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秘密組織

 風の神殿の裏口ではレテたちがお話を続けている。一度ドロスは三人を呼びに来たが邪魔をしては悪いと思い、すぐさま立ち去っていった。外の雨も降り続いている。

「ネアスは呪いのせいで味が分からないの。最後に食べたのが私の特製たまごサンド!不幸なのか幸運なのか判断がムズカシイかな」

 レテは二人に問いかける。ウィルくんが戻ってくる気配はない。

「レテ様の手料理が最後の食事なら、どんなものでも幸せのハズです。王都の人々も羨むこと間違いなしです」

 アーシャは即答する。

「ドロスがちらっと言っていたわね。味がしない呪いがレテとの絆を深めるきっかけになったのかしら。世の中は分からないことが多すぎるわ」

 ラーナも目が回ってきたので観察を止める。

「モテない同盟はガーおじがリーダーでネアスが副リーダー、アーシャは新人だから下っ端から始める事になるけど良いのかな」

 レテはアーシャを問い詰める。アーシャは大きくうなずく。

「もちろんです!私は潜入して彼らの実態を探ります。末裔、王、記憶、セイバー、魔術?!私の苦手な事ばかりですが頑張ります。きっと今後の私の成長に繋がります」

 アーシャの決意は堅い。

「私はスルーするわ。二人とレテには興味は尽きないけどモテない同盟は無理かしら。私はモテるし、男の人に声をかけられて困っている側ね」

 ラーナは興味がない。

「アーシャだってモテるわ。モテない気持ちになることが出来る人は誰でも入会することは出来ると思う。私はモテない気持ちは分からないかな」

 レテはフォローしようとした。

「お二人ほどはモテません。私は槍が得意でちょっとだけかわいいので皆さんがチヤホヤしてくれただけと理解しました。勘違いをしていたことに気づいたんです」

 アーシャは謙虚に答える。

「私もアーシャはモテると思うわ。服装やアクセサリーを工夫すれば誰でも男性の気を引くことは出来るわ。モテても良いことがないかもしれないけどね」

 ラーナは指輪を見せる。レテは近づいて、じっと見る。

「男の人からのプレゼント。いつかは私も貰いたいかな、風の槍は武器?女の子に武器のプレセントはどうなのかな」

 レテは風の槍をちらっと見る。槍は静かに佇んでいる。

「結婚してほしいって言われたわ。二年前だったかしら、今だって私は若いけどその時はまだ恋人を作るなんて考えてもいない時だったわ」

 ラーナは指輪を見つめる。

「ラーナさんは結婚していないですよね。貴族ですから婚約をされているのですか。早くに結婚される方も多いって聞きます」

 アーシャは興味を惹かれる。

「貴族同士で結婚するのが普通みたいね。騎士は騎士同士で結婚することは少ないね、張り合っちゃうのかな」

 レテはアーシャを見る。アーシャも答えられない。

「私は魔術を極めたいから断ったわ。でも、その人は待っているからこの指輪を身につけていて欲しいって言われたの。初めて男の人にもらった指輪だったから付けることにしたわ。その人に興味はないけど思い出の品をして取っておくことにしたのよ」

 ラーナは素っ気なく答える。

「そんな事をしたら相手は本気になるわよ、結婚しないでラーナの事をずっと待っていたらどうするのよ。やっぱりあなたに興味はないではすまないかな」

 レテが心配するとラーナは微笑む。

「三年後に結婚しようって約束をされたんですか。魔術の勉強をする期間が欲しい。でも、ラーナさんはその方が好きではないのでしたね」

 アーシャはラーナのきれいな指を見つめる。

「彼は貴族よ。すぐに他の私よりもきれいな貴族の女性と結婚したわ。今は王都で二人で仲良く暮らしているらしいわ。時々、手紙が来るのよ。キミも王都に遊びにこないってね」

