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【第11話】トードラーメン


「一体討伐分の報奨金です。ご確認ください」


僕らはお昼休憩に入って定食屋に向かう途中、町の役場に寄って報酬を受け取ることにした。

メアが受付のお姉さんから8000GP分の銀貨を受け取った。


「初クエスト報酬受け取りましたよ!」


お小遣いを貰った子供のように喜んでいる。


8000GP、それがビックトード一体討伐の報酬額だ。

(1GP=1円)

それを僕とメアは山分けして4000GPずつ手に入れる。


「師匠、いいんですか…?半分ずつより師匠の方が多く貰うべきだと思うんですが…」


[そういう遠慮は不要だよ。僕らはパーティー、対等、そうだろ?]


報酬はちゃんと分けないとな。

差があると最初は納得できてもどんどん不平不満が募ってトラブルになってしまう。


「はい…!じゃあ今日のお昼ご飯は私に奢らせてください!」


可愛い提案だ。

それくらいなら素直に甘えさせてもらおう。


僕も初めて報酬を貰った時は世話になった人たちにお礼をたくさん買って帰ったもんな。


ぐいぐい。

役場を出るとメアに服を引っ張られた。


「師匠あれ見てください」


メアの目線の先にはラーメン屋があった。

大きな看板と暖簾に名物トードラーメンとデカデカと書いてあるラーメン屋だった。

それなりに客も入っていて繁盛している。


「トード、ラーメンって…、何でしょうかね?」


それは質問という形のアピールだった。

どうやらラーメン屋が目に入ってラーメンが食べたくなってしまったようだ。

ラーメンか。

カエル肉のチキン南蛮を食べに行くつもりだったがラーメンもいいな。


[どんな物か確かめに行ってみようか]


