0章7話 出会いと別れの物語7-大塚奈那子-
朱莉との出会い時期変更済
その人との出会いというか最初の印象は最悪だったと思う。
私には目に入れても痛くないと思える可愛い友人がいる。
クラスも違うし性格も好みも全然違うけど、仲はとても良いと思っている。
だけど、最近その友人がなんかおかしい。
夏休みの間は私も部活の練習や大会があってなかなか会えないのは仕方がないと諦めていた。
しかし、休みが明けてもそれは変わらなかったどころか、どんどん悪化していった。
これまでみたいに休日に遊ぶ約束をしようとメールしても返事は都合が悪いとかその日は用事があるとか。
昨日も買い物の誘いをしたのだけれど、素気無く断られている。
夏休み前には普通に遊んでいたのだけれど、そこで私は何か嫌われるようなことをしてしまったのだろうか。
夏休みが明けてもう2週間になる。学校でもなかなか会う機会はないが、明日こそは直接会って、朱莉の本心を知りたい。
昼休みに朱莉のいるはずの教室に向かうと朱莉の姿はなかった。
「ちょっといいかな?」
私はお下げの真面目そうな女子に声をかける。
「朱莉は今日は休み?」
「いえ。来てますよ?何か御用ですか?」
「いや、最近朱莉と話していないから、ちょっと気になってね?」
「朱莉さんなら、ご飯の後は図書室に行ってますよ?」
「そっか。ありがとね。」
私はその子に手を振って、教室を後にした。
朱莉は勉強ができるし、確かによく本も読むが、図書室に通い詰めるほどの本の虫ではなかったはず。
やはり、何かがおかしい。
私の知らない間に朱莉の身に何かが起こったことを確信した私は図書室に入り、朱莉の姿を探す。
朱莉は本を読んでいるわけではなく、自習スペースで問題集を解いていた。
「朱莉。」
「奈那子じゃないですか。どうしたんですか?奈那子のことですし、まさか本を借りに来たわけではないでしょう?」
「いや、朱莉と最近話せていないと思って、教室に行ったんだが図書室にいると聞いてね。」
「あー。確かに結構、お休みの日のお誘いもお断りしちゃってますしね。ごめんなさい。心配しました?」
「嫌われちゃったかと思ったんだけど、そうでもなさそうで安心したよ。」
「ごめんなさい。悪気があるとか、奈那子のことが嫌いとかそういう話じゃなくて、ちょっと今手が離せない状況でして。」
「それは今、朱莉がそうやって勉強していることと何か関係があるのかい?」
「まぁそんなところです。」
「だけど、朱莉は勉強できないわけじゃないし、中間が近いわけでもないけど、そんなに手が離せなくなるほど勉強しないとない理由でもあるの?」
私がそう問えば、朱莉はしばらく考えた後よくわからないことを言い放った。
「勉強していると言いますか、んーと、解らない問題をたくさん探しているんです。」
「解らない問題が解けるようになるように勉強するんじゃなくて?」
「解らない問題がたくさんあれば、その分私に時間をかけて貰えますから。」
「時間をかけて貰える?」
「あー、えーっと。まぁ、そうだなー、奈那子になら話してもいいか。他に話しておきたいこともあるし。」
「何を?」
「ここで話すのは流石に気が引けるから、今日月曜だし、奈那子も部活休みでしょ。帰りにどっかでお茶しよ。その時に話すから。」
久しぶりの朱莉との会話だった上に、久しぶりの朱莉との逢瀬の約束とあって、私は完全に舞い上がっていた。
今になってよくよく考えてみれば、この時点で朱莉の背後の第三者の気配に浮付いた様子からでも気が付けたのだ。
しかし、今となってはもう遅い、私も同じように浮付いているのだろうから。
放課後、下駄箱の前で朱莉と合流し、駅前の喫茶店で紅茶とケーキのセットを頼む。
「えっとね。奈那子、本当にごめんね。よくよく考えれば私すごく酷い事してたね。」
「いや、朱莉が私を嫌ってないというのであれば私から特にいうべきことはないよ。」
嘘だ。本当は毎日遊びたいし、何なら今日だって持って帰りたいくらいだ。
「奈那子がそういってくれるのは本当に助かる。」
朱莉はそうやって儚げに微笑む。なんだそれは、挑発しているのか。このままベッドインしたって私は構わないのだぞ。
「それで、何か話したいことがあるのだろう?」
「えっとさ、奈那子は運命の出会いってどう思う?」
運命?君こそが私の運命だって言いたい。
「朱莉はロマンチストだね。」
「うん。私ね。運命の出会いをしたの。」
は?尊い。なんなのこの可愛い生き物。
「私も朱莉と出会えたことは運命だと思う。」
キャー!!言っちゃった。言っちゃったよ私。ほあぁぁああっぁああー。
