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能美坂学園超次元脳量子応用技術ダンス同好会  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
26/42

26 勉強もがんばろう

「………………ねぇ、こんなのはどう思われますかしら?」

 小倉先輩の不甲斐なさに、やや脱力気味の俺たちへ、救いの手を差し伸べるように、沈黙を円花宮さんが破る。

「円花宮くん、何かあるのかい!?」

「付け焼刃なのは百も承知ですけど……もうこうなったら徹底的に演出にこだわってみてはいかがでしょう?」

「演出ねぇ……無論、法術を駆使しての演出だよね」

「勿論ですわ、小倉代表!」

「まぁ、今の僕らに出来る事といったらそれくらいだしねぇ……」

「基礎からみっちりやっている時間はわたくし達にはございませんですわ……、だったら………………」

「佐々祇くんの最も嫌う、『基礎もできていない、実力のない奴が法術に頼っていい恰好をする事』にあえてこだわる……というわけだね?」

「はい……、でも基礎をないがしろにするつもりは一切ございませんですわよ! 基礎練習はカリキュラム通りにやり続けます!!」

「ということは……基礎練習にプラスして、さらにイベント用の練習って感じかな?」

「そうなりますわね」

「時間的にも体力的にもなかなかのハードスケジュールだが……、伊野平くんたちはどう思うかね?」

「俺からは何も言えませんよ……こうなってしまったのは俺の所為でもありますし、俺は……俺は、自分に出来る事があるのなら何でもやります!!」

「伊野平くんはそれでいいかも知れんが、紗綾河くんと河鹿くんはどうなんだい?」

「優ちゃんがやるなら、勿論、あたしもやりますよ!」

「紗綾河さんがやるんならオレっちも、もちろんやるっス!」

「なんだかねぇ、ついさっきも見たような光景だねぇ………………」

 小倉先輩は飄々としているが、顔は少しほころんでいるようにみえる。小倉先輩はどうなのかよくわからないが、俺たちの士気は相当に高い――どんな練習量でもそれなりに耐えられる気概はもっていた。

「みなさん、ただ練習だけすればいいってものではないですわよ! そろそろ試験も近いんですから、決して成績は落とさず、中間考査もちゃんとした成績を修めつつ選考会に臨むんですのよ!! 妥協や言い訳は絶対にわたくしは許しませんですわ!! みなさん、そこらへんはちゃんとわかっておいでかしら!?」

「ゲッ!! 中間か……、そんなのもあったんだな………………鉢助、試験自信あるか?」

「オレっちに聞くかね? そんなこと………………」

「そ、そうだな……聞いた俺がバカだった……、なんか、ごめんな」

「謝られると余計に惨めッスわ!」

「お、おう……本当にすまん」

「紗綾河くんは問題なさそうだが……伊野平くんと河鹿くんは勉学も怠らないように頼むぞ! イベントで学園に貢献できても、そのせいで成績が悪くなってしまっては本末転倒だぞッ!! 二人は中間考査も気合い入れるように!!」

「「は、はい!!」」

「伊野平くん、勉強ならわたくしが個人教授して差し上げてもよろしくてよ」

「ほ、本当ですか!? 円花宮先輩!?」

「もちろんですわ、去年の魔法科の試験問題も家に保存しておいてありますから……、わたくしと一緒なら中間考査の傾向と対策もバッチリでしてよ!!」

「あ、ありがとうございますッ! それ、マジで助かります!! 正直言って、勉強はちょっと苦手なんです……俺、塾にも行ってないですし、ウチはみんなのようにお金のある家ではないから家庭教師とかもなんにもなくて……ちゃんと周囲についていけるかどうか……、本当にすごく不安だったんです! だから……ありがとうございます!! なんだかお気を遣っていただいて、申し訳ないです………………」

