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PURE STAR ~星に願いを、君に笑顔を~ 【長編完結】(年の差7歳の恋愛とアオハルな物語)  作者: 水野忠


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第三章 未来に向けて⑤ ネズミーランドにて

 事件以降、忠弘は時間を見ては綾乃のお迎えに出ることが多くなった。部活で忙しい時は香織や和元が迎えに行くこともあり、綾乃本人としては過保護すぎると苦笑いしていたが、やはり事件のことがあって心配なのもあるのだろう。綾乃自身もまだ夜に一人で外を歩くのは怖かったので、ありがたくお願いすることにしていた。


 逮捕された男は34歳の会社員で、事件発覚の翌日には解雇されて無職になっていた。調べが進んでわかったのだが、10年ほど前に中学生女子を無理矢理公園に連れ込み、乱暴をしようとして取り押さえられ、逮捕された前歴があった。この時は示談で話が付いて不起訴処分になっているが、ほとぼりが冷めて再び衝動が抑えられなくなったようだ。


 綾乃のことは、小学校の時に見かけて目を付けていたらしい。あの夜はたまたま見かけて後を付けたということだ。昔、なんとなく綾乃に向けていやらしい視線を感じたというのは、もしかするとこの男だったのかもしれない。今回は、綾乃への暴行未遂と忠弘への殺人未遂ということで逮捕され、起訴する流れになるという。交番の警察官にお礼に挨拶に行った時、殺意の有無が焦点になると話していたが、忠弘たちにはもうどうでもいい事だった。


 夏休みに入り、今日は気分転換したいという綾乃のリクエストで、千葉県にあるネズミーランドへ来ていた。


「お兄ちゃん。早く!」

「はいはい。急ぐと転ぶぞ。」


 ネズミの耳をモチーフにしたカチューシャを付けた綾乃がはしゃいで駆け回っていた。入園して早々買わされたものだ。絶対にあとで身に付けることはないと思うのだが、ここに来ると多くの人が魔法にかかってしまうらしい。ピンク色基調のキャミソールに黒いスカートを着た綾乃がそれを付けると、ネズミーマウスの彼女であるレディマウスそのまんまのような気もして面白かった。ただ、それを言うとネズミーマウスの格好をさせられそうだったので黙っていた。


 そう言えば、忠弘が小さい時に初めてネズミーランドに来た時にも、親にねだってクマのブーさんのポンチョを買ってもらったことがあった。小学校低学年くらいだったか。すごく喜んでずっと着ていたのに、東京駅を過ぎて横浜を出たころには、そっと脱いでしまった記憶がある。ネズミーランドを出た時には嬉しくて仕方なかったのだが、だんだん鎌倉が近付くにつれて、ポンチョを着ている自分に違和感を感じてしまったのだ。


「あ、魔法が解けた。」


 と、幸政が言っていたが、その意味が分かったのはもう少し大きくなってからだった。夢の国と言うのは本当に美味い表現で、確かにここに来ると魔法にかかってしまうようだ。ちなみに、それでもポンチョは気に入っていたため、冬場の部屋着として寒い日は愛用した。


 本当は、志穂と信和もつれてくる予定だったが、志穂が風邪を引いたのか、昨日からの高熱が下がらないために今日は綾乃と二人で来ることになった。志穂も残念そうだったが、思いのほか信和が残念がっていたので、夏休み中か秋の連休の時にBBQでも行こうかと話をしている。


「どあぁぁっ!」

「きゃー!」


 山の中を走るビックマウンテンコースターは、思いのほか速かった。忠弘は絶叫系がダメと言う訳ではないが、遊園地に来るのが中学校以来ということもあって、自分の頭の中で残っていた速さよりもずっと速くて驚いた。宇宙空間を模した暗闇を走るスペースコースターは、どっちに曲がるかわからずさっきよりも怖く感じた。綾乃は絶叫系が好きなのか、キャーキャー言いながら楽しんでいる。


