早朝の出来事
レテは特製ギンパラサンドをじっくりと味わいながら考えを巡らせる。アーシャは食べ終えたので手をクルクル動かしている。副騎士団長はほんの少ししか食べていない。ルキンは最後の一口を口に放り込む。ガガブタは半分残っている。
「ガガブタさんがガだとしたら記憶が戻るのが怖くなったのかな。ギンドラの街で借ララリをしているかも、今は記憶がないって押し通せるけど戻ったら顔に出ちゃうかな。ガならって話だけどね」
レテは答える。
「勝負に熱くなるとどうしてもな、男の習性だ。ガーおじさんも例外ではないだろうな。ネアスくんの目的は街で遊ぶことか、俺も若い頃はギンドラの街に憧れたな」
副騎士団長は思いにふける。
「レテ様、街の様子を探ってきます。食事の後は運動しないと体が鈍ります。いってきます、ガガブタさんもお家でゆっくりしてください」
アーシャは安宿を飛び出していく。
「いってらっしゃい、アーシャ。伝言は副騎士団長にね」
レテはアーシャに伝える。
「俺も仕事に向かいます。ついでにネアスさんの噂も聞いてきます。手がかりがないようでしたらぜひ会いに来てください」
ルキンも外に出ていく。
「がんばってね、ルキン。ネアスは有名人になれたのかな、変な組織に絡まれるだけじゃかわいそ。ステキな噂があると良いかな」
レテがルキンに伝える。彼は手を振って答える。
「ワシも休憩するのじゃ。今日は日の出前に無理やり起こされたから眠いのじゃ、昨日も朝まで起きていたからおじさんは限界じゃ」
ガガブタは奥の部屋を見つめる。
「ガガブタさん、問題を先延ばしするのはオススメしません。隠れ場所を教えてくださるまで起きていてください。街の安全に関わる事です」
副騎士団長はガガブタの肩を抑える。
「何じゃ、騎士が脅しを使うのか?ワシはガーおじじゃ!」
ガガブタは焦る。
「手荒な事はしないわ。お話を聞かせてほしいだけかな、起こされたんじゃなくて、物音で起きたんでしょ。それで聞き耳を立てた」
レテは続ける。
「私たちは騎士です。貴族とは違いますので無礼な扱いはしません。騎士団長の質問に答えなさい」
副騎士団長は肩から手を離さない。
「ワシが起きるとネアス殿は旅の支度を終えていたのじゃ。ワシは言われるままに着替えて、ララリの入った袋を持ってネアス殿の後を追って礼拝堂に向かったのじゃ。そこにはニャン殿とマリー殿がいたのじゃ」
ガガブタは質問に答える。
「まあ、良いわ。二人は何を話していたの、ガガブタさん?マリーはどうして風の神殿にいたの?盗み聞きしていたんでしょ?」
レテは質問する。
「知らないのじゃ。ネアス殿は祭壇に手紙を置いて、ワシに言ったのじゃ。レテのために手紙を書くから少しだけ待っていて欲しい。マリーさんの特製サンドで腹ごしらえをしてくれと言われたのじゃ。ワシは行くとは一言も言っていないのじゃ」
ガガブタが答える。
「ネアスも強引な所があるのね、それはガの話、ガガブタさんの話。最後の所?」
レテはガガブタに確認する。
「ガガブタさんがネアスくんに誘われるハズがないだろ、イヤ、これだけ似ているんだ。隙を見て、入れ替わる事は可能だな、バレる危険と近くでネアスくんの様子を見る。ララリを稼ぐには後者が必要だ」
副騎士団長は考える。
「でしょ、ガガブタさんがややこしく話をするのがイケナイんだけど盗み聞きだけじゃ、ううん、続けてガガブタさん」
レテはガガブタを促す。
「ワシはお腹が減っていたので神殿の人々を起こさないように静かに特製サンドを食べたのじゃ。ニャン殿は薬草の整理、マリー殿は音を立てずに武術の型の訓練をしていたのじゃ。ネアス殿は唸っていたのじゃ」
ガガブタが答える。
「恋人への初めての手紙だ。困って当然だな、俺も彼女に手紙を書いたな。明日は休みだから食事に行こう、キミが行きたいと言っていたあそこだ。しかし、別の店に彼女は行きたかったと後で言われたな」
副騎士団長はガガブタの肩から手を離さない。
「ギンドラの街に遊びに行くとは手紙には書けないだろうし、彼が悩むキモチは分かるけど解決できない問題かな。私と付き合う時点で無理よ、何を考えていたのかな」
レテは疑問を口に出す。
「ワシはヒマになったから図書室に行こうとしたらマリー殿に捕まったのじゃ。彼女は何も言わずにワシを無理やり座らせたのじゃ。仕方ないので目をつむり、時間が経つのを待ったのじゃ」
ガガブタは答える。
