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能美坂学園超次元脳量子応用技術ダンス同好会  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
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06 授業中

 ――キーンキコーンー、カーンカコーン――。

 ――キーンキコーンー、カーンカコーン――能美坂学園独特のチャイムが鳴り響く――。


「やべッ! 予冷鳴っちまったぞ、早く教室に戻ろうぜ紗綾河」

「優……お前って本当に恵まれているよな……なんで紗綾河さんと同じクラスに……」

「は? 鉢助、おまえ何言ってんの……?」

「なんでもねっスよ……早く教室戻ろうや」

「お、おう……、では小倉先輩、俺たちはもう教室に戻りますんで、この辺で失礼いたします」

「ちょっと待ちたまえ! 大事なものを忘れているぞ、君たち!」

 そういうと小倉先輩は入部希望届の用紙と先輩の連絡先のアドレスが書かれたペラ紙一枚の粗雑な新歓用ビラを俺たちに手渡してきた。

「入部届は別に後でもいいけど、連絡先はすぐに教えてくれたまえ! 学籍番号とフルネームを打ち込んでくれたら、後は空メールでも構わないから、そのビラのアドレスになるべく早く送信してくれたまえ!」

「わかりました、なるべく早く連絡いたします……では、また」

「おうよ! 期待して待っているぞ!」

 小倉先輩はそう言って、教室に戻る俺たちを満面の笑みで見送ってくれた。

 ………………先輩は教室に戻らなくていいのだろうか? なんて疑問は独特過ぎるキャラの小倉先輩に対しては抱いてはいけない気がする――――――。


 ――昼休みも終了し、退屈な授業に早くも俺は辟易としていた。

 昼食をまともにとれなかった所為もあり、空腹感がいっそう俺の機嫌を斜めにする。授業中なのはわかってはいるが、これ以上この退屈な授業に耐えられそうもない俺は、ポケットからケータイを取り出し、手慰みに小倉先輩へと早速メールを送る――。


「(魔法科一年の伊野平優……っと、これでよし)」

 早くもやる事がなくなってしまい、授業の残り時間を気にかけているとケータイがブルブルと振動した――。

「(早いな……早速、小倉先輩からの返信かな……)」

 そう思い俺は、サイレントモードのケータイをおもむろに取り出し、机の下でタッチパネルを操作する。するとそこには小倉先輩からの返信メールではなく、意外にもまだ俺のアドレスを教えていない紗綾河からのメールだった……。

「(は? なんで紗綾河から……ってか、なんであいつ俺のメアド知ってるんだ……?)」

 疑問に思いながらも俺は、届いたメールをすぐにチェックしてみる――。


『えへへ、驚いた!? 小倉先輩に優ちゃんから連絡が来たらすぐにアドレス教えて下さいって、ついでに頼んでおいたの。さっき優ちゃん、先輩にメールしたでしょ? 席、優ちゃんの後ろだからすぐにわかったよ』


 俺の席は幸運にも窓際で後ろから二番目だ。しかし、幸か不幸か紗綾河の席はどういう訳か俺の席の真後ろ……、つまり窓際の一番後ろなのである。

 完全くじ引き制で決まった席順なので不服の申し立てようもないのだが、常に後ろに紗綾河がいるのは、こんな文面のメールをもらった後ではなんだか落ち着かない――。こころなしか少し監視されているような気さえして、あまりいい気分ではなかった。そして、このメールの続きにはこうあった――。


『こうして学科もクラスも一緒で、席まで窓際の後ろで一緒ダネ。さらにクラブまで偶然一緒だなんて……これって絶対に運命だよね! これからも末永くよろしくね!!』

 なにが運命だよ……、クラブも偶然一緒って……なにいってんだ、こいつ――――――。

 正直そう思ってそのまま文面にして紗綾河に返信してやろうかと思ったが、口語と違い文語だとちょっとキツイ言い方になりそうだし、人をわざわざ不愉快にさせるのもナンセンスだと感じた俺は、可もなく不可もない無難な返信をすることにした。


「(こちらこそ、よろしくおねがいします……っと)」

 本当につまらない一言を入力し、紗綾河に返信する――。すると、送信直後に俺のケータイがいきなり振動を始めた。

「(ん? いくらなんでも返信が早すぎるだろ……エラーで返ってきちゃったのかな……?)」

 ポケットにしまったケータイを再び取り出し、俺は帰って来たメールを早速確認する――。

 今度は小倉先輩からのメールだった。

「(小倉先輩!? みんな授業中だってのに何やってんだか……)」

 自分のことは棚に上げて、授業中に俺は小倉先輩からのメールを開く――。


『やあやあ、君たち! 授業中だというのにメールをくれてありがとう! 学生の本分は勉学だよ、以後慎みたまえ! ところで我がダンス部の活動についてだが、早速にも今日の放課後に集まってもらいたい! いきなり練習ということはないから安心したまえ! 今日は、軽くミーティングだ! ついでにスーパーアイドル級美少女の我が妹も連れていこう! 楽しみにしていたまえ!! というわけで、放課後に南校庭の鉄棒前に集合だ! 遅刻は厳禁だぞ!!』


「(スーパーアイドル級美少女って………………、普通自分の妹をこんなにハードル上げて連れていくって言うかね……このひと大丈夫か? 妹さんも気の毒に……しかも、いきなり今日の放課後に集まれって……なんていうか……よく言えばリーダーシップってやつなんだろうけど……なんかもう……ただの我が儘な人に思えてきた)」


 ――小倉先輩からのメールを読んで、少しゲンナリしていた俺の背中を紗綾河がシャーペンで突いてくる。そして、ヒソヒソ声で話しはじめた。

「優ちゃん、小倉先輩からのメール読んだ?」

「授業中だぞ……」

「わかってるわよ、そんなこと……ねぇ、読んだの?」

「……読んだよ、スーパーアイドル級美少女の妹さんも来るそうだな」

「んもぅ! 男の子って結局そこなの!? まったく……放課後、行くんでしょう? だったら一緒に行かない?」

「一応は行くけどさ……あんまり気乗りしないな………………」

「なんでよ? 美少女二人に囲まれて、両手に花よ」

「おまえな……自分でそういうこと言っちゃうかな……」

「言っときますけどね、あたしこの学園では結構イケてる方よッ!」

「黙って大人しくしている時ならね」

「なんですって!? どういう意味よ!!」

「バカッ!? 声がでけぇよ!!」

 紗綾河は沸点も随分と低いようだ。俺の一言にカチンときた彼女は、突然大きな声をあげる――そして、それにつられて自分もつい大きな声をあげて言葉を返してしまった。

「コラッ! そこ! 授業中だ、うるさいぞ!!」

「「す、すみません!」」

 教科書を片手に俺たち二人をにらみつける先生に、紗綾河と俺は背筋を伸ばして恭しく頭を下げる。

 クラスの女子たちはクスクスと笑ってくれていたが、紗綾河との仲を誤解しているであろう男子からの視線が俺には少し痛い――。


「――おまえのせいで怒られちゃったじゃんかよ……」

「優ちゃんが失礼なこと言うからでしょ!」

 まったく、女ってやつはどうしてこうも我が強いのか……、彼女も例外ではなく、基本的に自分の非を認めてはくれない存在のようだ――――――。

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