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自己紹介の話

 レテはモラの後を追い外に飛び出していく。神殿の外でレテはアーシャが突然のモラの出現に驚いている様子を目にする。アーシャはすぐにレテに気づく。

「こんにちは、アーシャ。ちょうど良かったわ、これからの方針を考えようと思っていた所なの。一緒に話をしましょう、モラはやっぱり頭脳明晰、サイコウの相棒ね」

 レテはアーシャが来たことに安心する。

「こんにちは、レテ様。正面にはたくさんの人がいたし、裏口への道にも人がいてどうしようかと思ったら不思議な光が現れたんです」

 アーシャは興奮しながら話し始める。モラはアーシャの胸に潜り込もうとするが失敗する。仕方がないのでアーシャの肩に乗る。

「ウィルくんかな、さっきもゆるふわ感で集まった人たちを誘っていたわ。くせにならないと良いかな。ウィルくんならダイジョブ、ダイジョブ」

 レテは雨を避けるためにアーシャを神殿の中に案内する。裏口ではラーナとハローロが話をしていた。

「こんにちは、アーシャ。昨日の夜はお疲れ様、言い忘れていたけど初めて会った時は迷惑を掛けてごめんなさい。旅に慣れてなくてイライラしていたの。理由にはならないわね。本当にごめんなさい」

 ラーナはアーシャに頭を下げる。

「気にしないでください、騎士の任務です。誰でも失敗はあります。わざとじゃないようなので私は気にしていません。レテ様のお力になって頂きありがとうございます」

 アーシャも頭を下げてお礼を言う。レテはうなずく。

「ラーナ、私に謝罪はないのかな。きれいでやさしくかわいい私も迷惑を掛けられたわ。きっちり記憶に残っているわ」

 レテは疑念を口にする。ラーナは頭を上げてレテを見つめる。

「レテはきれいでやさしくてかわいいから多少の迷惑は目をつぶってくれるでしょ。私は美しくてあふれる知性を持っている。アーシャの事は詳しく知らないのよ、昨日の夜もあいさる程度だったかしら」

 ラーナはアーシャに視線を移す。

「自己紹介ですか?!私は騎士です。レテ様を尊敬しています。槍が一番得意ですが剣術も自信があります。武器がなくても他の騎士に勝てると思います。レテ様が本気で試合をしたら負けると思います。精霊の力を借りなくてもレテ様は強いです。食べる事は好きですし、騎士の中でもたくさん食べる方です。食べ物に関してもレテ様には敵いませんが……」

 アーシャが話を続けようとするとレテが彼女の口を抑える

「長いかな、アーシャ。もっとシンプルに自分の長所を伝えるのが大事、モテないネアスやガーおじだってそんな自己紹介はしないかな」

 レテはアーシャの口から手を離す。アーシャの顔が赤くなる。

「気にすることはないわ、アーシャ。私は何も聞かなかったわ。レテだけが覚えていれば良いことかしら。私は魔術の事を考えていたわ。ハローロは何を考えていたのかしら」

 ラーナは黙って話を聞いていたハローロに問う。

「俺は何を考えていたのか。そろそろ昼食を食べたいと考えていました。冒険中は空腹を忘れる事は良くあるのですが警備をしているとすぐに空腹が襲ってきます」

 ハローロは素直に答える。

「マリーがユーフたちの昼食を持ってきたわ。そろそろ準備が出来た頃じゃないかな。アーシャもいるし、ここの警備は万全、万全。責任は私が取るからキミは昼食を食べてきなさい、これは命令よ」

 レテはハローロをにらみつける。彼は返事をして急いで神殿の奥に向かう。

「レテ様、アーシャ様、お気遣いありがとうございます。私は抜けている所があるからあまり話をしない方が良いです」

 アーシャは反省する。

「それも一つの手段ね。それだとツマラナイわ、レテもそう思わない。仲良くはしなくて構わないけど会話はして欲しいわ」

 ラーナはレテに問いかける。

「アーシャの自由だけど私もラーナに賛成かな。別に変な事はないわ、さっきは変だったけど何かあったのかな」

 レテは怪しむ。

「今日は副騎士団長に昨日の夜の事を根掘り葉掘り聞かれたので疲れました。大臣や貴族に報告するために仕方がない事とはいえ、細かい所まで質問されたので大変でした。その代わりにお昼は高級宿のランチをごちそうになりました」

 アーシャは複雑な顔でレテに報告をする。

「昨日の夜に風の神殿に来たら良かったのよ。どうせ宿でお酒を飲んでいただけでしょ、そのせいでアーシャに迷惑をかけるなんて信じられないかな」

 レテは不満を口にする。アーシャは慌てる。

「街の警備の任務で忙しかったんでしょ。昨日の夜は飲み屋でも大騒ぎだったんじゃないかしら。外は幸運の雨で比較的静かだったけどね」

 ラーナはフォローする。

「ラーナさんの言う通りです。高級宿でもラトゥールの末裔の話で持ちきりだったそうです。レテ様に不思議な二人の使者が現れた。その二人の力でレテ様はラトゥールの末裔の使命を果たす時が来たって噂です」

 アーシャがためらいつつも報告する。レテは驚くがラーナはうなずく。

「ルキンからそんな話は聞いていないわ。黙っていたのかな、それとも私をだます作戦だったの?!石職人ギルドの人は信用できないのかな」

 レテは悲しむ。

「噂、噂!どこからきてドコにいくかも分からないわ。ルキン一人でしかも短時間でたくさんの噂を把握するのは無理かしら。レテがラトゥールの末裔って話になっているみたいね」

