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貴族とは!

 レテたちはウィルくんの光で視界を確保しながら道を進んでいく。風の槍に気を止める人はいたがレテがにらみつけるとそそくさと去っていく。マリーに雨は関係ないようで重い荷物を簡単に背負っている。

「マリーは力持ちなのね、騎士団でもそこまでの荷物を軽々と運べる人は少ないかな。雨の日となるとさらに人は絞られるわ」

 レテは感動してマリーに伝える。

「食材はけっこう重いから運び慣れているんだと思うわ。朝から市場に行って良き食材を手に入れるのがおいしい料理を提供する最初のコツね」

 マリーは笑顔で答えつつ歩く速さは緩めない。

「私の実家では商人が毎日食材を売りに来ていたわ。大きい荷物持ちっぽい人たちを数人連れてね。一人で来る人はいなかったハズ」

 ラーナは足元に気をつけながら二人についていく。風の槍はラーナの頭上でクルクル回っている。

「聞いてなかったけどラーナは貴族なのかな。私は貴族の事はキライだけどラーナの事は好きよ。訳の分からない事を言わないのが貴族らしくないわ」

 レテが直球で問いかける。ラーナはうなずく。

「当たり前だけど貴族よ。生まれは自分では選べないわ、私は貴族として生まれて魔術師の道を選んだことを誇りに思っているわ。貴族の生まれじゃないと魔術師になるのは難しすぎるわ」

 ラーナが答える。

「私の知り合いにも魔術師はいません。初めての魔術師の方と話をしましたがラーナさんのお話は分かりやすいです」

 マリーはラーナを尊敬の目で見る。

「貴族はもっと違う話し方をするわ。今日は雨で天気が良くてステキな朝を迎えられましたわ。何と言っても私たちは雨の日に外に出かける事なんてしないからいつもと違う気分で起きる事が出来て幸せですわ」

 レテは貴族の真似をする。マリーはクスッと笑う。

「上手ね、レテ。王都の騎士は貴族との付き合いもあるのね。私はどちらかと言うと変わり者扱いされていたからそんなふうに上手く話せないわ」

 ラーナは素直に感心する。

「ラーナさんが変わり者なんて信じられません。レテの言う事は本当なんですね、貴族は難しい人が多いんですね」

 マリーの宿には貴族は来ない。

「貴族は自分の趣味か異性にしか興味がないわ。たまに大臣みたいに王国に興味がある貴族もいるけど口うるさくて仕方がないかな。優秀なのは認めるわ」

 レテは大臣もキライだ。

「若くてカッコよくて仕事の出来る貴族ってグラッドの街でも有名かしら。お父様も一度お会いしたいみたいだけど先約が多いみたいね」

 ラーナは雨空を見る。

「大臣様の事は私も知っています。王都での話題は大臣様の発言とレテの行動がほとんどってお客様に聞いたわ。二人共私が王都を出てから活躍しだしたから、詳しくは知らないのが残念」

