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【第19話】カエルを倒して帰ろうか


赤い爆発はまるで薔薇のように草原の空全体を覆った。


幾層にも重なった爆発は上へ上へと昇り、衝撃波が雲を散らす。

空気中の水素が大量の魔素と混じり合いオーロラ状の化学反応を見せ、夕日のオレンジが乱反射して空一面を彩った。


魔法の名は、朱天(ロゼ)星雲超新星爆発(フルプロ―ジョン)


スペシャルートードは粉々になって()()()()()()()


  ※


メアは爆発をあえてカエルに直撃させなかった。

空を爆撃する余波のみでカエルの身を吹き飛ばしていた。


すべてはアルトを生かすため。


そのおかげで何とかアルトは助かっていた。

草原に落ちてバラバラになったカエルの大きな肉片にもたれかかって彼はぐったり座っていた。

爆撃の衝撃をカエルの肉があらかた吸収し、吹き飛ばされた先では厚い脂肪の塊がクッションとなってくれたおかげでぎりぎり助かることができていたのである。


メアがもし爆発を直撃させていたら今頃カエルミンチ肉の一部になっていた所だった。


アルトは胃液と泥でボロボロに汚れた手で手元の草をさわさわと触れる。

慣れ親しんだ感触に一安心した。


その横で脂肪の塊に上半身を圧し潰されジタバタさせる誰かの下半身があった。

アルトはそれを見て憐れんだ。

暴れる下半身は靴もズボンもパンツすら穿いておらず、あまつさえ生まれたての赤子のようにツルリと毛がなかった。すね毛どころか陰部の毛もきれいさっぱりだ。

ツルツルのアレも丸見えになってペチンぺチン暴れていた。


足の長さを見るに多分これはバラバロスだろう。


トップギルド【青い瞳の人魚(ブルーメード)】の副マスターが晒すには無様すぎる格好だった。


気に食わないやつだが彼の協力合って助かった命だ。

一応助けてやるかとアルトは立ち上がろうとしたが体が動かなかった。

思っていたよりダメージがあったようだ。

すまないバラバロス。そう心の中で謝罪し諦めて座りなおした。


しかし身体が動かないのは困るな。

メアの安否を確かめたいのに、これでは探しにいけない。

複合魔法を一発放てば気を失う彼女だ、きっとどこかに転がっているはずだ。

無事であればいいが、横のバラバロスのように飛来したカエルの肉片に押し潰されている可能性もあるから心配だ。


「あらら、意外とぴんぴんしてるじゃねぇか」


「よかった~。さすがに胃液に溶かされてたら蘇生なんて不可能だもんね」


そんなアルトの前に歩いて現れたのは二人の女性だった。

SSランク冒険者【紅き龍撃姫】のニルヴィーナ・ラゴンテンペスタと【禁忌なる不死】のリリィー・ファランポネアだった。

リリィーの右手の先には逃げたはずのエルドナが首根っこを掴まれて大人しく捕まっていた。


そしてニルヴィーナの背には、ちょうどいまアルトが心配していた子がスヤスヤ眠って背負われていた。


「これお前の連れだろ?自分の魔法に吹き飛ばされてたから助けてやったよ」


「軽い火傷してたから治しておいたからね♪」


さすがはこの国最強のSSランク冒険者。頼りになる人たちだ。


[ありがとう]


手話で感謝の意を伝えた。ニルヴィーナもリリィーも手話を読むことはできた。


「いいもの見せてもらったお礼だよ。複合魔法初めて見たけどスゴかったね~」


「ああ、あの一発は間違いなく私たちの域にまで届き得ていた。大したもんだ。特に詠唱に手話を使ったのは大発明だな。魔法使い業界でも大革命が起きるぞ」


二人は割と早い段階から土手の上に到着しており、事の一部始終を眺めていた。

メアが手話を用いて魔法を発現させていたのもばっちり見ていた。

アルトはここでメアが複合魔法を発動させるのに手話を使ったことを知った。


「つまりこれからは談笑しながらテーブルの下から魔法を撃てるやべぇ時代が来るってことだ!ハハハ!凄いなヤバいな!」


最強を自認するニルヴィーナは手話というアイディアに自身が今より更に強くなれることを確信してテンションが上がっていた。


「う~んそれはどうだろう?」


「なんだよ」


「その子が手話での詠唱を可能にできたのは深い魔法への理解と手話への特別な認識があってのことだと思うよ。話せないアルト君に寄り添い、手話を対談手段の一つとして捉えることができていたからこそできた彼女だけのオリジナリティー、だから精霊(マナ)たちも歓んで応えてくれたんだよ。それを上辺だけマネてもね~」


