0章8話 出会いと別れの物語8-安達夏美-※寝取られ注意
軽度だけど寝取られあるぞい。注意されたし。
あの愚図と付き合ったのはどうしてだったんだろう。
大学に進学してから一月が経ち、大学での生活にも慣れてきた。
そろそろ、高校生活の残滓にも見切りをつけるべきだろう。
私には高校三年の秋口から付き合っている彼氏がいる。
別にイケメンというわけでもないし、特段、頭が良いわけでも運動ができるわけでもない。
何の特徴もない、どこにでもいる様なつまらない男。
クラスも私は文系で向こうは理系。
接点と呼べるものは受験勉強の合間の図書館での暇つぶしくらい。
私の好きなジャンルのところでよく本を探していたので、話してみたら意外と話せることに驚いたことは覚えている。
これまで付き合ってきた男達は、顔で選んできたのもあってか、趣味で分かり合えることはなかった。
おそらく受験のストレスや、しばらく遊んでいなかったこともあってだろう。
気が付いた時には付き合ってみようかと口が動いていた。
付き合ってみて気が付いたのは、実は本の趣味が合わないってこと。
割と軽めのジャンルで、考えなくてもいい話を好む私と、哲学的あるいは詩的ともいえる重めのジャンルを好む上に、それを咀嚼して自分の考え方とどうやって擦り合わせるか思考の海に沈んでいくような彼とは基本的に住む世界が違ったんだろう。
それに、休みの日の趣味がいけなかった。
なんで、一日かけて回るのが本屋と図書館なのかがいまいちよくわからない。
女の子を連れて遊びに行くってことを、どこか根本的な部分で勘違いしているんじゃないだろうか。
幸か不幸か、受験シーズンということもあって、そこが大きな問題になるようなことはなかった。
そもそもクラスも違うし、学校で会うのは図書館ぐらい、クラスが違えば下校時間も違うからたまに同じ時間になったときの帰りによるドーナツ屋か喫茶店ぐらい。
夕方から夜はお互い違う塾に行ってるから、一日の会話はほぼない。
休日デートは3回だけ。
会えない私といて楽しいのか訊いた時には、即答で楽しいと答えていた。
本当によくわからない。
擦れ違い以前の問題だった私たちの関係が決定的に崩壊したのは、私が大学に進学することが決まり、彼の浪人が決まった時だった。
元々、陰気な所へ卑屈さが混ざった時、私はこいつのことを完全に見切った。
大学でのサークル選びは受験期の反動からかノリの軽そうなところを選んだ。
自分でもこれは喰われる流れだろうなと思いながらも、まぁ処女でもないし、今更そんなことは気にしなくてもいいと、グラスに注がれるアルコールを流し込んでいた。
次の日の朝、目が覚めると私の横には、茶髪のチャラそうな男が間抜け面をさらしていた。
こいつが昨日のお相手だったらしい。
そういえばあの地味野郎とは結局、こういう関係にはならなかったなと思ったが、それもこれも過去の話で、手を出してくる度胸がなかっただけの話だ。
久しぶりにスマホの着信履歴から佐藤紘一を探す。
「夏美。久しぶり。元気にしてる?どしたの?」
なんだろうこの苛々は。
「今日、アンタ東京まで来れる?」
「いいけど、なんか用事?」
「上野の公園改札に13時。」
それだけ告げて、私は電話を切った。
私が待ち合わせを指示した場所には地味な男が地味な格好で立っていた。
「夏美。久しぶり。学校はどう?楽しい?」
この私の機嫌をうかがうような目が苛々する。
「少し歩こうか。」
そう言って歩き出す私の後ろを、所在なさ気に歩いてくるのにも苛々する。
平日昼間の上野公園は流石に人も疎らだ。
「それで、何も聞かないの?」
後ろを歩く男に声をかけるがなにも返ってこない。
「あのさ、私好きな人ができたんだよね。」
足音が消えた、私も立ち止り振り返る。
「それは僕じゃなくってってことでいいんだろうか。」
「そうよ、どう聞けばアンタのことを好きって言ってるように聞こえるのよ。」
「そうなの?」
「なによそれ、陰気で趣味も合わないアンタと半年もいてやったんだから別に終わりにしたっていいでしょ。」
少しの間うつむいたまま下を見ていた紘一は私にこう言った。
「夏美はそれで幸せになれる?」
私は一瞬目の前が真っ白になった。
今、何を言われたのかがさっぱり頭の中に入ってこなかった。
「アンタ、何言ってんの?私が幸せかどうか?アンタといない方が幸せよ。昨日だって抱いて貰って気持ち良くして貰って、デートだってアンタみたいなつまらない遊びじゃない。アンタの代わりなんていくらでもいるのよ。」
知らない。私はそんな幸せを知らない。
「それにアンタのその目が気持ち悪いのよ。この愚図。ずっと私の機嫌ばかり窺って、なんだっていうのよ。私の気持ちを知りたいならはっきり聞けばいいじゃない。」
そう怒鳴った瞬間、紘一は私に微笑んだ。
「夏美が幸せならいいんだ。」
そう言い残して紘一は私の前から去って行った。
私はただ立ち尽くすしかなかった。
傍から見れば、私の方がフラれたように見えたかもしれない。
あのときの苛々はなんだったのか、4年も経つのでだいぶ薄れてきてしまったが、結局わからないままだ。
「安達さん、何か飲みますか?」
のんきな顔の美人が声をかけてくる。
「いらないわ。人に入れて貰ったお茶なんか何が入ってるかわからないじゃない。」
「えー。せっかくコーイチちゃんから貰ったのにー。」
「あんた、そのコーイチっての本当に大好きよね。」
まず、名前が気に入らない。
「えぇ。お話しているだけで幸せになりますからねー。」
本当に「幸せ」って言葉だけで苛々してくる。
思ってたより難産じゃなかった。
正ヒロインにはそれぞれに対応した実在のモデルがいるんですけど、旧ヒロインは実在モデルを三体融合させた青眼究極龍なんで、ある意味思い入れも強いです。
そのまま三体で出すと圧力がやばすぎるというか、精神をヤりに来るので融合して貰ってちょっとマイルドになってもらいました。