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三つのヒント

 リンリン森林の中心部でレテたちはゆったりとした時間を過ごしている。日の光が木々の隙間から彼女たちを照らしている。ニャンは薬草の採取に専念している。

「一つ目のヒント。ネアスの願いは叶っている。そうだとするとお姉さん神官のおかげなの、気に入らないかな。タダの神官でしょ、そんな力はないハズ。願いは叶っていない、お姉さん神官は力及ばず、残念ね」

 レテの機嫌が悪くなる。

「レテ様、勝負です。私情は捨てましょう、レテ様の一勝、ネアス様の二勝がかかっています。レテ様の経歴に傷が付きます」

 ミヤはレテを説得する。ネアスはチラッとレテを見る。

「願いは叶っている。確実!」

 レテは言葉を絞り出す。

「すぐに叶う願いですね。ネアス様は冒険者です。でも、大きな冒険はしていません。発見もまだです。お仕事には関係ないです」

 ミヤが考えを整理する。

「ミヤ、すぐに叶うって言い方は良くないかな。多くを語るとヒントになるから言わないけど、すぐには叶うは良くない表現!」

 レテはミヤに注意する。

「答えは何回でも良いんですか。ヒント事に一回ですか、ネアス様?」

 ミヤはネアスの反応を探ろうとする。

「レテの勝ちは決まっているし何度でも良い。ヒントは的確だ、三つ目には正解できる。ミヤは頭が良いみたいだ」

 ネアスは勝負をあきらめかける。

「ネアス、勝負は最後まで分からないわ。ヒント事に一回、お菓子の数は三つから減っていくわ。勝負には刺激が必要、ヒリヒリしなきゃダメ。ララリを賭けるのは禁止。原則!」