「なにを水臭いこといってらっしゃるの……わたくしと伊野平くんの仲じゃない、遠慮する事なんてなくってよ……二人っきりで、ゆっっっっっくりお勉強しましょう」

「はい! お言葉に甘えさせていただきます!! ありがとうございます!!」

「あの……オレっちも勉強苦手なんですが………………」

「河鹿くんは紗綾河さんに教えて頂ければよろしいんじゃなくて?」

「まぁ、それでもいいですけど……釈然としないこの気持ちは……、なんなのでしょうか?」

「わたくしに聞かれましても……そんなことは知りませんですわ」

「円花宮さん、なんかオレっちに冷たいッスね……」

「そんなことはありませんわよ」

「はぁ、そうすか……じゃあ、まぁいいッスけど………………」

「という事で……紗綾河さん、伊野平くんの勉強面においてはわたくしが面倒をみますので、河鹿くんのことはよろしくお願いいたしますわよ」

「ちょっと!? 勝手に決めないでくださいよ!!」

「勝手になんて決めておりませんわ! ご覧の通り、ちゃんと伊野平くんの許可も取っておりましてよ!!」

「あたしが許可しません!!」

「あら? 随分とおかしなことをおっしゃられるのね……わたくしが伊野平くんと勉強するのに紗綾河さんの許可がいるのかしら?」

「要ります! っていうか、円花宮さんが河鹿くんと2人で勉強すればいいじゃないですか!? そしたら、あたしが優ちゃんに勉強を教えてあげますから!!」

「あら残念ね……伊野平くんとわたくしのお勉強の約束はもう成立してしまいましたし……」

「そんなのキャンセルします!!」

「そんな無責任な事はわたくしできませんわ! 約束をした以上は、決してそれを反故にする事なんていたしません!!」

「反故とかそういう問題じゃないです! 優ちゃんが嫌がってるでしょう!? だから約束をなかった事にしてあげるんです!!」

「あの、紗綾河……俺、別に嫌がってない……」

「優ちゃんは黙っててよッ! 円花宮先輩に勉強を教えてもらうなんて、気を遣い過ぎて、優ちゃん逆に疲れちゃうでしょう? だったら、気を遣わなくてもすむ同級生のあたしが勉強を教えてあげた方がいいでしょう!?」

「まぁ、確かに……紗綾河なら、そんなに気を遣わなくてもすむけども………………」

「ほらッ!? 円花宮先輩、聞きました!? 優ちゃんがそういってるんですから、無理に約束を守らなくてもいいんですよ!?」

「いいえ! そういうわけには参りませんわ!! 約束は約束ですわよ!! きちんと守らせていただきます!!」

「円花宮さんってば、相変わらず頭かたい上に強引ですね! そんな無理して責任を果たすようなことはしなくてもいいんです!!」

「お言葉ですけど、紗綾河さん! あなたと勉強するより、環境的にもわたくしと勉強した方が効率的ですし、伊野平くんの為になりますわよ! 彼の為を思うのでしたら邪魔はしないでくださる!?」

「邪魔なんかしていません! 円花宮さんと2人っきりなんて優ちゃんが勉強に集中できません!! 優ちゃんのことを思うなら円花宮さんこそ邪魔はしないで下さい!! これからは学園の図書館で優ちゃんと二人で勉強しますので、お気遣いなく!!」

「学園の図書館? この学園の図書館が何時まで解放されていらっしゃるかご存知ですの?」

「え? 二十二時くらいまでとかじゃ………………」

「紗綾河さんッたら、まったくわかっていらっしゃらないのですわね……この学園の自習室も図書室も、たとえ試験前でも十九時までが限度ですのよ」

「十九時!?」

「そう、十九時ですわ……、同好会の練習が終わった後では、ほとんどもう時間切れですわよ、どうなさるおつもり?」

「うぐぐ………………」

「それに比べてわたくしのお屋敷でしたら時間は無制限ですわ、何時迄でもかまいませんわよ」

「そんなの駄目です! 円花宮先輩の家からだと優ちゃん家は遠いし、帰るのが大変です!!」

「帰りはもちろんお車をだして差し上げますが……、それでも何か?」

「ご飯はどうするんですか!? 優ちゃんはまだ育ち盛りなんです!!」

「夕食も円花宮家でだして差し上げますが?」

「……でも、あんまり遅くなると次の早朝練習に影響が出ちゃいます!」

「その点もご心配なく、なんでしたら泊まっていってくださっても結構ですから、うふふ」

「――!? そ、そんなの絶対に駄目です!?」

「あら? どうしてかしら?」

「と、とにかく……駄目ったら絶対に駄目なんです!!」

 紗綾河お得意の強引さがいつにも増して際立っている――。なにもそんなに我が侭を言う事もないだろうに………………こんなにも円花宮先輩がよくしてくださっているのに、どういうわけか彼女のヒステリックッぷりはとどまる事を知らない――――――。

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