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モテない記憶

 リンリン森林では夕暮れ時を迎えようとしていた。三人と一匹はゴブリン神官の言葉を噛み締めていた。レテが真っ先に口を開く。

「すごい剣を使えるようになったのよ。その間だけ、少し不便なだけよ。気にしない、気にしない、ネアス」

 レテはネアスから距離を取るため、気づかれないようにジリジリ後ろに下がっていく。

「そうじゃ、そうじゃ。ゴブジンセイバーエクススラッシュ、かっこいいのじゃ、ワシも使ってみたいのじゃ。ワシは急にジャンプをしたくなったのじゃ、ジャンプじゃジャンプ」

 ガーおじは後ろにジャンプして一気にネアスから離れていく。

「私もジャンプしたくなったわ。ガーおじとは気が合うわね。ジャンプ、ジャンプ、エクススラッシュセイバー!」

 レテは自分なりに精一杯に叫び、小刻みにジャンプしていく。ゴブリン神官は絶好の機会とばかりにこの場から立ち去ろうとする。レテたちはピカの光に目がくらむ。

「これは何でもない光です。信じてください。信じてくれないかもしれませんが、三人とお仲間の方で役目を果たすのを期待しています」

「私も指示通りにしているだけですので、許してください。うらまないでください、さようなら。また会わないことを祈っています、ピカ、ピカ!」

 辺りが光に包まれて、三人と一匹がその場に残される。

「力も分からないゴブリンの剣を手に入れて、大切なモノを奪われる。話がうますぎるのさ。レテの言う通り、気にしないようにするよ」

 ネアスは二人に笑顔をみせて、安心させようとする。

「レテ、レテ」

 モラがレテの胸から飛び出し、ネアスの方に飛び立つ。顔にくっついて足をバタバタして、離れようとしない。

「モラはなぐさめてくれているのかな。元気出せってことかな。ま、モラが触っているって事は安全なのかな」

 レテは半信半疑ながらもネアスの方にジャンプする。

「そうじゃな、落ち込んでいても仕方がないのじゃ。未来の事を考えるのじゃ。ワシの記憶は過去なのじゃ、どうするのじゃ、ワシは?」

 ガーおじはその場で考え込むふりをする。

「ゴブリンの祝福は良いとして、呪いはなんだろうな。僕の大切なものか。急には思いつかないな、でも何も知らずに動くのもなあ」

 ネアスは下を向く。

「モテなくなるとか女の子に嫌われる呪いかな。一生デートできないかわいそうな呪い。でも、そんな感じはしないかな」

 レテはピョンと小さいジャンプをして、ネアスに近づく。

「モテないのはもともとだし、それが呪いなら楽だね。街に行って女の子に声をかけないかわからないけど。緊張するな、初めてだ」

 モラが顔にひっついているので話しにくそうだ。

「ワシも手伝うのじゃ、心配することはないのじゃ。女性に声をかけて失敗するのは慣れているのじゃ。おお、ワシはモテないようじゃ」

 ガーおじは大声を出す。

「記憶が戻ったのじゃ。ワシはモテなかった。モテる努力をした記憶がよみがえっくるぞ〜」

 ガーおじは頭を抱えて、地面にうずくまる。ネアスは近づくとわるい気がして、その場で見守っている。

「ガーおじはそっとしておいた方が良いかな。変に声をかけて、記憶が戻るのを邪魔しちゃいけないしね」

 レテはピョンとジャンプをすると、モラに手招きをする。

「モラ、戻りなさい。ネアスは困っているでしょ。また今度遊んでもらおうね、良い子だから、お願いね」

 モラは遊びたりないようだが、レテの胸の中へと戻っていく。

「ありがとう、レテ、助かったよ。デートをする以外は何かな、神官になれなくなるとかかな、それともお金がたまらなくなる」

 ネアスは地面を見つめている。

「それも大変ね。でも、今分かる事ではないわね。そうね」

 レテはネアスとの会話を思い出し、ひらめいたようだ。

「私のたまごサンドがおいしくなくなるとか、どうかな?それなら今からでも確かめられるわ」

 レテはカバンの中に手を入れる。

「レテのたまごサンドはおいしいよね。でも、たべものが美味しくなくなるのか。いまいちピンとこないな。好き嫌いは少ないし大丈夫さ」

 ネアスは顔を上げる。

「確かめましょう、ガーおじがさっきポケットに渡しの特製サンドを突っ込んでいたのを見たわ。もらってくるわ」

 レテは寝転んでしまったガ−おじに心配そうに声をかける。

「ガーおじ、大丈夫。気持ち悪いなら起き上がらなくて構わないから、私の特製サンドをわたしてくれないかな、街はもうすぐよ。ガマンできるでしょ」

 ガーおじはレテの声を聞くとムクッと起き上がる。

「レテ殿、ご心配ありがとうなのじゃ。体の調子は良い。少し混乱しているだけじゃ、昔良く筋肉を鍛えていた事を思い出したのじゃ」

 ガーおじは自分の体を見つめて、ため息をつく。

「記憶喪失になる前に鍛えるのをサボっていたようじゃな。ワシは確かにモテるために筋肉を鍛えていた事を思い出した。その光景が懐かしく頭に浮かぶのじゃ」

「良かったですね、ガーおじ。昔はムキムキだったんですね。僕も鍛えようかな、鍛えれば戦士になれるかな」

 ガーおじが答える。

「残念ながら筋肉だけではモテないようじゃ。ある女性に断られた記憶も一緒に思い出したのじゃ、どうすればモテモテになるのか」

「モッテモテ道も良いけど、今は特製サンドももらえないかな。街についたら宿でお話しようよ」

 レテは無理やりガーおじのポケットに手をツッコミ、たまごサンドを取り出す。クシャクシャになってしまっている。

「味は変わらないし、さあ、どうぞネアス」

 レテはネアスの口に無理やり押し込んであげる。

「モグモグ、本当だ。レテの言う通りだ。味がしない?」

 ネアスは静かに下を向く。

「ネアス殿、もともと大した味はしないのじゃ、ワハハ」

 ガーおじは笑う。

「意味が分からないわ、私特製サンドの味は最高のハズかな」


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