 マリーはもっと噂話に耳を傾けておけば良かったと思う。

「大臣のせいで他の貴族は機嫌が悪い、その腹いせで騎士に口出ししてきたり女の子に声をかける貴族が多くなっているかな。大臣は何でそんなに熱心に仕事をしているのかな」

 レテは疑問を口にする。

「王国を良くしたいんでしょ、当たり前かしら。レテも騎士の仕事が好きなんでしょ。剣と精霊使いの腕を磨いているように私には見えるわ」

 ラーナは答える。

「私もそう思うわ。好きなことだから熱心になって他の人たちとぶつかっても気にしないと思うわ。大臣様は理想があるって聞いたことがあるわ」

 マリーは一つの話を思い出す。

「シャルスタン王国を英雄の名に相応しい国にする。ゴブリンを王国の中から一層して皆に安全な旅が出来る王国を築く!」

 マリーはお客さんのマネをする。

「そんな話もしていたわね。ゴブちゃんともお別れする日が来るのかな、近づかなければ悪い事をする子たちじゃなかったけど最近は違うかな」

 レテはつぶやく。

「今時ゴブリンに近づかないで行動するなんて不可能ね。どこに潜んでいるか分かったものじゃないわ。変な踊りやわめき声は最悪!」

 ラーナはゴブリンにイヤな思い出があるようだ。

「市場に来る方も困っているみたいね。もちろんレテやセオさんが頑張っているのは知っているわ」

 マリーは急いで付け加える。

「セオは真面目に仕事をしているみたいね。他の事も熱心だったみたいだったのが問題かな。やることが多すぎるわ、どれから手をつけるかは決まっているけど……」

 レテは優先順位を変えるつもりはない。

「騎士の任務が最優先でしょ。ゴブリン退治に街と街道の警備、悪い人を捕まえるのも任務。知り合いの騎士に聞いたことがあるわ。なかなか大変な仕事ね」

 ラーナは同情する。

「そのお陰で私も美味しい料理をみんなに提供出来ているわ。騎士の皆さんには感謝しかないわ。レテはすごく頑張っているわ」

 マリーはレテを心配する。

「私の今やるべき事はネアスの呪いを解く事、次にガーおじの記憶の手がかりを探す事かな。後の事は副騎士団長と大臣、後は誰かな、アーシャに押し付けるのはかわいそうだしね」

 レテは二人に教えてあげる。ラーナは驚いて足を滑らす。マリーがさっと支える。

「ラトゥールの末裔の問題、石職人ギルドの揉め事、冒険者ギルドの事、どれも王国に影響を与えそうな事よ。ネアスとガーおじの事はゆっくりと取り組んでも間に合うと思うわ。レテの考えに反対はしないけど……」

 ラーナは控えめに助言する。レテはうなずく。

「ラーナの言うことが最もな意見かな。私一人で出来る事には限りがあるけど、それでも解決しないとイケない問題かな」

 レテは雨空を見上げる。

「私が手伝える事はなさそうね。石版を取り戻るだけが精一杯ね、他の事は私には遠い世界の話だわ。無責任よね」

 マリーはラーナに気をかけつつ歩いていく。

「ラトゥールの末裔の事は私も興味があるけど騒動に巻き込まれるのは避けたいわね。王立図書館でしばらく過ごそうかしら」

 ラーナは迷っている。

「マリーもラーナもありがと。やっぱりネアスとガーおじの事は後回しに考えちゃうかな、いつまでも二人の面倒をみている訳にもいかないわ。私は騎士だからみんなの事も大事に考えないとイケない。イケスカナイ石職人ギルドも!」

 レテは不満を口にする。

「石職人さんたちも悪い人だけじゃないわ。今回の件は不幸な出来事で済ます事はできないの?レテはどうしても気に入らない?」

 マリーは積極的に発言する。

「レテはネーくんとガーおじにこだわり過ぎって言っても良いけど。ネーくんはラトゥールの末裔の可能性もある。その彼が石職人ギルドに危険な目にあわされた。たいしたことにはならなかったけどあそこでネーくんがギルドで閉じ込められたままだったら」

 ラーナは小声になる。

「ラトゥールはここにいない。でも、私は風の槍をあの時点で作る事が出来たわ。ネアスと出会う前は出来なかった事は確かかな。私はきれいでやさしくてかわいいから、ネアスがいなくてもきっと出来るようになったかな」

 レテは風の槍を見る。槍は元気そうにクルクル回っている。

「ガーおじさんがすごい人とは思えないけど、それでもネアスさんも冒険者の中でも敏腕って感じには見えなかったし、レテと一緒にいなかったら大変な思いをしていたわ。必ず!」

 マリーは断言する。

「ダダの冴えないおじさんと駆け出しの冒険者。一人は記憶喪失だけど話を聞かないとわからないことね。見た目は完全に冴えないおじさん、知識はありそうな感じかしら」

 ラーナはガーおじの中身が気になる。

「二人共言いたい放題ね。私だけじゃなくて良かったわ、デフォーは終わりかけの夢だけの年寄り冒険者、ドロスはイケメンまがい、クロウはインチキくさすぎるわ。旅人の翼はニセモノね」

