ニャン族のお店の前で
レテはゆるゆる岩焼きモチを食べながら、のんびりとファレドが入っていった建物に歩いていく。岩焼きそばはシルフィーの風でプカプカと彼女の隣に付いていく。街の人々は空と食べ物に忙しいようだ。
「ラトゥールもいないのにみんなは何を眺めているのかな、今まで通りのきれいな空。今日は雲の多い日かな」
レテも空を見上げる。レテはパンゴンのお店を眺めながら、ニャン族のお店に歩いていく。お店の前にはニャン族の青年が立っている。彼女は駆け足でお店に向かう。
「おはよ、ニャン族のお兄さん。私もお店に入っても良いかな、今度ニャン族特製小ドリンク作りに挑戦しようと思っているんだ」
レテはニャン族の青年に声をかける。
「無駄な時間になるにゃん。ニャン族のドリンクは特殊な製法で作るにゃん。騎士にはマネ出来ないにゃん。帰ろにゃん」
ニャン族の青年が答える。
「作るだけだし構わないでしょ。ニャン族に迷惑はかけないわ。この店のなかで知り合いと待ち合わせをしているの。さっき入っていったわ、ファレド、ファレド」
レテはゆるゆる岩焼きモチを食べ終わる。
「ファレドの知り合いにゃんか。今はダメにゃん、ファレドにも目隠しをして中に入ってもらったにゃん。ニャン族は忙しいにゃん」
ニャン族の青年は答える。
「私にも目隠しすれば問題ないわ。ダイジョブ、ダイジョブ」
レテはニャン族の青年を見つめる。
「名前を教えるにゃん。レテ様は騎士にゃん、間違ってレテ様に目隠しをしたらニャンが怒られるにゃん。ヒトの顔は区別がつきにくいにゃん、女性騎士にゃん。アヤシイにゃん」
ニャン族の青年はレテを見つめる。
「私がレテなら顔パスかな」
レテはニャン族の青年に尋ねる。
「それはないハズにゃん。レテ様は重要な任務で街を離れているにゃん。ニャン族は知っているにゃん。それでもニャン族は用心するにゃん。商売の秘訣にゃん、当たり前だから教えてあげるにゃん」
ニャン族の青年は答える。
「私も知っている事があるわ。ニャン族はにゃんって言わないのにお兄さんはにゃんにゃんしている。コレは変かな?」
レテはニャン族の青年に尋ねる。
「にゃんにゃんとにゃんは違うにゃん。ダメにゃん!」
ニャン族の青年の声が大きくなる。お店の前を通り過ぎていく人々が振り返る。
「ごめん、お兄さん。でも、ニャン族はにゃんって言わない」
レテは畳み掛ける。
「騎士さん、ニャン族にも色々な事情があるにゃん。ニャンも頑張って練習したにゃん。だからにゃんを忘れていないにゃん」
ニャン族の青年は答える。
「あなたの名前を教えてくれるかな、それでオシマイ、オシマイ。どこかで時間を潰してファレドが出てくるのを待つわ」
レテはニャン族の青年に伝える。
「騎士さんはすごくアヤシイにゃん。ニャン族に詳しいにゃん、それにニャンを引っ掛けようとしているにゃん。なぜ、騎士さんはニャン族に興味があるのかにゃん。ニャン族はタダの行商人にゃん」
ニャン族の青年は名前を言わない。
「レテ・ウィンドコンチェルト。それが私の名前、ニャンは彼の友達よ」
レテはニャン族の青年に伝える。
「ウソにゃん、レテ様は街にいないにゃん。ニャン族を騙そうなんて愚かにゃん」
ニャン族の青年は動じない。
「そこの人に聞けば簡単、簡単」
レテは道を歩く人々を見つめる。
「こんにちは、お姉さん。私は誰でしょうか?」
レテは目が合った女性に声をかける。
「きれいなお嬢さん、こんにちは。レテ様に良く似ているけど私は遠くからしか見た事がないから分からないわ。ホンモノのレテ様だったらごめんなさい」
女性は足早に立ち去っていく。
「レテ様が街にいないことは街の人も知っているようだにゃん。ヒトもなかなかやるにゃん。ダメな人いるにゃん。大変にゃんね」
ニャン族の青年はレテを見下す。
「これでどうかな、シルちゃん、お願い!」
レテは精神を集中させる。プカプカと浮いていた岩焼きそばが上空へと飛んでいく。岩焼きそばは容器から飛び出し地上に降り注ぐ。レテとニャン族の青年に岩焼きそばがかかる前に容器が風に吹かれて地上に戻る。
「もう一吹き!」