 ラーナの言葉にレテたちは怒り出す。

「貴族、貴族は!どう考えてもラーナに手を出すつもりじゃない、仲の良い奥さんがいるのに信じられないわ。どの貴族も同じなのかな」

 レテは顔を真っ赤にする。

「貴族に声をかけられるのはモテるとは言わないんですね。知ってはいましたけど体験談を聞くとコワくなります。あの時付いていったらヒドイ目にあったのでしょうか」

 アーシャがレテを見る。レテは首を縦に振る。

「アーシャは貴族なんて一突きすれば良いだけよ。私も面倒な時はいつも簡単な火の魔術を使って脅かしていたわ。そういう事ばかりするからお父様がお目付け役にクロウを雇ったのよ。まあ、彼の方がマシかしら」

 ラーナは手を引っ込めて話を止める。

「ラーナはモテない同盟に入れないのは確定ね。ガーおじがその話を聞いたら、ラーナ殿はしっかり恋愛をしたのじゃ、どう考えてもモテない同盟にはふさわしくないのじゃって言うかな」

 レテはガーおじの真似をする。ラーナは笑い出す。

「レテ様はガーおじさんの特徴を良く捉えています。私には出来ない技です。どのように身につけたのですか?」

 アーシャは真剣な顔で質問する。

「恋愛なのかしら、話もまともにしていないわ。結婚して一緒に王都に来てほしい、キミとともに暮らしたいって言われただけ。手紙を頻繁にくれるわね、今は大臣の下で働いているそうよ。王国のために働くなんて貴族らしくなんてツマラナイわ」

 ラーナはモテない同盟に少し興味が出る。

「大臣ね。今度ラトゥールの件で会うことになりそうかな。ラーナも一緒に来てその元恋人の悪行を暴くのも楽しそうね。大臣は軽い男はキライみたい」

 レテは大臣と会うのが少しだけ楽しみになる。

「私もレテ様の護衛として大臣様にお会いしてみたいです。いつも副騎士団長がついていくので私たちにも機会が欲しいです」

 アーシャはレテにお願いする。

「良い提案。彼の事は話すつもりはないけど大臣とは会ってみたかったの。私のお父様とは相性が悪いみたいだから……」

 ラーナは口ごもる。

「三人で大臣に会いましょう!モテない同盟に対抗して私たちはモテる同盟を結成しましょう。大臣に認可をもらって正式な同盟にしようかな」

 レテは二人に提案する。

「止めてください、レテ様。ダメです、反対します。ありえません、三人だけの秘密の話にしましょう。ラーナさんもお願いします」

 アーシャはラーナに救いを求める。

「私も反対。反対二で否決。モテる同盟は良くないかしら、もう少し名前を練ったほうが良いと思うわ」

 ラーナが冷静に答える。

「風の夢を見る者。あの時は言わなかったけど、現実を見た方が良いかな。風の現実を見る者、夢ばかり見ていたらろくな人にならないかな。デフォーは夢を追い求めすぎているわ」

 レテは防御する。

「風の夢を見る者ですか。私も聞いたことがありません。昨日は疲れていたのか夢を見ないで朝はスッキリ起きました」

 アーシャはいつも早起きだ。

「私は好きな方かしら。魔術は夢を見ることで発展してきたわ。パーフェクトモチだってモーチモテ博士の夢の結晶よ」

 ラーナはカバンのパーフェクトモチを取り出す。

「気があうわね、ラーナ。私もパーフェクトモチを常に持ち歩いているわ。ちょっとだけでも元気になる最高の食品の一つかな」

 レテは間違ってストーンマキガン特製クッキーを取り出す。すぐにパーフェクトモチも手に取る。

「パーフェクトモチ。この間に王都のお店で売っていたのを見かけました。友達とケーキを食べる約束をしていたので買わないことにしたんです。どうしてあの時の私は友達を優先したんでしょうか」

