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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

〔ライト〕な短編シリーズ

灰色の街へかえろう

作者: ウナム立早


 わたしの名前はユマール。真っ白なマンションの真っ白な部屋に、パパとママの3人で暮らしています。


 今日も目を覚ますと、真っ白な天井が見えました。しばらくベッドの温もりを楽しんでから体を起こして、おはよう、とパパとママに言いました。


 パパとママは返事をしてくれません。いつものことです。ほとんどの場合、パパはテーブルに座ってタブレットか、スマートフォンか、新聞か、難しそうな本とにらめっこをしています。ママは逆に、部屋の中をうろうろと動き回っています。ママが座るのは、たまにパパと小さな声で話をする時ぐらいです。


 インターフォンが鳴りました。ネイちゃんかな。いや、まだお昼前なので、違う人だと思います。


 ママが玄関へ行きました。ママはドアを少しだけ開けて、向こうの人と話をしています。尋ねてきた人がどんな人なのかは、ここからでは見えません。


「ユマールは必ず帰ってきます。どうかお引き取りください」


 ママは話の途中で、いつもそう言います。


 へんなの。わたしはずっとここにいるのに。


 最初はそう思っていたけど、今は気にしていません。わたしがいくら訴えても、ママは忙しくて聞いてくれないのですから。


 パパもママも、国を豊かにするための重要な仕事についていると言っていました。引っ越す前は、こうやって一緒にいるというのも、珍しいことだったのです。パパとママがそばにいてくれるほうが嬉しいけれど、それでもちょっと寂しいです。


 尋ねてきた人は帰ってしまったようで、お母さんはしっかり鍵をかけると、セーフティーロックもかけ直しました。


 そしてまた、ママは部屋の中をうろうろし始めます。パパは何事もなかったかのように本を読んでいました。私もベッドの上で、いつものようにテレビを見ることにします。


 ベッドサイドの壁にかけてある、薄型でちょっと古そうなテレビ。故障はしてないはずだけど、いつも同じ番組ばかりが映ります。内容も小難しくてわかりにくいものばかりだけど、仕方ないので、我慢して見続けます。


 わたしはそのまま夕方まで、テレビを見たり、少しの間眠ったり、パパとママの様子を観察したりして過ごしているのです。


『……サノビアとカラズ……状況……まだ改善は……国際社会からは…………トラスティ……カラズマ……停戦……』




 またインターフォンの音がしました。今はもう夕方で、窓からは沈みかけていく太陽の赤っぽい光が見えます。この時間なら、ネイちゃんがやってきたに違いありません。


 ママが玄関に向かい、ゆっくりとドアを開けます。


「こんばんはユマちゃん、今日も遊ぼう」


 ドアの隙間から、ネイちゃんが顔を覗かせました。夕焼けを反射して眼鏡が光り、手にはいつも遊びに使っている大きな白いボールを持っています。


「誰かいるんですか? なんの御用でしょうか?」


 ママも隙間から外の様子を見ているのですが、ネイちゃんの背が低いせいか、いつもネイちゃんに気が付かないのです。


「ネイちゃんこんばんは、すぐそっち行くからね」


 わたしは玄関近くまで行くと、ぎゅっと体をせばめて、少し開いたドアの隙間を通り抜けました。ママには悪いけど、ネイちゃんと遊ぶときはこうやって外に出ていきます。


「ネイちゃん、お待たせ」

「改めましてこんばんは、ユマちゃん。日が沈むまで、下の公園でボール遊びしよっか」

「うん、そうしよう!」


 わたしとネイちゃんはボールをパスし合いながら、マンションの廊下を駆けていきます。後ろの方で、ママがドアを閉め、ロックをする音が聞こえました。




 公園は、今日も大人のひとが一人か二人いるだけで、広々としていました。あんまり遊具は置いていない公園だけど、ボール遊びをするならちょうどいい場所です。夕焼けで赤くなった空に、白いボールが大きな軌道を描いて飛んできます。しばらく宙に浮いていたかと思うと、そのままわたしの腕の中にストンと落ちてきました。


「相変わらず、すごいコントロールだねネイちゃん」

「ユマちゃんもナイスキャッチ!」

「がんばれば将来、球技のスポーツ選手になれるよ、きっと」

「……ふふっ、そうかもね」


 弾力のあるボールの表面には、ネイちゃんの名前がマジックで書かれています――ネイミー・ボズレフ、彼女は目が悪いにも関わらず運動神経が抜群なのです。性格もどっちかというと外に出て遊ぶのが好きな、スポーツマンタイプだと思います。


