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【第35話】怪鳥ヌエ


キャンプファイヤーを前に僕と密着して横になるメアは柔らかい。

しかし初めての野営に緊張しているのか眠れないようだ。


その時「アッ!アッ!アッー!!」という甲高い少年の声が森の中から響いて聞こえた。


「何ですか今の…」


[声だね]


メアが起き上がって声がした方を見る。

見張り番の男たちもそちらに注視していた。


真っ暗な森の木々の間に少年の顔が浮かんでいる。


「アッ!来テ!来テッ」


「もしかして逃げ遅れた子なんじゃ…」


メアが不安そうに言った。少年の顔は助けを求めているようだ。

だがあれは違う。決して逃げ遅れた少年とかではない。


[ヌエだ]


「胸糞が悪いな」


そう言って近くで横になっていた帽子を深く被るバロが起き上がり弓で矢を放った。

矢は少年の陰になって見えない胴体部分を射る。


ギャァアアアアアアア!!!


奇声と共に巨大な鳥が暴れながら空に飛びあがる。その体には矢が突き刺さっている。

あれがヌエだ。

大きな鳥の身体に、脚が大猿の腕となっている怪鳥だ。


ヌエは他種族の生首を丸ごと飲み込んで喉に装填する。

器用に生首の声帯から息を吹き込んで声真似を行い、集団から獲物を孤立させるように誘い込むのだ。

もしメアが近づいていればあの太い腕に捕まれ一瞬で空に連れ去らわれていたことだろう。


ヌエは一度飛び上がったのはいいものの傷が深かったせいか森へとまた落ちてしまう。

そして他の集まっていた捕食者に襲われてしまった。


バキバキベキベキという骨がへし折られる音がする。


弱った捕食者は簡単に捕食される側に回るのがここの摂理だ。


「おい!緑巨人(トーマス)だぞ!向こうだ!」


別の方から緑色した1メートルはある大きな顔面が伸びてこちらを覗いていた。

しわくちゃの顔は不気味に火の明かりに照らされている。


数人の冒険者がこっそり武器に手をやった。


流石に5メートル超の巨人が走ってきたら全員で対処だ。


緑巨人はゆっくりと顔をひっこめ森の奥へ帰っていった。


僕らはほっと胸を下す。


夜はまだ長い。



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