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作品において、「厄介なおばちゃん」を警戒するか「子供の怪我」を警戒するか

「おばちゃん」は別に「おじちゃん」でもいいです。

皆さんの想像しやすい方で解釈してください。

 小説に限らず、コメントやメッセージを書いていても「誤字脱字文法ミス」というのは気付けばやらかしてしまっているものです。

 かくいう自分もタイピングにおいては妙な癖がついてしまっており、「『私の家』と打とうとして『私に言え』としてしまう」といった間の抜けた打ち間違いをやらかしがちだったりします。同じような方は、皆さんの中にも多いのではないでしょうか? ……ひょっとして自分だけなのでしょうか。


 自分は、この「誤字脱字文法ミス」(特に誤字脱字)の頻度が多いため、書き溜め中の小説において自ずと度重なる見直しというものを余儀なくされていたりします。

 なにしろ、一文書くのにほぼ確実に一度は変換ミスをしてしまうような有様なのですから、自分の文章の正確性に対する信頼なんて、もう粉々のさらっさらです。ベビーパウダー並みです。


 そんな自分にとって、このサイトに搭載されている「誤字報告」というのは、それはもうとても便利な機能なのではないか、と以前は思えてなりませんでした。

 今更機能説明も不要でしょうからそれは省略するとして、これ、自分としてはなかなかに良いだと思うんですよねぇ。修正する側は作業中も修正前後の違いを分かり易く見分けられますし、された側のユーザも(その修正意見に納得さえできれば)それを少ない操作で簡単に本文へと反映させることができます。

 文章作成ツールの自動校正機能のようなものを使っていても必ずしもすべてのミスを拾い集めてくれるとは限りませんし、その漏らしを他の方によって指摘して頂けるのならば、それは多分とてもありがたいことです。きっと、多くの方も同じように考えられているのではないでしょうか。



 だからこそ、当初自分はこう思っていました。

「どうして、『誤字報告を受け付けない』にしている人が意外といたりするのだろうか」と。



 具体的に調べたわけでは無いので、あくまで体感の話です。

 「この作品面白いな~」と感じつつもふとたまたま漢字の明らかな変換ミスを見つけてしまい、最終的に報告するか否かは置いといて取り敢えず下の「誤字報告」ページを開いてみると、そこには「誤字報告は受け付けておりません」の短い一文が出てくる……こういった作品が、意外と多い気がしたのです。



 自分の基本的な考え方なのですが、小説というのはつまるところ「文字」が全てだと思います。これは今現在も同様です。

 小説の最小構成単位は言わずもがな「文字」ですし、たとえ挿絵などが差し挟まる余地があったとしても、95%以上は文字によって成り立っているはず。

 であれば、極端な話、一文字一文字を大切にすることが小説全体のクオリティアップに繋がると見ても、あながち見当違いではないように思えます。文字が単語や文節となり、単語や文節が一文一文となり、一文一文が段落となり、段落が一話一話となり、一話一話が章や節、部となり、それらが集まって最後には物語となるわけですから。


 また、文章を推敲する過程で多くの方は、


「ここ、もうちょっと巧い言い回し無いかなぁ……」

「倒置構文的にした方が、メッセージ性が強くなっていいかも!」

「読点でもう少し区切ったほうが、一定のリズムが生まれて面白そう」

「前後の文章、バランスが悪いな~。どっちかもう少し短くするか」


 などなど、一文の中で、あるいは文章同士の比較の中で、あれこれと工夫を繰り返されていることでしょう。であれば、自ずと「文字」に対する注目度というのが高まるはずであり、同時に誤字脱字文法ミスの見逃しもまた自ずと減っていくことと思います。

 そんな感じなので、当たり前かもしれませんが自分の中において、「誤字脱字文法ミスの少ない作品=しっかり推敲されている(可能性が高い)=良作である(可能性が高い)」というルールのようなものが定着してたりします。同時に、それら「文字のミスに対するケア」というのは実はとても重要であり、無駄にかっこいい言い方をすれば、それは「基本」にしてある意味「奥義」でもあると言っていいかなとも考えています。


 それらを放置し続けることに対するメリットは恐らくありませんし、物語という深い海を潜ってくれている読者の方の意識を水面――すなわち「現実」に引き戻してしまうだけです。興が醒め、「あ、なんか誤字発見……」と白けさせてしまうことで、多少なりとも作品に対する評価を下げさせてしまう可能性もあります。感想欄にて「流石に誤字が多すぎませんか……?」といったコメントが埋め尽くしている作品もあったりします。

