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灰色の手の効力

 レテが注意をするとニャンはすぐに他の八枚の銅ララリを回収する。ミヤはケーキが気になるようで顔を近づけて観察する。レテも一緒にケーキを見てみる。ネアスは空を眺めている。

「汚れてはいないみたいかな。他のケーキと同じ感じね。私の手も灰色のまま、ホントにどうしようかな。温かいお湯で落ちると良いんだけど……」

 レテは透明な風の神殿特製ポーションで覆われた灰色の手を見つめる。

「握手をすると灰色になるんですね。街中の人の手を灰色にするイタズラを思いつきました。最初は神官長に挑戦します。私も灰色の手になります」

 ミヤがレテの手を触ろうとする。レテはさっと引く。

「ダメ、ミヤ。亡霊が宿った灰色の液体、何で私はネアスの手を触っちゃったのかな。気の迷いね」

 レテは後悔する。

「ミヤ様、止めたほうが良いにゃん。口に入ったら大変にゃん。手先の訓練が終わった後にするにゃん。レテ様、そろそろ教えてほしいにゃん」

 ニャンはお願いする。

「すっかり忘れていたわ。ありがと、にゃん。こんな感じかな」

 レテは指先で銅ララリ宙に飛ばす。銅ララリは宙を舞い彼女の手に戻る。

「私もやってみます」

 ミヤはレテの真似をする。カバンから銅ララリと取り出し、指先に置く。すぐに指から落ちる。今度は慎重に指の上に置く。彼女は銅ララリを弾き飛ばそうとするが上手くいかない。

「最初から難しそうにゃん。水の近くでする訓練じゃないにゃん」

 ニャンは真似しない。

「そうね、お部屋で一人練習、練習。タンスの裏には銅ララリがたくさん。お父様に見つかって怒られたわ。女の子の部屋に勝手に入るなんてシンジラレナイ」

 レテはミヤの様子を眺めている。

「私の部屋の大事なモノは全て隠してあるので安心です。レテ様も気軽に入ってください。何もないハズです。こうですか?」

 ミヤは銅ララリを指で飛ばす。お菓子の塔にぶつかる。

「良い感じかな。私も何回も失敗して今の腕前、もっと上手くなりたいけど騎士になってからは時間が取れないわ。ミヤの今のうちに練習、練習」

 レテはミヤを励ます。

「ニャンの得意技は今度見せるにゃん。今日は薬草取りで疲れたにゃん。出し惜しみにゃん、期待はしちゃダメにゃん」

 ニャンはお菓子の塔から銅ララリを引き抜きミヤに手渡す。

「この次の練習はどうすれば良いんですか。今後のために教えてください、レテ様は王都に行くんですよね?」

 ミヤはちょっと悲しそうに質問する。

「ストーンマキガンの街にずっといたら王族の方や貴族が警戒するかな。シルちゃんがいるからどっちでも変わらないのにね。不思議、不思議」

 レテは指と指で銅ララリを挟む。ミヤも試すが難しいようだ。

「たまには遊びに来てください。いつでも歓迎します。風の神殿はレテ様の味方ではないかもしれませんが、私はレテ様を裏切る事はありません。ラトゥール様にお誓いします」

 ミヤは目を閉じて祈りを込める。ニャンも目を閉じる。

「ニャン族もレテ様に法外なララリを請求しないとはいえないにゃんが、ニャンはネアス様とレテ様の味方にゃん。ラトゥール様に誓うにゃん」

 ニャンも祈りを込める。

「二人とも深刻に考えすぎかな。私が今まで通りに王国のためにツマラナイ任務をこなすって分かったら貴族も危害を加えないハズね。あの人たちにもやりたい事はあるし、街道警備、街の防衛、何からかな。ゴブちゃん退治とあらくれものたちの相手!」

 レテは言葉に出すだけでうんざりする。

「ネアス様の呪いを解く事とキャビ様の謎です。レテ様にしか出来ない事です。味覚がなくても生きていけます。喜びは減ります」

 ミヤは静かに目を開けて答える。

「ニャンも手伝いたいにゃんが商売もあるにゃん。ララリを稼ぐのがニャン族にとっては一番大事にゃん。それに呪いはコワイにゃん、ごめんにゃん」

 ニャンも目を開けて、レテに謝る。彼女は大きく首を振る。

「呪いは私とネアスといなくなったガーおじの問題。ドロスは専門家だから協力してもらうけどニャンは行商に専念して試練を突破するのが大事かな。難しい試練なんでしょ」

 レテはニャンに確かめた。

「ニャン族以外には門外不出にゃん。ニャン族の村では子どもでも話をしているにゃん。ただの伝統にゃん。にゃんをつけるくらいの事にゃん」

 ニャンは答える。

「神官の秘技と同じですね。話しても問題ないと思いますが口外してはイケないそうです。安易に真似をすると危ないそうです」

 ミヤも答える。彼女はケーキを食べるとチラッとレテを見る。

「騎士には必殺技はないわ、地道な訓練、訓練」

 レテがネアスを見ると彼はピクッとする。

「アーシャさんはすごい技を持っていそうでしたが違うんですね。レテ様の剣術は全てを切り裂くって訳ではないんですか?」

 ミヤは残念そうだ。

「ネアス様はたくさんの必殺技を考えているにゃん。ラトゥール様の力でなんとかスラッシュを放つにゃん。ソウセイシャを一発で倒すにゃん」

 ニャンの言葉にネアスがピクピクするのをレテは確認する。

「剣で岩を断ち切る。子どもの頃には憧れたかな、岩を切っても意味はないわ。ゴブジンセイバーは何を切れるのかな」

 レテはゴブジンセイバーを抜く。川の近くの岩に剣を振り下ろす。ガーンと音が響き岩には傷が付く。

「ゴブリン神官さんが大事にしていた呪いの剣です。ソウセイシャさんですか?それを倒すのが一番ではないでしょうか。強そうな相手です」

 ミヤが答える。

「ソウセイシャはネアス様とニャンが一緒に考えた敵にゃん。冒険者遊びをした時に最後の敵にしたにゃん。実際はいないにゃん、そのハズにゃん。ラトゥールの末裔、土の村、ニャンは分からなくなったにゃん」

