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お姉さんは良い

 レテは三人にピクニックの予定を教える。ネアスとニャンは少し緊張しているようだ。ミヤはどこに向かうのか楽しみでたまらない。

「ここもステキな所だけど特製たまごサンドを食べるのには適していないかな。もう少し開けた場所があるからそこで食事の時間。ネアス、続きをどうぞ!」

 レテはネアスの手に触れる。

「僕の村には風の神殿もないし、神官さんもいない。だから巡礼の神官さんが時たま村を訪れるのさ。同じ人の時もあるけど、違う人の方が多い印象だ」

 ネアスが話を始める。

「私も巡礼の旅に出る予定です。まだまだ先の話です」

 ミヤがつぶやく。

「ネアス様の土の村は遠いにゃん。王都近郊の神官さんは訪れる事は少ないにゃん。ニャン族もくじ引きで選ばれていくにゃん」

 ニャンは設定を守る。

「土の村なんて聞いた事のない村ね。ううん、存在しない村なのは知っているわ。誤解しないでね、グラーフの街は知っていたかな」

 レテは設定を破らない。

「ある夏の夜の話さ。村の警備のおじさん。子どもの頃の話だ。今の僕より少し年上の青年が駆け寄ってきたのさ。美人の神官さんが来たから見に行くと良い。この村じゃ永遠に会えないってね」

 ネアスは話を続ける。

「私もおばさんなのかな。子どもたちは影では騎士のおばさんがやって来たって行っているのかな。おばさんって私も言っていたけど、誰が私に教えたのかな」

 レテは真剣に考える。

「レテ様はきれいでやさしくてかわいいお姉さんです。私より小さい子にはしっかりと指導しますから安心してください」

 ミヤが答える。

「ニャンは何度も聞いたにゃん、もっと薬草を集めてくるにゃん。話の終わる時間も分かるにゃん。任せるにゃん」

 ニャンは大きな木の裏に行く。

「ニャン、気をつけてね。そこは木の根が地上まで出ているから足場が不安定なの。ニャンなら大丈夫かな」

 レテは大きな声で注意を促す。ニャンの返事が聞こえる。

「僕は急いで警備のお兄さんが教えてくれた場所に行ったのさ。ちょうど精霊伝説の一巻の二度読みしていた最中だったからきれいなお姉さんに憧れていたのさ」

 ネアスは赤くなる。

「ヒロインね。気が強い主人公より年上のお姉さん。ミヤも一巻はしっかりと読んだでしょ。話をしても大丈夫かな」

 レテはミヤに確かめる。

「しっかり読みましたとは言えません。レテ様とネアス様の情熱には負けると思います。でも覚えています。主人公が火の精霊の相手に選んだ女性です。それが運命の始まり」

 ミヤは答える。

「怒って当然!相手の気持ちを考えないで勝手に選ぶんだから!彼女にも目的が会ったから良かったけどね」

 レテは精霊伝説を思い出す。

「その場所に到着すると村の男性がたくさんいた。人が少ない村だからたくさんとは言いにくいけど僕の目から見たら一杯だった。一目見る事も出来ないとすぐにあきらめて精霊伝説を読もうと思ったのさ」

 ネアスは話を続ける。

「正解。きれいなお姉さんより精霊伝説が大事、大事。オシマイ、オシマイ」

 レテは話を終わらせようとする。

「レテ様、どう考えてもきれいなお姉さん神官とネアスさんは知り合いになります。再会の約束をします。大人になったら風の神殿で会いましょう。ネアスさんが王都に向かう理由の一つです。いいえ、違います」

 ミヤは致命的なミスをする。

「ミヤは神官だからね。そっちに感情移入するのは仕方ないかな。ネアスは冒険者兼聖騎士、関係ないかな」

 レテはネアスをニラむ。ネアスは急いで話を進める。

「神官さんはきれいな声で祈りを唱えた。みんなもそれに続いて祈りを唱えたんだ。神官さんは目を閉じるようにみんなに伝えた。僕も目を閉じた。少し時間がたつと誰かが僕の手を握った気がして目を開けると神官さんがそばにいた」

 ネアスはすぐに話を続けようとするがレテが遮る。

「信じられない、ネアス!モテない、モテない同盟!ガーおじに対する裏切り行為ね。きれいなお姉さん神官に手を握ってもらった!モテない!モテる!モテなくない!」

 レテの悲鳴がリンリン森林に響く。

「にゃーん、にゃーん」

 木の奥からニャンの悲しげな声が返答する。

「ネアス様、どうしてこんな話をする気になったんですか?意味が分かりません。私でもダメな事は分かります」

 ミヤが毅然とネアスに注意する。

「僕はそうだ。今みたいに焦って、手に汗が流れるのを感じた。心のざわめきを感じた。きれいなお姉さん神官が何故かと思った。僕は悪い事をしたんだ。その日の朝に両親に隠れてニャン族のお菓子を食べたのがバレたと思った。僕はそれをお姉さん神官に告白しようとした。

