商品は便利です」
ニャン族の乙女がレテに声をかける。
「まだ続くの?飽きてきたわ」
レテは手を差し出す。
「二階でファレドさんがお待ちです。ニャン族の伝統にお付き合い頂きありがとうございます。ニャン族はネアス様の味方です」
ニャン族の乙女はレテの手を取る。
「彼の恋人の私はどうなの?」
レテはニャン族の乙女に尋ねる。
「レテ様であればの話です。レテ様にはたくさんのお仲間がいます。ネアス様にはあまりいません。ニャン族はネアス様だけの味方です。もちろん、ネアス様の大事な方は敵ではありません。付いてきてもらえますか、騎士様?」
ニャン族の乙女はレテに問いかける。
「案内して、ニャンちゃん」
レテは答える。ニャン族の乙女は静かにレテの手を引き階段を昇っていく。彼女は斜めに曲がりながら進んでいると感じる。
「ネアスはニャン族のお菓子は食べ放題なの?彼にはどんな特権があるの?」
レテはニャン族の乙女に尋ねる。
「ネアス様のご要望であれば、用意致します。ララリは頂きません」
ニャン族の乙女はレテの手を引きながら答える。
「私は?」
レテは期待する。
「ネアス様に頂いてください。ご用意致します」
ニャン族の乙女は静かに答える。
「ダメなんだ。がっかりしちゃうかな、良いの?彼の恋人が落ち込んじゃうわ。ニャン族の損失になるわ。例外の条件を考えましょう、ニャンちゃん」
レテは諦めない。
「こちらです、扉の数の合計を言ってください」
ニャン族の乙女は扉を開ける。
「私はウソをつかない。十四枚と一枚。合計で十五枚、決まり、決まり」
レテは答える。
「不正解です。扉を五枚通りました。合計で二十枚です。初めて訪れた方で当てた方はいません。全ての扉の数は三十枚、最短では七枚。次回の参考にしてください」
ニャン族の乙女はレテの手を引く。
「賞品はあるの?やる気を出そうか迷うわ、目隠しは苦手かな。何を頼りに扉を数えたら良いのか検討がつかないわ。考える事はたくさん、たくさん」
レテはニャン族の乙女に従う。
「恋人への手紙は最も信頼出来る方に預けます。レテ様ならば誰に託すのでしょうか?友人、部下、上司。ライバルあるいは戦友」
ニャン族の乙女は問いかける。
「王都にいる親友は性格がイタズラ好きで変な子だからダメ、オモシロイ本を教えてくれる楽しい子だけど手紙は渡せない。どんな細工をされるか分からないし、私に恋人が出来たって知った瞬間に友情は崩壊しているハズ。修復するには幾重の時が必要かな」
レテが答える。
「ライバルが隠し持っている。可能性はありませんか?」
ニャン族の乙女が尋ねる。
「ラーナのこと?彼女はクロウと秘書官さんの間で揺れ動いているわ。大臣は当て馬かな、秘書官さんには不穏な考えが芽生えている」
レテは答える。
「ネアス様の親友、ライバルは誰でしょうか?」
ニャン族の乙女が問いかける。
「ニャンとガかな。どちらにも当てはまるわ。故郷に親友がいたら冒険者の女の助けは借りないハズ。ニャンちゃんは何か知っている?」
レテはニャン族の乙女に尋ねる。
「かわいらしい冒険者が道を外れそうになったネアス様を助けたそうです。その代わりに多額のララリを請求されたと他のニャン族に聞きました。旅の途中で立ち寄った村でニャン族特製三点セットを買えずに困っていたネアス様に理由を聞いたそうです」
ニャン族の乙女は答える。
「私は聞かない方が良かったかな、彼が話してくれるのを待つべきだったわ。新人は恥ずかしい失敗をたくさん経験するみたいね。私はきれいでやさしくてかわいいからなかったけど、これはラーナも同じかな。二人は大変、大変。ニャンちゃんのアドバイスが聞きたいわ、私はうっかり話しちゃうかも」
レテはニャン族の乙女に問いかける。
「だまされたララリは戻りません。だまされた心は癒やされません。だまされた人は再びだまされます。ニャン族の教えです」
