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能美坂学園超次元脳量子応用技術ダンス同好会  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
33/42

33 扇風機

「ですから、そこは……」

「いやいやいやいや……紗綾河くん、そうはいうけどねぇ………………」

「……だったら円花宮先輩にがんばってもらえばいいじゃないですか!?」

「だから、何度も言うようにだね、きみのワガママで勝手に構成は変えられないって言っているではないか!?」

「ワガママなんかじゃありません! 同好会の為です!!」

「いいかい? ちゃんとみんなの許可をとってだね、それから演出や構成を変えないと……」

「今の段階なら問題ないハズです! まだルーティーンも決まっていないですしッ!!」

「なッ!? 一応は決まっているではないかッ!? 今までみんなで練習してきたやつがあるだろう? ルーティーンというのはだね、ただ皆で同じ振付を合わせてパフォーマンスをすればいいってものではないのだぞ!? 気持ちも含めて、みんなで振付を合わせていく事こそが真のルーティーンなのだ! これまで培ってきた事を今さら変えるなど出来ん! 今までやってきたルーティーンは構成に入れていくつもりである!!」

「仕方がありませんね……じゃあ、そこで円花宮先輩に法術を使ってもらいましょうよ!?」

「なんでそうなるのかね……? 円花宮くんにもルーティーンはやってもらうぞ!!」

「でも円花宮先輩の風は演出に重要ですよ! というより、欠かせませんッ!!」

「そんな事はわかっているさ! だから、ここぞという場面で円花宮くんには活躍してもらってだね……」

「――そうだ!? これはもう仕方がないので円花宮先輩の出番を減らせばいいんですよ!!」

「は!? 紗綾河くん!? きみはいったいなにを言っているんだい!?」

「そうですよ! 円花宮先輩には風の演出に専念してもらった方がパフォーマンスの質は上がります!! そうすべきですッ!!」

「コラコラ、紗綾河くん! 円花宮くんは扇風機じゃないんだ、バカな事をいうんじゃない!!」

「バカな事なんて言ってませんッ!! 風の演出は絶対ですッ!!」

「それもわかってはいるがね………………」

 ふたりのやり取りを聞いていると、やはり紗綾河の独断専行発言が耳につく……いくらなんでもありえないだろ………………。

 このままでいくと紗綾河がセンターで、俺たちはただの引き立て役にまわされることになりそうだ。これだから女の自己顕示欲はおそろしい……こんなのを小倉先輩がまともに相手にするわけはないし、うまくあしらってくれるだろうと期待しつつ、環境はあまりよくないが俺は、自分の試験勉強に集中する事にした……が、あろうことか、放っておけばいいものを、紗綾河と同等でなかなかに沸点の低い円花宮先輩のわざわざ事を荒立てるような言動によって、この環境はより一層の悪循環をまねくことになる――――――。

「ちょっと! 紗綾河さん、いい加減にしてくださいなッ! みんなに迷惑でしょう!!」

「……扇風機」

「――ッ!? だれが扇風機ですか!?」

「あ、いえいえ……失礼しました、何でもないですからお気になさらずに」

「お気になりますわ! 人を扇風機扱いして……あげくの果てにわたくしの出番を減らす!? 勝手な事は許しませんわよッ!!」

「勝手な事なんかじゃありませんってばッ! 演出の為に風の法術が必要なんです!!」

「あなたの為に使う法術なんて、わたくしは持ち合わせてはおりません!」

「あたしの為だけじゃありません! 同好会の為ですッ!!」

「同好会の為に使うのでしたらやぶさかではありませんが……とても同好会の為だけとは思えません! どうせ紗綾河さんのダイヤモンドダストの演出につき合わされるだけでしょう!? そういう事ならお断りしますッ!!」

「なんでですか!? 同好会の為だッて言ってるじゃないですか!? いい大人が私情をはさむなんて……みっともないですよ!!」

「じゃあ具体的にどうゆう演出にわたくしの風を使うんですの!?」

「それは、あたしのダイヤモンドダストをより艶やかにするために……」

「ほら!? やっぱりッ!? 自分が目立とうとしているだけじゃないですのッ!!」

「そんな事ありません! 夏場にダイヤモンドダストが吹き荒れるんですよ!? それはもう凄い話題になりますって! そうすればダンス同好会の知名度も上がって、イベントも大盛況で一石二鳥じゃないですか!!」

「もしそれができれば、紗綾河さんもよりいっそう学園の注目の的ですし、まさに一世風靡ですわね!!」

「まぁ、結果としてはそうなってしまいますが……でもそれはしょうがないですよね、結果論ですから………………」

「ッ――!? ダイヤモンドダストの演出は却下します! そんな事につきあってはいられませんわッ!!」

「ダンス同好会の為だっていってるじゃないですか! なんてワガママなッ!?」

「なッ!? ワガママをいっているのは紗綾河さんの方でしょう!?」

 水と油とはよくいうが、風と氷も相性が悪いらしい……このふたりのイザコザは今にはじまった事ではないし、すでに見慣れた光景だが、時と場所を考えて欲しい――。

 はっきりいって女同士のイザコザに巻き込まれるのはご勘弁願いたいのだが、状況が状況だ……気乗りはしないがふたりの間に入ってなんとか俺は仲裁を試みる事にする……とにかく今は集中して試験勉強をさせて欲しい一心で――――――。

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