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今後の方針

 町長の邸宅の応接室では話し合いが続いている。ファレドは一通りの事を話し終えたので特製クッキーをガリガリかじり始める。ルアはクッキーの補充に一度応接室を離れる。

「古文書と紋章はありがたくいただくことにするわ。ありがと、ファレド。後は街の問題だから私たちは関係ないかな」

 レテは町長とファレドを見る。

「ガーおじさんとネアスさんの事は本当に悪かった。私がもっとしっかりと監督していればあんな事は起きなかったはずだ」

 ファレドは再度レテたちに謝る。レテは手で制止する。

「ネーくんの話も気になるわ。詳しくは私も知らないけど何でネーくんも一緒に閉じ込められたの、レテと一緒に行動していたんでしょ」

 ラーナはファレドに問いかけるが先にレテが答える。

「ネアスの事は私の責任でもあるわ。たいした危険はないと思って偵察に出したのが失敗だったわ。幸運の女神様の私と離れたらダメなんて本当に思ってもみなかったわ」

 レテは真面目に答える。部屋の三人はスルーする。

「若い方の男の話か。ネアスさんは店員の振りをして偵察に来たがウチの受付のヤツが怪しく感じて質問したらガーおじって名前が出てきたそうだ。その後、首謀者が地下に連れて行った。すぐに風の槍がギルドの刺さったって流れだ」

 ファレドは淡々と説明する。

「ネアス様も苦労なされたようです。ルアにお土産の特製クッキーを用意してもらうので、ぜひネアス様にも食べてもらってください」

 町長の提案にレテは大きくうなずく。

「ネアスも喜ぶわ、街特製クッキーは固くて食べごたえがあって歯ごたえが最高だから止まらなくなるかな」

 レテは残っていた特製クッキーをチョコチョコかじりだす。

「ネーくんが偵察ね。レテでも間違うことがあるのね、私でもネーくんが偵察は苦手なのは分かるわ。すぐに顔に出る子だからウソもつけなさそうね」

 ラーナはネアスが上手く潜入する様子を想像できない。

「彼が悪いわけではない。名前が出ただけで閉じ込めていたらケンカばかりで危なくて仕方がない。敵を増やすだけで何の利益もない」

 ファレドは風の槍を見つめる。

「ギルドの様子はどうなの、ファレド。騎士団の横暴に対抗する動きが出ていたりするかな。今日も雨で建物は大変でしょ、みんな怒っているかな」

 レテはファレドに気になっていることを尋ねる。

「ナンパしただけの男を半日以上閉じ込めて、その後どんな事をしようとしていたかも不明。それでもギルドが壊されたって文句は言うでしょ。もちろん、ガーおじとネアスの事は秘密。それが大人のやり方」

 ラーナは露骨にイヤミを言う。

「石職人ギルド内では朝にそんな話を聞いた。仲間を守るのを最優先にすべきで多少の事には目をつぶるべきだ。わざわざ余計な事は言わずに建物が壊された事だけ言えば良い。それ以外は黙っていれば何とかなる」

 ファレドは包み隠さずに答える。ラーナはため息をつく。

「予測はしていたからダイジョブ、ダイジョブ。あの程度だとやり足りないのかな。何事も経験ね。ネアスも偵察は良い経験になったわ、今後は絶対禁止」

 レテは自分に言い聞かせる。

「大臣は厳しい方とお聞きします。レテ様も処分は免れないのでしょうか。しかし、そうなると石職人ギルドにもお咎めがあります」

 町長は大臣の噂を気にする。

「優秀な大臣としか私は聞いたことはない。大棟梁は辞めるがしばらくはこの街か王都に滞在するつもりだ。必要ならいつでも呼んでくれ」

 ファレドはレテの味方のようだ。

「石職人ギルドは王族の管轄下に置かれるかもしれないわね。ギルドの揉め事はギルドで解決するのが鉄則。騎士団が関わったとしても原因はギルド内にあるし、よっぽど上手く大臣をダマサないと大変ね」

