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恋の始まり

 あっという間に、ゴブリンたちは残らず全て穴の中に収まった。優しいシルフィーのおかげでネアスはゆっくりと優雅に舞い降りてくる。

「シルちゃんは過保護だよ。やさしさだけじゃだめなのよ。一気にガーって落ちたほうが、スリルがあって楽しいのにー」

「人間と精霊は違うのよ。でも、そういうのがシルちゃん好きよ」

 役目を終え、シルフィーはそそくさと姿を消す。地上に落ちる手前で風の精霊の加護が消えたせいでネアスは尻もちをつく。

「ぐわ、レテありがとう」

 ネアスは気合を入れて起き上がる。

「精霊さんもありがとうございました。これからは真面目な生活を送っていくことにいたします」

 ネアスは空を見上げる。

「改心しました」

 ネアスは両手を合わせて空に祈りを込める。シルフィーには伝わったのかはわからない。どうすればうまく伝わるのかを彼は考えようとする。

「急にどうしたの、頭はぶつけなかったでしょ。それとも君は背中でものを考えるタイプなの。聞いたことないかな」

 レテは心配になる。

「今までは頭で考えすぎたのかもしれません。すべてレテさんと精霊さんのおかげです。私は道に迷うことはもうないでしょう」

 ネアスは考える。

「思いついた、神官になろう」

 唐突にネアスが進路を決めた。

「風の精霊シルちゃん。私はレテでかまわないわ。それよりも一緒にいたおじさんは大丈夫なの。冒険者仲間でしょ」

 ネアスはレテの返答に戸惑う。倒れている男性の様子を確かめる。静かなので寝息が聞こえる。安心すると事情を説明し始める。

「僕はこの近くの泉に向かう予定だったのになあ。昨日の流星群でこのクレーターができたのだろう。せっかくだから見学に来たら、このおじさんが倒れていて、すぐにゴブリンたちが集まって来てって感じ」

「後は、レテさんが」

 ネアスは躊躇う。

「いろいろ言うことあるけど、レテって呼べない。恥ずかしいかな」

 レテはネアスとの距離を詰める。

「いや、まあ。あんまり女性と話したりはしませんが、レテさんはきれいだし。僕はこんなんだし、さんのままで構わないよ」

 ネアスは離れる。

「どうせ私と付き合うことなんてないなら、適当で良いでしょ。レテって呼んで。何事も練習と慣れよ。そのうち、他の女の子とお付き合いすることもあるでしょ」

 レテは微笑む。

「きっとね、いつかどこかで役に立つかな」

 レテは近づく。

「そう言われると悲しいような気楽なような、なんというか。よし!このおじさんを安全な場所に送り届けるまで。よろしく頼むよ、レテ!」

 ネアスは答える。

「任せてね、ネアス!今度は勝手に突っ込んだりしないでね。びっくりしちゃった」

 レテが手を差し出すと、ネアスはおずおずの自分の手を出す。二人は握手を交わす。そこにモラがトンと空から戻ってきた。

「私の相棒のモモンガ族のモラよこの子も君のこと気に入ったみたいね」

 レテはちょっとだけ驚く。

「レテ、レテ!」

 ピョンピョンと二人の手の上を飛び上がる。ネアスは手を外すタイミングを失ってしまっている。

「昼食にしましょう。お腹へっちゃったし、おじさん運ぶにしても腹ペコのままはね。モラの様子だとゴブリンは近くにいないようね」

 モラはレテの顔をペロペロしはじめる。彼女はカバンからサンドイッチとナッツを取り出す。

「モラも食事よ。君も食べるでしょ。私の手作りのたまごサンドイッチ。今日は久しぶりのお出かけだから早起きしてつくったのよ」

 レテは一緒に出したシートを広げ、腰を掛ける。モラはナッツに夢中。ネアスはシートの外に座ろうとする。

「そんなにややこしい事ばかりしていると、本当にモテなくなるよ。自然に隣に座れば良いのよ。たまごサンドおいしいよ」

 レテはお姉さん振る。

「モテは三年前に捨てたけど、たべものはその分楽しむ。そう決めた。これは今までずっと守れている」

 ネアスは彼女からたまごサンドを受け取り、シートの外に座り勢い良く食べ始める。

「おいしい。こんなおいしいサンドイッチは初めてだよ。すごい、すごい。三日間まともなものを食べてなかったのもあるけど、それを差し引いても美味しすぎる」

 ネアスはがっつく。

「おいしいのは当然よ。私が作ったんだから。女の子からの手料理は初めてだよね。その様子だと、三年間は彼女いないみたいね」

 レテはシートの端に座り直す。たまごサンドを差し出す。

「ありがとう、レテ。女の子の手作り料理を味わうのは今日で最後さ。レテみたいにきれいで優しい子はいないからね。この幸せをひたすらあじわうよ。ありがとう、みなさん」

 ネアスはなにかに向かって感謝を伝える。

「君のこと好きな子はきっといる。世の中には物好きもいるのよ。サンドおいしいね」

 レテはさらにネアスに近づいていく。

「グニョグニョ、ガーグログロ、ガガガ」

 だいぶ離れた所で眠っていたおじさんが大きな声を出す。かなりの騒音。

「今日はこのくらいかな。おじさんは何者なのかな。気になるね、ネアス」


読んで頂きありがとうございます。


続きもどうぞ よろしくお願いします。

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