元気
レテは副騎士団長の発言に動揺する。ファレドはセオに小声で話をしている。副騎士団長はテーブルのニャン族特製小ドリンクを飲む。
「えっと、何も思いつかないかな」
レテはすぐにあきらめる。
「考えるんだ、レテ。俺もお前の部下の一人だ。気を使い、やる気を出させるんだ。有り余る元気を任務に押し込む。騎士団長の力が必要だ」
副騎士団長はレテを見る。彼女は目をそらす。
「レテ様にも分からない事がある。当たり前ですね、私は街の巡回に戻ります」
セオは二人に告げる。
「私もセオさんに付いていきます。男に会うつもりはありません。レテ様と大臣にお任せします。街に不審者が紛れ込んでいるかもしれません」
ファレドはレテに伝える。
「私も一緒に行くわ。彼の手紙を探さないとね、副騎士団長はお留守番。きっと大臣が遊びに来てくれるからダイジョブ、ダイジョブ。元気は大事に取っておいてね」
レテは副騎士団長に命じる。
「騎士団長に不満を言う副騎士団長はいない。大臣の相手は骨が折れる。俺の元気とやる気に期待してくれ。良い報告を待っていろ、レテ」
副騎士団長はテーブルのニャン族特製お菓子三点セットを袋にしまう。
「ありがとうございます、副騎士団長。無作法でしたね、お名前を伺ってもよろしいでしょうか。改めまして、私はファレド・ウィンドリールです」
ファレドはお辞儀をする。
「レテ様、スミマセン」
セオはとっさに謝る。レテは彼をニラミつける。
「俺は名前を封印した男です。この質問をしたのはあなたが初めてではありませんが、久しぶりの事です。なぜ人々は俺が副騎士団長と呼ばれている事に疑問を抱かないのでしょうか。レテの知り合いは彼女が事前に教えているのでしょう。レテは俺の話を何度も聞いているので飽きています。しかし、ガーおじさんもガガブタさんも尋ねてくれなかった。二人はレテに対して嫌悪感、いいえ、不思議な力が働いていたのでしょう。俺は過去に囚われた男です。今はこれで許してください」
副騎士団長がファレドに伝える。レテは黙っている。
「興味深い話です。いつか話を伺えたらと思います。私はレテ様のお手伝いをします。新たなる風を!」
ファレドはボロ宿から出ていく。
「キラワれた、キラワれた。ザマーミロ」
レテは小声でつぶやく。
「ネアスくんに告げ口するぞ、レテ。今までのようにはいかんぞ。お前には弱点が出来た。恋人は幸せをもたらすが不用意な発言が彼の耳に入ればお前もキラワれる、キラワれる。ザマーだ」
副騎士団長はほくそ笑む。
「ファレドさんに聞かれたら大変です。騎士団の評判が下がります」
セオは小声で二人に伝える。
「セオはファレドを狙っているの?」
レテはセオを攻撃する。
「レテ、甘いな。セオには恋人がいる。結婚式の日も決まっている。女性騎士の嫉妬を恐れてギリギリまで黙っている。賢明な判断だ」
副騎士団長は勝利の笑みを浮かべる。
「違います、副騎士団長。私は静かな生活を送りたいだけです。レテ様やアーシャ様とも交流はありませんでした。ですが、私も聖騎士です。二人とネアス様もご招待します」
セオはレテに告げる。
「当然かな、ガーおじはなし。モテない同盟は結婚式にイラナイ。ネアスは例外、これで一勝一敗ね。セオは私の応援団は卒業するんでしょ?」
レテはセオに問いかける。
「恋人もレテ様を応援しています。それが縁で付き合い、結婚する事が出来ました。ラトゥールの末裔はすばらしい!」
セオは大声を出す。
「どうしたんですか、セオさん?」
ファレドがボロ宿に戻ってくる。
「何でもありません、ファレドさん。セオが結婚する事をレテに報告していたのです。共通の趣味を持つモノは惹かれ合います」
副騎士団長が答える。
「かわいらしい女性でしたね、うらやましいです。私には縁がありませんが贈り物は準備しておきますので楽しみにしていてください」
ファレドがセオに伝える。
「アーシャと一緒に買い物に行こうかな。ラーナには黙っておくわ。主役はセオの恋人、ラーナが来たら視線は彼女に集まるかな。私の結婚式にも呼びたくないけど友達だから仕方がないわ。うつくしさはトゲになる、ホントね」
レテはうなずく。