 その僅かな漏らしを他のユーザさんに指摘してもらい作品の粗をなくしてもらえるのであれば、それに越したことはないんじゃないかなと。



 自分の作品とは、詰まるところ「自分の子供」も同然だと思います。

 もし皆さんに小さい子供さんがいて、外から帰ってきたときにその子の腕に擦り傷があり血が滲んでいるのを見かけたりすれば、



「どうしたの、その腕!? お外で転んだの!?」



 などと言いながら急いで洗面所に連れて行き丁寧に洗浄したうえで、救急箱を持ってきてはしっかりと消毒し、薬を塗ったりガーゼをあてがったり絆創膏を貼ったり包帯で巻いたりして、丁寧に処置することと思います。場合によってはお医者さんに診て貰うこともあるでしょう。


 まさか、同様のシチュエーションにおいて、



「あら、おかえり。……ん? 腕にけがをしてるのね。まあいいわ。そんなことよりも、私は疲れてるから先に寝るわね」



 などと言い放つ親はそうそう居ないでしょう。というか、居ないと思いたいです。


 自身の子供に愛情を抱かない親が(比較的)少ないのと同様、同列に語るのは暴論かもしれませんが、やはり自身の作品に愛情を抱かない書き手は、そこまで多くないはず。

 以前に「自身の作品が好きで好きでたまらない!」といった意見が書かれていたのをお見かけしたことがありますが、多くの方もきっとそう思っている事でしょう。



 こういった例で考えてみますと、誤字報告機能というのは、自身の子供をとても可愛がってくれている、近所のおばちゃんみたいな人だと考えることもできます。つまり……



 「ちょっと奥さん、○○ちゃんが腕に怪我をしちゃったみたいで、公園で泣いてたわよ! たまたま買い物帰りに見かけたものだから、びっくりしちゃったわよ! 水で泥だけ洗い流して上げたから、早く手当てしてあげな!」



 みたいな感じでしょうか。

 親である自分が気付けなかった、あるいは気付きたくても気付き得なかったような子供の傷(つまりは、作品内の瑕疵)を見つけ、それを指摘することで子供(作品)の健康被害を最小限に抑えてくれる。

 少しお節介に思う人もいるかも知れませんが、地域コミュニティーで子供を守ろうとする温かみのようなものを感じて、これはこれでほっこりする気もします。おばちゃんありがとう。



 ただ、こんな論を展開しておきながらなんですが、今では誤字報告を閉じたがるユーザさんの気持ちも、実は凄~くよく分かるんですよ。


 というのも、私自身は連載作品などまだ投稿しておりませんし、幸いにもというかそういった被害に遭ったことはないのですが、誤字報告を利用するユーザさんの中にはそれを一部の誤字報告に留めず、あたかも自身が担当編集にでもなったかのように「全面校正」を施してくる勘違いさんがいるらしいのです。

 要は、上の推敲の部分で書いた「ここ、もうちょっと巧い言い回し無いかなぁ」みたいなことを、自分では無く他人が指摘しまくってくる感じですね……。


 自分自身打ち間違いがなにかと多い人間なので、他人の作品においても誤字脱字文法ミスを見つけると気になってしょうがないという側面は、確かにあるにはあります。

 ですが、そこはあくまで他人様の作品。メインキャラの名前を打ち間違っているとかであれば誤字報告で指摘することもありますが、細かい言い回しだとか文章のバランスだとかはあくまでその人の差配の領分であり、過度な指摘は絶対にしないようにしています。少し前に「作品の個性を大切にしてほしい」的なお話を書かせてもらったのですが、それがその人の紛れのない個性や魅力である可能性もあるんですから。



 確かに、小説家になろうには色んな人がいるもので、「文章を書く」ということに関して殊更高い意識を持っている人もかなり多いことと思います。

 そういった人にとっては、些細なミスの指摘はもちろんとして、それが自身の執筆に対するスタンスを他人に強いるようなことであったとしてもあくまで善行の範疇だ、などと考えているのかもしれません。