「ガガブタさん、ウソはイケませんよ。狭い場所に長時間隠れる能力を持つあなたがヒマを感じる事はない。マリーさんに捕まったのはガーおじさんです。これからはあなたの聞いた事を話してください」
副騎士団長はガガブタの肩を揉む。
「礼拝堂の床の下に空間があるのかな、地下水路との間に狭い隠れ場所がある。おフロの下には罠があるからダイジョブだけど、神官長には伝えておかないとね。三岩人にも協力を仰ごうかな」
レテはガガブタを見つめる。
「ネアス殿は手紙を書き終え、ワシは目覚めたのじゃ。ニャン殿とマリー殿は焦っているようじゃった。ワシたちはすぐさま神殿の外に出て、街から抜け出したのじゃ」
ガガブタは話を続ける。
「ガガブタさん、俺にもガマンの限界はあります。あなたは大事な所をはぐらかしている。ネアスくんの手紙はどこですか、あなたたちはどこに向かうつもりだったのですか?ギンドラの街は男を惹きつける、王国民は知っています。真実を教えてください」
副騎士団長はガガブタを説得する。
「手紙の行方は教えたくない。旅の目的地は男の絆なの?私には分からないかな、隠れ場所はララリを稼ぐ手段だから仕方がない」
レテは考える。
「街道を歩き始めるとネアス殿がワシに告げたのじゃ。何も言わずに付いてきてくれてありがとう。目的地に到着したら全部話すから今は急ごう。ニャン殿とマリー殿はうなずいて、先に森の中に入っていったのじゃ。近道があるそうじゃ」
ガガブタはレテを見る。
「ギンドラの街への近道。俺も知らないな、しかし、王国内で他に遊びに行くとしたら王都だけだ。そこら辺の村には何もないハズだが……」
副騎士団長はボロボロの天井を見上げる。
「急ぎならシルちゃんにお願いするのが一番かな。つまり私にお願いするのが良いのに彼は一人で旅立った。目的地はギンドラで決まりね、後は手紙の行方だけかな」
レテは副騎士団長に伝える。
「問題ないだろう。急いでギンドラの街に行っても意味はない。本番は夜だ、昼間はあくまでも冒険者の街に過ぎない。ギンドラにも騎士はいるから心配はないだろう」
副騎士団長はレテを見る。
「ワシはララリをネアス殿に全て渡して気をそらした後に、三人に気付かれないようにゆっくりと距離を取り、街に戻ってきたのじゃ。手紙をネアス殿のカバンに入れてきたので探す事はないハズじゃ」
ガガブタは話を終える。
「ネアスの手紙の行方はホントに教えてくれないの、ガガブタさん?私は彼の恋人でその手紙の持ち主かな、隠す必要はないのよ」
レテはガガブタに伝える。
「知らんのじゃ」
ガガブタは答える。
「隠れ場所を教えていただけますか、ガガブタさん?騎士は秘密を守ります」
副騎士団長がガガブタに問いかける。
「ワシはガーおじじゃ。ガガブタ殿はいないのじゃ、ワシはネアス殿を裏切ったのじゃろうか。ワシは疲れただけなのじゃ」
ガガブタは眠そうだ。
「ありがと、ガガブタさん。お話はまた今度ね。私は手紙を探してからギンドラの街に向かうわ。アーシャにも伝えてね」
レテは立ち上がる。
「ありがとうございました、ガガブタさん。あちらにベッドがあるので休んでください。風の神殿のベッドの方が寝心地が良いですが、お疲れであれば使ってください」
副騎士団長は肩から手を離す。ガガブタは近くの部屋に歩いていく。レテは背中のストーンシールドを引っ張る。石の盾は床にズドンと落ちる。
「ごめん、ガガブタさん。キャビはいないのね、当たり前だけどガじゃない。ガはネアスを一緒に旅をしている」
レテはストーンシールドを見つめている。
「キャビさんも謎の人物のままだな。俺は副騎士団長としての任務を果たすだけだから関係ないがネアスくんは大変だな」
副騎士団長はストーンシールドを壁に立てかける。
「構わないのじゃ、お休みなのじゃ」
ガガブタは歩き続ける。
「そこにドーミがいます。近寄らない方が良いですよ。隣の部屋を使ってください。掃除はたまにしかしていませんが汚くはないハズです」
副騎士団長がガガブタに教える。
「ボロいからきれいにする気がおきないかな、掃除がキライってわけじゃないわ」
レテは言い訳をする。
「災厄が近いのじゃ、ワシも戦士のキモチを思い出すのじゃ。この宿は良い、キモチが引き締まるのじゃ。戦士は何人にいても良いのじゃ、たくさんの方が良いのじゃ」
ガガブタは部屋の中に消えていく。
「お休み、ガガブタさん。ララリを稼ぐのはホントに大変、大変」