「あ、私も奈那子と会えたことには感謝してるけど、そうじゃなくて。私はこの夏、一生を添い遂げるべき運命の男性と出会ってしまったのですよ。」
「は?」
は?今この子、なんつった?添い遂げるべき男性?どこの誰?クラスのやつ?どこまでイッタ?それともどこまでヤッタ?探し出して始末しなきゃ。●ン●もぎ取ってやる。」
「うわー。言わなきゃよかったかな。奈那子、後半全部漏れてるよ?」
「え?何?」
「奈那子さ、あたしのこと好きだよね。」
「きゅ、急に何を言い段すんだ君は!!」
「今そういうの良いから。奈那子は、どういう意味で私のこと好きなの?友達として?それとも恋愛対象として?」
「・・・半々ぐらい。ねぇ、知ってたの?」
「んーん。私もね、恋愛的な意味で好きな人ができて初めて気が付いたんだけどね。」
「すごく、恥ずかしい。」
「でも、私は奈那子を友達としてしか見れない。」
「そう、だよね。」
「でも、その気持ちを否定したりはしないし、友達としてでもいいなら一緒に遊んだり、買い物行ったりもしたいかなって思ってる。」
「そのあとホテルに行ったり、お泊りとかって「しません。」ですよねー。」
「そういえば、朱莉の言うところの運命の人ってどんな人なの?」
「え?知りたい?」
「まぁ、好きな人の好きな人ってどんな人なんだろうって。」
「もう開き直ったの?」
「いやー、恋敵のことでも詳しく解れば、もしかして朱莉に振り向いて貰えるかなって。」
「その変な方向にでも前向きなところ嫌いじゃないよ。」
「ん。じゃあ、年は?」
「19才。」
「年上?大学生じゃん。私らまだ中3だよ?犯罪じゃん。事案じゃん。」
「奈那子。次それ言ったら、二度と口きかないよ?」
「お口チャック。関係は?」
「塾の先生。」
「・・・私も年上だったら。背丈とか顔は?」
「そんな高くないかな。170ないかも。顔はぶ、地味。」
「出身は?」
「まだ聞いてないな。今度訊かなきゃ。」
「大学はどこなの?」
「東都の建築って言ってた。」
「内進組だったら知ってる人いるかな?」
「それは盲点だったなー。学校での様子とか知りたい。」
「勉強してるのも先生のため?」
「それは私のため。解らない問題があれば先生に訊けるし、もし先生が答えられなくてもそれを解いている間は、ずっと私の前にいてくれるから。」
「・・・何が良かったの?」
「さみしそうなところ。」
「さみしそうなところ?」
「そう、さみしそうなところ。いっぱい甘えさせて、ドロドロにしてあげたい。望むことなんでもさせてあげて、依存させて私がいないと何にもできなくなっちゃうようにしてあげたい。」
「朱莉。なんか騙されてない?」
「騙されてないよ?いっぱい依存させてあげる代わりに私もいっぱい依存するの。共依存ってよくないって言うけど、全くそんなことないよね?お互いを必要とし合える素敵な関係だと私は思うんだよ。」
「いやいや。待って待って朱莉。重いって。」
「朝から晩まで先生にくっついて、ベッドでイチャイチャしてるのもいいなぁ。ずっとキスしてて、何にもさせてあげないの。食事も歯磨きも、お風呂で体洗うのも、体拭いたり髪を乾かしたりするのも、トイレでおし」
「ストップ!!朱莉!!ストップ!!」
「えへへ。先生と早く一緒に暮らしたいなー。」
「朱莉?朱莉?お願いだから現実に帰ってきて?」
私の天使ちゃんは、かなり愛の重い子でした。そして、朱莉のいう運命の相手には殺意すら覚えましたよ。
しかし、親友としての私は朱莉ちゃんの恋バナ聞き専門相談員となったのです。
先生との恋バナをする乙女の顔をした朱莉を見るのは、正直、複雑な気分でしたが、そこはこちらも愛の力ということで何とか乗り切りました。
ただ、朱莉がその男に良いように騙されてるような気がしたので高校進学を機に同じ塾に通うことにしたのですが、まさか私も同じような病気になるとは思ってもいませんでした。
それもこれも相手に妙に詳しくなって愛着のようなものが湧いてしまったことが原因、つまり朱莉が悪いんだと思います。
奈那子ちゃんはね、気が付いたらなんちゃって王子サマ系レズに転身してた。なんでかは知らん。
朱莉のとこもそうだけど留年させたり浪人させてるから結構時系列がこんがらがる。
エクセルかなんかで時系列表作らないと破たんする(もうしてる)
あ、たぶん次の話だけは元カノな話になるので寝取られ注意かな。
そんなにキツイ表現はしないつもりだけど、やられたことがあると鬱になるかも。
難産の予感しかしないけど、構成の都合上書くしかない。
設定考えたやつは本当に頭が悪いな!!