 レテは辛口の意見を述べる。マリーとラーナは微笑む。

「言い過ぎよ、レテ。デフォーはやさしいおじいさん冒険者よ、夢は語るだけで実際はしっかりしていると思うわ。そうじゃないとユーフさんたちは付いてこないわ」

 マリーはフォローする。

「クロウのあの態度は半分演技みたい。わざとあやしく振る舞って相手を混乱させるのが作戦みたいね。私の前でも変わらないのが気に入らないけど、うつくしくてあふれる知性を持つ私を混乱させる事は無理ね」

 ラーナはクロウの秘密を明かす。

「ネアスとガーおじは私と一緒なら立派な冒険者と戦士になれるハズ。私のアドバイスを全て受け入れて、しっかりと行動すれば問題ないかな。とりあえず、ネアスはおはようの挨拶を毎日するべきね」

 レテは覚えている。

「でもレテは騎士でネアスさんは冒険者、ガーおじさんは戦士でしょ。一緒にいるのは難しいわ。三人ともやることが違うし、実力を差がありすぎるわ」

 マリーは現実的な意見を述べる。

「レテが一番忙しいから決定権はあなたが持っているようなものね。レテが二人と一緒にいたくなくなったら三人の関係は自然消滅しそうかしら」

 ラーナはもっと現実を告げる。レテはうなずく。

「ラーナの言う通り。私のさじ加減で決まるのをネアスは気にしているのよ。私たちは三人一緒って約束したのにどうして気になるのかな」

 レテは二人に思い切って相談する。マリーが大きくうなずく。

「仕方ないわ、私も王都から飛び出した後でも昔からの友達仲良くしようって約束したけどお互い忙しくて、今はほとんど会っていないわ。私のワガママで家を出たのが原因だけどね」

 マリーはしんみりする。

「自分のやりたいことを投げ出してまで友情を大事にする事はないわ。どうせ他の事情で結局別れる事になるからどうでも良いかしら」

 ラーナは冷淡に告げる。マリーはうなずく。

「ラーナは今日調子が良いのね。確かに言う通りかな、ガーおじがどこかの国の記憶喪失の王様で、みんなで捜索隊を結成している頃かも。流石の私でも王様とずっと一緒にいることは出来ないかな。その時はネアスと二人っきりね」

 レテは考えていたことを口に出す。マリーは驚く。

「レテはガーおじさんに期待しているのね。きっとこの世界でガーおじさんを王様だと思っているのはレテだけ、聞いたら喜ぶわ」

 マリーは笑みを浮かべる。

「ガー王様か、本名も長いし、ありえないことはないけど。それでも私もマリーの意見に賛成ね。王様はないかしら、近衛騎士はどう?」

 ラーナはレテに意見を求める。

「あれだけうっかりしているガーおじが近衛騎士はないかな。王様を守れないし、名門貴族の出だとしてもガーおじは不安ね」

 レテの答えにラーナは納得する。

「ネアスさんは冒険者を続ける気なの、レテ?それとも他の仕事を考えているの?」

 マリーは気になっていた事を質問する。

「このままラトゥールの末裔が私だって話になったら冒険者を続けるのかな。噂なんて広まるものだからどうにもならないかな。コソコソしていても疲れるだけだわ」

 レテは一応小声で話す。

「気を使うだけ無駄、無駄!貴族の私が言うから間違いないわ。どうやっても貴族たちは噂話を手に入れるわ。どんな手を使っているのかしら」

 ラーナも小声で話す。

「レテ、レテ」

 モラがお昼寝から目が覚めたようでレテの胸から飛び出してくる。雨なのでコートの中に収まったままだ。

「風の神殿はもうすぐね。モラは頭脳明晰、サイコウの相棒ね。ドロスたちはうまくやっているのかな」


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