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タマゴの呪い

 レテたちは風の神殿の屋上にひとっ飛びで到着する。鳥たちはレテの風に慣れたようで驚いてはいない。ネアスとミヤは座り込み休憩する。モラは到着した時に発生した風に乗って空に飛び立つ。

「いってらっしゃい、モラ。急に王都に帰る事になるかもしれないから、誰もいない時は一人で帰ってきてね。私のお家は覚えているでしょ、きれいでやさしくてかわいい私と会えなくなったら困るから神官長にも伝えておくわ」

 レテはモラに語りかける。モラは空に舞い上がっていく。レテはシルフィーにお願いして風を起こしてモラをさらに上空に上げる。神殿の外のざわめきがレテに聞こえる。

「ミヤ、ネアス、休憩は神殿の中に入ってからかな。今日は参拝の人がたくさん、たくさん。目当てはラトゥールの加護。キミは私にどんな祝福を与えてくれたのかな。未だに分からないわ」

 レテは髪飾りに触れる。暖かい。

「レテ様、分かりました。私も着替えが済んだらお手伝いをします。お菓子を食べれば元気は回復します。ネアス様は口を利かないんですよね」

 ミヤがネアスに確認する。ネアスはうなずく。

「風のなんちゃらかんちゃらちんちゃらだけは話してね。正解は大事、行きましょう」

 レテは扉に向かう。ネアスが後を付けていくと鳥たちが彼の頭を突付く。ネアスは頭を手で抑える。さらに鳥たちがネアスの頭を突付く。

「ネアス様、扉は近くです。疲れを忘れてダッシュです。鳥さんたちが怒っています。昨日何かなさったんですか?鳥さんにイタズラはイケません」

 ミヤは祈りを込める。鳥の攻撃は止まない。

「これも予想通り!それでも確認は必要かな、ミヤはここで待っていてね。すぐに戻るわ。卵はないハズ」

 レテはネアスを放置して鳥の巣を見に行く。巣には卵はない。レテは安心してネアスのそばに行く。鳥たちはネアスに集中攻撃をしている。彼は耐えている。

「しゃべれないって面倒ね、この遊びは止めにしない、ネアス。別の条件で勝負をしましょう?そうね、何が良いかな」

 レテがネアスの手を取ろうとすると彼は大きく首を振る。鳥たちは攻撃を緩める。

「イヤなの、神殿に入ってからにしましょうか。開始を遅らせるわ」

 レテがネアスに伝える。

「声を出せると僕はレテに何でも好きな事をお願いできてしまう。お願いを考える時間も必要だし、面白そうな勝負だから色々考えてみたいんだ」

 ネアスは答える。

「気に入ってくれてうれしいわ。難しい勝負程燃えるのかな、ネアスも男の子なんだね。私も気持ちは分かるけど鳥さんはどうするの、ネアス」

 レテは現在を心配する。

「レテ様、応援を連れてきます。鳥さんを傷つけたらホントに大変です。ドロスさんとエサをたくさん持ってくるのでお待ち下さい」

 ミヤは階段を降りていく。

「痛くはないから大丈夫さ。軽く突いているだけだ、髪の毛もむしられてはいない。どうして僕に興味を持ったのか分からない。初めての経験だ」

 ネアスは少しずつ扉に向かって歩いていく。鳥たちは再び集まってくる。

「タマゴの呪いかな。朝の特製たまごサンドはここの鳥さんたちのモノ。しつこいから貰ったけど罠だったみたいね。いちゃもんを付けられているのよ!」

 レテはネアスからちょっと離れる。

「僕がタマゴを割ったからか、みんなで食べたのにどうして僕だけなんだ。それに卵は鳥の恵みだ。その代わりにエサをあげている。きちんとした交換さ、それで今まで上手く行っていた。どうして急に僕だけが……」

 ネアスは立ち止まらない。鳥が再び頭を突付く。

「私の時は罠にはめるために卵をくれたわ。ネアスをさらなる罠にかける作戦かもね、ちょっと近くを探してみような」

 レテは屋上を軽快な足取りで歩き始める。巣やエサ箱、端の方も探してみるが何も見つからない。地上のざわめきは止まらない。

「何もないかな、シルちゃんにお願いして少しだけ空を散歩してきてもらおうか、ネアス。危険かな、鳥さんには警戒しないとイケないわ」

 レテはネアスに確認する。

「鳥たちは僕の頭を狙っている。大事な事が詰まっているのだろうか。それとも僕に流れる鳥の血に興奮しているのか、それだと朝にも襲われたハズだ」

 ネアスは推理する。レテはうなずく。

「朝にはなくてリンリン森林に帰ってからキミが手に入れたモノ。行く時の屋上では襲われなかった。灰色の液体はすでにあった。お菓子の塔は失われ、絶対防壁は森に残っている。魔王の魂はニャンがすでに持っていたわ」