「彼女はにぎやかな方が好きなので気になさらないでください。ラーナさんのドレス姿はうつくしいでしょうね」
セオが答える。
「セオ、それは結婚までの話だ。結婚式が恋人の終わりなのかは議論されているが危険な事はするべきではない」
副騎士団長が真剣な顔でセオに伝える。
「同感です。結婚は区切りです。どのタイミングで女性の心が変わるのかは私にも分かりません。経験があれば良かったのですが……」
ファレドが答える。
「うん、うん。賛成三でラーナは呼ばない。セオも甘い考えは捨てなさい、一番が一番なの。二番はダメ」
レテはセオに教える。
「しかし、副騎士団長は女性と別れた。ファレドさんには彼氏がいない。レテ様は絶賛彼氏に逃げられて捜索中。賛成三は価値がないように思います」
セオが反撃する。副騎士団長の顔が青くなる。
「私はきれいでやさしくてかわいいからネアスは戸惑っているだけ、彼はガーおじにだまされて、ギンドラの街に見学に行っただけよ。女性を知るとか変な事を言われた、モテないキモチは消すのじゃとかね。根拠もないし、ガーおじはララリで遊びたいだけかな。私は彼に逃げられたけど言葉通りに受け取っちゃダメ」
レテはさらにセオに教える。
「そうですよ、セオさん。彼氏がいれば恋人同士の関係に詳しいとは限りません。私は様々な恋愛を目撃してきました。もう一度言いますが、結婚は恋人同士の関係性を変えます。私は結婚するつもりはありませんが申し込まれた事はたくさんあります。全て断っただけです。人には過去があります」
ファレドもセオに教える。
「ありです、失礼します」
セオは圧倒されてボロ宿から飛び出していく。
「セオは良いヤツだ。俺が言えるのはそれだけだ」
副騎士団長は二人に伝える。
「知っているわ。興奮しやすいだけかな」
レテは答える。
「ですね、レテ様の言う通りです。ラトゥールの末裔にこだわりが強いのが良い所でもあり悪い所です」
ファレドは補足する。
「風の加護を!」
副騎士団長は祈りを込める。
「今日はギンドラの街に泊まるかもしれないわ。緊急事態は起きそうにないけど、もしもの時はシルちゃんにお願いするからダイジョブ、ダイジョブ」
レテはセオを追いかける。
「では、またお会いできる日を楽しみにしています」
ファレドは副騎士団長に挨拶する。
「俺が女性と別れた理由はあなたにはいつでも教えます。レテには聞かないでください。個人的な感情が判断を迷わせます」
副騎士団長はファレドに伝えると部屋の掃除を再開する。
レテがボロ宿の外に出るとセオの姿は見当たらない。彼女は遠くの方も見つめるが彼の姿はない。ファレドも外に出てくる。
「セオにも逃げられたみたい、今日は運が悪い日なのかな。セオは手紙の行方を知らないハズ。ウソはついてないよね」
レテはファレドに尋ねる。
「セオさんは器用な方ではありません。荒っぽくもなく、ステキな夫婦になるでしょうね。私はウソをつくので油断しないでください」
ファレドはレテに伝える。
「副騎士団長の事、ラーナの事、それともワタシかな」
レテはファレドに問いかける。
「いいえ、自分の事です。このような格好ですが、いつかはレテ様のようにステキな恋人を見つけて結婚したいと思っています。今ではありません、未来の話です」
ファレドは黒いコートに触れながら答える。
「私も結婚はまだまだ考えていないかな。彼は最初から私と結婚するって決めていた。不思議な人、なのにどこかに行っちゃった。これ見よがしに手紙を探せって感じでね」
レテは微笑む。
「私はニャンさんについて探ります。市場にはニャン族がいます。ギリギリの時間ですが行ってきます。後で報告しましょうか?」
ファレドはレテに尋ねる。
「大臣にも会いたくないし、風の神殿には行けない。騎士が混乱を巻き起こしちゃダメ、心当たりのある人はゼロ。後は彼の秘密の知り合いだけかな、私もずっと一緒にいた訳じゃないわ。デフォーはない、老いぼれに大事な手紙は渡さない」
レテは答える。
「では、一緒に行きましょう。運が良ければデフォーさんに出会えるかもしれません。可能性は潰しておくべきです」
ファレドはレテの返事を聞かずに道を駆け出していく。
「彼がいない幸運の女神は運が悪いみたいだけど、やるしかないわね」




