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日記

 さらに夜は更けていき、緑岩亭の広間には三人と一匹の気配しか感じられない。モラはレテの胸の中でグッスリ眠っている。

「今日から書き始めたから、ほんの少しだけしかないけど。二人共、どうぞ」

 ネアスは日記を広げて、二人に見てもらう。

「勝負は勝負だからね。ありがとうね、ネアス。楽しいゲームだったわ、また今度は別のゲームでもしようね」

 レテはうれしそうに日記を眺めだす。

「ワシも良いのか、ネアス殿。悪いのじゃ」

 ガーおじは申し訳なさそうに、日記を見ないように目をつぶる。気にはなっている。

「ガーおじも構わないよ。石を当てそうになったし、あのまま当たっていたら怪我していたかも。お詫びに見てかまわないから、どうぞ」

 二人はネアスの日記を読み始める。

 ゴブジンセイバーを手に入れたので必殺技を考える。ゴブジンセイバースラッシュ、ゴブジンエクススラッシュ、ゴブジンセイバー斬り、ゴブジンセイバー切り刻み、ゴブジンセイバーファイナル……

「見る価値なかったわね、旅の事とか書いておけば良かったのに。これじゃ、ただの落書きノートよ。ツマラナイわ」

「レテ殿、言い過ぎじゃ。きっと、これからワシたちとの事を書くつもりじゃったのじゃ。ネアス殿も子供には見えない出で立ちじゃ、今日は疲れていたのじゃろうな」

 ガーおじは広間の天井を見つつ、ネアスの頭をなでる。

「そうだね、今日は疲れたな。明日からは真面目に頑張らないと」

 ネアスは焦り気味に二人に返答する。

「そうよ。日記にはきれいでかわいいくてやさしいレテに出会ったって書いておくのよ。さ、急いで、急いで」

 レテに急かされたネアスは急いでペンを取り出し、彼女の言われたとおりに書き進める。

「良いわよ、その調子。また、困ったら私に相談するのよ。ゴブジンセイバーも良いけど、それだけではダメかな」

「ワシの事も付け加えて欲しいのじゃ。決して裏切らない男であり、シブいガーランド。これで良いのじゃ」

 ネアスはついでにガーおじの要求にも応じる。

「ウソはダメよ、ウソは。ガーおじはシブくはないわよ。ないものねだりはいけないかな」

 ネアスはシブい所に二重線を引いて、訂正する。

「今後に期待じゃな。二人とも、任せるのじゃ。シブいガーおじの活躍を期待するのじゃ。ネアス殿、今はそのままで良いのじゃ」

 ネアスは二人の様子を確かめてから、日記を閉じてペンもしまう。

「日記っぽくなったよ。二人のおかげだよ。しばらくは自分一人で頑張って見る。困った時はいつでも相談できるのは安心だよ」

 ネアスはホッとして、ゆったりと椅子にもたれかかる。

「わたしは毎日でも大丈夫よ。わたしの良い所をたくさん書いてもらわないとね!」

 レテは五個思いついたが気を使う。

「毎日大変なのじゃ。ワシが二日に一回確認するのじゃ」

 ガーおじはレテを警戒する。

「ガーおじ、今後といえば、そうだ。明日は何から始めようかな、迷うな」

 ネアスは話を逸らそうと、別の話題を振ることにする。

「まず、ワシの武器と防具を揃えるのじゃ。このまま体当たりしかできないようでは困るのじゃ」

 ガーおじが二人に提案をする。ネアスは返事をするが、レテは納得していない様子である。

「ララリはどうするの、ポケットに隠し持っていた銀ララリ入っていたりしたのかな、ガーおじ」

 レテはネアスのカバンを見ている。

「銀貨はないが、この指輪があるのじゃ。売ればそれなりの値段になるはずじゃ。大事なモノのような気もするが、仕方あるまい。ワシも戦士じゃ」

 ガーおじはシュンとしながらも、指輪を外して二人に見せてあげようとする。

「ガーおじ、借りるわね」

 レテはガーおじの大事な指輪を手に取り、さわって確かめている。

「何製なのかな、レテ」

 ネアスも興味を示す。

「そこまでは私には分からないわ。でも、指輪の裏に名前が消された後があるわね。ガーおじ、気づいていたのかな。それとも」

 レテの言う通りに指輪の裏には削ったような跡がある。ガーおじはレテに指輪を返してもらい、自分で確認する。

「ワシが見ても分からないのじゃ。ウ〜ン、あの時みたいな記憶がよみがえる感覚はないのじゃ。売ってララリにするのが一番のようじゃな」

 ガーおじは気にしない。

「ガーおじがそういうなら、僕は止めないけど。僕には貸すだけのララリはないからね、仕方がないよ」

 ネアスはレテの方を見る。

「仕方がないわね。私がガーおじにララリを貸してあげるわ。指輪の裏も気になるし、私まで呪いにかかったら困るわよね」

 レテはガーおじを気遣う。

「ワシは呪いなどかけるような男ではないのじゃ、レテ殿。しかし、ララリはしっかりと貸してもらうのじゃ」

 ガーおじは喜んで、椅子から飛び上がりジャンプしてしまう。

「今は夜よ、ガーおじも気をつけてね。返すのはいつでも構わないから、しっかりした装備を選びましょうね」

 レテは興味がない。

「僕はこの剣、それに今の装備で充分かな」

 ネアスは大事そうにゴブジンセイバーを身に着けている。

「ありがたいのじゃ。必ず返すから、指輪はレテ殿に渡しておくのじゃ。さあ、さあ、受け取ってくだされ」

 ガーおじが指輪をレテに押し付けようとすると、彼女はきっぱりと断る。

「私が持っていても、サイズも合わないし、いらないわよ。ガーおじの大事な記憶の手がかりでしょ。とにかくガーおじが持っている方が良いわ」

 ネアスはガーおじの事を日記に記す。

「良い心掛けよ、ネアス。そういう事を日記に書いた方が良いわよ。やさしくてかわいくてきれいなレテもきちんと書いておくのよ」

 レテはネアスに念を押す。

「明日の予定は他にあるの、レテ」

 ネアスは受け流す。

「私は朝早くに騎士団にクレーターの事を報告。その後に三人で武器屋と防具屋に行きましょう。午後は時間が合えば町長さんの話を聞きに行くわ」

 レテは予定を決めていたようで、残りの二人は感心する。

「今日はそろそろ眠りましょう。無理でも横になっていたほうが良いわ。また、明日ね、ガーおじ、ネアス。お休みなさい、ネムネム」


読んでい頂きありがとうございます。


続きもどうぞ 明日に続きます。

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