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能美坂学園超次元脳量子応用技術ダンス同好会  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
36/42

36 休暇

「――ねぇ優ちゃん、せっかく小倉先輩がお休みくれたんだから遊びに行かない!?」

「紗綾河……おまえなぁ、小倉先輩の話を聞いていたのか? 遊ぶために猶予の時間をくれたんじゃないんだぜ!?」

「んもぅ! かたいこと言わないの!! ね? どっかいこうよ!!」

「んー、でもなぁ……」

「優がいくんならオレッちもいくけど!」

「鉢助くん……、あなた小倉先輩の話を聞いていたの? 遊ぶために猶予の時間をくれたんじゃないのよ? 鉢助くんはちゃんと個人練習をやっててちょうだい………………」

「紗綾河さん……相変わらずブレないッスね………………」

「おい、紗綾河……いくらなんでも鉢助に冷たすぎないか?」

「そんなことないわよ」

「そう……? ならいいけどさ……」

「ねぇねぇ、そんなことより! 遊びにいこうよ!!」

「遊びにっていったってなぁ……」

「ふたりでカラオケに行って、夜はファミレスで甘いもの食べて、そして帰り際に人気のない公園で………………うふふ、ね? 素敵でしょ!?」

「あやしい笑い方すんじゃねぇよ……、鉢助も一緒なら別にいいぜ」

「えええええぇ!? ふたりで行こうよぅ……」

「だめだ! 鉢助、カラオケ行くか?」

「しょうがねぇなぁ……優がどうしてもって言うなら付き合ってやらなくもないぜ」

「じゃあ、ど、う、し、て、も!」

「ったく、しょうがねえな……というわけで、紗綾河さん! よろしくね!」

「………………よろしく」

 またも紗綾河が悪い顔つきをしている……ご機嫌ナナメなのは言うまでもない――。

「あ、あの……伊野平さん、舞衣もご一緒してもいいですか?」

「ん? 舞衣ちゃんも行く?」

「はい!!」

「ん、じゃあ四人で遊びに行くか!」

「「「おおー!!」」」

 こうして俺たちはめずらしく四人で遊びに行く事となったのだが……やはりそこはお決まりのマンネリ化されたパターンが当然に待っていた――。

「ちょっと! あなたたち、お待ちなさいな!!」

「――? 円花宮先輩も行きたいんですか?」

「な!? ち、ちがいますわ!!」

「あ、そうなんですか? 残念です……じゃあ俺たちは4人で遊びに行きますので……」

「ちょ!? ちょっと!? お待ちなさいなと言っているでしょう!? 一緒に行かないとは言っておりませんですわよ!!」

「円花宮先輩はご多忙でしょうから、ご無理なさらなくても結構ですよ?」

「紗綾河さん……あなたねぇ………………」

「はい? なんですか? 先輩?」

「………………わかりました、あなた方だけですと不安ですから、保護者としてご同行させていただきますわ!!」

「ご無理なさらなくても結構ですよって言ってるじゃないですか!?」

「紗綾河さんみたいな方を放って置くことなんて絶対にできません!! 何か間違いがあっても困りますわ!!」

「間違いってなんですか!? ただでさえ邪魔者が多いのに、これ以上面倒を増やさないでくださいよ!!」

「やっぱり……下心が見え見えですわ! まったく油断ならないですわね!!」

「下心が見え見えなのは円花宮先輩のほうでしょう!? なんて性格の悪い女!!」

「なんですって!? もう一度言って御覧なさいな!!」

「お望みでしたら、何度でもいってやりますよ!!」

「キーーーーーー!!」

 先輩に対してなんと失礼な……紗綾河のこの気の強さは俺も少しは見習いたい。

 すでに見慣れた光景ではあるのだが、なんともこの面倒くさい、辟易とした感じは………………、やはりしんどい。でも今は、なぜかこのしんどさも心地よく感じられた。俺はたぶん、このダンス同好会のメンバーが本当に好きなんだと思う……だからこの面倒くささもしんどさも楽しめるのかもしれない。最初は乗り気じゃなかったこのダンス同好会も、今の俺にとっては生活の一部だし、精神的にも占める割合はかなり大きいだろう……いわゆる心の支えってやつになっているのかもしれない。もし今、このダンス同好会のメンバーをいっぺんに失ってしまったら、俺の心にぽっかりと開く穴を埋めることはもう誰にもできないだろう。今はのんきにこうしてバカやっているが、このあたりまえの奇跡を俺は大切にしたいと思う――。

 ひさしぶりに、歌って、食って、騒いで、遊んで……、本当に今日は充実した一日だった。みんなのおかげで心の毒はすべて吐き出せたと思う……。後はもう悔いのないように精一杯、俺は俺のパフォーマンスをやってみせる……ただ、それだけだ………………。

 ――そして週末、俺は同好会メンバーみんなの支えによって最高のコンディションで選考会当日を迎える――――――。

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