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マッスルニャンダドリンク

 レテはキモチ良くなるお菓子を食べる。ファレドも同じお菓子を口に運ぶ。釣られるように男性二人もキモチ良くなるお菓子を食べる。

「マッスルニャンダドリンクの方が新製品だからオイシイかな、あれは試作品だから友達のネアスがいる時にしか売らないのかな。そう思うと気になってくる」

 レテはニャン族特製小ドリンクを飲む。満足できない。

「俺もマッスルニャンダドリンクを飲みたくなってきたな。ネアスくんに頼んでみるか、俺の頼みは断れない」

 副騎士団長はニヤつく。セオはうなずく。

「ダメ、余計な事を言ったらシルちゃんにお願いして吹っ飛ばす。ホンキよ」

 レテの周囲に風が生じる。

「冗談だ。俺は何もしない。マッスルニャンダドリンクが欲しいだけだ。それくらい良いだろう、レテ」

 副騎士団長はレテに尋ねる。彼女はうなずく。

「ギンドラの街で三人を捕まえたらニャンに頼んでみるわ。必ず手に入れるから手出しは無用、出来るだけ速やかに副騎士団長に渡すようにお願いするわ」

 レテは副騎士団長に伝える。

「ネアス様用のニャン族特製ドリンク、ラトゥールの力に関係あるハズです。レテ様はマッスルニャンダドリンクに何か違和感を抱きませんでしたか?」

 ファレドはレテに尋ねる。

「私も街でニャンさんを見かけましたがマッスルニャンダドリンクらしきモノを売っているようではありませんでした。方向から予測すると市場に向かっていたと思います」

 セオがレテに伝える。

「ネアスに魔力の泉の水を汲んできて欲しいってニャンがお願いしたって聞いたわ。魔力の泉の水が材料の一つ、もう一つはニャン族がキモチ良くなる秘密の粉。他は不明、味はオイシかったし、違和感はなかったかな」

 レテはあの時の事を思い出す。

「レテ様、ネアス様、ガーおじ様がお飲みになったんですね。いつの話ですか?申し訳ありませんが気になるもので……」

 ファレドは躊躇する。

「構わないわ、ファレド。クレーターに行った次の日。ネアスとガーおじに出会った日の次、ラトゥールが髪飾りにくっついた前の日かな」

 レテは答える。

「俺は気が付かない所にも目が行き届くとはファレドさんと俺は相性が良いかもしれない。マッスルニャンダドリンクを飲めばラトゥールの末裔になれる。俺もなる」

 副騎士団長は決意する。

「そのようなからくりがあったのですね。ネアス様はラトゥールの末裔ですがレテ様には敵わない。安心しました」

 セオは答える。

「セオはじっくりと考えてから発言した方が良いかな、ファレドはそういう意味で言った訳じゃないでしょ?」

 レテはファレドに尋ねる。

「お二人がラトゥールの末裔である事は間違いありません。私がマッスルニャンダドリンクを飲んだ所でラトゥール様を甦らせる事は出来ないでしょう。きっかけ、あるいはほんの少しだけ事態を早めた」

 ファレドが意見を述べる。

「難しくなってきたな、俺は残りの部屋を掃除する。セオ、お前はラトゥールの末裔の専門家だろ。後で教えてくれ」

 副騎士団長は別の部屋に消えていく。

「私と彼の違いは何かな、セオ?」

 レテはセオに問いかける。

「ネアス様は数日でラトゥール様を目覚めさせた。レテ様は幼い頃から精霊使いの訓練をしてきましたが……」

 セオは口ごもる。

「涙の奇跡にはレテ様は関与していない。事実でしょうか?」

 ファレドは躊躇わない。

「そうよ、私はガーおじの悪口を言っただけ。ガーおじの涙はタダの涙、力を秘めているハズがない。意味のないこと、彼は無駄な事に頭を悩ませている。私は彼を信じなかった」

