森の奥へ
ネアスは森に足を進める。そこに道はなく木々が生い茂っている場所だ。彼はゆったりとした足取りでリンリンの後についていく。レテたちも彼の後に続くが日の光が遮られて、途端にネアスの姿が見えなくなる。
「ウィルくん、お願い。ちょっとだけ目の前を照らしてくれるかな。ほんのちょっとだけ、やりすぎは禁止。ウィルくんには必要のないアドバイスかな」
レテは精神を集中させる。小さい光が目の前を照らす。ネアスがつまずかないで歩いている姿が彼女にも確認できた。
「こっちはどこに向かう方でしょうか、王都、ギンドラの街でしょうか。方向が全く分かりません」
ミヤは足元に気をつけながらネアスの後をつける。
「帝国の方向はイヤフフ。カルトーラ山脈があるからうっかり帝国に迷い込む事はないフフが危ないフフ」
ニャンはネアスを警戒する。
「帝国はもっともっと先かな、リンリン森林を抜けて平原を進んで、さらに大きな川を渡って、カルトーラ山脈ね。歩いていける距離ではないからダイジョブ、ダイジョブ」
レテはネアスが転ばないか注意する。目の前にはリンリンが羽ばたいている。
「リンリンに付いていった先には何があるのでしょうか。私の予想ではたくさんのリンリンがレテ様をお待ちしています。そこではきれいなリンリンの音色が響いています。ステキな場所です」
ミヤはリンリンを見つめている。
「なんとなく付いてきたフフ。ニャンではないフフ、アメフフはレテ様の恩がるフフ。どこに行くか不安フフ」
ニャンは周りを見渡すが生い茂った木々で様子は分からない。
「今度はあっちみたいね。別のリンリンがいるわ。これじゃホントにどこに向かっているか分からないかな。シルちゃんがいなかったら私は引き返したかもね」
レテの予想通りにネアスは方向を変える。ウィルくんも近くを照らす。
「ネアス様はラトゥールの末裔。リンリンとも仲が良いのは当然と言えば当然ですね。ラトゥール様は王国を守護しています」
ミヤはネアスに続く。
「リンリンキライのラトゥール様は想像できないフフ。どこでもリンリンうるさいフフって思っていたらヒドイフフ」
ニャンは答える。
「ラトゥールはイジワルな所があるから実はリンリンとは仲が悪いかもしれないわ。精霊伝説を奪い取る子、リンリンの大事なモノを隠して王国に住んでもらっているのかな」
レテは髪飾りに触れる。ちょっとアツい。
「ラトゥール、怒っちゃダメ。常に冷静に対応する。挑発に乗っちゃダメ、イタズラ好きだからって悪い子とは限らないわね」
レテはフォローする。
「私もレテ様の悪い子になります。気持ちがないイタズラはダメです。心を込めてイタズラをします。相手をヒドイ目に合わせるとかではありません。新しいイタズラを試したいだけです。同じイタズラに見えても、違いはたくさんあります」
ミヤが答える。
「アメフフはイタズラをした事はないフフ。ネアス様にも誘われなかったフフ。きっと年を取りすぎたフフ」
ニャンが悲しそうにつぶやく。
「子どもの特権かな。後はさじ加減ね、才能のないモノは立ち去るべき。人に迷惑をかけることがイタズラの本質ではないわ。それと、知る事が目的」
レテは森の奥の方に別のリンリンを見つける。ネアスとウィルくんはそこに向かう。
「限られた時間の儚い遊び、それがイタズラです。人を傷つけるためではなく、癒し、慰めるためのモノです。一人でも不快に感じたらオシマイです」
ミヤも悲しそうだ。
「ミヤは真面目すぎかな。気の合う人たちとイタズラをしあえば良いわ、ガーおじだって楽しそうだったわ。私はガーおじとは相性が良くなかったからガミガミ言わればっかり、キャビには近づかないって決めているわ」
レテはミヤをなぐさめる。
「そうフフ、ミヤ様のイタズラならちょっとだけなら問題ないフフ。ちょっとフフ。忘れてはダメフフ」
ニャンがレテの援護をする。
「そうですね、おもしろいイタズラを考え続けます。今度はお菓子の落とし穴を作ります。作り方は考え中です」
ミヤは元気に答える。リンリンが再び現れ、ネアスは方向を変える。
「方向転換二回、帰り道はどうしようかな。リンリンはやさしい子だから送り迎えは完璧ね。私の直感が告げている」
レテは迷わずにネアスの隣を歩く。
「リンリン森林には伝説があるフフか。アメフフは知らないフフ、大きい森林なのは知っているフフ」
ニャンが尋ねる。