「ちょっと、休憩にしよっか。」


 さすが夏休みである。一つのアトラクションに乗るのにどれも長蛇の列ができている。面白いもので、朝一番にここに入園してから、綾乃の同級生には3回、忠弘も大学の友人に2回遭遇した。みんな行きたいところは一緒と言うことか。


 売店で飲み物を買って、日陰のテーブルに落ち着く。今日も35度を超える猛暑日だ。息をしているだけでも汗が噴き出してくる。


「もー、お兄ちゃんだらしないなぁ。」

「綾乃が元気すぎるんだよ。かまわず行ってきていいぞ。」

「もー、冷たいなぁ。」


 中学生の体力は馬鹿にできない。忠弘も体力はある方だし、野球を通じて大学でも一際鍛えてきたと思っているが、野球で使う体力と遊びの体力はどうやら質が違うものらしい。


「しかし、よかったよ。」

「なにが?」

「もっとショックを受けているかと思ったからさ。」


 あの事件の後、昔のようにふさぎ込んだらどうしようかと心配していたが、意外にも翌朝にはケロッとしていた。


「だって、お兄ちゃんが守ってくれたし、もう私は独りぼっちじゃないってわかってるから。」


 笑顔でそう話す綾乃は、手に持ったオレンジジュースを口にすると、


「お兄ちゃんが私のことを大事な人だって言ってくれたし。まぁ、大事な『妹』ってのはちょっと納得してないけど、それでもちゃんと私を守ってくれた。お兄ちゃんがいる限り、私がまた暗い気持ちに引きずり込まれることはないよ。」


 そう言ってほほ笑むのだった。最近、綾乃の笑顔にはドキドキさせられてしまう。もともと美人顔だというのは忠弘も思っていたが、中学に入って身長も伸び、より女性らしくなってくると、今までの子供っぽさが抜け、キレイが前面に出てきて一段と大人っぽくなった。中学一年生でこれであるから、高校、大学、成人となっていくうちにどれだけの美人になるか想像がつかない。それくらい綾乃は飛び抜けて美少女だった。


『綾乃ちゃんは確かにまだ幼い女の子かもしれない。だけど断言するわ。あの子はこれからどんどんかわいくなる。もっともっときれいになって、そして、あなたを今以上に愛していく。』


 そう予言した杏奈の言葉が思い出される。あれから杏奈とは連絡を取っていない。綾乃とはメッセージをやり取りしているようだったが、忠弘とは意識的なのか一切の連絡をしてこなかった。それがきっと杏奈のけじめなのだろうと思い、忠弘も連絡するようなことはなかったが、杏奈の出るドラマや映画は全部チェックしていた。


「お兄ちゃん。呆けてどうしたの?」


 気が付くと、綾乃がキョトンとした顔でこちらを見ていた。


「あ、いや。綾乃も大きくなったなと思ってさ。」

「なにお父さんみたいなこと言ってるのよ。まぁ、この1年で身長も伸びたし。もしかして、ますますキレイになってきた綾乃ちゃんにドキドキしちゃってる?」

「はいはい。」

「もー。いい加減、一人の女性としてみてよ。」

「はいはい、そのうちな。」


 そうは言ったが、心の中ではさっきからドキドキしっぱなしだとは言えなかった。平静を装いながら、必死に表に出ないように心を抑え込む。忠弘自身も自分の事をわかっていた。今すぐには無理でも、やがて二人の年齢差が気にならない頃になり、綾乃と自分の気持ちが変わっていなければそういう関係にもなるのだろうと。杏奈の予言は的中しつつあるのだ。でも、今はまだ早いとも思っているし、妹を見守る過保護な兄役をやっていたかった。


 綾乃は飲みかけのオレンジジュースを飲み干すと、


「ほら、次行くよ。」


 と、忠弘の腕を引っ張った。天を仰ぎながらされるがままの忠弘が、この後も各種の絶叫系で叫んだのは言うまでもない。



続く。

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

\(^o^)/


あの夢の国に入ると、

どうしてあんなにはしゃいでしまうんでしょうね。


年齢は関係ないようです。

子供が大きくなっちゃうとなかなかいかなくなってしまいましたが。。。


引き続きどうぞお付き合いください。

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