ニャン族の乙女は答える。
「彼はだまされたのかな。最終的にはギンドラの街で冒険者になれたわ。彼は成功した。だまされてはいない。だまされたと考えてはイケナイ。冒険者の女はだましていない」
レテは自分に言い聞かせる。
「恋人が女にだまされたのはイヤですか、レテ様?」
ニャン族の乙女が問いかける。
「彼が気にするかな。私はきれいでやさしくてかわいい、反対に自分はほんのちょっとかわいい冒険者の女の子にやさしくしてもらっただけで油断してしまった。私に出会う前の事だけど彼には関係ないかな。彼は薄々王国できれいな女の子と知り合いになると感づいていたハズ、都会の女の子の方がきれいなのは誰もが認めること。きれいでかわいい子にだまされる前にほんのちょっとだけ、しかも、困っている時は特にかわいく見える女の子にだまされたのはきれいでやさしくてかわいい私には話せないかな」
レテは静かに答える。
「難しい問題です。ネアス様が自らレテ様にお話する事はなさそうですね。申し訳ありませんでした、レテ様」
ニャン族の乙女は謝罪する。
「構わないわ、どうせ無理やり彼にしゃべらせたかな。ニャンちゃんは何も悪い事はしていないわ。考える事が増えただけ、気にしない、気にしない」
レテはニャン族の乙女の手を握りしめる。
「お詫びにレテ様の考え事を一つ減らしたいと思います。よろしいでしょうか?」
ニャン族の乙女は立ち止まる。
「ニャン族特製三点セットの秘密、それとも扉の数!この先で待っているニャン族の首領の弱点かな。気持ち良くなる薬草は効き目バッチリなの?」
レテは興奮する。
「違います、レテ様。ネアス様の手紙の行方です。あくまでも私の予想にすぎませんが自信はあります。ニャン族は人々の心を知りたいと願っています」
ニャン族の乙女が答える。
「ネアスが手紙を渡す人物、大臣、デフォー、神官長かな。ウソをついていそうなのがドロス、クロウ、ガね。でも、私が会いたくない人ばっかり、キライじゃないわ。ホント、ホント。わざわざ訪ねには行きたくないかな」
レテは答える。
「ネアス様はギンドラの街でデフォーさんに助言を受けました。ニャンから伺いました。ネアス様はデフォーさんを尊敬しているようです。女冒険者にだまし取られたララリも少しだけ肩代わりしたと聞きました」
ニャン族の乙女はレテに伝える。
「オイボレも新人にはやさしいのかな、ううん、年寄りがタダで親切をしないわ。老い先短い男にはララリはとても大事かな。若い子を惹きつけるにはララリしかない。夢見る老人は何を知っているのかな」
レテのデフォーへの不信感が増す。
「ネアス様はレテ様のようには考えてはいないハズです。やさしくてシブい経験豊富な冒険者が自分を助けてくれて、今後に期待しているとニャンに伝えたそうです」
ニャン族の乙女は答える。
「見解の相違ね、今後の課題かな。でも、ニャンちゃんの言う通りね。手紙はデフォーが持っている可能性が高いわ。冒険者は不規則な生活だから朝早くまで起きていた。冷たい女の肌に触れる事を夢見すぎて眠れなかったのかな」
レテは反省する。
「信じていただきありがとうございます。ニャンの言った通りでレテ様はきれいでやさしくてかわいいお人です。ニャンはニャンのことです」
ニャン族の乙女は補足する。
「こちらこそ、ありがと、ニャンちゃん。あなたはニャンの幼なじみ、婚約者、お母さんではないわ。それともタダの友達かな」
レテはニャン族の乙女に尋ねる。
「私はニャン族の神官です。ニャンとは恋をしましたが私は神官の使命を選び、彼も納得してくれました。ネアス様が使命を果たした暁には私の運命も変わる事でしょう。続きは奥の春族長にお聞きください」
ニャン族の神官の乙女は話しを終えて、再び歩き始める。
「ニャンにも恋人がいたのね。私の読みもダメダメかな」