「いくよ、ネイちゃん! えい!」

「あはは、あんまり無理して投げないほうがいいよ、肩を痛めちゃうよ」


 大きく外れて、ひとつふたつとバウンドしたボールを、ネイちゃんはうまく回り込んで優しくキャッチします。


「ユマちゃん、最近新しい本は読んだー?」

「マンションに持ってきた本はだいたい読んじゃった。でも、ちょっと小難しい本が多かったかな。わたしでも時間がかかっちゃった」

「そっか、わたしもまだ前の本読んでる途中で、もうちょっと借りててもいい?」

「いいよー、ゆっくり読んでってー」


 わたしの方はというと、スポーツはあまり上手じゃないけど、本を読むのは好きです。他の女の子から、鮮やかな金髪のイメージに合わないと言われたこともあります。


 しばらくボールを投げ合ったり、転がしたり、追いかけたり、休憩代わりに本の話をしているうちにだんだんと空が暗くなってきました。


「そろそろ帰ったほうがいいかもね、ユマちゃん」

「うん。……トラスティアは今日も燃えてるね」

「そうだね……」


 わたしたち二人の視線の先には、炎に包まれて赤々と燃えている、トラスティアの街がありました。少し前までは、わたしも、ネイちゃんも、あの街に住んでいたのです。だけどある日突然、トラスティアの街が燃えてしまい、今の場所まで避難することになりました。その時のことは――あまり覚えていないけど、とても恐ろしい出来事だったのは間違いありません。


「ネイちゃん、いつになったら帰れると思う?」

「多分、もうすぐだよ」

「ずっと燃えてるし、わたしたちの家も無くなってるよね……」

「そんなことないよ、いつか……みんな一緒にかえれるから」


 わたしたちだけでなく、街の人のほとんどが家に帰れなくなり、この場所に避難しているのだとネイちゃんは言っていました。優しいパン屋のマコーミックさんや、ブティックでわたしのお洋服を作ってくれたミレディさん、ドローンオタクのグスタフおじさんも、この近くに避難しているようです。だけど、ここに来てからまだ会ったことがありません。


「さ、帰ろ。お父さんやお母さんも待ってるよ」

「そうだね。バイバイネイちゃん、また明日。」

「また明日ね、バイバイ」


 わたしはネイちゃんと別れて、一人マンションに戻ってきました。うんと背伸びをして、インターフォンのボタンを押します。


「はい……どなたですか……」


 ママがドアをちょっと開けた隙に、わたしは部屋の中へと入りました。


 いつもこうやって遊びに行っては帰るのですが、帰ってきた時は決まって、パパもママも悲しそうな顔をしています。わたしもその様子が気になるけれど、どう尋ねても、パパとママはちっとも答えてくれないので、仕方がありません。


 わたしはベッドに潜り込み、そのまま眠ることにしました。薄暗い部屋の中で、テレビだけが青っぽい光を放っています。テレビ番組に出てくるおじさんの話を聞きながら、今夜も眠りにつきます。


『……カラズマによる……7月……絨毯じゅうたん爆撃……大統領…………記者会見が行な……停戦合意にむけ……トラステ……返還…………』




 その夜、わたしは玄関のインターフォンで目を覚ましました。部屋の中は、ほとんど真っ暗でした。窓から見える夜空は、下の方がかすかに明るくなっていて、その光だけが部屋に入り込んでいます。パパはテーブルに突っ伏して、ママはソファーに倒れ込むようにして眠っていました。再びインターフォンが鳴りましたが、パパもママも起きる様子がありません。


 わたしは音を立てないようゆっくりと起き上がり、玄関へと近づきます。


「だ、だれですか……」

「ユマちゃん、私だよ。ネイミーだよ」


 訪ねてきたのはネイちゃんだったのです。わたしは手を伸ばして、ドアを少し開けると、ドアの向こうにいたネイちゃんは笑っていました。


「ネイちゃん? どうしたのこんな夜中に」

「トラスティアの街を包んでた炎が消えたの、かえれるんだよ、わたしたち!」

「ええっ、本当に!?」


 思わず大きな声が出ました。


「やったね! 朝になったら出発の準備をしよう!」

「ユマちゃん、今すぐにでもかえれるよ」

「えっ?」

「……できるだけ、早い方がいいんだ。引っ越しの準備とかは後回しにして、とにかく一度、トラスティアの街にかえってみようよ」

「で、でも」


 わたしはパパとママのほうを見ました。


「街に帰るんだったら、パパやママも一緒の方が喜ぶと思うんだけど……家がどうなっているのか気になっているだろうし」

「大丈夫だよ、ユマちゃんのお父さんやお母さんもいずれかえってくるから。それに今はとても疲れているみたいだし、寝かせておいてあげたら?」

「う、うん……」


 結局わたしは、パパとママには内緒でトラスティアの街に帰ることになりました。




 マンションを出るころには、朝日が昇り始めていました。朝早くにも関わらず、何人もの人たちがぞろぞろと歩いています。向かう先はみんな同じ、トラスティアの街。そしてトラスティアの街は朝焼けの光に照らされて、輝いて見えました。