レテはシルフィーにお願いする。容器が岩焼きそばの間を突切って、そばとたまごを回収する。何度も往復して全部容器に入ると再びレテの横でプカプカ浮かぶ。道を歩く人々から拍手が起こる。
「ラトゥールの末裔!」
人々が叫ぶ。
「偉大なるラトゥールの加護を!」
人々が集まってくる。
「やりすぎちゃったかな」
レテはニャン族の青年を見る。
「入るにゃん、入り口までなら問題ないにゃん」
ニャン族の青年がお店の扉を開ける。レテはドリンクを手に持ったまま、お店の中に入っていく。扉の中は小さい部屋ですぐに次の扉がある。
「目隠しは出来ないにゃん」
ニャン族の青年は扉を閉める。外の声はレテには聞こえなくなる。
「ダイジョブ、ダイジョブ。変な所を触らないなら問題ないわ」
レテは小部屋に置かれている茶色の布を手に取る。
「ダメにゃん。ネアス様にウソの告げ口をされたら大変にゃん。男の嫉妬はコワイにゃん。それにレテ様はネアス様を追いかけたハズにゃん」
ニャン族の青年の毛は逆だっている。
「ニャンが説明したらダイジョブ、ダイジョブ。二人は故郷からの友達、ネアスはニャンの事を信頼しているわ。彼の事もニャンから聞いたんでしょ?」
レテはニャン族の青年に問いかける。
「ニャンはニャンで良いのかにゃん?」
ニャン族の青年がレテに確認する。
「ニャンはニャンよ。ニャンはニャン以外いないかな、そうでしょ?」
レテは答える。
「ニャンもニャンにゃん。でも、ニャンを知っているって事はレテ様にゃんか?何で追いかけていないにゃん?」
ニャン族の青年はレテに尋ねる。
「手紙がないの、ニャンは知っている?ネアスが私にだけ残した手紙の行方。ニャンか聞いているかな?」
レテはニャン族の青年に問いかける。
「ニャンはしばらく留守にするから警戒を怠るなって言っていたそうだにゃん。ニャンはその場にいなかったから分からないにゃん」
ニャン族の青年の毛が元に戻る。
「中に入れてくれるかな、ニャンくん。ネアスに告げ口はしないわ。どうしたら信じてくれるかな。岩焼きそばもあげようか?」
レテの顔が引きつる。
「イラナイにゃん。ニャン族はララリを貯めているから自分で買うにゃん。ニャンは決められないにゃん。どうしても入りたい人は目隠しをする。それしか教えてもらっていないにゃん。レテ様かどうかも判断出来ないにゃん」
ニャン族の青年は困り果てる。
「分かったわ。規則には従うべき、例外には後で対処しましょう」
レテは茶色の布で目隠しをする。何も見えなくなる。
「扉を開けるにゃん、目隠しを取ったらヒドイ目に合うにゃん。ちゃんと伝えたにゃん。守らない人も多いにゃん。気を付けるにゃん」
ニャン族の青年は扉を開ける。彼の足音が聞こえる。
「ニャンくん、きれいでやさしくてかわいい私をエスコートしてね」
レテは手を伸ばす。反応はない。
「ダメにゃん。ネアス様に嫉妬されるにゃん、レテ様かもしれない人の手に触れた事実は変えられないにゃん。ウソはバレるにゃん」
奥からニャン族の青年の声が聞こえる。
「落とし穴があったら彼に仕返ししてもらうわ。私の直感ではない。でも、最近は信頼できないかな」
レテは手を引っ込める。
「ニャン族はゴブリンとは違うにゃん。落とし穴作りは苦手だから安心するにゃん。すぐに次の扉があるにゃん」
ニャン族の青年の声の後に扉を開く音が聞こえる。
「まっすぐよね」
レテは静かに歩き始める。
「そうにゃん。方向は合っているにゃん。寄り道はダメにゃん」
ニャン族の青年がレテに注意する。
「目隠しを取ったらどうなるの、ニャンくん?」
レテはゆっくりと歩きながら尋ねる。
「ニャン族は約束を破った者と商売をしないにゃん。騎士様なら不便じゃないと思うにゃん。最近の騎士様はニャン族の商品を買ってくれないにゃん。そのままにゃん」
ニャン族の青年は答える。
「高いからよ、ボッタクリはダメ。騎士はいつもララリで困っているわ」
レテは手を動かし壁を探ろうとする。
「ダメにゃん、言い忘れたにゃん。無闇に部屋のモノに触っちゃダメにゃん。ホントにごめんにゃん。ニャンのうっかりミスにゃん。危なかったにゃん」
ニャンが扉を開ける音がレテに聞こえる。
「扉の先には何があるのかにゃん」