ただ手を動かすことと手話は同じ動作でも別物だよ~?とリリィーは言った。


「そもそもニルちゃん手話なんて覚えきれないでしょ。比較的高い賢さも戦いでしか活かせない戦闘バカなんだから♪」


「ちゃんと覚えようと思えば…、覚えられるよ。覚えなかったのはそもそもこっちの声は届くんだから読むほうだけ分かってれば十分だったからだろ」


「そこは愛だよね~。理屈じゃないよね~?」


「うるせー!てか、このちっこいのがアルトのために手話を覚えたとも限らないだろ!元々知ってたからアルトと組んだ可能性もあるじゃねぇか」


「分かるよ~、この子の魔法にラブパワー感じたもん」


リリィーはニルの背で眠るメアのほっぺをつんつん突いた。


「でもさ、アルト君。この子はまだ魔力内包量全然ないみたいだからレベルが上がるまでは複合魔法使うの控えさせた方がいいよ。こうやって魔力枯渇で気絶するなんて身体に悪いし、早死にしちゃうよ?」


[ああ…。一応そこはちゃんと考慮はしている、治癒的マッサージで相殺していくつもりだ]


「そっかそっか、じゃあ安心だね。よかったね、いいパートナーに出会えて」


それはアルトとメアの二人に対しての言葉だった。

意外とリリィーはメアのことも気に入っていた。


「で、さっきから気になっていた()()は何だよ」


ニルヴィーナが指を差した。

それは皆が視界に入れながらもスルーを決め込んでいた物へだった。


下半身は静かに大人しくなっていた。


[バラバロスだよ…、助けてやってほしい]


「バッ、バラバロス様なんですかッ!?それッ!?」


エルドナが吹き出して驚いた。

あまりの無様さにバラバロスだとは思っていなかったらしい。


「ひえ~wヤバw誰かカメラ持ってないw?」リリィーが笑った。


「相変わらず優しい奴だな、いや甘い奴か。そいつはどうしようもないカスだぞ。そのまま息絶えてもらった方が世のためだ」


[分かってる。でもせっかく助かった命を目の前で見捨てることはできないよ。頼む]


「…まったく、お前が言うなら。エルドナ行っていいぞ」


ニルヴィーナの言葉にリリィーはエルドナの首根っこを掴んでいた手を離した。

エルドナは即座に首輪を外された犬のようにバラバロスの下半身へ駆け寄り、大根を引き抜くようにズボリと彼を救出した。


「バラバロス様ァ~」


「げっほ!げっほ!クソが!すぐ助けろ!ボケ!殺す気か!」


手遅れを心配していたが杞憂だったようだ。彼は元気だった。


「てっ!なんでテメェらがいる!?」


バラバロスはこの場にSSランク冒険者二人がいることに驚いた。

そしてスぺシャルトードを吹き飛ばしたのが二人であると勝手に勘違いした。


「エルドナにお前がアルトの居場所を掴んだらすぐ私たちにも伝えるよう言っておいた」


「エルドナァ!?お前マジか!?」


「だ、だってだって!脅されて…!SSランクの頼み、断れる訳ないじゃないですかぁ…」


「で、私たちは翠緑の若葉に行って、そこのマスターからアルトがここにいると聞いたから列車乗ってやって来たんだよ。そしたら駅に着くなりエルドナがやってきて怪獣が出たって喚くから驚いたぜ」


