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PURE STAR ~星に願いを、君に笑顔を~ 【長編完結】(年の差7歳の恋愛とアオハルな物語)  作者: 水野忠


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第二章 乙女心と鈍感過保護⑧ 帰ってきたエース

 その後、何球か投げ込んだ後、信和は三年生メンバーから打席に立つように指示を出した。忠弘の球は速いだけでなくいわゆる『重い球』だ。たまにバットに当たっても、威力に負けてファールになるばかりか、衝撃で手がしびれてしまった。相原や水田の球は速いといってもせいぜい150キロ行くか行かないかくらいだ。高校生ではそれでも早いほうなのだが、忠弘の球はそれよりも一段上の速さだった。


 三年生メンバーを難なく打ち取った忠弘は、続く二年生の主要メンバーも全員打ち取った。忠弘自身も、本当に二年もブランクがあったのかと思えるくらい良い出来上がりだった。


「お願いします!」


 二年生が終わり、一年生の堤井が右打席に入った。ほかの一年生たちはバットすら持っていない。すでに降参したということなのだろう。堤井は足元を慣らすと、バットを前に突き出してから構えた。そして、忠弘が放った初球だった。快音と共に跳ね返された打球は、一塁ベースのわずか右側を突き抜けていった。あまりの打球の速さに一塁を守る北大介(きただいすけ)も反応ができなかった。


「ファ、ファール!」


 一塁側の審判位置に立つ部員が両手を挙げる。忠弘は思っていたよりも鋭い堤井のスイングに驚いていた。


「あれが少し前まで中学生だった奴の振り方かよ。」


 小声でブツブツ言いながら再び振りかぶって二球目を投げた。今度は三塁線に鋭いファールを打ったが、堤井は表情一つ変えず、一度バッターボックスを出ると二度ほどスイングを行った。まるでタイミングを計っているかのような振り方に、忠弘はワクワクしてきてしまった。やっぱり真剣勝負は楽しい。中学校以来の感覚を楽しみながら三球目を投げた。


「っ!!」


 空振り三振を取った瞬間、ギャラリーの部員たちから歓声が上がった。忠弘は少しだけ握り幅を変えてタイミングをずらしたのだ。いわゆるチェンジアップという球だった。


「ありがとうございました!」


 ヘルメットを取って頭を下げる堤井の顔は清々しいものだった。忠弘も右手を挙げて返事をした。


「さて、それじゃ守備を入れ替えてレギュラー陣の練習だ。」


 そう言うと、信和はニコニコしながらバッターボックスに入った。


「さて、好投大澤投手を、主砲青井君が初安打と行きましょうか。」


 何度か素振りしている間に、忠弘は熊田を呼び寄せた。そして、少し打ち合わせをした後に守備に戻すと、


「熊田、しっかり捕れよ。」


 そういって振りかぶって投げた。と、同時に信和は体勢を崩し、バットには当てたもののボテボテのピッチャーゴロとなった。忠弘はボールを拾い上げて一塁へ投げた。初球ピッチャーゴロでアウトだ。


「おいっ!」


 信和が抗議の表情を浮かべたが、忠弘は舌を出して笑っていた。忠弘が投げた球は、ボールを挟んでまっすぐ抜く変化球、最も得意とするフォークボールだった。挟んで抜くだけだから球に回転が加わらず空気抵抗を受ける。そのため、バッターの手前で重力に引かれて落ちるのだ。球速で言えば130キロも出ていない。それまでストレートを見続けてきたことと、打撃練習だから当然自分にも同じ球が来ると思い込んだ信和に対した忠弘の作戦勝ちだった。


 けっきょく、相原や水田だけではなく、二年生で次期主将候補にもなっているの北も、ミートが上手いと評判の荒川悟志(あらかわさとし)も、誰一人としてまともに打ち返すことはできなかった。忠弘は身体が出来上がってくると、ストレートにチェンジアップ、信和に投げたフォークのほか、シュートやスライダーなど、投げられる変化球は順番に試していった。実際にボールを握っての投球は二年ぶりだが、忠弘の身体はしっかり覚えていた様だった。どの球を投げても、思い通りの変化をさせることが出来た。


 それまでは猜疑の目を持っていた部員たちも、練習が終わるころにはすっかり忠弘の復帰を受け入れてくれたようだ。練習が終わった後、汗を拭く忠弘のもとへ堤井が走ってきた。


「大澤先輩。」

「おう。これからよろしくな。」

「はい。あの・・・。」


 堤井はそこで少し区切ってから、


「すごい球でした。大澤先輩がいれば甲子園に行けます。先輩たちの最後の夏、おれ、頑張ります!!」


 そう言うのだった。最初は気難しい性格かと思っていたが、話してみると素直でかわいい性格だった。


「大澤くん。肘の調子はどう?」

「マネージャー。ありがとう、今のところ全く問題ないよ。身体が温まってからは変化球も混ぜてみたけど、痛みもないし震えもない。大丈夫だよ。」

「そう。それならよかった。」


 秋菜はそういうと、ほっと胸をなでおろすのだった。それは忠弘も同じだった。こんなに身体が軽いと思ったのは久しぶりだった。それだけ、気持ちが充実していたことと、この二年間の自主トレーニングが生きていたということなのだろう。


「忠弘。和先輩のところで何か食べてから帰ろうぜ。」

「ああ、いいよ。」


 部活が終わった後、多くのメンバーがこまち茶房に移動して、野球の話で遅くまで盛り上がろうということになったが、


「おい! こんなに大人数入りきらねぇよ。」


 と、夕方の混雑時に和晴に断られ、代わりにテイクアウトの飲み物や食べ物を購入して、鶴岡八幡宮の端っこで時間も忘れて野球談議を行ったのだった。



続く。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

\(^o^)/


しっかりと結果を残して、

最強のエースが鎌倉学院野球部に戻ってきました。


いよいよ甲子園へ向けての予選大会が始まっていきます。

青春真っ只中待ったなし!


引き続き読んでやるぞ!

頑張れよ! と応援いただける際は、

ぜひ、いいねとブックマークと高評価での応援をよろしくお願いいたします。


次回もどうぞお楽しみに!

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