 ニャンは不安になる。

「精霊使い見習い、灰色の手の持ち主。元ゴブジンセイバーの所有者。ネアスはソウセイシャと戦えるのかな。まだ早いかな」

 レテはネアスに問いかける。彼はピクピクしているが空を見つめたままだ。レテはゴブジンセイバーを鞘に収める。

「亡霊さんは何をお望みなのでしょうか。レテ様とネアス様と一緒にいたいのでしょうか。それなら声を出してお願いすれば良いです。ネアス様は静かにしているので口を借りれば簡単です」

 ミヤはレテの灰色の手に話しかける。

「大丈夫にゃんか、亡霊に体を乗っ取られたらコワイにゃん。ネアス様の力を悪用されたら大変にゃん」

 ニャンはレテの近くに避難する。

「亡霊にも限界があるんでしょ、ミヤ。確か、何だっけかな、自由に動き回るには制限がかかっているのよね。相手側に拒否されるとマズイだったかな、ウ~ン、ちゃんと覚えておけば良かったわ」

 レテはミヤに問いかける。

「宿主がお菓子をキライだったらお菓子は食べる事が出来ません。神官と協力して亡霊を追い出す事が可能です。ドロスさんは手荒な方法なので亡霊さんのお話を聞く方が大事と言っています。神官のよって意見はマチマチです」

 ミヤは真剣な顔つきで答える。

「ネアス様のキライなモノは分からないにゃん。好きなモノは精霊伝説、冒険の話、旅の話、女の子の話にゃん。他にもあるような気もするにゃん」

 ニャンは答える。

「きれいでやさしくてかわいい私と特製たまごサンドも追加かな。キライなモノは石職人と借ララリね。ガーおじのために努力したかな」

 レテは転がっている石をネアスに手渡して無理やり握らせる。彼は片手に石を持っている。

「リンリン森林のきれいな川の石は好きみたいですね。レテ様との思い出の場所なので気に入っているんです。間違いないです」

 ミヤはネアスの近くに川の石を並べ始める。

「灰色の手は石がキライだったら逃げ出すにゃん。試してみる価値はあるにゃん、ニャンも協力するにゃん」

 ニャンも石を集める。

「ストーンマキガンの街にいた亡霊さん、荒っぽい石職人に絡まれた事は何度もあるはずね。私のギルドを吹っ飛ばしてほしいのかな」

 レテは自らの灰色の手に問いかける。今まで通りにカタカタ震えている。

「石職人さんはストーンマキガンの街では人気の職業です。男の子が一度は憧れます。女の子も石職人の男の子とデートに行きたいみたいです。私はピンと来ませんが同じ見習い神官の子にも筋肉が好きな子はいます」

 ミヤはドンドン石を並べる。ニャンは横に石を置く。レテは灰色の手を眺めている。

「ニャンは商売が上手くないからダメにゃん。先輩のニャン族は石職人はお得意様って言っていたにゃん。ララリをたくさん使ってくれるそうにゃん」

 ニャンは悲しそうに伝える。

「食事はたくさん取りそうだし、お酒も好きそうな感じかな。女の子とデートもしたら出費がかさみそうね。それは騎士も同じね、何が違うのかな」

 レテは空を眺める。雲が流れている。

「騎士様はレテ様がキビシク監督しています。厄介事を起こしたら大変な目に合いそうです。きれいでやさしくてかわいいレテ様も時にはキビシイです」

 ミヤが答える。ネアスの周囲には石の防壁が出来る。

「噂にゃん、レテ様の機嫌を損ねると大変にゃん。想像を絶する事が待っているにゃん。恐ろしい事が起きるにゃん。ミヤ様、石をもっと並べるにゃん。二重にするにゃん」

 ニャンは楽しそうに石を運んでいる。ミヤは大きくうなずく。

「副騎士団長は厄介事がキライかな。私にあれこれの騎士がこうだったって聞かされるわ。新人騎士が貴族の女性に声をかけてしまったとか、王都の女の子三人とお付き合いをしているとかね」

 レテは石の防壁に視線を移す。

「騎士も人気があります。剣と槍を使えるのでカッコいいです。でも三人をお付き合いする人とは友達になりたくないです」

 ミヤは石を再び並べ始める。

「色んな村に警備の任務で騎士はいるにゃん。たくさんの村で女の子と仲良くなれるにゃんか。バレたら大変にゃん」

 ニャンがつぶやく。

「王国中の村の女の子と仲良くなりたいって騎士志望の男の子もいたわ、私の後輩でアーシャの先輩。今でも村の警備の任務を頑張っているみたいね。私も声をかけられたわ、今度食事でもどうですか?面白い人だったかな」

 レテは石の防壁に手を触れる。しっかりしている。

「カチカチです。きれいな川の近くの石は壁作りに最適のようです。私も知りませんでした、楽しくなってきました」

 ミヤはニャンが運んでくる石で壁をドンドン作る。レテも近くの石を握る。ネアスも石を握りしめたままだ。

「そんな話は聞いた事がないかな、そんな石だったの?石の壁を作った事はないからなんとも言えないけど……」


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