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能美坂学園超次元脳量子応用技術ダンス同好会  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
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07 南校庭の鉄棒前

 ――キーンキコーンー、カーンカコーン――。

 ――キーンキコーンー、カーンカコーン――。

 退屈な授業もやっと終了だ。授業の終わりを告げる学園独特のチャイムが鳴り響く――。


「やっとおわッっった!」

「優ちゃん、早速いくわよ!」

「は? どこに?」

「なに寝ぼけたこと言ってるのよ!? 南校庭の鉄棒前に決まってるじゃない!!」

「あぁ……そうだったな……」

「ほら、早く支度しなさいな」

「わかってるよ……ったく……、あっ!? そうだ、どうせ行くなら鉢助も呼んでから行こうぜ」

「鉢助くんなら放っておいても大丈夫よ」

「なんで?」

「彼の性格なら脇目もふらずに授業終了のチャイムと同時に真っ直ぐに南校庭に向かってるわ」

「………………なるほどね、スーパーアイドル級美少女ってキーワードが味噌か……鉢助とはまだ出会って間もないのによくわかるな」

「悪いけど、あの手のタイプは飽きるほどみてきたわ……ホントに、いい迷惑だったわよ……」

 過去に何か嫌な事でもあったのだろうか――そういって紗綾河は外の校庭に視線を落とし、なにか哀愁めいた空気を纏いながら鞄を手に俺を待っていた――。


「――ん、準備完了っと……行くか」

「優ちゃん、南校庭の鉄棒前って場所わかる?」

「んにゃ、全然」

「仕方ないわね、誰かに聞きながら向かいましょう……だいたいこの学園って広過ぎるのよね」

 俺たちは南校庭鉄棒前の正確な場所もわからないままに、なんとなく方角的に学園の南側に向かって歩いていた。

 ――人づてに聞いたところ、南校庭は能美坂学園の中等部の方にあるらしい……。そして、この能美坂学園は中高一貫で、なにかイベント事がある場合には中等部の生徒たちも混ざって合同でイベントを盛り上げてくれるようだ。能美坂学園は普通の中高一貫のイメージを遙かに超えていて、中等部と高等部の垣根がほとんどなく、自由に行き来できる。この学園の特色は意外と珍しいのかもしれない。

 ブレザーではなくセーラー服姿の中等部の女子生徒をチラホラと見かけるわけはそういう事だったのかと今更ながら気付く――そして、歩けば歩くほど、この学園の広大な敷地面積にもあらためて驚かされる。本当にこの学園は特殊な学園なのだ――――――。


「――しかし本当に広いな……この学園は……南校庭の鉄棒ってどこだよ………………」

「あれ!? ねえ、あそこにいるのって鉢助くんじゃないかしら?」

「あぁ、ホントだ……ってことはあのヒョロ長いのが小倉先輩で、もう一人いるちいさい娘がスーパーアイドル級美少女の妹さんか………………」

「スーパーアイドル級美少女を強調し過ぎ! 浮気とか絶対だめだからね!!」

「は!? ホントにお前なに言ってんの………………? っていうか、俺たち最後じゃんかよ! もうなんでもいいから、早く行こうぜ!」

 思いのほか手間取ったが、なんとか俺たちは南校庭の鉄棒前にたどり着く事が出来た。この南校庭は俺が考えていたような広大な校庭ではなくて、他の校庭と比べると随分とこじんまりとしている――。どうもこの南校庭は野球やサッカーなどのスポーツを完全に想定から外した設計になっているようで、主に小さいスペースでも出来る運動……、例えば体操やストレッチ、筋トレやその他の自主練習の為に設けられた校庭のようだった。そういう意味でもダンス等の練習には向いている場所なのかも知れない――――――。

「――遅れてすみません、少し迷ってしまいました」

「いやいや、気にすることはない! 僕らも今、来たところだよ!」

「遅えぞ! 優!」

「鉢助が早すぎるんだよ!」

「先輩からのお呼び出しがかかったんだから、最速で駆けつけるのは当然だろ!」

「嘘つけ……おまえの場合は不純な動機だろうが………………」

「は? なんだって?」

「なんでもねえよ……」

 いつにもまして元気な鉢助を見てなんだか少しほっとした――実をいうと俺は少し人見知りをする性格で、小倉先輩の妹さんが来ると聞いて若干の戸惑いもあったのだ。しかし、鉢助がこれだけアグレッシブでガンガン前に出てくれるような感じなら、俺はいつもどおりに鉢助が暴走しないようにセーブするだけの役割で済みそうだ。正直いって、そのほうがあんまり気を遣わなくて気楽で助かる――。


「さて、それでは全員揃ったところで始めよう! だがその前にスーパーアイドル級美少女の僕の妹を紹介しようではないか!」

「ちょっと……お兄ちゃん、やめてください! 勝手にハードル上げないでください!」

「何を言うか! ハードルなど一切あげてはいないぞッ! さあ、恥ずかしがらずに自己紹介をするのだ! 我が妹よ!」

「あの……ホントに皆さん、すみません……小倉舞衣といいます。兄がいつもお世話になっております、今後ともよろしくお願い致します」

「うむ! 初々しくてよいではないか! こんなスーパー美少女と共に青春を過ごせるんだ、男子諸君、光栄に思いたまえ! みんな、妹をよろしく頼むぞ!!」

 こんな兄を持った妹さんを少し気の毒にも感じたが、でも小倉先輩がいうだけのことはある――この娘ならどれだけハードルを上げられてもまったく問題はないだろう。

 少したれ目がちで愛らしい顔立ちに透き通るような白い肌、それに茶色がかったセミロングの髪がよく似合う。身振りや話し方も穏やかで上品だ。ものすごく小柄な風体からか、なんだか気弱そうな雰囲気がうかがえる。パッと見は典型的な小動物系の守ってあげたくなるような、本当に本当に愛らしい女の娘だった――――――。

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