「エルドナちゃ~ん。ちゃんと言ったよね?情報は逐一報告して、バラバロス君がアルト君に接触しようとしたら身を挺してでも阻止してね~って?」


「バ、バラバロス様を完全に裏切るなんてできないですよぉ…」


「ふ~ん、そうなの。じゃあ躾だね、お仕置きだね、朝までコースだね♪」


「ひっ、ひぃ~」


「待て…」


リリィーから庇うようにバラバロスが手を伸ばしてエルドナの前に出た。

「バラバロス様ぁ…」と目をウルウルさせてエルドナは彼の後ろに隠れた。


「ん~?どうするつもりなのかな?ナイト気取っちゃう?」


「エルドナのことはどうとでもしろ。それよりも大事なことだ…」


「バラバロス様ぁ…」エルドナは心で泣いた。


「アルトは俺が必ず説得する…!【青い瞳の人魚】に戻ってきてもらう…。だから頼む…!二人ともギルドに戻ってきてくれ…!どうか、この通りだ…!」


そう言ってバラバロスは膝をつき頭を地面に擦り付けた。

お尻が丸出しだったが、それはそれは見事な土下座だった。


バラバロスのプライドが無駄に高いことは周知の事実である。そんな彼の真摯な土下座に、彼のことを心底毛嫌いしているアルトでさえちょっぴり胸を打たれてしまった。

「ほほう…」と女性陣からも感心の声が漏れた。


ニルヴィーナとリリィーはこれにどう答える。



「国王が崩御した」



「は…?」


思いがけぬ一言にバラバロスは自分の耳を疑った。

黙って聞いていたアルトも同様に自分の耳を怪しんだ。


とんでもない答えが返ってきた。


「やだー。ニルちゃんここでそれ言っちゃう?トップシークレットの機密情報なのにw」


リリィーは男二人が顔面蒼白になっているのにも構わず恋バナでもしてるかのノリでちゃらける。

そのせいで信じられない発言が冗談にも聞こえてしまうが、ニルもリリィーも人の死をネタにする類の冗談は言わない人たちだ。


「アルトくん気を付けてね。知ってるの知られたらマジ消されちゃうから。誰にも話しちゃダメだよ♪」


「ふっ…、ふざけんな!なんてことを喋んだ!俺たちを地獄に叩き落とす気か!?」


「ギルドとの手切れ金代わりの情報だ。利用してどうとでも立ち回れよ」


「ンッ!ンな!ンなッことできるわけねぇーだろ!!」


俺どころか青い瞳の人魚(ブルーメード)まで消されちまうだろ!とバラバロスは叫んだ。

大袈裟ではなくこのネタを悪用しようとしたら誇張なくそうなることだろう。


「聞いてない…聞いてない…聞いてない…聞いてない…」


エルドナは耳をパタパタ塞いでぶつぶつ呟いていた。


ヤバすぎる情報だった。王が崩御?死んだだって…?