 ですが、それは大きな間違い以外の何物でもないと自分は考えています。なぜならば、「瑕疵」と「個性」は全く違うものだからです。


 さっきのおばちゃんの例で言いますと、



「ちょっと!! あんたのところの○○ちゃんが、腕を怪我したってさっき公園で泣いてたわよ!! どうしてちゃんと見ててあげないの!? 夫婦共働きで大変なのかもしれないけど、もっと大切にしてあげなさいよ!! それに、この子ちょっと細いけど、あなたたちちゃんとこの子に食べさせてるの!? 子供はこの時期が一番大切なの!! ほっといても大きくなるなんて思ってると将来後悔するわよ!! 毎日肉と野菜をバランスよく絶対に食べさせてあげなさい!! あと、喧嘩で怪我した可能性もあるから近所にある空手道場に週5で通わせるようにしなさい!! うちの子も昔に通ってて今でも顔が効くから、今から行って話を通してきてあげるわ!! その分勉強時間が減るかもしれないけど、しっかりサポートしてあげるのよ!? ……なに『そんなこと言われても……』みたいな顔してるのよ!? パートを3時間早く切り上げたらできないことはないでしょ!? あたしが若かった頃は――(クドクドクドクド)」


 

 といった感じになるでしょうか。


 う~ん…………こう言ってしまっては何ですが、ひじょ~~にうっとおしいですねぇ(^ω^;)

 公園で泣いていたところを見つけてくれたところまでは百歩譲っていいとしても、その後がはた迷惑極まりないです。


 育児や教育の手法やその方向性は、当たり前ですがその家庭ごとに異なります。それが家庭内暴力やネグレクト等に繋がるようなものでもない限り、基本的には各家庭の裁量に任せるのが当然です。

 そこへ、自身の経験値に余程の自信があるのか横からやいのやいのとこんな事を言ってくるというのは、「地域コミュニティーによる子供たちの温かな育成」なんてレベルははるかに超え、もはや過剰介入以外の何物でもありません。おばちゃん、お願いやめて。


 つまり、です。なろうにおける個々の作品に対しこういったものと同等の行為をする人が悲しくも存在する以上、一部のユーザさんが誤字報告を閉じてしまうという行為はもちろん間違いでも何でもなく、子たる作品を守るための防衛策として当然認められるべきものであると言えると思います。本心からそう思えます。

 無論、そこをシャットアウトしたところで感想欄にて指摘してくる可能性はありますが、「誤字報告」機能とは違い、感想欄での指摘は当然他のユーザさんの目にも入ります。過度な指摘を行うことで周りから被るであろう悪評を考えれば、そういったリスクを冒す人もちょっとは少なくなるのかなぁと。



 ()()()()。とはいえです。

 こういった「迷惑おばちゃん」を完全排除した結果、公園で泣いている我が子に気付けないままに終わってしまう可能性が出てきてしまうことも、恐らくはまた事実。

 この例えもいい加減くどいと思うので小説作品に話を戻しますと、上記のような過剰な指摘をしてくるユーザへの警戒を強くするあまり誤字報告を受け付けないようにしたことで、自身が気付けないような瑕疵が長期間、作品にいくつか残ることになるかもしれません。感想欄からの指摘という道も残ってはいますが、誤字報告に比べたら匿名性も低いですし躊躇される可能性もあります。



 要は何が言いたいのかというと、「ミスがそのまま残るという危険性を受け入れてでも『誤字報告を受け付けない』にする」か、もしくは「過剰に口出しをされるという危険性を受け入れてでも『誤字報告を受け付ける』にする」かは、当然個々人の自由であるということはもちろんとして、選択の際よくよく考えた方が良いのではないかということなのです。長々と書いてきましたが、やはりどうしようもなく双方に一長一短がありますから。

 

「そんなこと、言われなくても分かってる!」と思われた方。5000文字を越えて語ってきたにもかかわらずこのような結論しか言えず申し訳ないことこの上ないのですが、少しでも誤字脱字文法ミスに対する意識をより高く持っていただけたらなと思って書いた次第です。ご容赦を。



 感想欄にて誤字を指摘されているにもかかわらず何年も修正されないまま放置されている作品がとても多いことに、密に心を痛める今日この頃。

 作品の傷は子供の傷。できればでいいので、早く気付いて、そしてそっと治してあげて下さい。

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[良い点] 『自分の文章の正確性に対する信頼なんて、もう粉々のさらっさらです。ベビーパウダー並みです』 という箇所が、ツボに入りました……笑。 時計屋のふくろうさんは、ちょこちょこ小ネタを挟んできます…
[一言] ↓補足 風潮というか、システム上 新作は明示的にoffにしなければ初期値on 旧作は1つづつ明示的にonにしなければoff なので旧作放置とか、多作で設定面倒とか、このシステム知らなければo…
[良い点] おばちゃんのたとえが面白かった [一言] うざい報告は来てみないとわからない。 自分には来てないので今のとこONにしてるけど。 エッセイ等で噂には聞くけど、ぼかしてるのでふわっとしてるし…
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