ゴブちゃん退治
初めましてよろしくお願いします。
レテの冒険にお付き合いしていただけるとありがたいです。
ドーン!地面に竜巻がぶつかり、けたたましい音が上がる。砂埃はゴブリンの方に吹き飛ばされていく。
「到着!逃げるなら今のうちよ、ゴブちゃん。痛い思いをしたいかな」
クレーターの周囲には大量のゴブリンが集まっている。少し外れた所に一人の冒険者風の身なりの青年が剣を振り回している。横には男性が倒れている。
「君たちは盗賊かな。欲張り過ぎたね。真面目に生きるのが一番よ」
キッチリと二人の後ろに到着してレテはゴブリンを警戒しつつ、青年にカマを掛ける。
「盗賊か。そうですよね。こんな薄汚い身なりじゃ冒険者は名乗れないか。うすうすとは気づいていたのですが。ありがとうございます」
盗賊風の青年は倒れている男性を引きずりつつ、レテの背後に隠れようとする。
「良い判断ね。盗賊さん。手出しは無用よ。邪魔しないでね。頭脳明晰のモラを見習ってね」
モラはまだ上空でのんびり風に乗っている。盗賊も見上げるが確認できなかったようだ。
「敬語使わなくて良いよ。別に長い付き合いになるわけでもないし。気楽にいこうよ。とりあえず、ゴブちゃん退治といきましょ!」
ゴブリンたちはレテの出現で一時は動揺したようだったが、彼らも気を取り直して隊列を組みはじめる。周りからも応援が集まり彼女たちの周りを取り囲んでいく。
「ピンチですね。一点突破で逃げ切れれば、あなたのさっきの不思議な力なら可能ですか。あんな魔法見たことないです」
盗賊は剣を持つ手をゆるめて、すべてレテに任せるようだ。冒険者として成功は難しい。
「正解。私は精霊使いのレテ。シャルスタン王国の騎士。全部任せなさい。余計なことはしないのよ」
ゴブリンたちが雄叫びを上げ、合唱を始める。二人の耳には凄まじい騒音に聞こえる。
「もう、うるさい、うるさい。集まるとすぐさわぎだす。ササッと決めちゃおっと」
レテが集中力を高め、シルに呼びかけようとする。
「本当にまずいですね。僕はネアス。元冒険者です。こんなにきれいな方に出会うことがあるとは思ってもいなかったです」
ゴブリンの合唱は終わり、次は盾と棍棒を打ち鳴らし始める。これもすごい騒音だ。
「きれいって良く言われるから、あんまり響かないかな。ネアス。でも、ありがとう。王国での職探し位なら手伝ってあげるわ。すこしだけね」
「後は任せます。隙きを作ります。」
ネアスは興奮してしまっているようで余計な一言を付け加えてしまう。
「生き残れたら、良かったらデートしてください」
ネアスは陣形に突っ込んでいく。ゴブリンたちも油断していたようだ。一瞬怯んだように見える。しかし、すぐに雄叫びを上げネアスに殺到していく。
「勝手なことするのね。予想外だけど、デートか」
レテは周囲に動じずにシルフィーを呼び出す。殴りつけるような暴風がゴブリンの雄叫びをかき消していく。
「いくらたくさんいてもゴブちゃんなのよね。ネアス、君も命奪われるような戦いじゃないのに」
レテは精神を集中させる。
「まあ、かっこいい告白ではあるけど。ゴブちゃん相手じゃなかったら、合格点だったかな」
レテはそっと呟く。ネアスはゴブリンの棍棒に叩かれている。今の所はケガはしそうにはない。ゴブリンは体が小さい。力も弱い。それでも痛そうではある。
「レテ、助けて!デートはいらないから」
ネアスは焦る。
「精霊の力早く!」
前言撤回。命が一番大事。ネアスの頭に様々なことがよぎっていく。楽しかったこと。苦しかったこと、苦しかったこと。これからは静かに暮らそうと。美女とのデートはあきらめよう。
「準備万端、シルちゃんおねがいね。みんな、ふっとばしちゃって。ネアスも一緒で構わないわ、彼、丈夫そうだしイケるでしょ」
激しい嵐がゴブリンとネアスを巻き上げてゆく。ゴブリンは恐怖で悲鳴さえあげられない。どんどんとクレーターに積み上げられていく。ネアスが頂点に位置している。ビビっているようだ。
「ネアスは空が好きなのかな。飛ぶって楽しいし。どう思っているかな、後で聞いてみようかな」
「ね、シルちゃん」