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工学系男子の甘い日々  作者: でっち
0章 出会いと別れの物語
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0章1話 出会いと別れの物語1-神田芽衣-

そいつとの出会いは最悪だったと言っていいだろう。


私、神田芽衣は今年の春、無事に志望大学への進学を果たした。

さすがに栃木と群馬の県境から都内まで通うのは難しいだろうと両親に頼み込み、始業式の一週間前には一人暮らしを始めることができた。

この一週間は大学までの道を覚えながら4年間を過ごすことになる街を散策した。

マンションから大学まで、気になる喫茶店や定食屋さんを横目に見ながら、桜吹雪の中を歩く。

その時の私は、希望と期待で満ち溢れていたと思う。

・・・問題は私が極度の方向音痴だったということだ。


入学式の会場は学部ごとに分かれていた。

広い構内で私は法学部の入学式会場を見つけられず、彷徨っていた。

履き慣れないパンプスや着慣れないスーツで歩き辛い。

そんな時、私の耳に「・・・ぅ学部の入学式会場はこちらになりまーす」という救いの声が届いたのだ。

式の始まりまでもう時間もない。

私は痛い足を庇いつつ、講堂に駆け込んだのだった。


私が行動に入ると式はすぐに始まった。

ほっと一息つける間もなく、式次第に従って起立と礼を繰り返した。

学部長の挨拶が始まる。

「東都大学へのご入学、おめでとうございます。諸君はこの東都大学の伝統ある・・・・君たちは日本の・・・・技術立国の礎となる・・・・」

ん?ちょっと待ってほしい。法学部の入学式でどうして技術立国の話になるんだろう?

私はとっさに隣で退屈そうに学部長の話を聞き流している男の子に訊いたのだ。

訊いてしまったのだ。今の私があの時の私に会いに行けるなら、そいつに訊ねたりするんじゃないと言いたい。いや、会いに行けるならまず道案内をした方がいいな。

兎も角、その時の私は聞いてしまった。

「あの、ここって法学部の会場であってますよね?」

そいつはぽかんとした顔で

「法学?ここは工学の会場だって。入口に掲げてあったろ?漢字読めなかった?それじゃ小学校からやり直さなきゃだめじゃん。」

いや。少し待ってほしい。百歩譲って私が間違えたことは私の責任だし、そこはまあいい。だが、なんで見ず知らずの男にこんな馬鹿にされなきゃならないんだ。

私は、立ち上がるとボーっとこちらを向いたままのそいつの頬を平手でひっぱたいていた。

パーンという音で我に返った私は、鞄をつかむと講堂を飛び出し、脱兎のごとく走り出した。あの時の私は風よりも早かったと思う。


その後、ひとまずお手洗いで呼吸を落ち着けた私は、案内の腕章をつけた先輩に法学部の会場まで連れて行って貰ったのだ。

頭が冷えてくるとさすがに平手はやりすぎたんじゃないかなと後悔の念が湧いてきた。いくらバカにされたとはいえ、法を志すものとして直接的な手段に出るというのは些か問題があったのではないか。そんなことを考えるうちに式は終わり、講義ガイダンスや学校生活上の諸注意を受け、解散の運びとなった。


法学部入学式の会場を出ると外はどこから溢れてきたのかと思うほどの人で埋め尽くされていた。部活やサークルの勧誘がすでに始まっているのだ。

私は学部が違うから会えるかどうかわからないけど、もしさっきの男の子に会えた時には謝ろう、そして、謝って貰おうなどと考えながら、お目当ての部活を探しながら人ごみの中を進んでいった。


しばらくしつこい飲みサーやテニサー、女子部員はいないだろうよというようなアメフト部や柔道部の勧誘を何とかいなしながら歩いていると、黒袴に白胴着の集団が見えた。

その中の女性に声をかけると経験者?段は持ってる?道具は?弓なら貸し出せるし矢も部室にあるの切って貰えば使えるからと何も答えさせてもらえないまま部室に連れ去られてしまった。


部室に着くと先輩はロッカーからちょっと湿気た入部届を私に差出し

「記入よろしくね。もう一人新入生捕まえたらしいから、その子を迎えに行って戻ったら道場見学行くから」

と言い、私はそのまま部室に置き去りにされてしまった。

手持無沙汰な私は、何の説明もされてないけど、もともとここにお世話になるつもりだったのだからまあいいのかなと、入部届の記入のために鞄から筆箱を取り出そうと思ったのだが鞄の中に筆箱がない。小学校のころからずっと大切に使っている物だったのに。どこかに落とした?どこに?私はちょっとしたパニックになりながら、部室を出ようと立ち上がった。


その時、ぎぃっと音を立てて部室の扉が開いた。私が振り向くとそこには綺麗な紅葉がついた顔のそいつが立っていた。

何か言わなくちゃと思う私にそいつは、

「芽衣ちゃんは漢字も読めないし、忘れ物もしちゃうんですねー。罰として廊下に立ってなさい。」

と私の筆箱を放り投げてきたのだった。

何と言われてもそいつ、佐藤紘一をグーで殴った私は悪くないと思う。


ぼくもあの人みたいな物書きになりたい。そう思ったけど願うだけでは叶わない。よって、ここに見切り発車することに決めたのである。プロット?ないよ?(無垢な瞳)

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