 アーシャは取り残された気持ちになる。

「友達を大事にするのが正解かしら。パーフェクトモチにはそれ以上の価値があることは否定できないけど、約束は守るものね」

 ラーナはパーフェクトモチを大事そうにカバンにしまう。

「三人ともパーフェクトモチを携帯していたら私たちはパーフェクトモチ同盟を結成する所だったかな。悪くはないけどパーフェクトモチは既に完璧だから必要がないわ」

 レテもすぐにパーフェクトモチをカバンにしまう。アーシャに特製クッキーを差し出すが彼女は受け取らないので自分で食べる事にした。

「同盟は良くないわ。パーフェクトサークルはどうかしら。モーチモテ博士に尊敬を込めてのステキな名称。そうしましょう、レテ!」

 ラーナは笑みを浮かべる。

「二人だけのサークル活動です。私はモテない同盟でネアスさんとガーおじさんと仲良くする事にします。三人でケーキ屋さんに行ってきます。冒険者の友達から美味しいケーキのお店を聞きました」

 アーシャは反撃を試みる。

「モテない同盟に私は参加できないし、どうしようかな。私も一緒にケーキ屋さんに遊びに行きたいわ。考えるのよ、レテ」

 レテは頭を抱える。風の槍はゆっくり回っている。

「私もケーキは好きよ。一時的にモテない同盟に参加することに決めたわ。ガー王に頼めば仲間にいれてくれるわ。レテは難しいでしょうね」

 ラーナは自信満々だ。

「レテ様もネアスさんに頼めば問題ないです。私は良くない事を言いました。お腹が減ったのかもしれません。宿の昼食の量が足りなかったみたいです」

 アーシャは反省する。

「アーシャは良い子かな。私が変な事を言ったのが悪かったと思うわ。モテない同盟の事は放っておきましょう。モテだけが大事なことじゃないかな。マリーの特製の昼食を食べましょ。私も小腹が減ってきたかな」

 レテは大きなカバンを開けて中から特製サンドとドリンクを取り出す。最初にアーシャに手渡す。ラーナはドリンクだけ受け取る。

「ありがとう、レテ。私はこれだけで良いわ、あんまり食べすぎると頭の回転が悪くなるの。本当はたくさん食べたいだけどね」

 ラーナは静かにドリンクを飲みだす。

「魔術師は頭脳を使うから仕方がないかな。私は直感とやさしさが武器だから食べてもダイジョブ、ダイジョブ」

 レテは気にせずに特製サンドを口に運ぶ。

「私もたくさん動くから問題ありません。ラーナさんも良かったら一緒に食事の後の運動をしましょう。護身術の練習にも付き合います」

 アーシャはドンドン特製サンドを食べだす。ラーナは少し考える。

「今日は雨だから止めておくわ。水遊びは楽しかったけど一日に何度もおフロに入るのは疲れるわ。今度また誘ってくれるとうれしいわ、アーシャ」

 ラーナは再び風の槍の観察に戻る。

「そう言えば風の夢を見る者ってどういう意味ですか、レテ様」

 アーシャはレテに尋ねる。レテは困ったような顔をする。

「私は間違った事を教えそうね、何だか気に入らないのよね。ラーナ、お願いできるかな?老いぼれの……」

 レテは自重する。

「デフォーの仲間のユーフとハローロ人たちの集まりみたい、ギンドラのギルドに伝わる言い伝え」

 ラーナは続ける。

「流星が降る夜、一人の青年が夢を見る。彼は風に憧れ静かに眠る。彼の願いに従え、冒険者の願いはそこにある」

 ラーナは正確にアーシャに伝える。

「財宝やお宝の話ではないんですね。冒険者の友達は貴族が隠したララリを探し出すと息巻いています。噂では子供にどうしても渡したくなくて地面の奥深くに隠したそうです」

 アーシャのお腹は満足した。

「そっちの方が楽しそうね、地面に埋まっているとなるとゴブジンセイバーと一緒かな。もしかしたらゴブちゃんの財宝がどこかにあるのかな」


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