「ほんとだ! 炎が無くなってる!」

「とうとうこの日が来たんだよ。さあ、かえろう。ユマちゃん」

「うん!」


 私とネイちゃんは、トラスティアへの帰り道を行く人々の列に加わりました。街の人たちは、みんな何も言わずに、石のブロックが敷き詰められた広い道を歩いています。


「あっ」


 わたしはたくさんの人々の中に、懐かしい人を見つけました。


「マコーミックさん! ミレディさん! それに……グスタフおじさん、も……?」


 久しぶりに会ったせいなのか、3人とも顔つきが違って見えたのです。それに様子も変でした。私が大声で呼びかけても、ぼーっと前の方を向いて、トラスティアの街にむかって歩き続けているのです。


「大人の人もずっと待っていたんだし、少しくたびれちゃっているのかもね」


 ネイちゃんは白いボールを小脇に抱えながら言います。


「そういえば、ネイちゃんのパパとママはどうしたの?」

「お父さんとお母さんは……先にあの街に行ってるんだ。心配ないよ」

「そっか……」


 ネイちゃんはそう言ったけど、やっぱり、何か変な感じがします。さらに進んでいくと、道端にいくつもテレビが捨てられていました。不思議に思って前の方をよく見てみると、トラスティアの街に帰ろうとしている人たちが、次々に捨てているのです。グスタフおじさんも、ドローンと一緒にテレビを捨てていました。


「ネイちゃん、どうしてみんなテレビを捨てているんだろう?」

「多分、もう必要ないからだと思うよ」


 テレビが無いと街に帰った後で不便じゃないかな。と思ったけど、なんとなく口に出しにくかったので、そのまま黙っていました。


 捨てられたテレビからは、雑音まじりの音声が流れ続けていました。


『……ラスティア……ザザッ……今月3日をもって……停戦から10日が経……ザザッ……廃墟……ザザッ……』




 トラスティアへの帰り道は、思っていたよりも長く感じました。次第に息切れして、胸も苦しくなってきたけど、ネイちゃんたちは少しも休むことなく歩いているので、なんとかついて行かなくてはなりません。


 トラスティアの街がだいぶ近くなってきたとき、わたしはあることに気がつきました。


 街が灰色なのです。


 太陽に照らされたトラスティアの街は、まるで全てが燃え尽きてしまったかのように、灰一色で塗りつぶされていました。


 わたしは変わり果てた街の姿を見て、しばらく歩みを止めていました。


「ネイちゃん……街は、トラスティアの街は、本当に帰っていいのかな。大丈夫かな」


 返事は返ってきません。ネイちゃんも街の人々も、気がついたらわたしよりだいぶ先へ進んでいってしまったのです。


「ま……待って! 待ってよネイちゃん!」


 わたしは走りました。それでも、思うように追いつけません。胸はより苦しくなり、足も重くなってきました。


 ユマール。


 突然、わたしを呼ぶ声がしました。思わず振り返ると……宙に浮かぶ無数の白い手が、後ろから迫ってきたのです!


「ひいっ!?」


 白い手のひとつは、小さなナイフみたいなものを持っていました。注射器を持っている手もいます。瓶入りのカプセルを持っている手も。みんな、わたしの嫌いなものばかり。


 ユマール。ユマール。かえってきて。


 また声がしました。わたしを狙っている。どこかへ連れて行こうとしている。そう感じた私は必死の思いで走りました。


 ですが、どれだけ一生懸命走っても、白い手は徐々に近づいていきます。ネイちゃんたちにはまだ追いつけそうにありません。とうとう、わたしは4つの白い手に捕まってしまいました。


「いやあっ!」


 振りほどこうとしたけれど、白い手はわたしの体に絡みついて離れません。


「ネイちゃん助けてーっ!」


 思いっきり叫びました。その思いが通じたのか、ネイちゃんだけが振り返り、こっちへと駆けつけてくれたのです。


「ユマちゃん……!?」

「ネイちゃんお願い、この手をほどくのを手伝って! わたしを連れ去ろうとしているの!」

「そっか……ユマちゃん、あなたが……」

「ネ、ネイちゃん?」

「ユマちゃん、その手をよく見てみて」

「えっ」

「その手は、ユマちゃんを大切に思っている人の手だから」


 ネイちゃんの言っていることがよくわからなかったけど、わたしは言われた通りに白い手を見てみました。


 指輪が見えました。2組の手がそれぞれ指輪をしていたのです。それにこの手、どこかで見たことがあるような――


「ユマール!」

「ユマール!」


 パパとママの声でした。


「ユマール、お願いだからかえってきてちょうだい! もう二度とあなたに寂しい思いをさせないから! ひとりで留守番なんかさせないから! お願いよ!」

「ユマール、父さんがバカだった。トラスティアは空爆の対象にはならないだろうと高をくくっていたのが間違いだった。父さんが世界中から医者を連れてくる。だから、かえってきてくれ……!」


