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ケット・シーの宿屋

異世界転移の稀人を泊めてる宿屋のなんでもない日常


例えるならおかんだろうか、このケット・シー。

この宿屋の女将さんとでも言う立ち位置だと思う。

そのケット・シーがなんだ?とでも言ってるような顔でこちらを振り返る。


「いつも美味しいご飯ありがとう!今日もごちそうさまでした」


そう言って私は食べ終わった食器を持って厨房に移動した。



ここは私がオーナーの宿屋兼食堂だ。

さっきのケット・シーはここを実質切り盛りしている従業員だ。厨房を預かり、客室を整え、書類仕事とほぼ全ての業務をこなしてくれている。普通なら無理だと思うけど、妖精だから何とかなってる気がする。そこはあまり考えてはいけない気がする。

さすがにこの世界でも妖精が働いているのは珍しいと思う。

そんなニートな私が今1番ハマってるのが、最近転移してきた稀人のハルト君だ。こういうのを推しというのだろ?


ハルト君は最近転移してこちらに来たばかり、だけど稀人が与えられるチートを使い、冒険者として独り立ちしている。

ちなみにうちを常宿としてくれているお得意様でもある。

彼は魔法を使いこなし魔獣を倒す、武器はからっきしだったのだ。そりゃそうだろう、戦いとは無縁の世界から突然こちらに来たのだ。

そんなもん普通にいきなり扱えるなら向こうの世界なら相当ヤベー奴だ。

しかし今や冒険者として真っ当に稼いで生活している、本当に努力家のいい子なのだ。


彼と話すのは楽しい。

私が知らない言葉をよく使う、彼の世界の当たり前の日常の事、好きな物の事、色んな事を聞かせてもらってる。


今まで何人か稀人とあった事があるが、まぁ変な奴もいるよな。

支度金で部屋を借りたりする前に、いきなり奴隷を買いたいとか言い出した奴もいた。

ちなみにこの国に奴隷制度はない、昔はあったが。


この国では時折迷い込んでくる稀人は国で保護されて、一定期間の生活は保証され最低限のこの世界の知識を得られる環境も整っている。

そして国に有益な知識を持っていればその道へ、なければ大抵が一般市民となってチートを生かした冒険者になることが多い。どちらの道を選ぶにしてもちゃんと支度金は出るし、しばらくの間は生活費を稼げなくても補助金があるので最低限の生活はできる。このように制度が確立するまでには色々あったのだが、現在は法も制度も整っていて何よりだ。


「食べなれたご飯が食べられるって本当にほっとしますよね。俺、これでメシマズだったらやっていけなかったと思うもん」


今日も依頼をこなして帰ってきたハルト君はうちの宿の一階の食堂で夕飯を食べている。

本日の夕定食のとんかつとライスをハムスターみたいに頬張って幸せそうだ。


「明日の夕定食はなんだったら嬉しい?」

「あ!俺から揚げがいいです!」


それを聞いた食堂担当のケット・シーは片耳をパタパタさせながら厨房に入っていく。そして私はその熊のようなケット・シーにアイコンタクトを送る。

ククク…これで明日の夕定食のメニューは決まった。

こんな時にオーナー特権使わずいつ使うというのだ、推しが幸せそうにご飯を食べてる姿は尊い。


稀人はこの国以外では現れない。この世界にない知識や技術を求めて非合法に連れ去る国もあるので、私が保護者代理として目を光らせていないとね!

なんて鼻息も荒く使命感に駆られている。

今日も平和で推しが尊い!いやぁ最高だね。






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