 ラーナは未来を想像する。

「大臣をだます?!面白いことになりそうね、ダマサれそうになった大臣はどんな報復をギルドにするのかな。楽しみ、楽しみ」

 レテはワクワクする。その時、壁を叩く音がする。ルアが特製クッキーを運んで来た。

「大変お待たせしました。外が騒々しいと窓から見たのですが人々が集まっているようです。レテ様がいるのがバレたのでしょうか」

 ルアはテーブルに特製クッキーを置く。レテはルキンを見つめる。

「私は知りません。一緒に来たじゃないですか、ここにずっといました。本当です」

 ルキンは焦りながらもレテに説明する。

「神官長とドロスが失敗したのね。だとするとマリーのお店の事もバレた可能性が高いかな、みんなは私に何を求めているのかな」

 レテはラーナに問いかける。

「今日はマリーのお店には行けないのね。残念だけど我慢するわ、一緒に災厄を振り払いたいのでしょ。それしかないわ」

 ラーナは言い伝えのラトゥールの役目を口にする。

「ラトゥールは英雄をその背に乗せて闇に立ち向かった。集まっている人々は闇に立ち向かいたいのか。当然と言えば当然か」

 ファレドはあえてラーナの意見に賛同する。

「二人共ふざけちゃダメ、世界は闇に覆われてもいないし、災厄も起きてないわ。ゴブちゃんが増えて大変なのと、荒くれ者たちが暴れているだけ!」

 レテは二人に注意するが彼女たちは気にしていない様子だ。

「私はラトゥール様にララリを恵んで頂きたいです。ほんの少しでも良いので、ホントにちょっとで良いのでラトゥール様どうでしょうか。私は強欲でしょうか」

 町長は風の槍にお願いする。風の槍が光り輝きストーンシールドの後ろに動く。部屋の一同は驚き動けない。レテが最初に口を開く。

「町長が頼んだのよ。見てきなさい、金ララリがたくさんたくさん置いてあるかも」

 レテの言葉を聞くと町長はものすごい速さで確認に向かう。彼は盾の裏で何かを見つけたようで笑顔で戻ってくる。

「この前無くした銅ララリを一枚見つけました。どこにあるかと一日中探したのですが見つからなくて困っていたんです。ラトゥール様、ありがとうございました」

 町長はテーブルの上に銅ララリを置く。ラーナは点検をする。

「ダダの銅ララリね。なんの変哲もない銅ララリ、これがラトゥールの恵み。かわいいご利益ね、私も考えないといけないわ」

 ラーナも願い事を考え始める。

「もっと大きな願い事をした方が良かったかも、もったいなかったかな。私の大事な願い事は何なのかな」

 レテは大事な事を思い浮かべる。もう一つの風の槍が特製クッキーの上に移動する。

「ラトゥール様が気に入ってくださったのでしょうか、それともこの部屋の皆さんのねがいですか。どちらでも母は喜びます。今日も朝から準備していました」

 ルアは目に涙を浮かべながら風の槍の様子を眺めている。

「そうだ、忘れていました。ルアさん、お土産分の街特製クッキーの準備をしましょう。私はとても機嫌が良いのでお手伝いをします。さあ、行きましょう」

 町長はルアを強引に部屋から連れ出していく。

「私もそろそろ帰ろうと思う。しばらくは宿暮らしになるはずだから場所はセオさんに伝えておく。石職人ギルドに帰るつもりはない」

 ファレドはレテの許可を待つ。

「もう少しギルドにいて抑えになって欲しいけど無理な事はお願いしたくないかな。ファレドはこれから一切ギルドには関わらない、これで良いかな」

 レテはファレドに問いかける。

「組織は面倒事が多いのが問題ね。王都の魔術師協会に顔を出すのは辞めておくのが賢明ね。ファレドみたいにはなりたくないわ。私の知性と美しさは嫉妬を招くわ」

 ラーナはファレドに同情する。

「最後の始末だけはつけるつもりだ。それ以上は言う事はない、レテ様は聞かないほうが良い。これでも話し過ぎだ」

 ファレドは口を閉じる。

「始末ね、ファレドも損する方なのかな。損をしすぎるとガーおじみたいに記憶喪失になるかもしれないわね。注意、注意」

 レテは一度神殿に戻り二人の様子を確かめようと決めた。

「ネーくんも遅めの朝食を食べている頃ね。流石にこの時間になって起きてこないって事はないでしょう。ラトゥールはネーくんの様子が分かる?」

 ラーナは風の槍に問いかける。風の槍は静かに佇んでいる。

「まだ寝ているのかな。起こしにいかないとイケナイなんて贅沢すぎるわ。きれいでやさしくてかわいい私のおはようがないと起きられないのかな」

 レテはお土産の街特製クッキーを楽しみに待っている。ファレドは用件が済んだと思い部屋を立ち去ろうとする。

「では、私は失礼します。また会うことになるとは思いますが今日ほど話すことはないでしょう。お話できて光栄でした」

 ファレドは足早に部屋を去っていく。ラーナが後ろ姿を見つめている。

「そのまま行かせて良いの、レテ。ファレドは危ないことをするわ。私の知識が教えてくれるわ、ファレドは不幸になるわ」

 ラーナはレテに問いかける。レテは小さくうなずく。

「誰も私のアドバイスなんて聞かないかな。ネアスには変なアドバイスをしちゃうし、ガーおじはたまにしか聞いてくれないかな」

 レテは問いに答える。

「ファレドは信念がありそうね。レテの言う通りね、クロウも私の言う事なんて半分も気いれないような気がするわ。私もほぼ全部聞き流しているからお互い様ね」

 ラーナは一瞬で気持ちを切り替える。

「今日は一日雨っぽいわね。ラトゥールの力の影響かな、それとも流星群の影響かな。実はネアスのせいかもしれないわね」

 レテも応接室を出てお土産をもらって帰ろうとする。

「雨なんていつでも降るわ。それとも精霊使いはそういう考え方をするものなの、レテ。私には理解不能よ」

 ラーナもレテの後に続く。

「レテ様、私は石職人ギルドに戻って情報を集めてきます。変な事を考えていないか様子を探ってきます」

 ルキンはレテの了承を求める。

「あなたの事は助けないわよ、ルキン。ここで聞いた事をどう使うかはあなたの自由かな。ギルドで私と一緒にいた事がバレてヒドイ目にあっても知らないかな。忠告はしたわ」

 レテの言葉にルキンは首を縦に振る。

「ギルドの全員がファレドさんの敵ではないです。荒っぽい連中は一部のヤツラだけです。関わり合いたくないのが多数ですがファレドさんには申し訳ない事をしました」

 ルキンはそれ以上何も言わずにその場を立ち去っていく。

「騎士にも任務を真面目にしない人は多いけど悪いことをする人は少ないかな。少ないじゃ困るけど……」

 ウィルくんがレテの頭上に戻る。レテはウィルくんを見るがまだ帰りたくないようなのでもうしばらくフラフラしてもらうことにする。


「魔術師は悪いことを考えている方が多いわ。私のように知識を美しく活かそうとする人は少ないわ。私が特別!」

 ラーナは先に応接室を出ていく。レテは最後にストーンシールドの裏を確認するがララリは落ちていない。

「ネアスとガーおじにも話を聞いて大臣対策かな、面倒、面倒!」


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