 久しぶりにパパとママの声を聞いたようでした。そして、わたしに絡みついていた手から、じんわりと温かいものが伝わってきます。


「ネイちゃん、これって――


 わたしはネイちゃんのほうを見ました。そして、言葉を失いました。


「ユマちゃん、ここでお別れだね」


 ネイちゃんは、ひどい怪我をしていたのです。体の左半分が焼け焦げ、左腕が無くなっていました。メガネは割れ、左目があるはずの部分が黒いクレヨンで塗りつぶされたように真っ黒でした。右腕に抱えた白いボールもつぶれ、血がついています。


「ネ、ネイちゃん、大丈夫なの!?」


 不思議と、あまり驚きは感じませんでした。いつの日だったか、こんな体で地面に横たわるネイちゃんを見たような気がしてならなかったのです。


「あなたの帰り道は、こっちじゃない」


 ネイちゃんがそう言った途端、大きな地響きが起きました。そして、わたしの体がだんだん宙に浮いていって――


 ちがう。わたしが浮かんでいるんじゃない。地面が……わたし以外のすべてが、だんだん沈んでいってるの?


 前を見てみると、トラスティアの街が、すごい勢いで沈み込んでいたのです。街を中心におおきなひずみができていて、そこへありとあらゆるものが引きずり込まれていました。わたしは白い手に抱きかかえられているおかげで、巻き込まれずにすんでいるのです。


 街の人々は、今のネイちゃんのように大きな怪我をしているのが見えましたが、それでも街に向かって歩き続けています。そして、次々と街と一緒に沈んでいきました。マコーミックさんも、ミレディさんも、グスタフおじさんも。


 ついに、ネイちゃんもひずみの中へと沈み始めました。わたしはネイちゃんに向かって、思い切り手を伸ばします。


「ネイちゃん! ネイちゃんも沈んでいっちゃだめだよ! わたしと一緒に帰ろうよ!」


 ネイちゃんは右手を上げると、小さく、横に振りました。


「私は……トラスティアの街と一緒に返還かえらなくちゃいけないの」


 どんどん遠くなっていくネイちゃんを見て、わたしは思わず泣き出しました。ネイちゃんも、右目にたくさんの涙を浮かべています。


「ユマちゃん、遊んでくれてありがとう。元気でね。どうか、私の……私たちと、トラスティアの街のことを、忘れないでいてね」


 ネイちゃんがトラスティアの街に飲み込まれようとする寸前、わたしの周りで白い光が輝き始めました。光を放っていたのは、帰り道に捨てられていたいくつものテレビ。テレビもわたしと同じように、白い手に支えられて浮かんでいたのです。


 テレビが放つ光はしだいに大きくなり、わたしは白い輝きの中に包まれていきます。わたしはテレビの声を聞きながら、ゆっくりと目を閉じました。


『サラビアとカラズマとの停戦協定が合意に至ってから2週間が経過し、占領統治下にあったトラスティアがサラビアへと返還されました。これにより、犠牲となった市民の遺体もようやくトラスティアに移送されることとなります。ですが、トラスティアはカラズマの奇襲ともいえる絨毯じゅうたん爆撃によって壊滅状態となっており、未だに復興の目処は立っていません。この爆撃については、現在も各国から非難の声が相次いでおります。ですが、嬉しいニュースも入ってきています。トラスティアの街から唯一救助され、意識不明の重体のまま治療が続けられていたユマール・アールサスちゃんですが、先ほど脳波の回復がみられ、今日中にも意識を取り戻す可能性があると――


********


 目を覚ますと、真っ白な天井が見えました。そしてわたしの周りには、たくさんの人もいます。


「意識が戻ったぞ!」

「手術は成功だ! 奇跡的な回復力だ!」


 白衣を着た大人のひとたちがそう言って、お互いに握手したり、肩を叩きあったりしていました。


「ユマール……ユマール!」


 ママの声がしたので目線を胸元に向けると、ママがわたしの胸に顔をうずめて大声で泣いていました。隣には目に涙を浮かべて、じっと見つめているパパもいます。ふたりのちょうど真ん中からは、壁にかけてある薄型のテレビも見えました。


 ただいま、と言わなきゃ。


 マスクみたいなものが付けられていたし、声も上手く出せなかったけど、わたしは必死で口を動かしました。


 パパはたまっていた涙をあふれさせながら、とても優しい声で言いました。


「お生還かえり、ユマール」



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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