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たまごサンド

 シルフィーの穏やかな風がリンリン森林に吹き渡る。その風で木の葉のざわめきが聞こえてくる。

「ガーおじはわざとだよね。私をからかっているよね、確実かな」

 レテの声には怒りが混じっている。

「ついついなのじゃ。いや、違うのじゃ。そんなわけないじゃろ、レテ殿。だからワシはモテないのじゃ。思い出したのじゃ。覚悟は決めたのじゃ」

 ガーおじは仁王立ちでレテの風を受けいれるようだ。

「一回位はシルちゃんで吹っ飛んでみるのも良い経験よ。けっこう楽しいわよ、ネアスも気に入っているしね」

 レテがネアスの方を見ると、今度はネアスが頭を抑えて倒れ込んでいる。

「ネアス、どうしたの。呪いで食べ物を取ると頭が痛くなるとかなの、それはまずいわね。すぐに街に行こう」

「精霊の力は便利じゃな。ネアス殿を頼みますのじゃ。ワシは後で街に追いかけていくのじゃ」

「あの看板を右に進めば街に着く。待っているからね、ガーおじ」

 レテはシルフィーの力を強めて、ネアスを街の方角へと飛ばそうと試みる。

「体をギュッと丸めて、息は全部吐いてね。呪いよりはマシでしょ。行くわよ、シルちゃん。頑張るわよ」

 シルフィーはネアスをそっと空中に浮かばせる。その下に竜巻を作ろうとする。ネアスは宙に浮かぶと焦りだし、レテに説明をはじめる。

「レテ、大丈夫。大丈夫じゃないけど。頭は痛くないよ。食べ物の味がしない事が思っていたよりショックで」

 ネアスは涙声で、宙でバタバタしながら説明を続ける。

「レテのたまごサンドはもうおいしくないし、モテそうにもないし、ゴブリンの役目もわからないし、どうしたら良いか」

「そうじゃな、ワシには何も思い浮かばないのじゃ、ゴブジンセイバー、聞いたことのあるような、無いようなじゃ」

 ガーおじはモテない記憶に思いをはせる。手がかりがないか考え込む。

「私の特製サンドのおいしさを一度知ったら、たしかに。そうね、分かるわ。あの味をしばらく食べられないなんて考えられないわ」

 レテはシルフィーにお願いして、風の力を打ち消してもらう。ネアスはやさしく地上に降ろしてもらった。

「でも、どうしようもないわ。街に言って休んで、今後の事をかんがえましょう」

 レテはそっとネアスの肩にふれる。その後、地面の土をなめてみる。

「ダイジョブ、ダイジョブ、出発進行ね!」

 レテはうなずく。

「そうじゃ、街でおいしいものを食べて元気になるのじゃ。道を進めば、すぐに着くのじゃ。楽しみじゃ」

 ガーおじの言葉にネアスは反応するが、なんとか気を取り直そうとする。

「ガーおじはわざとよ。ネアス、気にしない。気にしない。いこ、いこ」

 レテはガーおじをにらみつけると、先頭を切って前に進もうとする。

「ワシの言うことなど無視するのじゃ、ネアス殿。ワシを相手にするな。気にするな、気にするなじゃ」

 ガーおじは大きく首を振る。

「無視はできないけど、ガーおじが良い人だとは分かっているので問題ないです。僕が気にしすぎなんだ」

 ネアスは深呼吸をして心を整えようとする。整わないようだ。

「いろいろあったし、仕方がないよ。何も考えずに行こうよ。それか、楽しいことを考えながら行こっか?」

「それが良いのじゃ。食べ物以外の良いこと。モテることを考えるのじゃ」

 ガーおじが名案を閃く。ネアスは同意してモテる事を考え始め元気が湧く。

「分かった、よし。僕も出発」

 ネアスは二人の背中を追いかけていく。

 三人は魔力の泉を後にして、ゆっくりと出発していく。道は平坦で進みやすくてのんびりと話をする余力もあった。

「しかし、お腹が減ったのじゃ。いや、減ってないのじゃ」

 ガーおじがうっかり口を滑らしてしまう。

「ガーおじ、無理しなくて良いよ。ゴブジンセイバーが僕にはある。この剣で世界を救うのさ」

 ネアスは自信なさげに答えて、無理して前に進もうとする。立て札の道に戻ると三人は右の方角へと歩を進める。

「この先の街はストーンマキガンよ。おいしい料理がたくさんあるから、二人とも楽しみにしてね。何かの縁だから、おごってあげるわよ」

「レテ殿も、わざとなのじゃ。ワシら二人は性格が悪いのじゃ、似たもの同士じゃな、ワハハ」

「私は性格悪くないわよ。やさしいのよ。シルちゃんだって、モラも分かってくれているわ」

 レテは焦りつつも、胸の中のモラに声をかけて仲間を求める。彼女はまた、お昼寝しているようである。

「僕も性格は良い方じゃないから、三人一緒だね。だからモテないのかな、性格良くする方法ってあるのかな」

 ネアスは夕焼けの空を眺めながら、二人をフォローする。

「ガーおじは性格悪いけど、私は違うからね。ネアス、そこはしっかりと覚えておきなさい。やさしさのための厳しさよ」

 レテも夕焼けを眺め、それっぽいことを言って誤魔化そうとする。

「ワシは記憶を戻さねば、そうすれば性格の良いナイスおじになってモッテモテ道を進むのみじゃ」

 ガーおじは自分の過去に望みを託して、希望を持って先頭を進んでいく。

「ネアスもそんなに性格悪そうには見えないけどね。気が弱そうだけどね」

「でも、ゴブジンセイバーを取った時はチョット悪そうな感じがしたかな。まだ、私は会ったばかりだしね。分からないことも多いね」

 レテはネアスを見る。変化はない。

「あのときの事を覚えているのか、レテ。あの時は動転して、いや言い訳は良くないよね。変な妄想をしてしまったよ。今も少し考えていたんだ」

 ネアスは恥ずかしそうにして、ガーおじの後に続く。

「笑わないから、聞かせてよ。ここまで聞いたら気になって眠れなくなるわ。お願い、ネアス」

「ワシも聞きたいのじゃ、ネアス。旅の仲間じゃ、どんなことでも話したほうが良いのじゃ。ため込むことはないのじゃ」

 二人に促されて、ネアスは重い口を開こうとする。

「そうだよね。街で何があるかもわからないし、別れ別れになることもある。今に内に話しておこうかな」

 ネアスは初めて他の人に妄想の話を始める。

「楽しみ、楽しみ。別れは近いのかな、遠いのかもね」


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