 ラーナはフォローをする。

「ネアスさんの名前は出ていません。ガー王って名前は副騎士団長が聞いたそうです。一人の使者は王族でガー王と名乗っているって話です」

 アーシャは笑みを浮かべて報告する。レテは驚愕する。

「ガーおじは王様だったの?!私も聞いていないわ、いつの間に記憶を取り戻したのかな。それにどうして私に教えてくれなかったのよ。いじわるをしたから本当に嫌われちゃったのかな」

 レテの悲しみは深くなる。

「王様で魔術にも詳しいのね、ガー王!人は見かけによらないものね。私も色々な人に出会って目を鍛えないといけないかしら」

 ラーナは反省する。

「噂話です、レテ様、ラーナさん。ガーおじさんと直接会った人の話ではないと思います。記憶喪失の話も伝わっていませんし、モテない事も誰も話していないようです。副騎士団長の情報ですが……」

 アーシャは自信なさげに答える。

「情報源も情報を集めた人も信用が出来ないかな。やっぱりルキンに確認するのが一番ね。副騎士団長は自分の都合の良い話しか覚えるつもりがないのよ」

 レテは気持ちを切り替える。

「ガーおじだからガー王ね。ホントに王様だったら仲良くしないといけないわ。魔術の蔵書を持っているかもしれないわ。しかも貴重品ばかり?」

 ラーナは夢を見る。レテは大きく首をふる。

「ガーおじがガー王だとしても、その王国は残っていないか別の人が支配しているハズ。ガーおじの能力で国を収める事は出来ないかな」

 レテは厳しい意見を述べる。

「私も少しだけガーおじさんにやさしくしようと思います。ガー王だったら魔力のこもった槍とか他の武器をお礼にくれるかもしれません。ラーナさんを見習います」

 アーシャは期待に胸を膨らませる。レテは反論する。

「こういう手口で悪い男に若い女の子が引っかかるのよ。ガーおじもガー王になったら女の子の扱いに上手くなって、楽しむだけ楽しんでお礼はなしかな」

 レテはガーおじに恨みがあるようだ。

「上手くかわすのが良い女のやり方ね。私も練習して身につけようかしら、アーシャも一緒にやってみない?。ガーおじなら私たちでも何とかなるわ」

 ラーナはアーシャに提案する。

「ガーおじさんで練習ですか?!私は遠慮します。でも、貴重な武器を持っているようなら嫌われない程度にお付き合いをした方が良いのでしょうか。ストーンシールドに興味を示す方です。特殊な武器を集めているのでしょうか」

 アーシャはとても迷う。

「ガーおじは別にしても、他の人たちと仲良くするのは良いことかな。私もネアスに気をかけてあげたからラトゥールと出会えたって事は確かかな。この風の槍がラトゥールかは分からないけど、大きな力を備えているのは確かね」

 レテは頭上の風の槍を見つめる。槍はクルクル回り続けている。

「さっきはレテの事を守ってくれたわ。ユーフに槍を突きつけた姿はカッコよかったわね。クロウも腕利きだけどパートナーとしては物足りないかしら」

 ラーナも風の槍を見つめる。槍は速度を上げる。

「ネアスさんとガーおじさん?不思議な人たちです。何の変哲もない頼りない人たちだと思ったらレテ様のお力に一番なっています。私にも出会いはあるのでしょうか」

 アーシャは風の槍に手で触れてみたい。

「アーシャは自己紹介の練習から始めた方が良いかな。私みたいにきれいでやさしくてかわいいって自分を分かりやすく表現する事が大事!初めて会った人の警戒心を解くのが先決ね。後は勝手に贈り物をしてくれるハズ」

 レテは目が回るので視線をそらす。

「ネーくんのレテへの贈り物は風の槍。あるいはラトゥールの力!レテはどうやってネーくんにこんな贈り物を送るようにお願いしたの、気になるわ?」

 ラーナは風の槍を観察し続ける。

「すごくきれいで槍が得意で男の子にとてもやさしいアーシャです。こういうふうに言っていれば私も風の槍をいつかプレゼントしてもらえるでしょうか」

 アーシャは必死に考える。レテはアーシャを抱きしめる。

「アーシャ、無理しちゃダメ。それだとナンパね、ガーおじとネアスのモテない同盟に加入しちゃうかな。お願いだから今までのアーシャでいてね」

 レテはやさしくアーシャに語りかけるがアーシャは納得していない。

「モテない同盟に入ります!このままの私では風の槍みたいなすごい武器を手に入れる事が出来ません。ネアスさんとガーおじさんの動きを見張ります」

 アーシャは決心する。

「ネーくんにガー王か。二人はレテのためなら何でもする感じよね、秘密は何なの、レテ。もったいぶらないで教えなさい」

 ラーナはしびれを切らしてレテを問い詰める。

「特製たまごサンドかな?私にも分からないけどネアスもガーおじも特製たまごサンドの事を良く話すわ。お腹が減っていたのもあるとは思うけど、他では食べる事が出来ない味?!もう一度食べるために贈り物をしてくれているのかな」

 レテは色々思い出してみた。

「レテ様特製たまごサンドですね。確かにお二人に出会った後でレテ様がたまごサンドを作ったとは聞いていません。事実で間違いはないのですか?」

 アーシャの質問にレテは大きくうなずく。

「パサパサのレテ特製たまごサンドか。お店でも誰かに頼んでも作って貰えそうにないわね。とりあえずレテに一度作ってもらって味を覚えるしかない方法はないようね」

 ラーナは悩みこむ。

「私の特製たまごサンドは罪作りな味?!気にしたことはなかったけど、私しか作る事は出来ないかな。マネするのもムズカシイはず。どうしようかな?」


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