「はい!」


さっそく僕らはラーメン屋の暖簾の下をくぐって入店した。

賑わう店内の中、二人席のテーブルに通されて座りメニューを開く。


僕は爽やかイエロートードラーメン、メアは激辛レッドトードラーメンを注文した。


激辛を頼むのか。

僕は辛いのは嫌いじゃないが激辛ものは食べれない。

大丈夫か?食べきれるのか?心配だ。


「へへ、辛いの大好きなんです。大丈夫です食べきれます」


メアはそう言いながら荷物から薄いショーギ盤と駒入れを取り出した。

これは最近発明されて流行り出したショーギというゲームをやるための道具だ。


「待ってる間に一局差しましょう」


そう言ってメアはショーギ盤の上に駒を並べ始めた。


ショーギは暇つぶしにちょうど良い奥の深いゲームだ。

他にもオセロ、トランプとかいうゲームも出ているがショーギが一番面白い。

メアにも教えてあげたら気に入って、事あるごとに一局ねだってくるようになった。


「先手は貰いますね」


ショーギ、ラーメン屋戦が勃発した。


それから二十分ぐらいして二つのラーメンが運ばれてきた。


「わー、可愛いですねー!」


ショーギ盤を片付けて届けられたラーメンにメアが声を上げた。


ラーメンの麵の上に小さなカエルが乗っていた。

僕の爽やかラーメンには黄色のカエル、メアの激辛ラーメンには真っ赤なカエルがだ。

よく見ると本物ではなく、薬味を固めて形作った小さなカエルだった。


「少しずつ削ってスープに溶かして食べてくださいね。どんどん味が濃厚に変わっていくのをお楽しみください」


自分好みに味が調節できるタイプのラーメンか。


店員さんの説明通りに少しカエルを箸で削ってスープに溶かしてみた。

ちょっと箸を舐めてみる。レモンの味がした。

黄色いカエルの正体はレモンか。


一口すすって食べてみる。爽やかな味と風味が口いっぱいに広がった。美味しい。

トードラーメンと言うだけあって鶏がらではなくビックトードの骨から出汁を取っているようだ。


「美味しいですね!何だか今日は特にお食事が美味しいと思えます!」


そうだろうそうだろう。

汗水流し命懸けで稼いだお金で食べる食事は美味いに決まっている。


難しいクエストを乗り越え、その金で美味い物を食べに行く。

それが冒険者の醍醐味というものだ。

一端だがメアもその醍醐味を味わってくれているようで何だか僕も嬉しくなった。


しかし麺が減っていくとカエルがスープに浸っていってしまうな。

今の濃さぐらいがちょうどいいんだけどな。


「師匠、チャーシューにカエルさん乗せると食べやすいですよ」


メアのラーメンを見るとチャーシューに真っ赤なカエルが乗せられていた。

まるで木の葉の上に乗るカエルだ。

確かにそれなら好きな濃さで止めれるしカエルの管理もしやすい。

良いアイディアだ。本当にメアは賢いな。


さっそくパクらせてもらおう。

まずチャーシューをスープの上に広げて、カエルを箸で救出してあっ…

箸で掴んだら崩れて全部スープの中に落ちてしまった。


「へっへっへっへっへっ」


見ていたメアが犬の荒い呼吸のように笑って面白がっていた。


落ちてしまったものはしょうがない、諦めてスープをかき混ぜて食べてみる。

これはこれで美味しかった。全然アリだ。


「師匠はホント美味しそうに食べますね。こっちのラーメンも味見してみますか?」


[辛いのは平気だけど激辛は苦手なんだ]


「そうなんですか。へへへ、師匠は激辛苦手なんですね。激辛料理食べなきゃいけないクエストの時は任せてください」


そんなクエスト聞いたことはないが、そんな時がもし来たら頼らせてもらおう。


それから僕らはラーメンを完食し、ラーメン代1280GPをメアが支払って店を出た。


「美味しかったですね!」


[美味しかったね]


「私次は師匠の頼んでた爽やかラーメン頼みます!一口味見させてもらいましたけどレモンとラーメンって合うんですね。目からウロコでした!お腹も膨れて午後からの討伐も頑張れそうです!」


ラーメンを食べて気合は満タンになった様子だ。

しかし僕の目はごまかせない。


[足、動かないだろ?]


「え?あっ…、はい…。正直足痛いです…」


さっきから歩き方がぎこちないのには気づいていた。

死の恐怖と隣り合わせの場所で魔法使い職の少女が二時間も早歩きで杖を振り続けたんだ、ちょっと休憩したぐらいで取れる疲れではないだろう。


それを内緒にしてまで頑張ろうとしていたのは見捨てられたくない一心からか。


「でも…!根性で…、気持ちで、付いていきますから…!」


気持ちは大事だ。

だけども気持ちがあっても乗り越えれないことは多い。


[メア、複合魔法試してみようか]


「え?」


メアは複合魔術師のデメリットで初級魔法の類が単発で放てない。

扱える複合魔法もまたマジックポイントが足りず、撃っても不完全な威力しかないと言うので先ほどの一戦は物理攻撃だけで戦ってもらっていたのだが。


[いつかは確認するつもりだったんだ。不完全でも今の時点でどれだけ実戦で通用するかは]


他のクエストを受けるにもそれは今のうちに知っておきたいことだった。

身体が動かないのなら魔法を試すのにちょうどいい。


メアには一戦目の討伐同様、僕がカエルに近づくのをわーわーきゃーきゃー喚いて気を引いてもらい、僕が一人でカエルを相手にしてる間に超火力の複合魔法を準備して少しでも多くカエルの体力を削ってもらう。

その後は周囲に注意しつつ疲れた体を休めていてくれていい。


それなら二時間カエルの周りをグルグルするより断然負担にならないはずだ。


[初日だけど後一体は倒しておきたい。きついとは思うけど手伝ってくれるかい?]


「は、はい!もちろんです!ご期待に添えれるよう全力で頑張ります…!」


無理はしてもらいたくはないんだけどな。

期待はしてる。


「実は怖かったんです…。また二時間、付いていける自信なくて…、どうしようかなって…」


[ごめんね、もっと早く伝えておくべきだった。不安にさせたね]


「いえ!師匠はぜんぜん悪くありません!こうやって私のこと考えてくれているじゃないですか、とっても嬉しいです…!」


[あっ、でも魔法を撃ったら気絶するんだったな]


そうだった、メアは複合魔法を一発撃ったら倒れるとか何とか言っていた。

場所次第ではそのまま寝ててもらってもいいんだけど、さすがにな。


「多分大丈夫です…!今はお腹がいっぱいで気力満タンなので大丈夫だと思います…!」


[そうなのか?じゃあ後一体、頑張ろうか]


「はい!」


メアの気持ちのいい返事を聞いてビックトード討伐戦、第二部が始まる。



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