 ネアスの顔から汗が吹き出る。

「それはないかな、お姉さん神官はビックリしたでしょ。急にお菓子を食べてごめんなさいって言われたら不思議な子って思うかな」

 レテは笑みを浮かべる。

「お姉さん神官さんは僕が話をしようとすると脇をくすぐってきた。僕は息が出来なくなった。僕は笑うのをガマンするのに必死だった。お姉さん神官は僕の手を引いて村の広場の方に向かっていった。他の村人は目を閉じたままだった」

 ネアスは一度息を整える。

「変な神官さんですね。どこで勉強をしたんでしょうか、神官としては良くない行為です。ウソはダメです」

 ミヤが憤慨する。

「ま、悪い人ではなさそうね。そのお姉さん神官とは友達にはなりたくないかな。もっと上手く立ち回るべきね」

 レテは感想を述べる。

「広場に着くとお姉さん神官さんは僕が抱えていた精霊伝説を貸して欲しいって行ってきた。僕はきれいなお姉さんにお願いされるのは初めてだったからすぐに精霊伝説を手渡した。どうぞ、暗記しようとしたけど僕には出来そうにないからお姉さんに上げます」

 ネアスはレテの反応を確かめる。機嫌が悪い。

「きれいか、きれいでやさしくてかわいい私の前できれいなお姉さんの話ね。精霊伝説の暗記もあきらめるし、ネアスは私が鍛えて上げないとダメかな」

 レテはネアスをニラむ。

「お祈りの暗証も難しいのに長い精霊伝説を暗記するのは不可能です。難しいですし。それなら神官になった方が楽を出来ます」

 ミヤは意見を述べる。

「お姉さん神官は笑顔で精霊伝説を受け取ってくれた。この村にしばらく滞在するから問題はない。読み終わったら返してあげる。お礼にお菓子を多めにあげるって言ってくれたのさ。でも、僕は焦ってしまってドギマギしてしまった」

 ネアスは話を続ける。

「お菓子の事がバレていないか気になって仕方がなかったのかな。少年ネアスくんはつまみ食いの達人だったみたいね」

 レテが笑みを浮かべる。

「風の神殿特製のお菓子ですね。香りだけは良いです。味は他のお菓子と変わりません。私は飽きました」

 ミヤが表情を失くす。

「たまに食べるとオイシイ味だ。お姉さん神官は別のお礼を提案してきた。願いの祈りを唱えてあげる。好きな事、やりたい事を言ってくれたら私がそれを風に伝える。風がそれを世界に運ぶ」

 ネアスは一度話を止める。

「勝負の時間ね。ネアスの願い、私は確実に正解を導き出せたかな。ミヤはどうする?ヒントは私から出すわ」

 レテはネアスを見つめる。

「私も参加します。ヒントをください!」

 ミヤは元気になる。

「答えはレテには簡単すぎるけど構わないさ。レテは答えを知らない。予想はし易いけど事前に話を聞いていた訳じゃない」

 ネアスは勝負に乗る。

「ミヤに正解してもらう、ヒントは三つ。ミヤが間違った答えを出したら私の負け!この条件ならオモシロくなりそうかな。決めた、異論は認めない!」

 レテの提案にネアスがうなずく。

「責任が重いです。レテ様の答えが正解かどうかも分かりません。私は最善を尽くします。勝利の女神様です」

 ミヤは気合を入れる。

「レテの答えを確認しよう。もし外れていたら大変だ!」

 ネアスが立ち上がろうとするのをレテは押し止める。

「正解に決まっているわ。私が間違うわけがないかな、外れていたらネアスに二勝。一気に差を縮めるチャンスね。無理だけど、ガンバレ、ネアス」

 レテは一応応援する。ネアスは小さくうなずく。

「お二人の意見が一致しているなら大丈夫です。ヒントは三つですね。一つ目で当てたら景品はありますか?」

 ミヤはレテのカバンを見つめる。

「そうね、ミヤにも頑張って貰わないとイケないしね。どうしようかな、何が良いかな、これが一番ね」

 レテはカバンからお菓子を取り出す。ミヤは驚く。

「神官長のお菓子です。いつの間にレテ様はカバンに入れていたのですか。私はずっと見ていたハズです。思い出せません」

 ミヤは笑顔になる。

「ちょっと高価そうなお菓子だね。景品にはちょうど良い、僕は少し黙っている。ここは話さない方が勝利に近づく。万が一はある」

 ネアスは空を見て気をそらす。

「うっかり答えを言ったら大変、大変。良い判断かな」


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