 レテはミヤの質問に答える。

「お二人とも私を見くびり過ぎです。ヒントは一つで充分、お菓子は三つ頂きます。勝利の女神は負けません」

 ミヤは自信満々で宣言する。

「にゃ~ん、にゃ~ん、すごいにゃん!」

 ニャンが木の奥から答える。

「簡単すぎる問題だ。決着をつけよう、勝利はなくても幸運は僕にある」

 ネアスは自分を慰める。

「二つ目と三つ目もちゃんと後で聞いてね、ネアス。せっかく考えたんだから誰かに聞いて欲しいかな」

 レテはつぶやく。

「レテ様です!」

 ミヤは大声で答える。レテは微笑む。ネアスは反応しないようにする。

「半分だけ正解。きれいでやさしくてかわいい私は必須条件。でも、ネアスの願いには続きがあるわ。ミヤは詰めが甘いかな」

 レテは安心する。ネアスは黙っている。

「そうなんですか?けっこう難しい問題です。レテ様と何かですか?」

 ミヤが悩む。

「ヒント二、ミヤは答えをすでに口にしたわ。一緒にすれば完成。ヒント三は必要なし、ミヤは出来る子。私は満足かな」

 レテはヒントを言う。うれしそうだ。

「レテ様と冒険をする。そうですね、一緒に何かしないと楽しくないです。スッキリしました。私たちの勝利です」

 ミヤは勝利を宣言する。レテも微笑む。

「正確にはきれいでやさしくてかわいい女の子と冒険をする。ネアス、これが答え。簡単、簡単!」

 レテはネアスに微笑む。

「不正解だ。僕の勝ちは目前だ!」

 ネアスは大声で叫ぶ。リンリンの声が止まり、木々が激しくざわめく。鳥たちが騒ぎ出す。

「ダメにゃん、正解にゃん」

 ニャンの声がかすかに聞こえる。

「負け惜しみね、ネアス。勝利は大事だけど不正行為は認められないかな。答えを変える事は絶対にダメ。今なら訂正しても良いかな」

 レテはネアスにやさしさを示す。

「ネアス様、正解です。分かりませんか、分かるハズです」

 ミヤはネアスに警告を与える。

「レテ、ヒント三だ。これが最後のチャンスだ!」

 ネアスは興奮している。

「私の負けね。無駄な勝負はしないわ。ヒント三はネアスがミヤに出してあげて?お菓子の景品を賭けて、ガンバロ、ガンバロ」

 レテは気を取り直す。

「ヒント一が願いは叶っている。ヒント二はミヤがすでに口にした。ヒント三は?そうだな、レテは手にする事が出来ない」

 ネアスはヒントを口にするとレテが彼をニラミツケル。

「ツマラナイヒント、答えはわかったけどね。そのヒントは今後禁止。一切口にしちゃダメ。私はそれを手にする事が出来る」

 レテは素早くネアスのゴブジンセイバーを奪い取る。ネアスは呆然とする。

「正解はゴブジンセイバーですか?ネアスさんの大切なモノです。でも、お姉さん神官には具体的にはどうお願いしたんですか?」

 ミヤはネアスに尋ねる。彼はゴブジンセイバーを見ている。

「そうね、冒険者になってすごい宝を手に入れたいかな。あるいはゴブリンの宝を見つけたい。それは未来の話かな、剣に関わる事。思いつかないわ」

 レテは自分の剣をネアスに差し出す。彼は黙って剣を受け取る。高価な剣だ。

「ネアス様、大丈夫ですか?マッスルニャンダドリンクを飲めば元気になります。どうぞ、受け取ってください」

 ミヤはネアスにドリンクを手渡そうとする。彼は立ち直れない。

「ホントにどうしたの、ネアス。ゴブジンセイバーは返してあげる。イジワルしてごめんね、ネアス」

 レテは心配そうにネアスを見つめつつ彼に剣を渡そうとする。

「レテ、ゴブジンセイバーはキミのモノさ。僕はとんでもない勘違いをしていた。レテは剣をいつでも手にする事が出来る。僕のヒントは間違っていた。僕は勝負のルールを守っていなかった。どうしようもない失敗だ」

 ネアスは地面を見つめる。ミヤが驚く。

「気にする必要はないと思います。上手なヒントを考えるのは大変です。レテ様もその事には怒っていないハズです」

 ミヤがレテを見る。彼女はうなずく。

「すぐにヒントを考えるのは難しいかな。でも、同じヒントは論外ね。ゴブジンセイバーはひとまず私が預かるわ。その代わりに私の剣をキミが持っていてくれるかな。交換条件、剣がないのは問題」

 レテはゴブジンセイバーを身につける。

「盗賊に襲われそうな剣だ。レテなら撃退できるけど僕が守りきれるかは分からない。それはゴブジンセイバーも同じか。剣の価値に誰も気づいていないだけだ。時間の問題さ」

 ネアスは納得してレテの剣を身につける。

「勝負はどうなるんですか。レテ様は答えを間違っていました。私もレテ様のおかげで正解できました。ネアス様の二勝でよろしいですか?」

 ミヤが二人を交互に見る。

「私は構わないかな。勝負には負けたわ、これは紛れもない事実ね。ヒントが同じだったのはネアスの落ち度、答えも一緒で引っ掛けにもなっていないかな。でも、勝負は勝負。勝ち負けは決まり、決まり」

 レテがお菓子を口にする。味は感じる。彼女はミヤにもお菓子を手渡す。

「ありがとうございます、甘いお菓子は大好きです」

 ミヤは笑顔になる。

「答えが同じならヒントを変える。ヒントが同じなら答えは同じでも引っ掛けになる。僕は成長する。レテに分からない謎を作る。キミは迷い、戸惑い、道に迷う。いい考えだ」

 ネアスはつぶやく。

「ネアス、自分の世界も大事だけど勝負の答えも聞かせてくれるかな。ラトゥールはキミのそういう所が好きなのかな。不思議ね、謎の一つかな」

 レテはネアスの目を見る。

「レテの勝利で良い。ドロー、ミヤに任せる」

 ネアスはミヤに託す。

「レテ様はゴブジンセイバーで正解、ネアス様は一度レテ様を不正解に導きました。両方とも勝利です」

 ミヤは宣言する。

「神官らしい良い判断かな。ミヤの見習いが取れる日を楽しみにしているわ。後は具体的なお願いを教えて欲しいかな」

 レテはネアスに尋ねる。

「僕は冒険者になってすごい発見をする。たくさんのララリをもらって豪邸に住む。王様に会って褒めてもらいたい。王女様に結婚をしたいと伝えたのさ」

 ネアスは恥ずかしそうに口にする。

「ゴブリンも宝も何も出てきません。どういう事ですか?」

 ミヤはネアスに問いかける。

「謎は深まる。答えはゴブジンセイバー、願いはたくさん。どれも叶ってないし、無理そうな願いかな」

 レテはネアスを見つめる。

「お姉さん神官さんは笑って僕に教えてくれたのさ。願い事一つ、今すぐ言いなさい」

 ネアスは二人に伝える。レテたちは彼の答えを待つ。

「精霊の剣、僕はそう答えた。支配者を倒した剣が欲しい」

 ネアスは願いを口にする。

「ネアスはゴブジンセイバーを精霊の剣だと思っていたのね、面白い予測かな」


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