いずれ発表される事だろうが今この場で耳にするにはタブーすぎる事柄だ。


シン・フォルニア王国には大帝テルマージア星国というライバル国がある。

数多ある国々の中でも規模が頭一つ二つ抜き出ている二大国家だ。


両国は、フォルニア王国は魔王族と、テルマージア星国は竜王族という巨大な敵性脅威とそれぞれ対峙していたため人類同士手を取り合おうという協定を結んでいた。

互いにまずは目の前の人類の敵に集中しようという約束だ。そのおかげで二国間は実に平和で、良好な関係を築けていた。


しかしそれはフォルニアの王が没したとなれば変わってくる話だ。


つい二年前、フォルニア王国は念願の魔王討伐という偉業を成し遂げていた。


そのおかげで魔王族の脅威は著しく低下し、フォルニアには余裕ができていた。

テルマージア星国との協定を一方的に破棄し、竜王族の軍と挟み撃ちして彼の国を亡ぼすという選択が容易に選ぶことさえできるほどの余裕だ。


「その気になればフォルニアはいつでもテルマージアを潰せる」というのが、アルトのような友達のいない最底辺の人間でも耳にしているレベルで広がっていた世論であった。


このせいで近年の二国間はギスギスしていた。


そこに王が死んだとテルマージアが知れば彼らはどうすることだろうか、この機を逃すことなく様々な計略を張り巡らせて来るはずだ。最悪、跡目争いに乗じての戦争勃発だ。


ニルの口に出した情報はそんな大戦のきっかけともなりえる危険なものだった。

それを平然と出してくるのだから、やはりSSランク冒険者は恐ろしい。


「現時点で次の王は決まっていない。ゆえに近々王位継承戦が行われることになった」


堂々と胸を張ってニルは言った。王位継承戦のことも秘めなければならない情報だろうに。

優れた知覚能力でこの話を第三者が聞いていないことを確信しての発言だったが、アルトらはまたしても戦慄した。


「そこで私たちSSランクには招集がかかったんだよ。それぞれの王子たちから、自分を守ってくれっていう招集がね♪」


二人が秘密裏に王宮に呼び出されたのは【青い瞳の人魚】を去ってすぐ後のことだった。

このことを副ギルドマスターバラバロスは知らされていなかった。


王子たちは別々に呼び出したSSランク冒険者らに直接、護衛任務を頼んでいた。


「いま王子たちが怖がってるのは暗殺だからね~。お互いにビビり合ってるみたいでさウケるよね」


「王位継承戦のルールが何であれ、始まる前にライバルは減らしておいて損はないからな」


()るにしても()らないにしても私たちがいれば百人力だしね」


「まあ、善良な国民の一人として王子たち同士の血みどろな殺し合いなんて見過ごせないしな。最強の私がいれば抑止力にもなるだろ?」


「うふふ、がっぽり報酬の前払い金取ってたくせに~」


女二人は振り込まれた法外な金額を思い出してにやけ合った。

普段、SSランクエストの報酬金の半分を税として取られていたフラストレーションをこの機会に晴らしてやっていたのだ。


「という訳だバラバロス、諦めろ。ギルドには戻らない」


「せめてギルドに籍だけ残してくれ…、頼む!それ以上は何も望まない…!…頼むよ!」


バラバロスはすがって懇願した。プライドの欠片も残っていなかった。


「それだと半分部外者のままになるだろ。私たちは王子直属の私兵になるんだよ。じゃないと入れない場所とかあるし」


「ね~。期間限定って約束だけど掛け持ちはできないよ」


「そ、そんな…」


「少なくともSSランク冒険者の半分以上はギルド市場から消えちゃって、ランキングは大荒れになるだろうけど、頑張ってねバラバロスくん」


「文句があるなら第一王子に直訴しに来い、特別に私が会わせてやるからよ」


「あ、あああ…───」


これ以上の交渉は無駄だと悟りバラバロスはガクリと俯いた。

ただでさえダメージを受けていた身体に心へのショックも加わり意識が飛んでしまったようだ。

白く燃え尽きていた。


そんなバラバロスの横を通ってニルヴィーナはアルトに近づいた。


「でだ、アルト、私と来ないか」


メアを背負ったまま朱い彼女は言った。

これまで何度もアルトに伝えてきた、求婚の意味も込めた一言だった。


ニルヴィーナはフォルニア最強の女だ。

純粋な戦士より力強い剣と拳を揮い、専門の魔法使いより優れた魔法を放つ。回復魔法、移動手段、国宝級の剣に装備品に、頼れる相方(リリィー)もいる、全てを高い水準で兼ね備えていた傑女だ。


そんな弱点というものがない理想的で完成された強さを有す彼女はただ一つ、()()()()()()()()


強かで美しくもあるニルヴィーナに言い寄る男は星の数ほどいた。

しかしメスが自分より強いオスとしか交わらない習性のある竜種に育てられたのが要因で、どうしても自分より弱い男が男として見ることができなかった。


怪物集うSSランク冒険者の中にはニルも強さを認める男が何人かはいた。だが揃いも揃って頭がおかしい奴しかいなかった。番いにするには、まともな性格であることも大事なポイントであった。