「リンリンがたくさんいます。それで充分です、それ以上を求めるなんて意味が分かりません。リンリン森林ですよ、ニャンさん」
ミヤは力説する。
「たくさんのリンリン、他に何が必要なのかな。伝説なんて何も見どころがない所に発生するモノ。リンリン森林は価値がある、伝説はいらない。でも、アーライト川はきれいで伝説はあるかな」
レテは疑問を持つ。
「アーライト河の終点フフ、アメフフは知っているかもフフ。ニセモノのアメフフは知らないフフ、残念フフ」
ニャンが答える。前方にリンリンが見える。ネアスはその場所に向かう。
「三回目、楽しみの時間が近づいてきたわ。ワクワクドキドキ、アメフフさんの言う通りね。リンリン森林に新たな伝説が出来たら完璧、完璧」
レテの胸はトキメク。
「リンリン森林に伝説はいりません。たくさんのリンリンで充分です」
ミヤは反対する。
「意見の相違フフ。どちらも正しいフフ。アメフフは選べないフフ」
ニャンは戦闘から離脱する。
「どちらも正解、たくさんのリンリン、伝説の始まり、私は二つとも欲しいかな。ネアスはきっと両方の願いを叶えてくれるわ。きれいでやさしくてかわいい私へのプレゼント!」
レテは興奮する。
「レテ様へのお礼なんでしょうか。私への信頼の証、未来の勝利の女神様への捧げ物かもです。きっとそうです、レテ様はたくさんの贈り物をこれからもネアス様からもらえます」
ミヤは祈る。
「アメフフへの感謝の印、故郷からの友人へのちょっとした祝品フフ。埋蔵ララリの場所フフ。金ララリがたくさんフフ。悪い貴族が隠し場所としてリンリン森林を選んだフフ」
ニャンが期待を込める。
「リンリン森林には似合わないかな、アメフフさん。私が貴族だったらアヤシイララリは風の神殿の下に埋めるかな。あそこなら誰も穴をほったりしないわ」
レテが答える。彼女は次のリンリンに気づく。
「四回目です。方向転換、確かにララリは欲しいですがリンリン森林に隠す事は難しいです。迷って場所が分からなくあります」
ミヤが答える。
「そうフフ。だから手つかずで残っているフフ、アメフフの予想は完全フフ。調子が良いフフ。アメフフの力フフ」
ニャンは自信がある。ネアスは先に進む。
「三人の予想のどれが当たってもステキな事が待っているのに変わりはないわ。誰が当たるか、それとも予想を超えるプレゼントが待っているのかな」
レテはネアスに微笑む。
「ここはどこでしょうか、奥に行ったのか、王都の近くまで来たのか分かりません。リンリンの大きな音色は聞こえてきません」
ミヤは不安になる。
「リンリンの音は遠ざかっているフフ。アメフフの予想が当たりそうフフ。ララリはいつでもどこでもみんなの味方フフ」
ニャンは周囲を見渡す。ウィルくんの照らす範囲しか見えない。
「リンリン伝説、リンリンの音色には意味があったのかな。答えはもうすぐ、まだまだ先?どちらにしても楽しみ、楽しみ」
レテはネアスの隣を歩く。
「次のリンリンは?」
ミヤは当たりを見渡す。
「あっちフフ。こっちフフ?」
ニャンも見渡す。
「そっちでしょ、どこかな、ネアス?」
レテはネアスを見つめる。彼はその場で立ち止まる。辺りには木々が生い茂っている。リンリンはいつの間にかどこかに姿を消した。ウィルくんは小さい光を灯している。
「何もないようですね、リンリンもいません。いいえ、たくさんの木が私たちを囲んでいます。リンリン森林です」
ミヤは事実を述べる。
「穴を掘るフフ、目印があるハズフフ。みんなは待っているフフ」
ニャンは地面を探し始める。
「ネアス、ここで休憩かな。でも、今日は午後も予定があるからストーンマキガンの街に帰る時間も考慮に入れてくれるかな」
レテはイライラし始める。ネアスはその場に座り込む。
「立ちなさい、ネアス。無理のしどころ。精神と体力が尽き果てたとしてもやらなければイケない事がある。今がそんな時、心が壊れたとしてもリンリン伝説は始まりを迎える。悲しいけど無理矢理でも先に進ませるわ」
レテはネアスを持ち上げる。彼女は彼の頬をつねる。
「イタ、イヤ、気持ちいいのか。違う、痛い、キモチ……」
ネアスは目を覚ます。
「ネアス、ミヤがそばにいるのよ。変な事を考えちゃダメ」
レテはささやく。
「ネアス様、こちらが目的地でしょうか。私には何も見つけられません。お導きをお願いたします」
ミヤは気にせずにネアスのお願いする。
「お願い、ネアス。ステキな場所に案内してくれるかな、ここはどこ?」