 レテはネアスの手助けをする。

「そうだ、失われたモノだ。レテの特製たまごサンドがなくなった。鳥さんたちはそれに怒りを感じているさ。おすそ分けをして欲しかったのさ」

 ネアスは答えを見出す。レテは首を振る。

「違うかな、ネアス。あまり良い考えではないかな。卵は大事、大事。だから私たちは交換をしている。鳥さんと私たちではたまごの意味は違うわ。却下ね」

 レテは答える。

「村長さんに聞いた気がするけどきちんとは覚えていない。そうなのかい、鳥さん?」

 ネアスは鳥たちに語りかける。鳥たちは彼への攻撃を止める。ネアスは驚く。

「すごいわ、ネアス!キミは鳥とお話を出来るのね、ラトゥールの末裔の力なのかな」

 レテも驚く。

「ララリをください!」

 ネアスは鳥にお願いする。鳥たちが巣に戻る。何羽かの鳥が銅ララリを彼の手元に運ぶ。ネアスはニヤつく。

「僕はララリに困らない。これからは鳥さんたちが僕にララリを毎朝運んでくれる。偉大なるラトゥールの加護を!」

 ネアスは大声で叫ぶ。レテはすぐさま彼の口を手で抑える。

「ネアス、興奮しすぎ。落ち着きなさい、下にはラトゥールの加護を求めて大勢の人がやって来ているの?静かに扉まで行きましょうね」

 レテはネアスを抱きしめる。

「申し訳ありません、レテ様、ネアス様。私は何も見ておりません。エサはこちらに置いておきます。恋人たちを暖かい風が包み込みますように」

 ドロスが気まずそうに声をかけて、その場を去ろうとする。

「何もしていないわ、ドロス。あなたも大人だから抱き合った事はあるでしょ。焦る事はないかな。ギンドラの街ではもっと楽しい事が待っているって聞いた事があるわ」

 レテはネアスの手を引き扉に向かう。彼は銅ララリを握りしめている。ドロスは丁寧なお辞儀をする。

「いいえ、レテ様。私は恋をした事がない男です。男ですので美しい女性には興味はありますがネアス様のような感情は抱いた事はありません。私は昨日の夜に確信しました。私には恋は出来ません」

 ドロスが真剣な顔で答える。

「ドロスさんは真面目です。僕はレテに惹かれただけです。どうしてレテが僕に興味を持ったかは解明すべき問題です。でも、今は銅ララリの謎を解き明かす事が先決です。僕の人生に関わる問題です」

 ネアスも真剣な顔でドロスが置いたエサを受け取る。彼が再び言葉を口にしようとするのにレテは気づく。彼女は彼を扉の向こうに押しやる。

「キミはこれで夕方まではしゃべる事は出来ない。守れるかな、自分で決めた事。大事な約束ではないかな、気楽にいこうね、ネアス」

 レテはネアスに伝える。彼はうなずく。

「ミヤさんはおフロに入ってもらっています。泥だらけになっていたので仕方がありません。楽しいピクニックで良かったです。こちらは大変でした。何故私も誘ってくれなかったのでしょうか。私がいないなら神官長と町長、ルア様でさばけたでしょう」

 ドロスは恨み節を述べる。

「ドロスの専門はレイレイ森林でしょ。あっちに行く時は誘うから楽しみにしていてね。しばらく行く予定はないかな。キンパラキノコの場所は秘密のままが一番、一番。知らなければ口を滑らせる心配もないわ」

 レテは答える。

「レテ様の言う通りですがリンリン森林でも不思議な事が起きたそうですね。街の人が口にしていました。リンリン森林が光に包まれたそうです。一瞬だったので目撃していない人々も多いようで言い合いになっています。私も神殿の中にいたので分かりません」

 ドロスがレテに問いかける。

「私たちもリンリン森林の中にいたから全体が光に包まれたかは分からないわ。ラトゥールの光の風が吹いたのは確実。あの時だとは思うけど、どうなのかな」

 レテは答える。ネアスは黙って話を聞いている。

「不思議な事ばかりが起きます。ここで話を続けるのも良いですが、レテ様にお客様が来ております。ストーンマキガン石職人ギルドの三岩人です。私もお目にかかるのは初めてです。外部の人に姿を見せる事はないと聞いています」

 ドロスはレテを見る。

「ドンデンカーンだっけ?私も昔、面会を申し込んだけど小娘には会わないって断られたわ。まだまだ成長が足りないからってドロスから断ってくれるかな。これから高級宿に向かいましょう。副騎士団長が待っているわ」

 レテは根に持っている。ドロスは慌てる。

「私たちも困っているんです。彼らがいると礼拝の方が少なくなって楽ではあるのですが今が風の神殿の知名度を復活させる機会でもあります。怖がって街の人は中に入ってきません。これでは明日からの礼拝する方も減りそうです」

 ドロスはレテに頼み込む。ネアスは外に出ようとする。

「ネアス様にもご迷惑をかけたので贈り物があるそうです。レテ様にも渡したいモノがあるそうです。今日は会うまで風の神殿から動かないそうです。礼拝堂の修理をしてくださっているのはありがたいです」

 ドロスはネアスに伝える。ネアスはレテを見る。

「贈り物は気になるかな。副騎士団長は待っていてくれるわ。物騒な事が起きそうだったらアーシャが呼びに来るかな。ドロスが怖がる程の三人、興味はあるわ」

 レテはドロスを見る。ネアスはレテを見つめる。

「ネアス様、レテ様には及ばないので安心してください。しゃべる事を禁止する方々ではありません。恋人同士にはたくさんの障害が待っています。きれいでやさしくてかわいい女性には代償が必要でしょう」

 ドロスは余計な事を言ってしまう。レテはドロスをニラミツケル。

「ネアスが決めた事、私は関係ないわ。ホントよ、ウソじゃないわ。ミヤに聞きなさい、ドロスは私に偏見を持ち過ぎかな」

 レテは答える。ドロスはレテが身につけているゴブジンセイバーを見てしまう。

「これは交換、私の剣をネアスにあげたわ。切れ味はバツグン、軽くて扱いやすいから初心者から上級者までオススメ出来る剣!ネアスの方が得をしているかな」

 レテはネアスを見つめる。彼はレテの剣を当てる。

「私は言わなくても良い事ばかり話します。しゃべる事を禁止致します。私たちは仲間ですね、ネアス様。レテ様はキビシクない方です」

 ドロスはネアスを見る。彼は目を逸らす。

「ドロス、わざとだよね。うっかりなハズはないかな。あなたは私の事がキライなの?」


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