 レテは答える。

「レテ様、考えすぎです。今回はたまたま上手くいっただけかもしれません。ガーおじさんは記憶喪失、誰がおじさんの涙に期待をするでしょうか?ネアス様は特別のようです」

 セオはうなずく。

「ラトゥールの末裔。ラトゥールに連なるモノ、大鳥の血を引き継いだモノ。謎の存在、鳥と人は違う。我々には翼はありません」

 ファレドはレテに伝える。

「なぜ、私がラトゥールの末裔だって思ったの、セオ?」

 レテはセオに尋ねる。

「レテ様が空に飛んでいく姿を見ていて、私の故郷に伝わる伝承を思い出しました。ラトゥールの末裔。村長の家にその言葉だけが伝わっていました」

 セオが答える。

「貴族の話を聞いたのではなかったのですか?私は以前貴族から教えてもらいました。ラトゥールの末裔は存在する。それ以外は真実ではない」

 ファレドが答える。

「貴族も研究はしたって大臣の秘書官さんに聞いたわ。何も分からないから止めたみたい、騎士には伝承はないかな」

 レテは答える。

「聖騎士になった騎士はいない。貴族で優れた者が聖騎士となる。騎士の伝説です。聖騎士は騎士が目指すモノではない」

 セオはレテを見つめる。

「名前を捨ててまで聖騎士になりたい人のキモチが分からないかな、私がセオを聖騎士にしてあげるわ。あなたにも資格がある。私が考えた条件だけどね」

 レテは立ち上がりゴブジンセイバーを抜く。ファレドは剣を観察している。

「レテ様、急にどうされたんですか?」

 セオが焦る。

「最後に貴族が聖騎士になったのはずいぶんと前だったかな。誰もなれない聖騎士は時代遅れ、災厄は近いみたいだしセオも聖騎士になりなさい。騎士団長の命令よ、その代わりにみんなには秘密。隠された聖騎士団かな」

 レテはセオを見つめる。

「約束ですよ、レテ様。私が聖騎士を名乗るなんて恐れ多い。最後まで秘密です」

 セオは剣を抜く。

「私は聖騎士には相応しくない、そう捉えてもよろしいでしょうか?」

 ファレドがレテに問いかける。

「私が勝手に作った条件だから決めるのは私。私はファレドを聖騎士に任命する事は出来ないわ。だってファレドとはケンカして仲直りしたばっかりだから、もうちょっと時間が欲しいかな。無理矢理はダメ」

 レテは答える。

「ファレドさんは私が保証します。出会いが悪かっただけです。ナンパはコワイです」

 セオは答える。

「それを蒸し返すのはやめましょう、セオさん。ナンパは自由です」

 ファレドは反対する。

「ナンパは難しいわ、結論は出ないかな」

 レテは微笑む。

「セオ・ウィンドグレイ、レテ・ウィンドコンチェルトが聖騎士の名を与える。その剣を私に示しなさい。別の場所にしようか、セオ。ごめんね」

 レテはボロ宿だと思い出す。

「騎士は貴族ではありません。この宿は私に相応しい場所です。レテ様のお気持ちに感謝します。私は感動しています」

 セオはゴブジンセイバーに自らの剣を重ねる。

「私はレテ様に従います。聖騎士の名には相応しくありませんが、この剣はレテ様に捧げます。ギルドにも王族、貴族の命令には従えません」

 ファレドは剣を抜く。

「仕方ないわね、ファレドは見習い聖騎士。どうすれば見習いが取れるかなんて考えてもないわ。それでも良いの?ファレドならホンモノの聖騎士も目指せるわ」

 レテはファレドに問いかける。

「ファレドさんが見習いで私が聖騎士ですか?剣の腕は関係ないようですが緊張します。私も見習いから始めるべきか?」

 セオは迷いを見せる。

「ファレド・ウィンドリール。私は役に立ちます」

 ファレドは剣を重ねる。

「他の団員は自分で見つけてね。規則はこれだけ、後で増えても文句はなし。ファレド・ウィンドリール。レテ・ウィンドコンチェルトが見習い聖騎士の名を与える。その剣は示された」

 レテは微笑む。

「俺は聖騎士ではないが彼女たちを知る男だ。ドーミも聖騎士にしてやれよ、レテ。仲間ハズレはダメだ。集まりはないんだろ?」

 様子を伺っていた副騎士団長が三人に声をかける。彼女たちは剣を収める。

「ドーミは孤高の剣士を目指しているハズ、遊びの聖騎士には興味がないかな。ホンモノの聖騎士になりたいハズよ」

 レテは答える。

「孤独は寂しいモノです。ドーミさんですか、彼も聖騎士になるべきです。私は見習いですので意見だけ申し上げます」

 ファレドは笑みを浮かべる。

「ドーミさんのモテる姿にはいつも惚れ惚れします。騎士団本部に用事がある時はドーミさんに飲み屋に連れて行ってもらっています。女性は連れていけないのが残念ですが私もモテる気分を味わえます。今日はお眠りの日ですね」

 セオは副騎士団長を見る。

「安心しろ、今日の夜まで起きる事はない。断言できる。ドーミは起きない、三日連続寝ないでこの時間に起きるハズがない。落ち着いたらガイを誘って王都の飲み屋に行くか?生まれ変わった俺のナンパを披露してやるぜ!」

 副騎士団長はやる気だ。

「どうしたの、副騎士団長?急に元気いっぱいになって、何かあったの?」


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