実はいうと人のことを想いやれる優しい人間がニルの好みだった。


そんな運命の相手を探していたある日、リリィーの紹介からアルトとニルは知り合った。

そしてマッサージという形で身体を揉んでもらった彼女は生まれて初めて敗北感というものを味わった。


竜王族の中でも最悪と恐れられた邪竜を幼き拳で殴り殺したという、三度の飯より闘争を好む戦いのために生まれてきた女、ニルヴィーナ・ラゴンテンペスタ。

そんな戦うことしか知らず酷使されてきた彼女の肉が揉まれほぐされる幸福感は、脳が焼き切れそうなぐらいの刺激であった。


()()()()()となんて思ってしまえば完敗なのである。


その後すぐ男であることがバレてしまったアルトはどつかれ殺されてしまうのだが。

(男だと思っていたから身体に触れることを許していたため)


リリィーによって蘇生させる彼のことを眺めながらニルヴィーナはこういう強さもあるのかと関心し負けを認めながら、アルトを夫に相応しい男だと認めていた。


その日以来、彼女はアルトに首ったけだった。


[いいや。僕は冒険を続けるよ]


「そうか」


即答に、ニルヴィーナはほほ笑んだ。

断られても愛しいことには変わらなかった。


つくづく彼女は捕食者だった。

獲物が易々と口に入ってくるより逃げてくれた方が面白いのだ。

そこがまた彼女をますますその気にさせていたことにアルトは気づいていなかった。


「またまたフラれちゃったね~、にへへへ」


嬉しそうにリリィーは言った。


「うるさいぞ。いいんだよ、分かってて私も言ってんだから」


アルトは思った。ニルヴィーナは優しいが、ぶっちゃけ怖いと。

惚れてくれているのは嬉しいがしょうじき荷が重い。

ときどき会ってマッサージして満足してもらうぐらいの距離感がちょうどいいのだと。

顔を殴り潰されたトラウマを抱えながら、ひっそりと彼は思った。


「これから一時の間、会えなくなるから一目顔を見ておきたかっただけだしよ。私のいない間にいつぽっくり死んでてもおかしくないからな、アルトは」


言ってて恥ずかしくなったのかニルは頬を赤く染めてそっぽを向いた。

ギャップのあるメアと同レベルの反応にアルトは少し可愛く思えた。 


「うふふ、健気だね。乙女だね」


「じっさい気をつけろよ。私たちがいなくなればSSランクが受けていた超危険なクエストがお前らに下りてくる。Fランクでも後方支援や何たらに呼び出される時が必ずやってくるはずだ。あっけなく死ぬんじゃないぞ」


[気を付けるよ。…って、あれ?]


アルトは全身から痛みが消えているのに気付いた。

ゆっくりと立ち上がるとリリィーがニヤニヤしていた。どうやら彼女の仕業らしい。


「気付かなかったでしょ?実は手話で密かに治癒魔法を発動させてたんだよ」


[え…、手話をしていた風には見えなかったけど]


確かに今日の彼女は可愛らしい仕草が多かったが、手話をやっていた様子なんてどこにも。


「今考えたオリジナル手話だからね、うふふ」


この瞬間アルトはやばい人にやばい手法が伝わった気がしてゾッとしたが、あまり深くは考えないことにした。彼女もまた、プリティーなだけではなく規格外の逸脱した化物なのだ。


「おーい!大丈夫かー!?」


すっかり日が暮れ薄暗くなった中、向こうの方から男たちの声がした。

べルートンの人たちが向かってきていたのだ。

彼らは町を救った勇者メアを探しに来ていた。


「ちょうどよかった。このフルチン担いで帰らなくて済みそうだぞ」


ニルはバラバロスの面倒を彼らに任すことにした。


「ほら、痛みが引いたならそろそろ背負うの代われよ。この子はお前の相方だろ」


そう言ってメアがアルトの背中に移された。


あの超ド級のカエルを倒した子とは思えないほど、その体は細く軽く華奢なものだった。

無理したんだろうな勇気出したんだろうな。と、考えて彼は目頭が熱くなった。


背中に伝わる温かさを感じながら、ふと空を見上げた。

オーロラ状の魔素の帯が星々と共に美しく流れていた。

赤に緑に紫に、悠久を溶く時の流れがそこに見えた気がした。



さあ、帰ろうか。


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